グロースマインドセットとは?育成する方法や気をつけたいポイントを解説

昨今、注目を集めている考え方のグロースマインドセットですが、本記事では定義を確認するとともに、グロースマインドセットにおける肯定的思考を解説しています。また、グロースマインドセットの育成方法や育成時に気をつけたいポイントも紹介しています。
01グロースマインドセットとは
近年、企業が人材開発に取り組む中で「グロースマインドセット」を育んでいくことが重要視されています。マインドセットの中にもいくつか存在しますが、ここでは「そもそもグロースマインドセットとは何か」やグロースマインドセットと比較される「フィックストマインドセット」についても解説していきます。
そもそもグロースマインドセットとは
グロースマインドセットとは、「自分が持っている能力や才能は、経験や努力によって成長できる」という考え方を意味します。グロースマインドセットは、スタンフォード大学心理学教授のキャロル・ドゥエック氏が提唱した考え方です。グロースマインドセットを備えている人物は、失敗をおそれずに挑戦し、他人の評価に一喜一憂せず、自己成長と学びを継続できるとされています。

マインドセットとは
マインドセットを直訳すると、「人の固定された物の見方、人の固定された考え方」という意味です。マインドセットは、元来備わっている思考様式や心理状態をいい、これは経験や生まれ持った性質、教育や先入観などから作られます。
フィックストマインドセットとの違い
フィックストマインドセットとは、「自分が持っている能力や才能は先天的なもので、経験や努力では成長しない」という考え方です。フィックストマインドセットを持った人物は、失敗をおそれて挑戦や難題を避ける傾向にあり、失敗した際には周囲のせいにして自己反省しないため、成長の機会を失ってしまいます。
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グロースマインドセットが広まった背景
グロースマインドセットの提唱者であるキャロル・ドゥエック氏が行った研究は、教育現場を対象とするものでした。しかし、マイクロソフトがグロースマインドセットを成長戦略に取り入れたことをきっかけに、ビジネスシーンにおいても広がりを見せました。マイクロソフトは、グロースマインドセットこそが企業の成長に必要な考え方として、社風として根付かせるべく大規模な取り組みを行ったのです。 グロースマインドセットがビジネスシーンで注目を集める背景には、市場を取り巻く環境の急速な変化が潜んでいるのです。マーケットにおけるニーズや価値観の多様化と変動、世界経済の変容に適応するためには、過去に捉われない新たな挑戦が求められているといえます。したがって、グロースマインドセットを備えた人材の育成が、企業にとって重要な課題となっているのです。
02グロースマインドセットにおける肯定的思考とは
グロースマインドセットの特徴は、挑戦や批評、努力に対して肯定的な考え方にあります。グロースマインドセットは、その性質から「成長マインドセット」「しなやかなマインドセット」とも呼ばれています。ここでは、グロースマインドセットにおける5つの肯定的思考をフィックストマインドセットとの違いから詳しくみていきます。
グロースマインドセット | フィックストマインドセット | |
挑戦に対する考え方 | 挑戦を喜んで受け入れて、積極的に挑戦していく | 挑戦したくない |
障害との向き合い方 | 問題を乗り越えられるまで思考と努力を繰り返す | 障害はどうにもならないと諦める |
努力に対する考え方 | 努力に伴う多少の痛みも乗り越えていく | 努力を避ける |
批評への対応 | 他者の批評を一度受け止めて、自分自身を振り返る | 自分への批評は聞きたくない |
他者の成功の捉え方 | 自分への前向きな刺激と捉えて、自己成長の糧にする | 他人の成功は脅威である |
挑戦に対する考え方
グロースマインドセットを持つ人は、挑戦を成長の機会と捉えます。新しい課題や未知の状況に直面しても恐れず、それを通じて自身のスキルや知識を向上させられると信じています。「失敗しても学びが得られる」と考えるため、挑戦へのモチベーションが高く、自己成長に積極的です。反対に、失敗を避けるために挑戦を拒むフィックスマインドセットとは対照的です。挑戦すること自体が成功への重要なプロセスであり、結果ではなくプロセスを評価する姿勢が、継続的な挑戦を可能にします。また、挑戦をポジティブに捉えることで、自己効力感が高まり、成功に向けた粘り強さも培われます。
障害との向き合い方
