公開日:2021/07/20
更新日:2023/07/24

評価制度の目的とは?主な種類と最新のトレンドを企業事例とともに解説

評価制度の目的とは?主な種類と最新のトレンドを企業事例とともに解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

評価制度の正しい運用は、企業の成長や従業員のモチベーションにも繋がる重要な課題です。時代の変化とともに評価制度も変化しており、自社に適した制度を取り入れることが大切です。本記事では、評価制度の主な種類や最新のトレンドを企業事例とともに解説します。

 

01評価制度とは

評価制度とは、従業員の能力や企業への貢献度を評価する人事制度のことです。従業員のパフォーマンスや労働生産性を、企業の目標と比較して、一定の期間やルールに従って評価します。 評価制度は、正しく運用することで企業の成長に繋げることができるため、多くの企業で導入されています。その一方で、透明性がないなど評価制度に問題があると、従業員のモチベーションを下げることになりかねません。

人事評価制度には、「報酬制度」・「評価制度」・「等級制度」の3要素があります。この章ではそれぞれの要素がどのようなものか紹介します。

人事評価制度の3要素

報酬制度

報酬制度とは、従業員の報酬を決める制度のことです。等級制度によって年収幅が決まり、評価制度によって年収の上がり幅が決まります。社員が報酬制度に納得していないと離職にも繋がる危険性があるので、評価制度と報酬制度に対して社員が納得しているものになっているかは人事が注視しなければならないポイントと言えるでしょう。

評価制度

評価制度とは、各従業員の貢献度をどのように評価するか定めた制度のことです。会社の方針によって、どのような人を評価するのか、どれくらい評価するのかを決めます。そのため、この評価制度は会社が恣意的に決めて、その会社の色を出すべきところと言えます。

等級制度

等級制度とは、従業員が保有するスキルや職務、役割に応じて区分し、序列化する制度のことです。等級制度は概ね7段階で分けられ、多くてもそれをさらに3段階に分けた計21段階で設定されます。等級の幅が少なすぎると、次の等級に昇格するのが大変になり、等級の幅が多すぎると違いが説明できなくなってしまうという理由から、基本的には7段階の等級で設定している企業がほとんどです。

 

02評価制度導入の4つの目的

企業が評価制度を導入する4つの目的について解説します。

処遇の決定

年齢給と職能給の合算で給料を決める従来の年功序列ではなく、従業員の能力や業績に合わせて処遇を決定する場合、客観的な基準に基づいた評価制度が必要になります。従業員の今までの業績や今後の期待値などを序列的に示すことで、賃金やボーナスを決定することができます。

人材の育成

評価制度を導入することによって取り組むべき課題が明らかになったり、それを活用して上司が部下をサポートしたりすることができます。評価制度の基準に透明性があると、従業員が自発的に成長機会を捉えるようになることも期待できるでしょう。

人員配置の最適化

従業員の能力や貢献度を客観的に評価することで、最適な人材配置が行えます。年功序列制度では、自動的な昇進により適材適所の人材配置が難しく、上司の判断に依存した評価は、主観が入って従業員一人ひとりの能力を正しく見定めることが困難になります。

生産性や業績の向上

企業が示す方向性を従業員が理解することで、生産性や業績を向上させることができます。そこで、評価制度を企業理念や経営方針と紐づけることにより、企業が求める人物像や進むべき方向を従業員に対して示すことになります。

 

03評価制度を導入するメリット

評価制度の導入は、企業や従業員にさまざまな変化をもたらします。ここでは、評価制度を導入するメリットについて解説します。

従業員のモチベーションを向上させる

評価制度を導入することで、成果や頑張りが給与や待遇に直結するため、従業員のモチベーション向上が期待できます。課題が見つかった場合でも、自発的に改善点を見つけて、積極的に取り組むようになることも考えられます。 従業員のモチベーションが向上すると、業務効率や生産性を高め、企業全体の利益へと繋がるでしょう。

企業と従業員の信頼関係を作る

透明性のある評価基準や、昇進・昇給の可能性を提示することで、従業員は安心して業務に携わることができます。また、定期的に行われるフィードバックや、個人の成長に繋がるサポートを受けることで、エンゲージメントが向上し、企業と従業員の信頼関係が生まれることでしょう。

