公開日:2021/09/09
更新日:2022/12/19

コアコンピタンスとは?見極めるための5つの視点とその手順について解説する

コアコンピタンスとは?見極めるための5つの視点とその手順について解説する | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

企業の強みを意味する「コアコンピタンス」とは、どのような役割があるのでしょうか。本記事では、コアコンピタンスが持つ意味や類似用語の違い、見極めるための5つの視点、その具体的な手順について解説しています。

 

01コアコンピタンスとは

コアコンピタンスとは、G・ハメルとC・Kプラハラードの著書『コア・コンピタンス経営』(日本経済新聞出版社、1995年)によって広められた概念で、「他社に真似できない核となる能力」の意味です。国内の事例では、「ホンダのエンジン技術」「ソニーの小型化技術」「シャープの液晶技術」が有名です。コアコンピタンスは、成功を生み出す能力であり、競争優位の要因となる側面を持っています。コアコンピタンスに該当するかは、「顧客に対して何らかの利益をもたらす能力」「競合他社が真似できない、真似されにくい能力」「複数の市場や製品にアプローチできる能力」を満たす事が必要とされます。

ケイパビリティとの違い

類似用語にケイパビリティがあります。ケイバビリティとは、「企業がもつ組織的な能力」「企業にある固有の組織的な強み」のことです。ケイバビリティは経営戦略を構成する重要な概念です。どちらも競争優位の要因になりますが、ケイバビリティが組織にフォーカスしているのに対してコアコンピタンスは、技術にフォーカスしている点に違いがあります。どちらも、競争優位の上では大きな源泉となり企業経営においては重要な要素です。

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コアコンピタンス経営とは

ものづくりを行う企業で特に活かすことができるのが「コアコンピタンス経営」です。コアコンピタンス経営とは、自社の優位性を活かして、市場において地位を確保する経営手法です。複数の商品や分野に応用できたり、顧客の利益が大きい、他者が真似しづらいといった要素が条件として求められます。

 

02コアコンピタンスの3つの特徴

他社より優れた能力である自社のコアコンピタンスを分析した上で、経営戦略に活かしていくことをコアコンピタンス経営と呼びます。コアコンピタンス経営は、ビジネスの成功には必須の経営方法であるとされ、ビジネスシーンでは多用される用語です。次に、企業が目指すコアコンピタンス経営において、その活動がコアコンピタンスであるとするのに必要とされる主な条件について解説していきます。

顧客に何らかの利益をもたらす自社能力

「顧客に利益やメリットを与える能力である」が必要な理由は、他社より優れた能力や強みであっても、顧客にとっての利益を提供しなければ、自社の利益につながらないからです。具体的には他社には真似ができない高いレベルの開発力や技術力があっても、その技術を活用できなければ意味はありません。その開発力、技術力を用いて他社の製品にはない機能や付加価値がある製品を提供することで、顧客の利益につなげていく能力を指します。

競合相手に真似されにくい自社能力

競合他社が簡単に真似することができない能力や強みであることもコアコンピタンス経営には必要です。企業独自の能力を生み出すことができても、競合相手が簡単に真似されては、コアコンピタンスにはなりません。コアコンピタンスとは、他社を寄せつけない圧倒的な能力でありビジネスチャンスが他社参入がある分野では、他社に真似されない能力であることが前提となり競争力のもとになります。

複数の商品・市場に推進できる自社能力

複数の商品や市場で通用する能力であることも必要です。1つの市場、1つの商品でしか利用できない能力は、ビジネス環境の変化に弱く競争力を持ちにくくなります。そのため、応用できる能力も必要です。例えば、ブランド力が強い企業は、いくつもの産業に参画してもビジネス展開が可能であり、競争力を持つことが可能だと理解しておきましょう。

 

03コアコンピタンスを見極める5つの視点

真のコアコンピタンスには5つの視点が必要です。次にコアコンピタンスの質を見極めるために5つの視点について解説します。この5つすべてをトクリアすることで真のコアコンピタンスであることが分かり、自社のコアを把握することが可能です。コアコンピタンス見極めは慎重に行うことが必要なため、5つの視点を正しく理解しましょう。