グロースマインドセットでは、障害や困難を「成長のための試練」と捉えます。障害を避けるのではなく、向き合い、乗り越えるための方法を探す姿勢が特徴です。この考え方は「逆境は成長のチャンス」という信念に基づいています。困難に直面したときも冷静に分析し、問題解決に必要なスキルや知識を身につける努力を惜しみません。また、失敗を「終わり」ではなく、「次の挑戦のスタート」と考え、粘り強く取り組むことで最終的に目標を達成します。この姿勢は、自己成長だけでなく、他者に対する支援や協力を引き出す力にもつながります。
努力に対する考え方
グロースマインドセットの人は、努力を才能を補うものではなく、成功を達成するための不可欠な要素と見なします。「努力を重ねれば能力は向上する」という信念のもと、失敗や困難に直面しても努力を継続します。また、努力そのものを楽しむ傾向があり、目標達成までのプロセスに価値を見出します。この考え方により、結果を急ぐのではなく、着実に成長することを目指します。一方で、無駄な努力を避け、より効率的な方法を模索する柔軟さも兼ね備えています。努力を惜しまない姿勢は、周囲からの信頼を得やすく、長期的な成果をもたらします。
批評への対応
グロースマインドセットの人は、批評を否定的に受け止めるのではなく、学びの機会として活用します。批評が自身の成長や改善につながると考え、建設的なフィードバックを歓迎します。たとえ厳しい指摘を受けても感情的にならず、その背後にある意図を理解し、改善に取り組む姿勢を持ちます。また、批評を通じて自己認識を深めるため、結果として成長速度が加速します。さらに、批評に対して前向きな姿勢を示すことで、他者との信頼関係が築かれ、チーム内での協力や学びの文化を推進する役割も果たします。
他者の成功の捉え方
グロースマインドセットの人は、他者の成功を脅威と見なすのではなく、刺激や学びの機会と捉えます。他人の成功を称賛し、それを自分の努力や戦略に活かす方法を考えます。この姿勢は、嫉妬や対抗心を超えて、成長の可能性を広げるものです。例えば、他者の成功事例を分析し、そこから得られる教訓を自分の目標達成に応用します。また、他者の成功を共有することで、自分自身の成功のビジョンを具体化しやすくなります。他人を応援することでポジティブな人間関係を築き、自身の環境全体の成長に貢献する点も特徴です。
03グロースマインドセットの高めるために個人に取り組んでもらうべきこと
グロースマインドセットは周囲がフォローすることで高めていくことが可能ですが、前提として、対象となる個人が自身のスタンスを変えていくことも重要です。ここでは、グロースマインドセットの高めるために個人に取り組んでもらうべきことについて解説していきます。
自分自身を褒めて自尊心を高める
グロースマインドセットを高めるには、自分の努力や進歩を認識し、自分自身を肯定することが重要です。「小さな成功」を見つけて褒めることで、自己肯定感が高まり、挑戦や努力を続ける原動力となります。例えば、目標に向かう過程での達成感や進展に目を向け、「よく頑張った」と自分を認める習慣を持つことが効果的です。これにより、自分の可能性を信じ、さらなる成長に向けて積極的に取り組む姿勢が養われます。自尊心が高まることで、失敗や他者からの批評にも動じず、自分のペースで学び続けることができるようになります。
継続的な努力の重要性を理解する
成長は一朝一夕には得られないため、努力を積み重ねる重要性を理解することが鍵となります。「努力は才能を超える」という信念を持つことで、目標達成への粘り強さが身につきます。例えば、何か新しいスキルを習得する際、すぐに成果が出なくても、「練習を続ければ上達する」と考えることでモチベーションを維持できます。また、進捗を記録したり目に見える形で成果を確認することも、努力を継続する助けになります。この理解が、長期的な目標に対する積極性を高め、困難を乗り越える力を育てます。
適切なフィードバックの提供してもらう
成長には、外部からの建設的なフィードバックが不可欠です。適切なフィードバックは、自分の強みや改善点を具体的に知る手助けとなり、自身の努力の方向性を修正する指針になります。例えば、教師や上司が「この部分はよくできているが、ここを改善するとさらに良くなる」という具体的なアドバイスをくれると、次の行動に結びつけやすくなります。また、フィードバックを受け入れる際に、「批判」ではなく「成長のためのサポート」と捉えることで、自分の学びを最大化できます。このプロセスが、グロースマインドセットをさらに高めます。
失敗をポジティブに捉える
