組織における成長マインドセットとは?人事の役割について解説

成長マインドセットとは、人の能力は努力により向上するという考え方です。これは人だけではなく企業などの組織にも当てはまるとされています。組織が成長マインドセットを獲得し、継続的に発展していくために必要なものは何でしょうか。人事が行うべきアプローチについて解説していきます。
- 01.マインドセットとは
- 02.組織におけるマインドセットの構成要素
- 03.マッキンゼーの7S
- 04.組織における成長マインドセット獲得のステップ
- 05.成長マインドセット獲得における人事の役割とは
- 06.成長マインドセットを伸ばすための人材育成
- 07.成長マインドセット獲得の企業事例
- 08.まとめ
01マインドセットとは
マインドセットとは物事に対する見方や、判断の基準となる考え方のことです。その人物のこれまでの経験や、受けてきた教育、先入観などから形成されます。広義に捉えると暗黙の了解や思い込み、価値観、信念までもが含まれます。そして、マインドセットには成長マインドセットと固定マインドセットの2通りがあるとされています。
成長マインドセット
成長マインドセットとは「人間の能力は努力により成長する」という考え方です。成長マインドセットをもった人物は困難に遭遇したときに、これを成長の機会と捉え乗り越えようと努力をします。その努力の結果、能力が開花し、やがて大きな成果につながっていきます。チャレンジ精神が旺盛で努力家であり、困難にもめげないという特徴をもっています。
固定マインドセット
反対に固定マインドセットとは「人間の能力は先天的に決まっていて努力しても変わらない」という考え方です。固定マインドセットをもった人物は、人の能力は生まれつき備わったもので、努力をしても意味がないと考えます。チャレンジ精神に乏しく努力を嫌う傾向があり、困難に遭遇するとすぐに諦めるという特徴があります。
02組織におけるマインドセットの構成要素
マインドセットは個人の特性のように思われがちですが、人間と同じように、企業などの組織にも物事に対する見方や判断の基準があります。例えば「社是」や「経営理念」「経営ビジョン」といったものがこれにあたります。組織におけるマインドセットの構成要素は次の3つが挙げられます。
提供する商品やサービス
取り扱う商品や提供するサービスによって、マインドセットは異なります。例えば食品メーカーであれば、食の安全を確保する取り組みが最優先に考えられるでしょう。IT機器を取り扱う企業であれば、常に最先端を追求することが重視されるかもしれません。このように取り扱う商品やサービスにより、重要視されるポイントは変わってきます。
戦略・ビジョン・経営理念
経営理念やビジョン、戦略によってもマインドセットは変わります。例えば、製薬業界において、新薬の開発に重きを置くメーカーは莫大な開発費を投じ、新薬の開発に心血を注ぎます。ジェネリック医薬品の普及を目指すメーカーであれば、飲みやすさの追求や、誤飲が起こらないような工夫に力を入れます。このように、目指す方向性の違いにより、必要なマインドセットも変わってくるのです。
経験
組織がこれまで歩んできた歴史の影響により、さまざまな価値観が形成され、社風と呼ばれる組織風土を培います。また存続の危機に瀕するような出来事をきっかけに、大きくマインドセットが変化する場合もあります。なりふりかまわぬ事業拡大を是としていた企業が、不祥事をきっかけに堅実な経営に舵を切るといった例がこれにあたります。
03マッキンゼーの7S
組織が継続的に発展するためには時代に応じ変化対応が求められ、さまざまな改革を打ち出す必要があります。組織改革における有効な手法として、世界有数のコンサルティングファームであるマッキンゼー社が提唱した「7S」というフレームワークが用いられます。この7Sフレームワークは組織におけるマインドセットの変革にも有効な手法として機能します。改革のために手を加える項目を7つのSで表しています。
ハード面の3S
ハード面の3Sは「機能」の要素で、次の3つが挙げられます。 1.Strategy(戦略) 2.Structure(組織) 3.System(システム・制度) ハード面の3Sはトップダウンで方針を打ち出すなど、比較的改容易に改革ができる要素であるといえます。
ソフト面の4S
ソフト面の4Sは「人」の要素で、次の4つが挙げられます。 1.Sharevalue(価値観) 2.Style(社風) 3.Staff(人材) 4.Skill(能力) ソフト面の4Sは「人材」と「組織文化」に関わるため、簡単に変革できるものではありません。困難ではありますが、この4つの要素において成長マインドセットを獲得し続けることが、企業の継続的な発展には欠かせないといえます。
04組織における成長マインドセット獲得のステップ
次に、前述の4Sの要素において、成長マインドセットを獲得するステップについて見ていきます。ハード面の3Sを変えただけでは改革を成し遂げたとはいえません。人に関わる要素において成長マインドセットを獲得することが、企業の発展に不可欠です。
1.目標を設定し具体的な行動に落とし込む
成長マインドセット獲得のためには、まず目標を明確に設定し、その目標達成のために取るべき具体的な行動を決めます。組織目標を定め、それを役割に応じた個人目標にブレイクダウンして、達成するための具体的な行動を決めると良いでしょう。
2.継続的に行動する
具体的な行動が決まったら、それを継続することが重要です。目標に向けた行動を常に意識し継続することで、成長マインドセットは定着していきます。継続の過程で迷いが生じることもあるかもしれませんが、そのような場合は面談等で進捗を確認するといった工夫が有効です。
3.成功体験を積み重ねる
継続してきた行動が少しずつ実を結ぶ過程を実感してもらうことが重要です。小さな成功体験の積み重ねが、やがて大きな成果につながることを理解してもらいます。人は、自分に対してメリットがあることは継続しやすい傾向があります。少しずつでも出ている成果を正当に評価することでメリットが実感でき、成長マインドセットが定着するのではないでしょうか。
