生涯学習とは?その必要性や企業で推進する際のポイントについて解説
生涯学習とは、文部科学省が推奨している豊かな人生をおくるための学習のことを指します。人生100年時代と言われるように、誰もが自分の人生を充実させたいと考え、働き方にも変化が生まれてきおり、生涯学習は直近の価値観に適合している考え方になります。 当記事では生涯学習について説明を行い、生涯学習の必要性や種類、企業で推進すべきポイントや導入企業事例などを解説します。
- 01.生涯学習とは
- 02.生涯学習の必要性とは
- 03.日本で生涯学習が進まない理由
- 04.生涯学習の主な種類とは
- 05.生涯学習を企業で推進する際のポイントとは
- 06.生涯学習やリカレント教育に取り組む企業事例
- 07.生涯学習を組織として支援するSchoo
- 08.まとめ
01生涯学習とは
生涯学習という言葉は、生涯学習とは、人が生涯を通じて自らの興味や関心に基づいて学び続けることを指します。 文部科学省も以下のように生涯学習を定義しています。
「生涯学習」とは,一般には人々が生涯に行うあらゆる学習,すなわち,学校教育,家庭教育,社会教育,文化活動,スポーツ活動,レクリエーション活動,ボランティア活動,企業内教育,趣味など様々な場や機会において行う学習の意味で用いられます。
また、生涯学習の理念としては、「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。」と教育基本法第3条にて規定されています。
リカレント教育との違いとは
生涯学習と良く類似して使われている言葉にリカレント教育があります。 リカレント(recurrent)とは「反復、循環、回帰」を意味します。 リカレント教育は、生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返す教育制度のことになり、生涯学習との大きな違いとして、生涯学習がより豊かな人生をおくるための学習であることに対して、リカレント教育は生涯学習の一部ではありますが、働くことが前提となっているため、前提条件に大きな違いがあります。厚生労働省も以下のようにリカレント教育を定義しています。
学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくことがますます重要になっています。 このための社会人の学びをリカレント教育と呼んでおり、(省略)
02生涯学習の必要性とは
生涯学習は、主に3つの理由から必要と言われています。 1つ目は、自由時間の増大などにより、心の豊かさや生きがいのための学習需要が増大しているため。2つ目は、より豊かな人生をおくるため。3つ目は、社会や経済の変化に対応するため。 上記3点の理由から生涯学習が求められており、本項目ではそれぞれをより詳細に解説していきます。
人生100年時代に備えた学び直し
人生100年時代といわれる現代では、以前と違い働くことだけではなく人生の充実を誰もが重視するようになりました。 生涯学習を通じ、仕事だけではなく趣味などを含め自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう学び続ける必要が大切だと言われています。 生涯学習における、学びや成長は達成感や幸福感をもたらし、その効果は子どもだけでなく大人にも当てはまります。 生涯を通じて学び続け、時には学び直しながら学習をすることでより人間として成長し豊かな人生を送ることができると言われています。
キャリアアップのための必要事項
仕事におけるキャリアアップにおいても学び続ける姿勢は大切になっていきます。 社会人になって就職してしまうと、なかなか学習の時間を取ることが難しくなります。 その際に、新たに学ぶだけではなく学びなおしの機会はより優先順位が下がるかもしれません。 しかし、近年の技術革新の速さは以前とは比べ物になりません。 専門性の高い知識ほど定期的な学びなおしによるアップデートが必要になっています。 生涯学習を通して、学習習慣を正しくつけることにより、プライベートだけではなく仕事の面でも充実した成果を出すことが可能となります。
VUCA時代の影響
