公開日:2021/07/07
更新日:2023/11/29

パラレルキャリアとは? 概要と推奨する場合の企業の留意点について解説 

パラレルキャリアとは? 概要と推奨する場合の企業の留意点について解説  | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

近年「パラレルキャリア」という概念が注目を集めるようになっています。本業をもちながら余暇を利用して、本業以外の第2の活動を行うという新しい働き方のことです。当記事ではパラレルキャリアの概要と、企業が推奨する場合の留意点について解説します。

 

01パラレルキャリアとは

「パラレルキャリア」とは、経営学者であるP.F.ドラッカー氏が提唱したことにより、世に知られるようになりました。「パラレル(parallel)」とは日本語に訳すと「並列」「平行」という意味の言葉です。ドラッカー氏は著書の中でパラレルキャリアとは「本業をもちながら、第2の活動すること」とまとめています。エン・ジャパンによる「パラレルキャリア/副業」実態調査によると、パラレルキャリア/副業に取り組んでいる人の35%は新型コロナウイルス流行後に開始したているそうです。この第二の活動についての定義は広い意味をもち、「副業」との区別を明確にすることで理解が深まります。

“パラレルキャリア/副業」実態調査”
参考:『ミドルの転職』ユーザーアンケート― | エン・ジャパン

副業との違い

副業とは、収入を増やすために、本業とは別の仕事をすることをいいます。本業の勤務終了後や、休日に行うアルバイトがこれにあたります。一方パラレルキャリアは、必ずしも収入が目的ではない点に副業との違いがあります。パラレルキャリアは起業や他企業への所属など、結果として報酬が発生する場合もありますが、ボランティア活動など無償の活動も含まれる点が副業との違いです。

 

02パラレルキャリアが注目される背景

パラレルキャリアはなぜ注目されるのでしょうか。近年、大企業の経営破綻や働き方の多様化を要因として、「仕事」に対する価値観が大きく変化しています。それに加え、政府主導の副業・兼業の推進の動きが拍車をかけたことが大きな要因と考えられます。

副業・兼業推進の動き

厚生労働省が2018年に策定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にこのように書かれています。

 

「自身の能力を一企業にとらわれず幅広く発揮したい、スキルアップを図りたいなどの希望を持つ労働者がいることから、こうした労働者については、長時間労働、企業への労務提供上の支障や業務上の秘密の漏洩を招かないように注意しつつ、雇用されない働き方も含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要である」

 

 
参考:副業・兼業の促進に関するガイドライン 厚生労働省

企業寿命の短命化

現在良好な経営状態である企業も、数年先にはどうなっているか分からないというほど、現代の環境変化はめまぐるしいものがあります。安定した大企業に就職したから安泰だという考え方は、過去のものとなっています。収入やキャリアアップに関して、ひとつの企業に依存するのではなく、第二、第三の活動を通じてそれらを得る方法を考えるのが現実的であるといえます。

働き方の多様化

終身雇用や年功序列といった、かつての日本の働き方に関する考え方は大きく変化を遂げ、定年まで一つの会社で勤めることを美徳とする価値観は、現在ではかなり薄れています。転職に対するマイナスイメージはなくなり、フレックスタイム制度やリモートワークの普及など、働き方のスタイルは多様化の一途をたどっています。こうしたことを背景に、働き方に対する考え方も多様化し、パラレルキャリアが注目されるようになりました。

 

03パラレルキャリアのメリット

ここではパラレルキャリアを推奨した場合に、企業が得られるメリットについて紹介していきます。企業側のメリットとしては、従業員が本業以外の活動で得たスキルや経験により能力アップを図り、それを自社の事業に還元してくれることが挙げられます。

従業員の自主性を促す

従業員が本業と本業以外の活動を両立させるためには、自己管理と時間管理を高いレベルで行う必要があります。パラレルキャリアを推奨することは、従業員のセルフマネジメント能力を高め自主性を促すことにつながります。本業においても仕事の効率化が図られるといったメリットをもたらすでしょう。

コストをかけず能力開発が図れる

従業員が本業以外の活動で新たな能力や知識を得ることは、企業にとってはコストをかけずに能力開発が図れている状態であるといえます。新たな知識やスキルを得ることは、本業だけでは獲得できない新たな視点をもつことにつながります。こうした新たな視点は創造的なアイデアとなり、新規事業立ち上げのきっかけになるといった、思わぬ相乗効果を生む可能性を秘めています。

離職防止の効果

パラレルキャリアを推奨することは、本業以外の活動に価値を見出している従業員にとっては、その活動を会社が応援してくれていると感じるのではないでしょうか。パラレルキャリアを実現できる環境は、こうした従業員の満足度を高め離職の防止に効果を発揮すると考えられます。

社外の知識やノウハウが獲得できる

本業とは違う環境で経験を積むことは、本業だけでは獲得できない知識やノウハウ、人脈の獲得につながります。その経験を積極的に自社の事業にフィードバックしてもらうことは、企業にとって大きなメリットであるといえます。

