公開日:2021/05/28
更新日:2024/09/06

コンピテンシーの意味とは|スキルとの違いや活用における注意点を紹介

コンピテンシーの意味とは|スキルとの違いや活用における注意点を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

近年、人事評価や採用、人材育成に少しずつ取り入れられてきているコンピテンシーですが、従来の職能資格制度との違いや、特徴などをしっかりと理解している人はまだそれほど多くありません。この記事では、コンピテンシーの意味から企業での適切な活用方法まで詳しく解説します。

 

01コンピテンシーの意味とは

“コンピテンシーの氷山モデル

コンピテンシー(competency)とは、ある状況または職務において高い業績をもたらす類型化された行動様式という意味の言葉です。簡単にいうと、優秀な社員の行動パターンのことです。

コンピテンシーは表面的に見えている具体的な行動ではなく、その行動につながる「性格」や「動機」、「価値観」といった要素を重視します。そのため、上記のように氷山に例えられることが多いです。

▶︎参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構|人材育成に有効とされているコンピテンシーとは、どのようなものですか?導入するメリットは何でしょうか?

▶︎参考:職業能力評価基準導入マニュアル

コンピテンシーが注目された背景

コンピテンシーが日本で注目されたのは、1990年代のバブル崩壊がきっかけでした。年功序列が見直され、成果主義の人事評価を導入する企業が増え、その結果コンピテンシーが注目されるようになったのです。ただし、当初のコンピテンシーは可視化できている行動に焦点を当てており、正しく活用されていませんでした。

近年でも、新型コロナの影響や働き方改革によってリモートワークを導入する企業も増え、その結果として成果主義に評価比重をおく企業が多くなってきました。また、人口減少による人手不足も相まって、生産性の向上は企業にとって死活問題となりつつあります。このような社会背景の中で、優秀な人材の行動特性を分析し、人材開発に役立てようとする企業が増え、コンピテンシーが再注目され始めているのです。

 

02コンピテンシーと類似用語の違い

コンピテンシーと似た言葉に「コア・コンピタンス」「スキル」などの言葉が存在します。これらは意味が似ているため、混同して使われてしまいがちです。この章では、コンピテンシーと関連する語句の意味やコンピテンシーとの違いについて解説します。

コア・コンピタンスとの違い

コア・コンピタンスとは、G・ハメルとC・K・プラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められた概念で、他社が真似することのできない核となる組織の強みを指します。

つまり、コンピテンシーは個人の行動特性を意味する言葉ですが、コア・コンピテンシーは組織としての強みを示すという違いがあります。

▶︎関連記事:コアコンピタンスとは?見極めるための5つの視点とその手順について解説する

スキルとの違い

従業員の持つ専門的な能力や技能がスキルです。例えば、営業力や開発におけるエンジニアリングの技術力などが挙げられます。スキルは「能力や技能そのもの」を指すのに対して、コンピテンシーは「能力や技能を発揮する力」を指します。そのため、コンピテンシーはスキルを活かして成果を出すための力と考えると良いでしょう。

アビリティとの違い

アビリティも、スキルと同様に「能力」や「技量」を意味する言葉ですが、先天的に与えられた能力という意味合いが強いです。そのため、コンピテンシーとの違いとしては、先ほど解説したスキル同様に、能力や技能そのものがアビリティ。アビリティを活かして成果を出すための力がコンピテンシーと言えます。

ケイパビリティとの違い

ケイパビリティは、企業やサービスが保有している組織的な強みや能力を意味する言葉です。コンピテンシーとの違いは、組織を対象にした言葉か、個人を対象にした言葉かという点が挙げられます。一方で、コア・コンピタンスとケイパビリティは、いずれも組織の優位性を意味します。ただし、コア・コンピタンスは技術的な優位性で、ケイパビリティは組織力のような可視化しにくい強みというニュアンスで使われます。

▶︎関連記事:ケイパビリティとは?意味からビジネスでの活用方法まで詳しく解説

 

03コンピテンシーの活用方法

コンピテンシーは企業活動において、具体的にどのような場面で活用されているのでしょうか。 主に次の3つが挙げられます。

  • ・人事評価
  • ・採用面接
  • ・人材育成

人事評価、採用面接、人材育成の各プロセスにおいて、コンピテンシーは重要な役割を果たします。組織はこれらのプロセスを通じて、適切な人材を確保し、従業員の能力やスキルを発展させることで、業績や競争力を向上させることができます。ここではそれぞれについて具体的に解説していきます。