模倣可能性(Imitability)

模倣可能性(Imitability)とは「保有している技術や特性が、その分野で競合している他社に簡単に真似できるものかどうか」に関する視点です。「他社による模倣の可能性が低い」「特定の分野で自社に追いつくことは困難」という場合には、その分野での優位性があることになります。他社に簡単に模倣されては、模倣可能性が高いという結論となりコアコンピタンスがあるとはいえません。市場を独占できるような高度な技術や製品こそが、コアコンピタンスとなります。

移動可能性(Transferability)

コアコンピタンスを見極めるには、移動可能性(Transferability)という視点が必要です。移動可能性とは、「一つの技術で多くの製品や多方面の分野に応用が可能」「幅広い展開が期待できる」などの視点を指します。一つの技術やサービスが単体で完結するのではなく他の分野や商品にも応用できる汎用性が必要になります。

代替可能性(Substitutability)

コアコンピタンスを見極めるには、代替可能性(Substitutability)という視点も必要です。「自社の強みと考える技術や能力、そして製品を別のものに置き換えできない」という視点などを指します。他には代えられない技術力やオリジナリティがあるコアコンピタンスを持った企業は、その分野において独占的なシェアを保有できる可能性をもっています。

希少性(Scarcity)

コアコンピタンスを見極めるには、希少性(Scarcit)も必要です。希少とは、「数が少なく珍しいこと」を指す言葉ですが、コアコンピタンスにおいては、「技術や特性が珍しい」「希少価値がその技術や特性などに存在している」などの視点を指します。一般的には「代替の可能性」「模倣の可能性」を満たしていることで、希少性を持っていると判断できます。「代替の可能性」「模倣の可能性」「希少性」という3つの視点を持つこと、そのスコアを高い位置で維持できることは、市場におけるアドバンテージを保有することになります。

耐久性(Durability)

コアコンピタンスを見極めるための耐久性(Durability)の視点とは「短期間で強みが消滅しない」「長期間、他社の追随を許さない競争的優位性を保つ」などの意味です。耐久性が高ければ高いほど、コアコンピタンスの価値や信頼性が保証されます。現代社会の移り変わりは非常に激しく、その中で耐久性を保持し続けることは難しいとされてえいます。分ランド力があることでの耐久性は維持できても、商品の価値という意味の耐久性を維持することは非常に難しくなっている点に注意が必要です。

 

04コアコンピタンスを見極めるステップ

次に、自社のコアコンピタンスを見極める手順を解説します。見極めには、「強みの洗い出し」「強みの評価」「絞り込み」のステップを通して見極めを行いますが、見極めを誤ることには注意が必要です。安易な見極め、希望的な見極めを行うことは、企業損失を出すだけではなく企業成長も止めてしまう要素になりかねません。慎重に見極めを行うことを念頭に実施していきましょう。

自社の強みと弱みの整理

最初に行うのが、自社の強みと弱みの整理です。手法としては、SWOT分析などを用いることも有益な分析になります。SWOT分析とは、「Strength=強み」「Weakness=弱み」「Opportunity=機会」「Threat=脅威」を分析する手法です。自社の強みと弱みについては、今の状態で判断し、正確な情報をインプットして行う必要があります。これらを分析することにSWOT分析は最適な手法といえます。また、現状把握を行う上ではGAP分析を用い理想と現実との違いを把握し、弱みを見つけていきます。これらの分析は、1度行うことで完成ではありません。自社のコアコンピタンスを見極める上で重要な要素となることを理解し、繰り返し行い完成させていきます。

強みの評価

次に、強みの評価を行います。前述でご紹介しているコアコンピタンスを見極める5つの視点「模倣可能性(Imitability)」「移動可能性(Transferability)」「代替可能性(Substitutability)」「希少性(Scarcity)」「耐久性(Durability)」に加え、「 顧客に価値をもたらすか」「 競合他社に真似されにくいか」「 応用が利くか」の視点で深堀を行います。この工程も1度の分析で終わることではなく、繰り返し再考する必要があります。

