公開日:2021/09/10
更新日:2024/08/20

サクセッションプランとは?意味や作り方、企業事例も解説

サクセッションプランとは?意味や作り方、企業事例も解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

経営者や経営幹部の後継者を育成するサクッセッションプランは、企業が長期的に存続するために重要な課題であると言えます。本記事では、サクセッションプランと人材育成の違いや取り組み状況と必要性について、また取り組むメリットと作り方を企業事例とともに解説します。

 

01サクセッションプランとは?

サクセッションプランとは、後継者育成プランのことで、企業の重要ポジションである経営者や経営幹部の候補となる人材を抜擢し、育成することを指します。 サクセッション(succession)には「継承」「連続」といった意味があるように、企業は優秀な人材を育成して昇進させ、CEOや経営幹部を引き継ぐよう取り計らうことで、長期的な存続に繋げることができます。

人材育成との違いは育成項目と指導者

サクセッションプランと通常の人材育成には異なる意味合いがあるため、これを理解した上で取り組む必要があります。両者の主な違いは、「育成項目」と「指導者」です。人材育成は、企業に貢献できる人材になるよう社員を成長させる施策のことで、人事部の業務のひとつとして挙げられています。 一方、サクセッションプランは、経営層が自ら指導者となり、幹部および経営者候補者に焦点を合わせて長期的かつ計画的に育成を行う施策のことです。

これまでの後任登用との違い

似た意味合いに「後任登用」がありますが、サクセッションプランとの大きな違いは、後任登用の場合は上司直属の部下などの近い人材から選んでいることです。一方、サクセッションプランは経営理念や経営戦略に沿った幅広い範囲の人材の中から候補者が選ばれ、経営者の視点で物事が見られるように育成させていきます。

 

02サクセッションプランの取り組み状況と必要性

企業は実際、どのようにサクセッションプランに取り組んでいるのでしょうか。ここでは、サクセッションプランの取り組み状況と必要性について解説します。

サクセッションプランの取り組みは簡単でないのが現状

経済産業省が公表した「日本企業のコーポレートガバナンスに関する実態調査報告書」によると、サクセッションプランの取り組みは簡単でないのが現状であることがわかります。 調査によると、「後継者計画のロードマップの立案」、「後継者候補の育成計画策定・実施」を行っていると回答した企業は50%を下回っています。 サクセッションプランの取り組みが簡単でない背景として、次期社長は現社長が指名するという従来の慣行が挙げられます。そして、サクセッションプランの指名委員会には、社外取締役など、社外者が関与することになりますが、それに抵抗感を抱く経営層の存在もサクセッションプランの取り組みを難しくしていると考えられます。

参考:日本企業のコーポレートガバナンスの実質化に向けた実態調査報告書

コーポレートガバナンス・コードに必要性が言及されている

サクセッションプランの必要性については、コーポレートガバナンス・コードにも以下の通り言及されています。 「取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。」 コーポレートガバナンス・コードとは、企業の経営の透明性を明確にするためのルールですが、この中にサクセッションプランが含まれていることは、企業にとって取り組むべき重要課題であることがわかるでしょう。

参考:補充原則 4−1③
 

03サクセッションプランに取り組むメリット

ここでは、サクセッションプランに取り組むメリットとして4つのポイントを解説します。

人材登用基準が可視化される

サクセッションプランに取り組むメリットとして、人材登用基準が可視化されることが挙げられます。幹部および経営者候補の選抜の際に、必要とされる能力やスキルなど具体的な要件を明確にする必要がありますが、このサクセッションプランのプロセスにより、人材登用基準が可視化されます。 一般社員の評価も含めて、同様のプロセスを企業の人事評価に適用させると、努力することが昇進に繋がると認識され、社員のモチベーション維持にも繋がると期待できます。

経営幹部ポストの空白期間を防止できる

経営幹部候補を選抜しておくことで、経営幹部ポストの空白期間を防止できるメリットがあります。経営者または経営幹部が突然辞任するケースもありますが、その際に後継者不在によるM&Aや、経営陣不在による混乱を回避することに繋がるでしょう。また、経営層主体で育成された人材が昇進するため、これまでの企業の伝統や方向性、社員が安心して働き続けられる環境が守られると考えられます。

人材育成や採用コストが抑制できる

サクセッションプランによって、既存の社員を幹部候補として選ぶため、人材育成や採用コストが抑制できることもメリットとして挙げられます。候補者はすでに企業の一員として活躍してきた人材であるため、企業に関する基礎的なことは省略して、効率的な育成プログラムの作成が可能になり、時間とコスト面での負担を減らすことに繋がると考えられます。 また、事業拡大に伴い、部門責任者や子会社の社長など、重要ポジションに就任する候補者を育成することにもなります。こうして、外部から幹部候補者を選任する際にかかる、人材紹介会社への多額の手数料を抑えることもできるでしょう。

優秀な人材の定着に繋がる

サクセッションプランの取り組みは、優秀な人材の定着に繋がるというメリットもあります。向上心があり昇進を目指す優秀な社員に対して、経営幹部や経営者への道筋を明確に示すことができるため、エンゲージメントが向上すると考えられるでしょう。 人事評価が明確に定められていないために、優秀な人材が転職や独立を考えて、流出するのを防ぐことになります。