自社の人材開発に繋がる

評価制度は、従業員の自主的な成長を促すだけでなく、自社の人材開発にも役立ちます。評価制度により、従業員一人ひとりの能力やスキルを把握することができ、課題点が明確になるでしょう。そこで、スキルアップのための研修プログラムを検討し、人材開発に繋げることができます。

 

04評価制度の設計方法

評価制度の具体的な設計方法について、株式会社キャスター取締役CROの石倉 秀明氏が登壇した「人事評価に”自社の基準”はあるか〜設計思想の考え方から運用まで考える」というSchooの授業をもとに紹介します。

  • 株式会社キャスター取締役CRO

    株式会社キャスター取締役CRO。(株)リクルートHRマーケティング入社。09年6月に当時5名の(株)リブセンスに転職し、ジョブセンスの事業責任者として入社から2年半で東証マザーズへ史上最年少社長の上場に貢献。その後、DeNAのEC事業本部で営業責任者ののち、新規事業、採用責任者を歴任し、2016年より現職。2019年7月より「bosyu」の新規事業責任者も兼任。

本授業は、研修・人材育成担当者限定であれば無料で視聴可能です。ご希望される方はこちらよりお申し込みください。

評価制度の目的を明確にする

評価制度をつくる前に、なぜ評価制度をつくるのかを明確にしましょう。給与を決めるための評価であれば、評価制度と連動した報酬制度も一緒に決める必要があるのです。

この評価制度の目的を定めるのは、本来人事の仕事ではなく経営の役割と言えます。そのため、経営との対話をしっかりと行いながら進めましょう。なぜ評価制度を作る必要があり、評価制度の方向性はどうするのかを経営と人事が対話しながら解像度を上げていくことで、目的にしっかりと紐づいた評価制度を作ることができます。

どのような人を評価するのかを決める

どのような人を評価するのか、どのような評価しないのかを決めることで、自社らしい評価制度を設計することができます。

成果を出した人を評価するのか、はたまたプロセスに重きを置くのか、それとも挑戦した人を評価するのかによって、評価制度の中身は大きく変わってくるためです。

どのような人を評価するのかは、組織が定めているパーパスやフィロソフィー(行動哲学)が源泉になるので、その意味でも経営との対話が重要と言えます。

どの程度の差をつけるのかを決める

評価制度をもとに、どのくらい報酬の差をつけるのかも決める必要があります。例えば評価をSからBまで置いた場合に、Sは20,000円の給与UP、Bは据え置きといったように、評価によってどの程度の差をつけるのかも決めておく必要があるのです。

この評価による報酬金額を公開している企業もあれば、公開していない企業もあります。公開すれば透明性は担保されますが、数年先の自身の年収をある程度推察できてしまうので、モチベーション低下や離職につながる危険性もあります。一方で、公開しない場合にもデメリットがあるのも事実です。報酬の透明性が担保されないということが、組織の透明性の無さと受け取る社員もいるためです。

そのため、組織としての方向性や企業理念なども含めて、制度をどこまで公開するのかも一緒に考える必要があるでしょう。

 

05評価制度の運用に必要なポイント

評価制度は作って1割、運用9割とよく言われます。それほどまでに運用が根幹を担うということです。

この章では、評価制度の運用に必要なポイントを株式会社キャスター取締役CROの石倉 秀明氏が登壇した授業の内容から紹介します。

評価の正しさよりも納得感が大事

評価制度の正しさを突き詰めてしまうことがありますが、「正しさ」は人ぞれぞれ異なります。そのため「正しさ」ではなく、評価する側も評価される側も、納得感を持っていることを重視しましょう。納得感がない状態を噛み砕くと、評価される側にとって評価が意外なものであったということです。いわゆるサプライズ評価と呼ばれる状態が納得感がない状態と言っていいでしょう。

