公開日:2022/01/26
更新日:2023/12/26

アート思考とは?注目される理由や進め方|おすすめの本3選も紹介

アート思考とは?注目される理由や進め方|おすすめの本3選も紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

アート思考は、ビジネスにおいて、アートでしかできない表現や思考として注目されています。本記事では、アート思考の意味や注目されている理由、進め方について解説します。また、おすすめの本3選も合わせてご紹介しますので、アート思考についてもっと知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

01アート思考とは

アート思考とは、アーティストが作品を生み出す過程における発想法を指します。そもそもアーティストとは、芸術家や美術家を指し、その道のプロフェッショナルという意味です。ものづくりなどの職人的な技術を持つ人も、アーティストにあたります。 アーティストが、それまでに無かったものを新たに創り出すという点から、アート思考は「ゼロから1を生み出す」発想法と考えられています。そのため、ビジネスにおけるアート思考とは、アート作品ではなく、商品やサービスを生み出すための、手がかりとなる思考法といえるでしょう。

アート思考の始まりは、2008年のArt Thinking Improbableと呼ばれる「起こりそうもないものを確実に生み出す方法」プログラムが実施したワークショップです。その後、現代アーティストによって、教育メソッドに取り込まれ、起こりそうもないものを創り出すことを可能にする創造手法と、現状を疑うことで作品をデザインするアプローチが教えられるようになりました。 現代アーティストの作品には、常識にとらわれない自由な発想が感じられることが多いです。それこそが、クリエイティブを追求するビジネスの新しい発想法といえます。

アート思考と似た言葉との違い

アート思考に似た言葉として「デザイン思考」、「ロジカル思考」があります。ここではそれぞれの意味について解説します。

デザイン思考

アート思考によく似ている言葉にデザイン思考があります。デザイン思考とは、デザイナーやクリエイターの業務における発想を課題解決に転用した思考法のことです。どちらも既成概念にとらわれないアイデアを創出するために有効な思考であることが共通点ですが、アート思考とデザイン思考は発想の根源において異なる思考法です。「デザイン」はあくまで課題解決を目的にします。そのためデザイン思考においては、ユーザーニーズをベースにアイデアの創出を図ります。一方の「アート」は、もともと芸術家の自己表現を目的にしているものです。そのためアート思考は、ユーザーニーズをベースにするよりも、アーティスト自身の自由な発想を重視します。そのため、より独創的な発想を行いたいときに適した思考法と言えるでしょう。

【関連記事】デザイン思考とは?ビジネスで必要とされる理由とスキルアップ方法について解説する

ロジカル思考

ロジカル思考は、体系的に整理し、筋道を立てて矛盾なく考える思考法です。アート思考は、あくまで自由に発想するため、合理性や効率性を求めるものではありません。さらに、ロジカル思考は課題に対する解決法ですが、アート思考は課題を設定して発想していきます。これらのことから、両者は対照的な思考といえます。

【関連記事】ロジカルシンキングとは?構成する要素や導入するメリット、手法などを解説
 

02

アート思考とは、ビジネスに求められる新しい発想法であることを紹介しました。そこで、現代のビジネスにおいて、なぜ新しい発想のアート思考が注目されているのか、その理由について解説します。

価値観が多様化している現代には今までにない発想が必要

現在は、技術革新が進み、変化が激しく、さまざまな商品やサービスが次々と生み出されています。これは、これまで当たり前だったものが、すぐに古くなってしまう時代が訪れたことを意味します。結果として、常に新しいものを作り出す必要があり、競争がますます激化するというわけです。この時代の変化の要因に、価値観の多様性が挙げられます。 価値観が多様化している現代には、イノベーションを起こすための、今までにない発想が必要になっています。そこで、注目された発想法が、アート思考です。この発想法を取り入れることで、今までにない独創的なアイデアで商品やサービスが生み出されていくでしょう。今後、ますますビジネスでの必要性が高まると考えられます。

 

03アート思考の進め方

アート思考は、「起こりそうもないものを確実に生み出す」「現状を疑うことで作品をデザインする」という発想であることをご紹介しました。それは、問いを発することで、現状に問題提起を行うことを意味しています。具体的には、以下のように進めます。

  • 自分の興味・好奇心・疑問に気づく
  • 自分なりの考えを深掘りする
  • 自分なりの答えを客観的に見直す

ここでは、アート思考の進め方について解説します。

自分の興味・好奇心・疑問に気づく

まず、当たり前だと感じていることに対して、興味や好奇心、疑問を向けることから始めます。ここでのポイントは、正解を出すことではなく、自分がどのように感じているのか、それはなぜなのかと自分に対して「問いを立てる」ことです。あくまでも、自分を起点とすることが重要になります。 つまり、アート思考のベースには、個人の内側にある興味・好奇心といった内発的動機があるのです。

自分なりの考えを深掘りする

次に、自分の問いに対して深掘りする過程に入ります。考えたことを次々とアウトプットして、問題提起を行う作業のことです。そのためには、問いを言葉にする必要があります。自分が出した言葉が「なぜ、出てきたか」を自分に問い続けるのです。また、1つずつの言葉を考えるのではなく、それぞれの言葉に共通点があれば、その共通点について考えてみるのも効果的です。 ここでのポイントは、自分の問いを何としてでも言葉にできるかが重要になります。直感的に考えることが大切になるでしょう。