失敗を恐れるのではなく、成長の一部として受け入れる姿勢を養うことが、グロースマインドセットの形成に寄与します。失敗から得られる教訓を認識し、「次にどうすれば良いか」を考える習慣が大切です。例えば、失敗を振り返る際に「なぜうまくいかなかったのか」「次回は何を変えるべきか」を具体的に分析することで、学びに変えることができます。さらに、失敗を乗り越えた経験が自信を高め、より大きな挑戦に向けての意欲を引き出します。失敗は終着点ではなく、成功へのステップだと認識することで、自己成長を継続できます。
04グロースマインドセットを育成する方法とは
フィックストマインドセットに偏りがちな場合でも、研修や良質なコミュニケーションを行うことによって、グロースマインドセットを育成できるものです。グロースマインドセットを育成して肯定的思考を身につけるためには、どのような方法と工夫を実践すればよいのでしょうか。
自分のマインドセットの傾向を把握する
フィックストマインドセットとグロースマインドセットの両方を兼ね備えていて、状況や周囲の環境に応じて、無意識のうちに両者を使い分けていることがあります。そのため、自分のマインドセットの傾向を把握することで、フィックストマインドセットに傾いてしまう状況において、意識的にグロースマインドセットを行いやすくするのです。 例えば、失敗したときにフィックストマインドセットに陥っていると意識できれば、次からは失敗したときに結果だけでなく、過程に目を向けるようにします。自分自身の内面を見つめなおして、フィックストマインドセットをグロースマインドセットに変化させる習慣を生み出すことが重要です。
職場でのコミュニケーションを活性化させる
グロースマインドセットの習慣化のためには、職場でのコミュニケーションにおいて、お互い問いかけを行い、肯定的思考を引き出すことが効果的です。例えば、「達成した仕事から何を学んだのか」「仕事を通して達成した一番の成果は何なのか」などが、グロースマインドセットを定着させる質の高い会話といえます。
外部講師を招いてマインドセット研修を実施する
グロースマインドセットの育成効果向上には、専門知識や独自のノウハウを有した外部講師による、マインドセット研修の実施がおすすめです。マインドセット研修では、フィックストマインドセットとグロースマインドセットの違いや、それぞれの考え方を体系的に学べるうえ、演習を通して自分のマインドセットの傾向を把握できると期待されます。 マインドセット研修の実施後は、日常業務においてマインドセットを意識的に使い分けられるようになって、自然とグロースマインドセットの活用頻度も上がるはずです。
05グロースマインドセットを高めるためのポイントとは
グロースマインドセットは、自己内省とマインドセットの意識的な使い分けによって、育成できると期待されます。これらの過程において、どのような点に注意すれば、グロースマインドセットの育成効果をより向上できるのでしょうか。グロースマインドセットを高めるうえで気をつけたいポイントについて、詳しくみていきます。
論点や課題を明確にしたうえで改善を行う
グロースマインドセットでは、困難や課題を乗り越えるためなら、努力に伴う多少の痛みは受け入れるという考えが実践されます。しかし、論点や課題の本質が明確にならないままでの努力は、結果や成長にむすびつきにくく、何度も努力を重ねるうちに心が折れて、フィックストマインドセットに変わってしまうおそれが懸念されるのです。 したがって、直面する課題の本質を見極めて明確にしたうえで、効果的なアプローチを考え、改善や努力を行うようにしてください。
失敗した時には結果だけでなく過程にも目を向ける
多くの人は、失敗という結果に落ち込むことで自信をなくし、失敗までの過程に目を向ける気力を失ってしまう傾向にあります。しかし、失敗を自分の成長の糧とするためには、失敗した理由や過程を見つめなおし、次回からの取り組みに反省点を反映させることが重要です。 失敗して落ち込むのは仕方がないですが、少し時間が立ったら自分自身を内省して、今後のアプローチに改善を加えるようにしてください。
小さな成功体験を積み重ねることで自信をつける
グロースマインドセットは、失敗をおそれずに挑戦する傾向がありますが、自己肯定感を高めることで、挑戦に対して積極的な姿勢が生まれる可能性があります。そのためには、日常において小さな成功体験を積み重ねて、周囲から認められるなかで、自信をつけていくことが重要です。 毎日、自分で自分をほめるようにすると同時に、職場のメンバーがお互いに声を掛け合い、功績を認め合う取り組みが効果的といえます。
タレントマネジメントを意識する