絞り込み

「自社の強みと弱みの整理」「強みの評価」で精査されたものから、真のコアコンピタンスについての絞り込みを行います。この工程は非常に重要な意味を持ちます。ここでの選択は経営方針にも関わる重大な選択です。実際には、自社の将来や市場の未来を思い描きながら、経営陣と一緒に行うことが一般的です。一度定義したコアコンピタンスを大きく変更する頻度は少なく、これらをもとに市場参入を決めることを十分に理解して進めていくようにしましょう。

 

05コアコンピタンス戦略を実施する上で押さえておくべきポイント

コアコンピタンス戦略を実施する上で押さえておくべきポイントは大きく3つ存在します。ここではそれぞれについて解説していきます。

明確なビジョンの策定

企業として何を目指していくかといったビジョンを明確にすることはコアコンピタンスを確立する上で必須の項目です。会社全体として、1つの方向に進んでいくためにもまずは、社員一丸となってコアコンピタンスを確立していくようにしましょう。

優秀な人材育成

コアコンピタンスを確立するために、一人ひとりが持てる力を発揮し、社員間・部署間の連携をスムーズにする環境やシステムを整えましょう。また、社員個人の力を伸ばしていく人材育成も必須です。社内DXにより業務を効率化させたり、社員育成の制度を整備するなど行っていきましょう。

常に進化を続ける

コアコンピタンスを見つけることができても、他社に真似されてしまう可能性も少なくありません。そのため、会社として、技術投資や人材への投資など、研鑽を続けていく必要があるのです。また、新しい市場を探すことなども必須です。自社のコアコンピタンスを別の業界や市場に横展開し、進化を続けていく努力をおこなっていきましょう。

 

06コアコンピタンスの具体例・企業事例

コアコンピタンスが経営に活かされた事例について解説します。

本田技研工業

1970年、自動車の排気ガスによる大気汚染を規制する大気浄化法改正法が生まれ、厳しい基準をクリアした自動車しか販売を許可されなくなりました。これを好機ととらえたHONDAは、社内のリソースをほとんど注ぎ込み、低公害技術を駆使した新型エンジン「CVCC」を開発。アメリカ環境保全局の認定をクリアし、その後は、芝刈り機や除雪機など、他の製品にも横展開し、コアコンピタンスを確固たるものにしました。

シャープ

世界初の液晶電卓を開発した電機メーカーのシャープは、そこで培った液晶技術を活用して、テレビやデジカメ、スマートフォンなど、さまざまな製品を展開。液晶技術で業界のコアコンピタンスを得ました。

SONY

SONYは、テープレコーダーの小型化を追求し、ウォークマンを開発。大きなラジカセを持ち歩かずに外で音楽を聴くライフスタイルを作りました。これにより、小型化技術というコアコンピタンスを確立し、カメラやテレビなどにも横展開しています。

京セラ

京セラは、半導体、自動車、産業用機械などの幅広い分野で使われるファインセラミックスの分野において、コアコンピタンスを確立。自社の技術力を活かして、他社が参入困難な「絶縁セラミック」部品の供給に目をつけ、今では医療機器や宝飾品など、さまざまな製品の開発に寄与しています。

味の素

アミノ酸の研究・開発・生産から派生した先端バイオ・ファイン技術をコアコンピタンスとし、食品業界だけではなく、ヘルスケア業界にも技術を展開しています。また、独自の営業・マーケティング手法で海外のさまざまな人に合わせた製品を作ることで確固たるコアコンピタンスを築き上げています。

3M

アメリカに本社を置く世界的化学・電気素材メーカーの3Mは、自社の粘着剤やコーティング技術を生かし、セロハンテープを発明しました。粘着剤やコーティング技術をコアコンピタンスとして、今ではエレクトロニクスや化学素材にも活かされています。


 

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07まとめ

本記事では、コアコンピタンスをテーマにコアコンピタンスを決める5つの視点、見極めを行うステップについて解説しています。市場動向や顧客動向は著しく変化をしており、市場での優位性を維持することが、ますます難しくなっている時代です。だからこそ、自社の強み「コア」について精査し競争力を高める努力が必要になっています。本記事を参考に自社のコアコンピタンスを見極め、市場優位の位置を確立し、ビジネスの成功、企業成長に繋げていきましょう。

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