自分なりの答えを客観的に見直す

最終段階では、自分なりの答えを客観的に見直す必要があります。当たり前だと感じていることとは異なる答えになっているのか、あらためて問い直しましょう。あるいは、他の人に意見や評価を求める方法もあります。ここでのポイントは、客観的な見直しを何度も繰り返して、自分なりの答えを導き出すことです。それは、正しい答えである必要はありません。正しいと思っていることこそが、常識や固定観念であるためです。

 

04アート思考に使えるフレームワーク

アート思考を行うにあたり、役立つフレームワークも考えられています。ここでは主なものを2つご紹介します。

アートイノベーションフレームワーク

アートイノベーションフレームワークは、京都大学と凸版印刷株式会社の共同研究によって開発されたアート思考に関するフレームワークです。アーティストの思考プロセスを「問題提起型アプローチ」の以下の5段階に分けて体系化しています。

1.発見

自分の主観で面白い、美しいなどと感じるものを発見します。ここでは、他人の視点ではなく、あくまで自分の主観に重きを置くことが重要です。

2.調査

発見した対象について調査を行い、特徴やオリジナリティがないかを考えます。同じ機関だけでなく、過去においても類似のものがないかを調べることも重要です。

3.開発

開発段階では、発見されたアイデアを具体的な形に落とし込んでいきます。アート的な手法やクリエイティブなプロセスを活用し、アイデアをプロトタイプ化し、試作を行います。

4.創出

創出は、アイデアやプロトタイプを展開し、革新的な製品やサービスとして具体化する過程です。アート的なアプローチやデザイン思考を活用して、アイデアを実用化し、市場に向けて展開していきます。

5.意味づけ

意味づけは、創造された製品やサービスの背後にあるストーリーや意味を形成する段階です。アート的手法や感性を活用し、製品やサービスにエモーショナルなつながりや意味付けを与えます。

ビジョンスケッチ

ビジョンスケッチは、アート思考を用いてアイデアや概念をビジュアルに表現する手法です。言葉だけではなく、図や絵を使ってアイデアを視覚化し、共有することで、参加者間での理解を深め、コミュニケーションを円滑にします。ビジョンスケッチでは、様々なイメージング技法やデザイン思考の手法を活用し、アイデアやコンセプトを視覚的に整理し表現します。これにより、抽象的な概念を具体的な形に落とし込み、新たなアイデアの発見や共有を促進します。

 

05アート思考を身につける方法

アート思考を身につける方法は様々ですが、この章では主な方法を2つ紹介します。

オンライン学習サービス

アート思考を学ぶ方法として、まずはオンライン学習サービスを利用するという方法をお勧めします。費用もそこまで高くなく、定額制で見放題のサービスも多いため、本を買う前に動画で概要を掴むことができます。この章では、オンライン学習サービスSchooのアート思考を学べる授業を紹介します。

アート思考って何だ? -自分だけの価値をつくり出す創造的思考法-

アート思考って何だ? -自分だけの価値をつくり出す創造的思考法-
 

この授業では、もともとは建築やアートの研究者であり、大企業の新規事業立ち上げなどに関わったのち、現在はスタートアップを経営している若宮先生を講師としてお招きし、「今、なぜアート思考なのか」を紐解きつつ、実例を交えて「アート思考の効果や未来」について学ぶことができます。

  • uni'que代表/ランサーズ タレント社員

    uni'que代表/ランサーズ タレント社員/コアバリューファシリテーター 建築士としてキャリアをスタート。その後東京大学にてアート研究者となり、建築・アート論、ニーチェ研究をしつつ、アートイベントを主催。 2006年、モバイルインターネットに可能性を感じIT業界に転身。NTTドコモ、DeNAにて複数の新規事業を立ち上げる。 2017年、女性主体の事業をつくるスタートアップとしてuni'queを創業。「全員複業」という新しい形で事業を成長させ、東洋経済「すごいベンチャー100」やバンダイナムコアクセラレーターにも選出。ビジネス領域に限らず、アートや教育などでも女性の活躍をサポートする。多数の企業に新規事業やコアバリュー経営のアドバイザリーを行い、複業やコミュニティ関連でもメディア掲載、講師、イベント登壇多数。

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著者が解説 人気ビジネス書「13歳からのアート思考」

著者が解説 人気ビジネス書「13歳からのアート思考」
 

この授業では、「この本を書いたきっかけ」・「この本の1番のポイント」・「読者に伝えたかったこと」等、著者の方に生インタビューをさせていただき、人気の秘密に迫ります。