例えば、課長が1次評価をして、部長が2次評価をし、最後に役員が3次評価をしてフィードバックが返ってくるケースを考えてみましょう。1次評価では課長は良い評価をつけましたが、部長はそこまで良いと思っていなかったので評価が下がり、そのまま役員にエスカレーションされたので、結果としての評価は低いものになってしまったとします。この場合、直属の上司は評価をしていて、普段もポジティブなフィードバックをしてくれていたのに、蓋を開けてみれば低評価をつけられているというサプライズが被評価者に発生しているのです。

このサプライズを無くすために、コミュニケーションが重要なのです。全ての評価者が同じ評価基準のもとで、メッセージを発信し続けるためのコミュニケーション。さらには、被評価者に過度な期待を与えないようなコミュニケーションなど、いかに評価に意外性を持たせないようにするかを考えると良いでしょう。

評価よりも目標設定を重視

サプライズ評価を無くすには、目標設定を重視しましょう。評価が曖昧な理由は、目標が曖昧で人によって異なる捉え方をしてしまう余地があるからです。

そのため、目標設定に時間をかけて、誰が見ても異なる捉え方をする余地がない目標設定をすることが大事です。捉え方に余地がないと目標設定とは、測定可能な目標設定のことを言います。ここでいう測定可能というのは売上や受注数のような数値目標はもちろんですが、報告書を期日までに提出するといったようなYes/Noで測定できるものも含みます。大事なことは解釈の余地が人によって変わらないということです。

そして、この考え方のもとでは、「結果以外も評価する」のような余地を与えてしまっている目標設定は、あまり良いものと言えません。結果以外も評価するというのは、一見メンバーのために解釈の余地を残しておいて、結果が出なくてもプロセスを頑張っていたら評価してあげようという優しさに見えます。しかし、この解釈の余地こそがサプライズにつながり、結果としてメンバーにとっては優しくない評価となってしまうのです。

評価したい人がしらけないことが重要

全員にとって満足のいく評価制度はありません。なぜなら、評価が低い人や給与が下がる人が不満を持つことは避けられないからです。そのため、高く評価をした人がしらけていないことが重要です。もし、高く評価した人であっても不満を持っているのであれば、その評価制度は間違っていたり見直す必要があると言えるでしょう。

そして、この不満がさまざまな場所で起こっている場合も評価制度を見直した方が良いでしょう。また、その不満が評価したい人から来ているのか、評価しなくても良い人から来ているのか判断がつかない場合は、そもそも目的設定が曖昧な可能性があります。


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この授業では、このような具体的な指標を設計する前に必要な、「自社ならではの評価制度」の考え方と、制度を運用していく時に意識しておきたいポイントについて学ぶことができます。

 
  • 株式会社キャスター取締役CRO

    株式会社キャスター取締役CRO。(株)リクルートHRマーケティング入社。09年6月に当時5名の(株)リブセンスに転職し、ジョブセンスの事業責任者として入社から2年半で東証マザーズへ史上最年少社長の上場に貢献。その後、DeNAのEC事業本部で営業責任者ののち、新規事業、採用責任者を歴任し、2016年より現職。2019年7月より「bosyu」の新規事業責任者も兼任。

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06評価制度の主な種類と最新のトレンド

評価制度にはさまざまな種類があるため、自社に合った評価制度の導入が大切なポイントとなります。ここでは、評価制度の主な種類と最新のトレンドを紹介します。

評価制度の主な種類は3つある

評価制度の種類として、必ずと言っていいほど紹介されるのが以下の3つです。評価制度のスタンダードとして、多くの企業が採用しています。

目標管理(MBO)

目標管理(MBO)は、経済思想家のピーター・ドラッカーが提唱した評価制度です。個人やチームで設定した目標に向かって業務に取り組み、達成度に合わせて評価されます。 目標は達成までのプロセスも含めて具体的に設定するため、評価者にとっても評価がしやすいというメリットがあります。また、個人の目標達成を企業の目標達成に繋げることができ、企業への貢献度を測ることも可能です。

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、パフォーマンスの高い従業員に共通する行動特性を評価基準に落とし込み、従業員を評価していく制度です。優秀な従業員の行動を観察したり、インタビューをしたりして、行動や思考の傾向を調査・分析分析します。 コンピテンシー評価により、企業が求める人物像や明確な目標が示させれるため、従業員の意識を高めることが期待されます。