タレントマネジメントとは、従業員が持つスキルや技術、得意分野を把握して、適材適所へ人材配置をして、育成させるマネジメント手法です。誰にでも得意なことがあれば、苦手なこともあります。個人の能力を十分に発揮できない部署に配属し続けていると、従業員は活躍できず、自己肯定感も高まりません。そのようなことがないように、人事側は定期的に人材の配置を見直すようにしてください。人事異動によって、今まで目立たなかった人が活躍するようになったというのはよくある話です。
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■資料内容抜粋
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06グロースマインドセットを育成するならSchoo for Business
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(一社)日本ポジティブ心理学協会認定レジリエンス・トレーナー
外資系IT企業、ITベンチャーの創業メンバーとして、システムエンジニア、プロジェクトリーダ/マネージャ、社員育成の企画/運用などに従事。IT業界で10年間働いた後、無農薬・無化学肥料で作る野菜農家になる夢を実現させるため、山梨県へ移住して1年間農家修行を行う。しかし、家庭の事情により農家になる夢を断念しIT業界へ戻る。 社員育成の経験、夢の実現を目指した経験から「充実した人生を創りたい人をサポートしたい」という想いを強く抱き、コーチング、ポジティブ心理学、そしてレジリエンスを学ぶ。現在はIT業界での仕事を続けながら、レジリエンス・トレーナー、ビジネスコーチとして活動。レジリエンスを高めることが折れない心を作ること、さらには夢や目標を達成するためにも大きな効果があると実感し、特にレジリエンス講座の開催に力を入れている。
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【コース全体で学べること】
① ポジティブだと何が良いのか?
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経営コンサルタント
アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。 企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。「日経ビジネス」「東洋経済」「PRESIDENT」など、各種ビジネス誌への寄稿、多数のメディアでの取材経験がある。
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すべての経験を学びにする「内省」の技術
皆さんは、自身の仕事や生活においてどのくらい「振り返り」をしていますか。振り返ることは大事だと分かりつつも、なかなか実践できていないという人も多いのではないでしょうか。 振り返ることの目的は、あらゆる経験を学びに変え、未来に活かすことです。自分自身の経験を価値あるものにするためには、振り返ること、つまり内省すること(リフレクション)が欠かせません。 内省することはスキルであり、経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」の中でも、あらゆるスキル習得の前提となる力として注目されています。本授業では、内省する技術を学ぶ入門編として基本的なメソッドを学びます。
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一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事
ハーバード大学経営大学院でMBA取得後、金融機関金庫設備の熊平製作所・取締役経営企画室長などを務めた後、日本マクドナルド創業者に師事し、新規事業開発を行う。昭和女子大学キャリアカレッジでは、ダイバシティおよび働き方改革の推進、一般社団法人21世紀学び研究所ではリフレクションの普及、一般財団法人クマヒラセキュリティ財団ではシチズンシップ教育に取り組む。Learning For All等教育NPO活動にも参画。
07まとめ
グロースマインドセットは、実践している人物の成長度合いとスピードを高めるばかりでなく、周囲の人間に良好な影響を与えて、企業全体の士気と生産性が向上するメリットが存在します。無意識のうちに行っているマインドセットを変化させることは、容易いものではありません。自分の内面を見つめてマインドセットの傾向を把握し、グロースマインドセットを習慣化する取り組みを重ねていきましょう。