  • 美術教師/東京学芸大学個人研究員/アーティスト

    東京都出身。武蔵野美術大学造形学部卒業、東京学芸大学大学院教育学研究科(美術教育)修了。 東京学芸大学個人研究員として美術教育の研究に励む一方、中学・高校の美術教師として教壇に立つ。 「絵を描く」「ものをつくる」「美術史の知識を得る」といった知識・技術偏重型の美術教育に問題意識を持ち、アートを通して「ものの見方を広げる」ことに力点を置いたユニークな授業を展開。生徒たちからは「美術がこんなに楽しかったなんて!」「物事を考えるための基本がわかる授業」と大きな反響を得ている。 彫金家の曾祖父、七宝焼・彫金家の祖母、イラストレーターの父というアーティスト家系に育ち、幼少期からアートに親しむ。自らもアーティスト活動を行うとともに、内発的な興味・好奇心・疑問から創造的な活動を育む子ども向けのアートワークショップ「ひろば100」も企画・開催している。 著書に『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』(ダイヤモンド社)がある。

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書籍

アート思考が注目される昨今では、関する本も増えてきています。アート思考をビジネスに活かしたいと考える方も多いでしょう。ここでは、教養としても実用としても参考になる、おすすめ本3選をご紹介します。

ハウ・トゥ アート・シンキング 閉塞感を打ち破る自分起点の思考法

著者:若宮和男 出版社:実業之日本社 著者の若宮氏は、uni'que(ユニック)のCEOでもあり、アート研究者として、アートや教育、アート思考に関するイベントのプロデュースも手掛けています。 この本は、「ハウ・トゥ・アート・シンキング」というタイトルですが、アート思考のHow to本ではありません。自分自身の人生に、どのような自分を生み出していくのかを考えるヒントを与えてくれる本です。 仕事や人生において、閉塞感を感じながら、新しいことにチャレンジしたい「モヤモヤ」を抱えている人の実践書ともいえる内容です。読みながら自分探しをしていくため、明確な答えに辿り着かないのが、著者の意図かもしれません。ぜひ、アート思考とは何なのかを、感じ取ってみてください

13歳からのアート思考

著者:末永幸歩 出版社:ダイヤモンド社 著者の末永氏は、美術教育修士をもち、アーティストでもあり、美術教育の研究者でもあります。また、中学・高校の美術教師として、アートを通した独創的な授業を展開していることでも、注目されています。 内容は、20世紀におけるアート史に大きな影響を与えた6作品を題材に、アートやアーティストについて考えるものです。書籍というより、ワークショップ式の授業のように進められています。自分だけのものの見方で世界を見つめ、そこに自分なりの答えを生み出し、新たな問いを生み出していくといった、アート思考のプロセスが分かりやすく解説されています。 ぜひ、ワークをしながら、アート思考について洞察してみてください。

仕事に生かすアート思考 感性×論理性の磨き方

著者:町田裕治 出版社:日経BP 著者の町田氏は、株式会社BODAI(ボダイ)のCEOで、画家としても活動しています。ビジネス視点でのアート思考のワークショップを開催しています。 内容は、「アート思考とは何か、なぜアート思考が必要なのか、ビジネスに取り入れるためには、どのようにしたらいいのか」といったアート思考の本質からビジネスへの応用までを網羅するものです。 デザイン思考とアート思考の連携や、経営者になぜ創造性が必要なのかなど、アート思考の理解をより一層深めるための本です。アート思考を初めて学ぶ人から、アート思考の企業導入を考える人まで、幅広く学べることが特徴です。創造性と論理性の両方をバランスよく学びたい人におすすめです。


 

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06アート思考に注力している企業事例

この章では、アート思考を活用している企業の事例を紹介します。

日本マイクロソフト

日本マイクロソフトは、アート思考を社員に身につけてもらうために「Art Thinking Workshop」という育成プログラムを開催しています。このプログラムは3日間にわたって行われ、毎日異なるアーティストを講師として招き、モノを制作する際の視点や考え方などを 6つのプロセス (貢献・逸脱・破壊・漂流・対話・出展) を通じて学ぶというものです。

参考:ゼロからイチを創る思考を学ぶ Art Thinking Workshop 開催|Microsoft

NTTデータ

NTTデータは、社会課題を起点に「問題意識」から「問いを立てる」手法としてアート思考に着目しています。また、NTTデータは東京大学と2020年1月~3月まで「アート思考によるイノベーション創出手法に関する研究プロジェクト」に取り組むなど、他社よりも意欲的にアート思考をビジネスに取り入れ、イノベーションを起こす人材の育成に注力しているようです。

参考:アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~|NTTデータ

参考:アート思考によるイノベーション創出手法に関する研究プロジェクトを開始|東京大学大学院

Soup Stock Tokyo

東京を中心に約60店舗を構えているSoup Stock Tokyoは、アート思考によってビジネスを推進した事例として有名です。スープを主食とするという発想もなく、明確な市場が確立されていない中で、「スープのある一日」という未来をデザインし事業化された飲食店がSoup Stock Tokyoなのです。

 

07まとめ

本記事では、アート思考の意味や注目されている理由、進め方について解説し、おすすめの本3選も合わせてご紹介しました。価値観が多様化している現代において、アート思考の必要性は高まっています。ぜひ、オリジナリティのある発想や答えを導くことにチャレンジしてみてください。そのこと自体が創造行為であり、その過程で新たな学びを得ることができるでしょう。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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