360度評価

360度評価は、上司だけでなく同僚や部下、他部署の従業員や取引先の評価なども取り入れ、多角的に行う評価方法です。上司がひとりで評価を行う場合、主観が入りやすく、公平性や信頼性に欠ける恐れもあります。そこで、多角的に評価を行うことで、客観的で納得しやすい評価結果が期待できます。

評価制度の最新のトレンド

新しい評価制度が生み出される中、最新のトレンドとも言うべき3つの手法を紹介します。

リアルタイムフィードバック

リアルタイムフィードバックは、評価者が高頻度でフィードバックを行う手法で、時間を空けずに褒める点や改善点を指摘することで、従業員の成長を加速させることができます。事業によっては柔軟に目標を修正する必要がありますが、リアルタイムフィードバックにより、その都度カバーできるメリットがあります。また、頻度の高いフィードバックにより、問題点の早期発見にも繋げることができます。

ノーレイティング

ノーレイティングは、従業員のランク付けをしない新しい評価制度で、海外の有名企業も導入していることから注目を集めるようになりました。ランク付けをされないことで、従業員のモチベーション低下を防止し、個性や多様性を認めた評価ができると期待されています。ノーレイティング評価を導入する際には、リアルタイムフィードバックや1on1ミーティングなどを併用し、評価者である上司と部下の密なコミュニケーションが欠かせません。

バリュー評価

バリュー評価とは、企業の価値観や行動基準をどれだけ実践できたかを評価する手法です。導入の際のポイントとして、企業の価値観や行動基準を従業員に浸透させることが挙げられます。業績や結果だけでなく、企業の価値観を共有することで、主体性を持った人材育成にも繋がることが期待されています。

 

07評価制度に最新トレンドを取り入れている企業事例

自社の評価制度を見直し、最新のトレンドを取り入れている企業も少なくありません。最後に、評価制度に最新トレンドを取り入れている企業事例を紹介します。

サイコロを振って給料がアップする「面白法人カヤック」

面白法人カヤックが創業時から取り入れているのが「サイコロ給」です。これは、毎月サイコロを振って、出目の数字が%として月給に加算される仕組みです。例えば、月給30万円の従業員がサイコロを振って6が出た場合、30万円の6%である、18,000円が加算されます。 客観的な評価も大切ですが、他人に評価されることで暗い気持ちになることも考えられます。そこで、最後は評価や運命を天に託そうという思いで、このユニークな評価制度が生み出されました。給料が減ることはないので、従業員にとってはメリットしかない制度でもあります。

ミッション遂行に必要な能力や求められる姿勢・行動を評価する「ソフトバンク」

ソフトバンクでは、ミッション遂行に必要な能力、求められる姿勢や行動が評価される「ミッショングレード制」が導入されています。ミッションの定義に関しては、職種ごとに分けられていて、従業員に期待されるミッションや発揮してほしい力が明確になることで、チャレンジしやすい環境が作られます。

レイティングを廃止した「マイクロソフト」「GAP」

マイクロソフトでは、従業員にランク付けをすることが共同へのリスクとなることから、2013年にレイティングを廃止して、チームワークの強化に成功しています。また、GAPもレイティングを廃止して、月に1度のコーチングセッションと部門長ミーティングを増やすことにしました。結果として従業員のストレス低減、コミュニケーション向上に繋げることができています。


 

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08まとめ

評価制度の種類や最新トレンドを、企業事例とともにまとめました。企業と従業員の成長を促すために評価制度は大切ですが、終身雇用の崩壊やビジネス変化のスピードへの対応に、従来の評価制度が追いつかない状況が発生しています。従業員のモチベーションを低下させないためにも、透明性のある自社に適した評価制度を導入することが大切なポイントとして挙げられます。

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  • 登壇者:坪谷 邦生 様
    株式会社壺中天 代表取締役

    立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。その後、リクルートマネジメントソリューションズ社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、人材マネジメントの領域に「夜明け」をもたらすために、アカツキ社の「成長とつながり」を担う人事企画室を立ち上げ、2020年「人事の意志をカタチにする」ことを目的として壺中天を設立し代表と塾長を務める。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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