人事評価

コンピテンシーの活用方法として最も一般的なのが、人事評価制度での活用です。 組織に所属する個人、またはグループごとに目標を設定・申告し、その進捗や達成度で評価を定めるMBOや、上司や同僚、部下などの複数の立場から、従業員を多面的に評価する360度評価など、近年注目されている人事評価制度は多数あります。 その中でもコンピテンシーは、評価項目に追加することで、今まで曖昧に評価していたことに明確な基準を設けることができるため、評価のブレを少なくし、従業員に納得感のある人事評価ができることが特徴的だと言えるでしょう。

採用面接

コンピテンシーは、採用面接の場で活用することで採用基準を明確にし、応募者の行動だけではなく、その根底にある思考を把握することができます。 具体的には、応募者に自分の成果を聞いたあとに、その行動の理由を掘り下げて質問することで、その人の思考を把握するのです。 把握した思考・行動を担当職務のコンピテンシーと照らし合わせることで、成果を出すための行動特性を持っているかどうかを判断できるでしょう。

人材育成

どのような思考のもと、どのような行動を取れば成果につなげられるかをテーマにした「コンピテンシー研修」を行い、ハイパフォーマーの行動特性を従業員に理解してもらうことで人材育成につなげることができます。 コンピテンシー研修時に、従業員にはどのような行動や思考を身につけたいかを目標を設定してもらい、定期的に振り返りの機会を持つとよいでしょう。

 

04コンピテンシーを活用するメリット

コンピテンシーを活用するメリットは、人事評価・採用面接・人材育成それぞれの立場で異なります。ここでは、それぞれの立場で活用するメリットについてご紹介します。

公平な人事評価ができる

従来の職能評価制度では、評価者が上司となるため、評価に主観や思い込みが含まれやすく、従業員全員にとって必ずしも公平なものではありませんでした。 しかし、コンピテンシーを取り入れることで、評価基準が定まるため、公平な人事評価を行うことができます。その結果、離職率の低下などにもつながるでしょう。

採用後のミスマッチが減る

コンピテンシーを採用に用いることで、企業の望む人材像に適した人が入社するようになるため、採用後のミスマッチが減り、戦略的な人材配置も行いやすくなるでしょう。 これにより、従業員が、能力をより発揮しやすい環境を整えることができます。

効率的な人材育成が可能

コンピテンシーでは、実際に高い成果を上げている従業員の行動特性を基に人事評価を行うため、どのような能力開発をし、どのような行動を取れば良いかが従業員にとってわかりやすくなっています。 高い能力を持っていながら、なかなか成果を上げられない従業員の場合、コンピテンシー導入をきっかけに、成果の飛躍的な向上が期待できるのです。

 

05コンピテンシーを活用する際の注意点

良いことしかないように思えるコンピテンシーですが、活用する際には注意点もあります。そもそもコンピテンシーを特定することが難しかったり、行動特性を画一的にするのは時代の潮流と逆行しているのではという疑問もあります。この章では、コンピテンシーを活用する際の注意点について紹介します。

全社員の基準として人事評価には導入しにくい

コンピテンシーを人事評価基準にすることで、全ての社員が優秀な社員の模倣をすることになり、企業としての生産性や業績が向上すると思われることが多いですが、それぞれの社員が担う業務や役割は異なります。

例えば、営業として優秀な社員のコンピテンシーを、バックオフィスの経理が模倣した場合に、あまり効果を得られるとは思えません。このように、優秀な社員の定義を全社員共通で行うことがそもそも難しいというのが、コンピテンシーを活用する際の注意点の1つです。

変化に対応しにくい

コンピテンシーは、基準が明確で企業の中でも細分化されている分、環境が変化した際に柔軟な対応をするのが難しいという特徴をもっています。評価基準の頻繁な変更による現場の混乱は、ある程度予想しておいた方が良いでしょう。

特に、成長著しい企業において優秀な社員の定義は数ヶ月単位で変わることがあります。業績にコミットする責任感をコンピテンシーにしていた企業が、数ヶ月後には社員数の急激な増加によって、社内調整が求められ、尊重の精神を持っている人を優秀な社員と定義することも珍しくないのです。

自律・多様性と逆行する

コンピテンシーを評価基準にしたり、理想の人材像とすることは、ある意味で画一的な人材を是としているように映ります。キャリア自律・多様性などを標榜する企業が、一方でコンピテンシーに囚われ、画一的な人材像を社員に求めるようなことがあると、相反する理想を場面ごとに都合よく使い分けているように見えてしまいます。

そのため、「多様な意見を尊重する」・「自身の発言・行動に責任感を持つ」といった、社会人として誰にでも求められる行動特性の中から、自社が特に大事にしたいものをコンピテンシーとする企業も多いです。

