今求められるサステナビリティ経営とは?SDGsやCSRとの違いも解説
企業にとっても関係が深く、近年注目される「サステナビリティ」の意味を理解できているでしょうか。この記事では、用語の解説はもちろん、同じような文脈で使われるものの異なる概念をもつ「SDGs」や「CSR」との違いについても解説します。
01サステナビリティとは持続可能性という意味
サステナビリティ(sustainability)とは、「sustain=持続」と「ability=能力、可能性」を組み合わせた言葉で、日本語では「持続可能性」と訳されます。「サステナブル=持続可能な」というように使われることもあります。
これは、環境問題に注目が集まる中で、1980年に国際自然保護連合(IUCN)が発信した「世界保全戦略」内で初出した「持続可能な開発」という考え方から発展したものです。 「持続可能性」とは、我々人間の活動が地球環境を含む多角的かつ長期的な視野に立った上で、期限なく継続して行えるものかどうかを問う概念です。 例えば、魚の生息環境を破壊し尽くしてしまうような漁は、しばらくは漁獲量が多くなるでしょうが、いずれ水産資源が減少し漁獲量は激減してしまいます。あるいは、森林が再生するよりも早く木材を切り出しすぎれば、その地域は砂漠化し、一切木材が取れない不毛の地になってしまいます。これらは持続可能性があるとは言えません。 一方で、資源を使い尽くさず、次の世代でも同じような行為が行えるようなものは持続可能性がある、と考えられます。
サステナビリティは、一般的に「環境・経済・社会」の三軸で考えられます。ここでは、その考え方を見ていきましょう。
環境
もっとも意識しやすいのが環境の問題ではないでしょうか。 ある活動にサステナビリティがあるか否かは、「次世代でもそれを行えるか」を基準に考えます。 例えば、再生可能エネルギーや環境負荷を低減した素材の利用などは、サステナブルであると言えるでしょう。 カーボンニュートラルなどの考え方にも代表されるように、まったく資源を利用しないことや、環境に一切負荷をかけないようにすることを命じているわけではありません。 「自分たちの世代ですべて使い切らないように、次世代でもそれができるように、考えながら使う」という考え方なのです。
経済
「持続可能(サステナブル)な開発」とは、開発しないことや、経済や社会が発展しないことではなく、企業活動が環境や社会に与える影響を踏まえたバランスのとれた経済成長を目指すことを指します。 企業による際限のない経済活動は環境へ大きな影響を与えます。特に短期的な視点で利益追求に走ってしまうと、周囲の環境汚染、労働者の権利侵害、貧困からの搾取などに無頓着になってしまいがちです。 そこで、企業がサステナビリティのある活動をすることや、そういった持続可能な活動を行っている企業へ投資家が投資することなどが重要であるとされています。
社会
社会的な持続可能性とは、人権の考えをベースに私たちがより幸福な社会を築いていくため、企業活動を行う際に社会に及ぼす影響を考慮することを求める考え方です。人種間問題やジェンダー差別、教育格差や貧富の格差などは解消すべきものですが、企業の活動によってはこれらが助長されることもあり得ます。 社会的に不公平な状態を維持するのは、持続可能性があるとは言えません。 こういった社会の不平等を、地域だけではなく、よりグローバルな視点で解消していくことが重要であるとされています。
02サステナビリティ経営とは
最近では、サステナビリティを経営に取り入れた、「サステナビリティ経営」も注目を集めています。 これは、前述した「環境・社会・経済の持続可能性」を経営に取り入れた考え方のことです。 狭義には事業そのものの持続可能性を意味することもありますが、そのような使い方は稀でしょう。 大抵は、企業の事業活動が環境・社会・経済に与える影響を考え、サステナブルな状態に近づける経営のことを意味します。 事業活動によって、環境を破壊したり、社会に不平等をもたらしたり、経済的な悪影響を与えず、持続的に事業を行えるか否かを指標にします。 近年では、これらの企業の持続可能性を「GRIスタンダード」といった数値で評価し、投資家が投資先として優れているかどうかの指標にすることもあるほどです。
03CSRとSDGsとの違い
サステナビリティという言葉は、CSRやSDGsといった言葉と並行して使われるケースも多いものです。 ここでは、これら似た概念をもつ言葉の意味の違いについて確認してみましょう。
CSRとは
CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、「企業の社会的責任」という意味です。 企業は自社の利益だけではなく、顧客やユーザー、あるいは従業員や株主、そして地域社会の住民など、関係するさまざまなステークホルダーに対して責任を追っている、という考え方です。 環境や社会へ配慮しつつ、どうやって自社の活動と両立させていくか、という観点で語れることが多いでしょう。 企業には果たすべき社会的責任がある、と論じた点ではサステナビリティと関連が深いものです。 CSRは「責任がある」としているのみですが、サステナビリティの考え方では「企業は持続可能な開発を行うべきである」と、どのような責任なのかを明示している点で異なっています。