VUCA時代と言われるように、現代は不確実性が高く、将来の予想が困難な時代と言われています。 VUCAとはVolatility(ボラティリティ:変動性)、Uncertainty(アンサートゥンティ:不確実性)、Complexity(コムプレクシティ:複雑性)、Ambiguity(アムビギュイティ:曖昧性)の頭文字を並べた造語です。 不確実性が高いからこそ、生涯学習を通して学び、学んだ成果を発揮することが求められています。 学習習慣が無い場合、変化に対応を行うことができないリスクが発生しますが、現代では発生リスクが非常に高まっています。
03日本で生涯学習が進まない理由
経済協力開発機構(OECD)が、2012年に実施した「国際成人力調査(PIAAC 2012)において、各国の成人に「現在、何らかの学位や卒業資格の取得のために学習しているか」という設問で調査しました。
30歳以上の成人の割合を見ると、アメリカ・ドイツを除いた18ヵ国の中で、日本は1.6%と最下位でした。アメリカ・ドイツは年齢が調査項目に入っておらず、比較対象から外しています。一方で、1位はフィンランドの8.27%、2位ノルウェー、3位イギリスと欧州の各国が上位を獲得しています。
学ばない日本人
2018年に実施された全国就業実態パネル調査の結果によると、「自分の意思で、仕事にかかわる知識や技術の向上のための取り組みをしましたか」という設問にYesと回答したのは、33.1%しかいませんでした。日本は昭和から終身雇用の流れが続いており、企業が社員を育てるという意識が強く、自らスキルを伸ばしてキャリア向上を目指す人が少ない傾向にあるようです。
学ばないことに理由はない
同調査では、仕事に関連した学び行動を取らなかった理由についても調査をしています。「仕事や家事・育児などで忙しいから」・「学び行動をとるための費用負担が重 いから」など8項目に対して、複数回答ありで回答を募ったところ、最も選択された回答は「あてはまるものはない」で51.2%でした。このことから、学ばないことに特に理由はなく、時間や金銭面での補助があろうと日本人は特に学ばないということが読み解けます。環境変化が激しく、生涯学習の重要性が叫ばれる中で、日本人の学びに対しての価値観が課題として根強く残る可能性が高いでしょう。
04生涯学習の主な種類とは
生涯学習には様々な種類がありますが、そのどれもが豊かな人生を送ることができる点にフォーカスされています。 本項目ではそれぞれの特徴に加え、学ぶことでどのようなメリットがあるかなどを解説していきます。
ビジネス・教育
より豊かな人生をおくるためにビジネスや教育に関する考え方を学ぶと、自分の価値観が変わって行動を変えやすくなります。 特定分野のビジネスや教育に関する学びではなく、リーダーシップ論やコミュニケーション手法など幅広く概要的な学びを行うと良いでしょう。 学習方法としては著名人の講演に参加したり、企業によるリーダーシップ研修を受講したり、書籍などによる学びなどが挙げられます。 まなんだ成果を、自社の社員研修に取り入れるなどを行うことで学びを展開していくことも、他者の生涯学習を促せる点で非常に重要となります。
語学
語学を学ぶのも、非常に有用と言えます。 語学は学ぶのに時間がかかるため、目的とセットにすることで継続的に学習を行うことが可能です。 ビジネスにおいて海外出張などがある場合などに、通訳ではなく自分が話すことを目標にすると趣味と実益を兼ねてモチベーションの維持などが行いやすくなります。 趣味の場合でも海外旅行のためなど学習をすることを目的にしないように心がけるだけで、継続的に学習できる可能性は高まります。
芸術文化
芸術や文化について造詣を深めるのも生涯学習の一つです。 普段芸術や文化にあまり触れられない方でも、美術館での絵画鑑賞や、音楽ホールでの演奏を聞いたり、舞台での演劇鑑賞などを通じて感受性を磨くことが可能です。 感受性を磨くことで、普段とは違うものの見方ができ、ビジネスにおける新しい提案に繋がる場合や、普段のコミュニケーションとは違った会話ができることなどのメリットもあります。
スポーツ
スポーツは健康維持などに重要な役割を果たしますが、それだけではなく人脈を拡げてくれるなどの効用も期待できます。 スポーツにはさまざまなジャンルがありますが、興味のある運動や過去に経験がある運動、同僚との付き合いなどから選択してみると良いでしょう。 会社にクラブや交友会がある場合は、活用することでより有効的です。 また、ウォーキングやランニングなどでも体を動かしながら、一人で考えをまとめる時間が取れるため健康面とビジネス面での両立が期待できます。
プログラミング