 

04パラレルキャリアのデメリット

パラレルキャリアを推奨することによる企業のデメリットは、従業員が本業以外の活動に力を入れるあまり、さまざまな弊害をもたらすことにあります。労働時間や健康面への配慮など、新たな管理の手間が増えることも考えられます。

本業に支障をきたす

本業以外の活動は想像以上に時間や労力を消費し、心身に負担をかけます。自己管理がうまくできなければ体調を崩すなど、本業に支障をきたす可能性があります。企業としては本業が優先であることをはっきりと示し、パラレルキャリアにより本業がおろそかになっている従業員がいないか、常に気をつけておく必要があります。

人材流出のリスク

パラレルキャリアの活動が軌道に乗ることで、それを本業に起業したいと考える従業員が出てくる可能性があります。また本業とは違う環境に身を置くことで、自社の悪い部分が目について不満を感じたり、新たに得た人脈から刺激を受け、転職を検討するといったことも十分に考えられます。パラレルキャリアの推奨は人材の定着と離職、プラスとマイナスに作用するものであると認識しておく必要があります。

情報漏洩のリスク

情報漏洩のリスクについては、パラレルキャリアの人材を外部から受け入れる場合と、外部に送り出す場合、双方において注意が必要です。他社のノウハウや知見が自社の業務に役立つ可能性は十分にあります。しかしそれ以上に、情報漏洩のリスクがあることを認識し、対策を講じることが必要となります。

制度の改定や管理など手間が増える

パラレルキャリアを推奨するにあたって、制度の改定や管理の手間が増えることは避けられません。まず報酬が発生する場合の副業との線引きを規定化することが必要になります。パラレルキャリアを承認することで、従業員個人がどのような働き方をしているのか、会社として把握して管理する必要があり、その手間が増えることも予測されます。

 

05パラレルキャリアを推進するにあたり企業が留意すべきこと

パラレルキャリアの推進は、自社だけでは獲得できないノウハウや知識を得ることにつながり、企業にとって大きなメリットをもたらします。しかし弊害もあることは十分に認識する必要があります。起こりうる弊害を未然に防ぎ、トラブルが発生した際は的確に対処できるように事前の準備が必要となります。

就業規則等への明示

パラレルキャリアとして会社が認める範囲を、就業規則等で明示することが必要です。他社での就業を認める場合は、業界や業種を限定したり、申請・手続きの手順を決めなくてはなりません。また禁止事項や違反した場合の罰則についても、明確に定めなくてはなりません。本業に支障をきたしている状態を明示し、そのように判断された場合は中止を命ずることができるような規定が必要となります。

競業避止・守秘義務の徹底

競業避止の観点から、自社の利益を損なうような活動については中止命令や制限ができるような規定を定めておく必要があります。また守秘義務に関しても誓約書や秘密保持契約といった書面の取り交わしをしておき、違反した際の罰則を明示しておかなくてはなりません。

面談等で健康面に配慮する

パラレルキャリアの従業員には定期的な面談等で、本業以外の活動状況を把握することが望ましいといえます。パラレルキャリアの活動は想像以上にエネルギーを消費します。十分な睡眠が確保できているか、過重労働になっていないかなど、健康面の確認を定期的に行うことが望ましいといえます。

 

06パラレルキャリアを学べるSchooのオンライン研修

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  • ライフシフトラボ キャリアコーチ

    大学卒業後、『流通革命』『価格破壊』を標榜していた流通業界最大手のダイエーに入社。 高度にマニュアル化された販売業務を行う一方、個人の能力が最大限に発揮出来る環境に興味が湧き、創業6年目のセプテーニに中途入社第一号社員として入社。約4年の在籍で社員数が5倍に成長したことから、個人の成長と会社の成長はリンクすることを実感。 その後、リクルートキャリアに転職。約15年間在籍し、数々のグループ(大手製造業・経営幹部クラス人材・九州支社など)の営業責任者を歴任。「人」によって企業が変わること、「働く喜び」によって個人が変わることを実感。 現在は、スタートアップ企業に特化した転職エージェントに従事。大手VCと連携し、累計約100名のCxOポジションに紹介実績有り。 自分自身も50代を目前に控え、正社員転職以外の選択肢が現実的に求められる中、「45歳からのキャリア自律支援」を「実践型ビジネススクール形式」で提供するライフシフトラボの事業可能性に強く共感し、参画。

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07まとめ

パラレルキャリアの概要と、企業が推奨する場合の留意点について解説してきました。企業が継続的に発展していくためには、多種多様な人材の活用が必要不可欠となります。変化の激しい時代、競争力を強化し生き残っていくためにはデメリットを恐れず、新たな人材の活用方法を検討する必要があります。自社に合った形のパラレルキャリアについて、検討してみる価値があるのではないでしょうか。

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  • 登壇者:田中 研之輔 様
    法政大学キャリアデザイン学部 教授

    一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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