4.フィードバックを行う
行動を重ねたら、当初策定した目標に対して振り返り、行動や取り組みに対してフィードバックをおこないましょう。うまくいかなかった部分の原因を分析することで、改善点を見つけることができます。また、無意識的な行動をしてしまっている部分は自分だけでは見つけづらいものです。第三者にフィードバックをしてもらうことで、客観的な視点から意見をもらうことができるので効果的です。
5.自己内省を行う
4で実施したフィードバックを加味して、自己内省をおこないましょう。自分がどのような行動を取っていたか、どのような考え方をしたのかなどを内省し、固定マインドセットを成長マインドセットに変換していきましょう。
05成長マインドセット獲得における人事の役割とは
組織における成長マインドセットを獲得するためには、従業員個人のマインドセットを成長型に導く必要があります。その過程において人事部門が果たす役割は非常に大きなものです。先に紹介したマッキンゼーの7Sモデルにおける構成要素のうち、人事部門がアプローチすべき要素について確認していきます。
Structure(組織)
マッキンゼーの7SにおけるStructure(組織)とは組織構造のことで、経営トップから各部門への指示命令系統、各部門ごとの業務内容や果たすべき役割を明確にするものです。この組織構造は企業のビジネスモデルにより形態が異なります。独立した事業部がそれぞれ決裁権をもつ「事業部制組織」業務内容や目的ごとに組織を構成する「機能別組織」など、自社にあった組織形態で構成する必要があります。人事部門はこの組織構造の策定過程において経営トップと連携し、力を発揮しなくてはなりません。
System(制度)
戦略が決まり組織が形成されると、運用していくためのルール、制度面の整備が必要となります。なかでも企業の構成員が組織の一員として機能していくために必要なものが人事制度です。従業員のモチベーションを維持し、目標達成へ向けた行動を継続してもらうためには、この人事制度の整備が不可欠であり、納得感のある制度の構築と運営が人事部門の重要な役割といえます。
Skill(能力)
組織に備わっている能力は、個人の能力を集積したものであるといえます。個人スキルの強化が企業の競争力向上のために重要な役割を果たすことは言うまでもありません。人事部門には適性に応じた人員配置や、能力開発の施策といった、個人の能力を最大限に伸ばし、発揮してもらう仕組み作りをする責任があります。
Staff(人材)
企業が成長マインドセットを持続できるかどうかは、人材の質によるところが大きいといえます。採用の段階から成長マインドセットをもった人材を確保すること、適切に育成すること、成長した優秀な人材を流出させないこと、というように人事部門がそれぞれの段階に適切なアプローチを積み重ねていくことが重要です。
06成長マインドセットを伸ばすための人材育成
人材に対する適切なアプローチが企業の成長マインドセットを伸ばすことはこれまで見てきた通りです。人材育成に取り組まずして企業の成長はありえないといっても過言ではないでしょう。
成長マインドセットの醸成には時間がかかる
個人の思考や組織文化に根強く定着しているマインドセットは、簡単に変えられるものではありません。変革の過程で生じるマインドセットの再構築には、これまでの価値観を一旦否定するといったプロセスも必要になり、ストレスをともなう場合もあります。焦らず時間をかけ、ゆっくりと醸成していくことが望ましいのではないでしょうか。
タイミングと粘り強さがカギ
組織としての成長マインドセットの醸成は、組織風土や社風に関わるもので、組織を構成する人の意識の変革でもあります。「人の意識は簡単に変えられるものではない」という認識を最初にもっておくことが必要です。変革のタイミングで教育を行い、少しずつでも、粘り強く継続し浸透させていく取り組みが重要であるといえます。
07成長マインドセット獲得の企業事例
ここでは、社内の取り組みにより、成長マインドセットの獲得を実現した事例を紹介していきます。
株式会社丸井グループ
ショッピングセンター「マルイ」やクレジットカード「エポスカード」を運営する丸井グループでは、コロナ禍でオンラインでもリアルと同等の体験ができる学びの場づくりをしたいという想いからeラーニングツールSchooの導入を実施。公募制による導入を実施することで、成長意欲のある人材を育てることができ、全体の80%が自主的に学ぶようになりました。特に新入社員に関しては、学ぶ主体性を育むことができ、企業として大事にしている「自分で学びにいくことの大切さ」を体現できるようになっています。
参考:自発学習の仕組みづくりや顧客先の情報収集に活用株式会社アントレ
独立・開業支援サービス「アントレnet」の運営を行う株式会社アントレでは、社員が自ら学ぶことを促進していける環境づくりのためにSchooを導入。業務の中で、普段から「今学んだ方が良いこと」を意識付けを行いました。結果として、・自己学習したことを業務に活用し、自分の武器にしていく仕組みを作ることを実現。また、学習共有用スレッドで学びの定着、ナレッジシェアの仕組みづくりを実施しました。これにより、他の人も興味を持ち、学びの幅が広がることができました。
参考:スクーを受け皿として自己学習を促進し、自ら考え行動できる人材を育成「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

07まとめ
企業が継続的に発展していくためには成長マインドセットの存在は欠かせません。昨今では多くの企業が成長マインドセットの重要性に気づき、教育への取り組みを始めています。自社にマッチした教育を取り入れ、従業員一人ひとりの成長マインドセットを養う施策を検討してみてはどうでしょうか。