学習指導要領が改訂され、2020年度からプログラミング教育が小学校で必修化されています。この変化には前述したsociety5.0やVUCA時代も背景として存在しており、国としてもプログラミングがもはや読み書き算盤のように必須スキルとなっていることを認識していることに他ならないでしょう。一方で社会人でプログラミングスキルを習得している人は一部しかおらず、各企業でエンジニアの採用が進まない・離職されてしまうという状態は続いているのが現状です。
デジタルリテラシー
前述したプログラミングは少し難しいと感じる人は、まずデジタルリテラシーを身につけるというのも1つの手です。Webの仕組みがどうなっているのか・情報セキュリティーで気をつけるべきことなど、日々の業務にも関係してくるデジタルの基礎知識を習得することで、即効性のある学習体験が期待できます。
05生涯学習を企業で推進する際のポイントとは
生涯学習は、豊かな人生をおくるためにも取り組むべき課題です。 しかしながら個人だけでは実行が難しい背景などもありますが、企業が推進することにより、より双方にメリットがある形式で実行を促すことが可能です。 本項目では、企業として生涯学習を推進するためのポイントを3つご紹介します。
いつでも自由に学習機会を選択して学ぶことができる
生涯学習を企業で推進する上で大切な1つ目として、学習機会の選択の自由化があります。 学びたいと思ったときに、学べるようにノートパソコンやスマートフォンなどを用いて、場所や時間を選ばずに学習できるオンラインでの研修受講環境の構築が必要です。 レベルの高い講義を均一で受講できる点や、反復学習を行える点など、オンライン講座での学習は企業やビジネスパーソンにとって数多くの利点があります。 日本の企業で導入されている学習機会の中では最もメジャーな学習方法ともなっています。
学んだことや成果が正当に評価される
生涯学習を推進する上で、学んだことや成果が正当に評価される点も重要視されています。 生涯学習はその特性上、業務に必ず直結する内容ではありません。 しかしながら、学ぶ姿勢がある人材は貴重な人材でもあります。 結果だけを評価するのではなく、研修を受講して効果を出している点を測定できるようにし、人事評価に反映することでより積極的に学ぶ姿勢を促せます。
人材育成や自己啓発の制度として取り入れる
キャリアパスに応募型研修などで学習自体を組み込み、人材育成などの制度として生涯学習を取り入れる方法も有効です。 ある企業ではキャリアプランの実現のために必要なビジネススキルを複数種類に分けたコースを設け、好きなコースを受講してもらう手法や、研修費用の一部を負担することで、社員の社外研修を支援する活動を行っています。
06生涯学習やリカレント教育に取り組む企業事例
生涯学習やリカレント教育において、大切なのは当人の学ぶ姿勢だけではありません。 企業としても、生涯学習を支援する制度や仕組みを検討することがこれからの社会において大切となります。 本項目では既に生涯学習を支援する制度を取り入れている企業を2つご紹介します。
サイボウズ株式会社
ビジネスアプリ作成プラットフォーム「kintone」や、中小企業向けグループウェア「サイボウズ Office」を展開するサイボウズ株式会社では、2012年から35歳以下の社員を対象に、退職後6年間であれば復帰が可能な「育自分休暇制度」をスタートしています。 この制度は転職や留学など、環境を変えて成長したい人に退職後も復帰しやすい環境をつくることを目的としています。 実際に制度を利用してアフリカへ渡航している社員の方のインタビューなどが公式HP上に掲載されており、社員の生涯学習を支えています。
パーソルキャリア株式会社
パーソルキャリア株式会社には、「FLASH」という制度があります。 「FLASH」という制度の名前は、時短・休業/休職制度の活用を想定するシチュエーションとして定義した「Family」「Learning」「Avocation」「Social」「Health」の5つの頭文字を取ったものです。 「Learning(進学・留学)」では仕事の成果につながる勉強やインプットをしたいと考えている社員のための時短・休職制度です。 対象者要件を満たせば時短勤務あるいは最長2年間の休職が可能となり、留学・通学など、スキルアップ期間として活用できるような、社員の長期就業や持続的成長を支援する制度になっています。
旭化成株式会社