 

06コンピテンシーを導入する手順

コンピテンシーを導入する手順

コンピテンシーを企業で導入する手順を4つのステップに分けてご紹介します。

ハイパフォーマーへのヒアリングを行う

自社で優秀な成果を上げているハイパフォーマーを特定し、ヒアリングを行って他の従業員との差を生みだしている行動特性を見つけます。 ヒアリングは職種・役割ごとに行い、収集した行動特性を基にハイパフォーマーの思考と行動にどのような共通点があるのかを分析しましょう。

コンピテンシーモデルを作成する

ハイパフォーマーの思考と行動の共通点を基に、他の従業員のモデルとなる人物像を作成しましょう。 理想とされるモデルのタイプは、次の3種類に分けられます。

理想型モデル

企業が求める人材像に基づいて設計されたモデルで、企業理念や事業内容にマッチしたモデルとなるため、小規模の企業や、ハイパフォーマーが存在しない場合でも容易に構築できます。 理想を追求しすぎると、現実とかけ離れたモデルとなってしまうことに注意が必要です。

実在型モデル

実在するハイパフォーマーに基づいて設計されたモデルで、コンピテンシーを導入する多くの企業で採用されています。 ハイパフォーマーの思考や行動が、他の従業員で再現させるのが難しい場合は、評価モデルとして採用するかどうかを検討し直す必要があるでしょう。

ハイブリッド型モデル

理想型モデルと実在型モデルを融合させて設計されたモデルで、良い部分は活かし足りない部分は補完し合うため、最も優れたモデルと言われます。 ハイパフォーマーにとっても学ぶことの多いモデルとなるでしょう。

コンピテンシーの項目を作成する

コンピテンシーにはテンプレートがないので職種・役割ごとに評価項目を作成しますが、1から全てを作成するのが難しいため、いくつかの有名な評価項目を参考にするのが良いでしょう。 ライル・M・スペンサーとシグネ・M・スペンサーが分類した「コンピテンシー・ディクショナリー」や、公益財団法人日本生産性本部の「コンピテンシー評価モデル集」などを参考にするのがおすすめです。

コンピテンシーにレベルを設定する

コンピテンシーの項目を定めたら、項目ごとに従業員の行動内容によって5段階のレベル分けをします。

レベル1:受動行動

受動行動のレベルでは、個人は新しい状況や課題に対して消極的な態度を示します。彼らは、状況に反応するだけでなく、自ら進んで取り組もうとはしません。このレベルの人々は、通常、問題解決やイノベーションのための積極的な努力をせず、変化に適応する能力が不足しています。具体的な行動の段階としては、上司などの指示に従って業務を行うなどが挙げられます。

レベル2:通常行動

通常行動のレベルでは、個人は定型的なタスクやプロセスを遂行する能力を持っていますが、新しいアイデアを生み出すための積極的な努力はしていません。彼らは、ルーティーン業務を効率的に行うことができますが、大きな変化や革新的なアプローチには取り組まず、最低限の業務を行う段階と言えます。

レベル3:能動行動

能動行動のレベルでは、個人は自ら進んで問題解決やプロセス改善に取り組みます。彼らは、定型的な方法だけでなく、新しいアイデアやアプローチを探求し、実装する意欲があります。彼らは、自己の成長や業務の効率化に関心を持ち、それに向けて積極的に努力します。

レベル4:創造行動

創造行動のレベルでは、個人は革新的なアイデアを生み出し、新しい解決策を見出す能力を持っています。彼らは、問題や課題に対して常に新しい視点やアプローチを探求し、他の人々との協力や情報を活用して創造的な解決策を見出します。

レベル5:パラダイム転換行動

パラダイム転換行動のレベルでは、個人は従来の枠組みや慣習にとらわれることなく、業界や組織全体の枠組みを変える可能性のある革新的なアイデアやアプローチを追求します。彼らは、大胆でリスクを冒すことを恐れず、従来の思考パターンを超えて、革新的なソリューションを提案し、実現します。


 

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07まとめ

コンピテンシーとは、ハイパフォーマーに共通して見られる、高い成果につながる行動特性で、企業がしっかりと構築すれば人事評価や採用面接、人材育成などさまざまな場面で活用できることがわかりました。 時間や手間がかかり、変化に対応しにくい側面を持ちますが、全社員が平等でわかりやすい目標に向かうことができ、平等な評価を得られるのが大きなメリットと言えるでしょう。 ぜひこの記事を参考にして、積極的にコンピテンシーを導入してみてください。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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