SDGsとは
SDGsとは、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。サステナブル=持続可能な状態とはどういう状態を示すのか、それが達成された状態とはどういう状態なのかを具体化したものです。 ここでは目標となる17の項目と169のターゲットが示されており、加盟国は採択された翌年の2016年から2030年までにこれらの達成を目指します。
具体的な17の目標は以下のとおりです。
- 1.貧困をなくそう
- 2.飢餓をゼロに
- 3.すべての人に健康と福祉を
- 4.質の高い教育をみんなに
- 5.ジェンダー平等を実現しよう
- 6.安全な水とトイレを世界中に
- 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 8.働きがいも経済成長も
- 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10.人や国の不平等をなくそう
- 11.住み続けられるまちづくりを
- 12.つくる責任つかう責任
- 13.気候変動に具体的な対策を
- 14.海の豊かさを守ろう
- 15.陸の豊かさも守ろう
- 16.平和と公正をすべての人に
- 17.パートナーシップで目標を達成しよう
▶︎参考:外務省「JAPAN SDGs Action Platform」
サステナビリティとSDGsの関係
前述のSDGsの目標はそれぞれ、サステナビリティが目指す「社会」「経済」「環境」と深く関わっており、SDGsはサステナビリティを実現するための具体的な目標という位置づけです。
1~6は、貧困や国による格差、ジェンダー格差をなくす「社会」に対する目標です。 7~12は、経済的な発展によってすべての人々に安全な生活を提供する「経済」に対する目標です。 13~15は、気候変動に関する問題の解決や生物多様性などを守る「環境」に対する目標です。 16と17は少し例外的で、これらの目標を加盟国全体で達成していこう、という確認のようなものです。SDGsは地球上のほぼすべての国が採択した国際的な目標であり、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことが宣言に盛り込まれています。
サステナブルな社会の実現のために、より具体的に示された国際的な指標が、SDGsであると認識しておけばよいでしょう。
04サステナビリティ経営に取り組む企業事例
サステナビリティを経営に取り入れた取り組みを行うことは、もはや企業活動において避けては通れなくなってきています。 それでは、実際にサステナブルな取り組みを行っている企業の事例を確認してみましょう。
株式会社ユニクロ
アパレルブランドのUNIQLOを運営する株式会社ユニクロは、サステナビリティに関する取り組みをいち早く行っていた企業としても有名です。 かつてはファストファッションの代名詞的存在として、大量消費を象徴するような側面があり、また途上国での不公平な労働搾取が問題視された時期もありました。 ですがそれらの問題に向き合い、全社を挙げてサステナブルな社会の実現に向けた取り組みを行っています。
- ・途上国や貧困国、難民キャンプへの衣料支援
- ・雇用の平等化や店舗での難民雇用による雇用安定
- ・環境負荷が低い資源を使った衣服の製造
主な取り組みは上記のようなものが挙げられます。
▶︎参考:THE POWER OF CLOTHING | 服のチカラを、社会のチカラに。 UNIQLO Sustainability
ヤマハグループ
ヤマハグループは、自社内で「ヤマハグループサステナビリティ方針」を策定し、その方針に従ってサステナブルな社会の実現を目指した活動を行っています。 代表執行役員社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、その下部組織に「気候変動部会」「資源循環部会」「調達部会」「人権・DE&I部会」「社会・文化貢献部会」といった部会を設けてそれぞれが専門分野をモニタリングしています。 取り組むべき課題の策定には“ステークホルダーの期待や社会要請”が謳われており、そういった点では前述のCSR(企業の社会的責任)にも叶う活動であると言えるのではないでしょうか。
伊藤園株式会社
お茶製品が有名な伊藤園も、サステナブルな取り組みを打ち出している企業です。 “本業を通じて国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献”とあるように、さまざまな自社の取り組みに対して、SDGsにおけるどの項目やターゲットに対応する取り組みなのかを解説しています。 中でも、同社は食品を扱う企業であるため、持続可能な国内農業の実現に向けた取り組み(大規模な耕作放棄地を茶園に造成することのサポートなど)は注目すべき点ではないでしょうか。