旭化成株式会社は、全社員が「終身成長」を目指す組織づくりに挑戦しています。「終身成長」とは、社員一人ひとりが自分の人生の目的をもち、自律的にキャリアを考えて成長し続けることを会社が支援するものです。これを実現するための取り組みが、自社内の学びのプラットフォーム「CLAP(Co-Learning Adventure Place)」です。自律的なキャリア形成を目指して幅広い分野を学べる学習プラットフォームとして社内外の学習コンテンツを搭載し、コース化して提供できるツールです。ここに搭載するコンテンツ群のひとつに、社員一人ひとりのニーズに合わせて学べるSchooを導入いただいています。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
07生涯学習を組織として支援するSchoo
Schoo for Businessでは8,500本以上の授業をご用意しており、新入社員研修からDX研修まで幅広く研修を実施することができます。また、サブスクリプションでのご契約となるため、研修としてだけでなく、社員の方が自ら学びたい時に授業を好きなだけご視聴いただく自律学習の支援ツールとしても活用いただくことができます。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
Schoo for Businessは社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約7,000本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.受講者の学習状況を把握し、人材育成に役立てることができる
Schoo for Businessには学習管理機能が備わっているため、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、受講者がどんな内容の講座をどれくらいの長さ見ていたのかも把握することができるため、社員のキャリアプランの傾向を掴むことも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。
管理画面では受講者それぞれの総受講時間を管理者が確認できるようになっており、いつ見たのか、いくつの講座を見たのか、どのくらいの時間見たのか、ということが一目でわかるようになっています。
さらに、受講履歴からは受講者がどのような分野の動画を頻繁に見ているかが簡単にわかるようになっており、受講者の興味のある分野を可視化することが可能です。これにより、社員がどのようなキャリアプランを持っているのかを把握できるだけでなく、社員のモチベーションを高めながら人材育成するためのヒントを得ることができます。
さらに、社員に自己啓発を目的として受講してもらっている場合、社員がどのような内容の授業を受講する傾向があるのかを把握できるため、社員のキャリアプランを把握することができます。
08まとめ
本記事では、生涯学習の概要から主な種類、推進する際のポイントや導入企業事例などの解説を行いました。 これからの人生をより豊かにしていくためにも、生涯学習の考え方はビジネスパーソンにとって必須と言えるでしょう。 是非この記事を参考に、生涯学習について再確認いただければ幸いです。
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働き方に関する制度改善を多数行ってこられた株式会社クロスリバー 代表取締役 越川慎司氏をお招きし、「残業削減ではない方法で働き方改革を行い、社員の自発性と意欲を著しく向上させ、離職率を低下させるための自律学習の制度設計」について語っていただいたウェビナーのアーカイブです。同社の調査・分析内容と自律学習の制度設計を深堀ります。
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登壇者:越川 慎司様株式会社クロスリバー 代表取締役
ITベンチャーの起業などを経て2005年に米マイクロソフト本社に入社。業務執行役員としてパワポなどの責任者を経て独立。全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業の株式会社クロスリバーを2017年に創業し、815社17万人の働き方と成果を調査・分析。各社の人事評価上位5%の行動をまとめた書籍『トップ5%社員の習慣』は国内外で出版されベストセラーに。