 

04サクセッションプランに取り組むデメリット

サクセッションプランのメリットを解説しましたが、当然ながらデメリットも存在します。ここでは主なデメリットを2つ解説します。

運用に長期間を要する

社内で経営者候補・幹部候補を育成することが目的のため、数年~数十年と長期に渡ることが大きなデメリットです。前述した採用コストが抑えられるものの、一般的な育成に比べて対象者一人あたりのコストが大きくなりがちです。 そのため、早期に幹部候補の育成が必要という企業には不向きであると言えます。

候補者のモチベーション維持に配慮する必要がある

対象者の見直しや対象外となった社員のキャリアプランの見直しとその後のモチベーション維持に配慮する必要があります。 また、前述した多大な時間がかかることに起因しますが、対象者が途中で退職してしまう可能性もあるため、それまでにかけた時間や金銭的なコストが無駄になってしまうリスクも否めません。

 

05サクセッションプランの作り方

サクセッションプランの作り方は、以下の5つのステップで進めます。

  • 1.中長期経営戦略やビジョンを明確化する
  • 2.対象となるポジションを定める
  • 3.人材要件を決定し選出する
  • 4.候補者ごとに育成計画を立て実行する
  • 5.進捗の確認や必要に応じて再構築を行う

それぞれのステップについてさらに詳しく解説します。

中長期経営戦略やビジョンを明確化する

サクセッションプランを策定するにあたり、まず中長期経営戦略やビジョンを明確化します。企業が未来に継承したい文化や慣習や、改革を望む分野などを分析し、後継者候補に明示します。こうして企業が目指す将来の方向性を指し示すことで、後継者候補が自信をもって歩むための地盤が固められます。

対象となるポジションを定める

次に、サクセッションプランの対象となるポジションを定めます。事業継承を目的とする場合は、次期CEO候補者を対象とできます。組織の改革を考えている場合は、役職の新設を検討したり、部長クラスを含む各役職を対象としたりできるでしょう。 対象となるポジションを定めることは、選抜基準や育成プログラムの決定にも影響する重要な段階であると言えます。

人材要件を決定し選出する

対象ポジションごとの人材要件を決定します。それぞれのポジションに求められる知識や技術、スキルを具体的に洗い出し、選抜基準の可視化に繋げるようにしましょう。それから、適任者の選出を行います。自薦方式により熱意や積極性を重視したり、多角的で客観的な評価ができるよう、外部のアセスメントセンターを活用したりする方法もあります。

候補者ごとに育成計画を立て実行する

候補者の選出後は、個別に育成計画を立てて実行します。アクションラーニングなどさまざまな研修を活用し、経営幹部に必要なスキルを磨くことができるでしょう。また、ジョブローテーションを実施して、企業全体の業務に精通してもらうことも効果的です。目標や評価を管理できるよう、OKR(目標と成果指標)などの方法を導入する企業も少なくありません。

進捗の確認や必要に応じて再構築を行う

サクセッションプランを実行してからは、進捗の確認や必要に応じて再構築を行います。後継者候補者との定期的な面談や、小まめなフィードバックを行い、プランの効果を高めます。進捗に遅れがある場合は早めの対処が必要です。また、問題点が見つかった場合は、計画の変更や施策の追加などを速やかに行うなど、柔軟に対応します。

 

06サクセッションプランに取り組む企業事例

最後に、サクセッションプランに取り組む企業事例を紹介します。

花王株式会社

花王株式会社では、組織として維持していくために基幹人材の育成に力を入れています。後継者候補を3段階に分けて設定し、名簿を作成しているのが特徴です。「Ready Now」は今すぐに後任となれる人材、「Ready Soon」は1~3年、「Mid Term」は3~5年で後任として育成する人材です。 それぞれの段階に合わせて個別育成が行われ、360度評価やコーチングなどにより、気づきを促す仕組みを構築しています。

参考:コーポレート・ガバナンス | 花王株式会社

株式会社りそな銀行

株式会社りそな銀行は、2007年からサクセッションプランを導入し、次世代リーダー候補の育成に取り組んでいます。「組織を動かす力」「変革志向」など、役員に求める7つの力を念頭に置いて、育成プログラムを実施しています。 2002年に大和銀行とあさひ銀行が統合して発足したりそなグループですが、サクセッションプランの取り組みにより、派閥によるたすきかけ人事の抑制にも繋げています。

参考:コーポレートガバナンス|りそなホールディングス

日産自動車株式会社

日産自動車株式会社は、サクセッションプランの実施のため、CEOを含む役員で構成する人事委員会を立ち上げました。そして、全社で任命されたキャリアコーチが世界各地で行われるすべての会議に自由に参加して、グローバルに活躍する次世代リーダー候補を発掘し、人事委員会に提案できるようにしています。

参考:日産コーポレートガバナンスオーバービュー

 

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07まとめ

サクセッションプランの概要や必要性、導入メリットと作り方をまとめました。企業が長期間にわたって存続するには、将来の幹部および経営者候補の育成が必要不可欠です。人手不足が叫ばれる昨今、優秀人材の育成や確保は難しい課題のひとつです。そこで、コーポレートガバナンス・コードにも必要性が言及されているサクセッションプランへの取り組みが急務であると言えるでしょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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