05サステナビリティ経営を推進するSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級8,500本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は4,000社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級8,500本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
サステナビリティ経営を推進するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、サステナビリティ経営を推進する授業を紹介いたします。
変化する消費者へ届ける付加価値としてのSDGs -考え方と事例-
このコースでは、SDGsとビジネスを両立させた企業の事例を紹介しながら、時代背景や生活者(消費者)の価値観の変化と、企業に求められるこれからの考え方について解説します。
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株式会社YRK and 取締役 東京代表
マーケティングプランナー、ソーシャルプロダクツ事業コンサルタント 1989年4月 株式会社ヤラカス舘(現 株式会社YRK and)入社。マーケティングプランナーとして、ヘルスケアメーカーのカテゴリーマネジメントやストアマーケティング、スーパー・ドラッグストアの売場開発などを得意とする。 2017年より、ソーシャルプロダクツのマーケットプレイスを運営する株式会社SoooooS.カンパニー取締役。2019年より一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会事務局長として、ソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、企業によるSDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用に取り組んでいる。
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株式会社Drop SDGsコンサルタント
新卒より8年間働いた会社でインド、インドネシア、タイなど7カ国の販路開拓し、海外展開に奔走。2019年8月に退職。翌月よりサハラ以南の現状を自分の目で確かめたく、アフリカのセネガルに1ヶ月滞在し、プラごみ問題の解決に奔走。帰国後は社会課題を解決するスタートアップ企業 株式会社Dropの創業メンバーとしてジョイン。 これまで企業・青年会議所・教育機関などでSDGs研修を開催し、これまで計40万人のビジネスパーソン向けにSDGs研修を実施。YouTuberとしても、ビジネスパーソン向けにSDGsの基本知識から取り組み方法について発信中。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
SDGsで商品力を強化する
、第1回目の授業では会社の商品をサステナビリティと結びつけることの重要性について、生活者調査のデータをもとに紹介します。第2回目の授業ではその生活者調査のデータから導かれた、商品に付加価値を生むポイントについて事例にそって解説していきます。そして、授業の最後には自社の商品に存在するサステナビリティの見つけ方や、それをビジネスの現場で顧客や関係者へ伝えていくためのポイントについて紹介します。
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株式会社YRK and 取締役 東京代表
マーケティングプランナー、ソーシャルプロダクツ事業コンサルタント 1989年4月 株式会社ヤラカス舘(現 株式会社YRK and)入社。マーケティングプランナーとして、ヘルスケアメーカーのカテゴリーマネジメントやストアマーケティング、スーパー・ドラッグストアの売場開発などを得意とする。 2017年より、ソーシャルプロダクツのマーケットプレイスを運営する株式会社SoooooS.カンパニー取締役。2019年より一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会事務局長として、ソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、企業によるSDGsの本業化・ブランディング・コミュニケーション活用に取り組んでいる。
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06まとめ
消費者や従業員の意識の変化、投資家の投資先決定の判断、国から課せられるCO2排出制限などの環境目標等、もはや企業はサステナビリティから目を背けることはできなくなっています。 取り組みが遅れると社会から取り残されるばかりか、業績悪化にもつながりかねません。一方、サステナビリティに関する活動にしっかりと取り組んだうえでアピールできれば、それは取り組みができていない企業から、頭一つ抜けて先へ進むことができる、とも言い換えられるでしょう。 ぜひこの機会をチャンスと捉え、社内のサステナビリティを検証・推進してみてください。