ヒューマンスキルとは?マネージャーに求められるスキルについて解説

仕事をスムーズに進められるか否かは、周囲との人間関係が大きく影響します。ヒューマンスキルは、良好な人間関係を構築・維持するために必須の普遍的スキルです。当記事では、特に部下を通して成果を求められるマネージャー層に不可欠なヒューマンスキルについて解説します。
- 01.ヒューマンスキルとは
- 02.ふたたび注目されるヒューマンスキル
- 03.ヒューマンスキルのメリット・デメリット
- 04.ヒューマンスキルの構成要素
- 05.マネージャーに必要なヒューマンスキル
- 06.ヒューマンスキルを高める取り組みとは
- 07.まとめ
01ヒューマンスキルとは
ヒューマンスキルは、「対人関係能力」とも呼ばれ、「他者との良好な人間関係を構築・維持するために必要な能力や技術」と定義されます。多くの仕事は周囲の人々との関わりを通じて進められます。仕事を円滑に進めるためには、業種・職種・立場に関係なく良好な人間関係が求められるのです。ヒューマンスキルは仕事をする上で、もっとも基本的で重要なスキルであるといえるのではないでしょうか。
カッツモデルにおけるヒューマンスキルの位置づけ
ハーバード大学の経営学者ロバート・カッツ氏はビジネススキルと人材の関係性について独自の理論を提唱しています。 ビジネススキルを、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」と分類、人材を「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」に分類しました。 カッツ氏は、ヒューマンスキルを経営層から現場で活躍する非管理職まで、すべての層で求められる普遍的なスキルであると位置づけしています。
テクニカルスキルとは
テクニカルスキルとは、実務を進めるために必要な技術的な能力です。ヒューマンスキルとテクニカルスキルは類似している用語のため、違いを持たずに利用されることも多々あります。厳密には、テクニカルスキルが業務を遂行するための専門的なスキルなのに対して、ヒューマンスキルは人間関係の構築など業務を遂行するために必要な人との関わりに関するスキルです。
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コンセプチュアルスキルとは
コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を的確にとらえることにより個人や組織の持つ可能性を最大限にまで高めることができる能力を指します。ロジカルシンキングなどを活用し、課題解決やイノベーションなどを実現することができます。
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マネージャーには必須のスキル
カッツ氏の理論は、ヒューマンスキルは経営層から非管理職まですべての階層に必要であると位置づけています。しかしヒューマンスキルは、特にミドルマネジメントの担い手としての中間管理職にもっとも求められるスキルなのではないでしょうか。 なぜならば中間管理職であるマネージャーは、経営層の方針をもとに部下を統率し、部下の力を結集して成果を上げる必要があるからです。
02ふたたび注目されるヒューマンスキル
近年、マネージャーのヒューマンスキルの重要性が見直されつつあります。理由の一つは、急激なビジネス環境の変化に対し、マネージャーは現場に近い立場で対応することを求められることです。もう一つは働き方や価値観の多様化により、さまざまな考えをもつ人材を活用し、成果を上げることを求められる機会が増えている点にあります。
ビジネス環境の急激な変化
環境が急激に変化していく現代では、既存のビジネスモデルは早いサイクルで変革を求められます。また、既存の考えがまったく通用しなくなるような現象に見舞われる可能性もあります。そのため、マネージャーには現場の情報を収集し、いち早く対応する役割が求められます。こうした環境において部下の意見を引き出し、まとめ上げていくために、ヒューマンスキルが必要となるのです。
多様性に対応するマネジメント力
企業が永続的に発展するためには、人材の育成と適切な活用が不可欠です。しかし現代では、人手不足への対応から非正規雇用や外国人など、さまざまな労働力を活用しなければ事業が運営できない状況があります。また若手人材においても価値観が多様化し、従来のようなトップダウン的な意思疎通が通用しなくなっています。このように、さまざまな考えをもつ人材に関わり、育成していくためにヒューマンスキルが必要となるのです。
03ヒューマンスキルのメリット・デメリット
注目されているヒューマンスキルですが、習得や運用におけるメリットとデメリットが存在します。次では、それぞれについて解説していくのでしっかりと押さえていきましょう。
メリット
ヒューマンスキルのメリットは大きく次の2つが挙げられます。
- ・風通しが良くなる
- ・顧客と良好な関係を構築できる
ヒューマンスキルが高いメンバーがいる組織は、組織内で良好な人間関係が構築できているため、風通しが良い傾向があります。そのため、気概に溢れ、結果的に業績に好影響を与えていくことができます。また、顧客や取引先が何を意図しているのかを理解することに長けているため、ヒューマンスキルが高く、交渉力やプレゼンテーション能力が高い傾向にあります。したがって、社外とも良好な人間関係を構築することができます。
デメリット
ヒューマンスキルは数値化が難しいため、客観的に評価することがしづらいというデメリットが存在します。また、採用するにしても見極めがしづらいものであるため、面接官の力量や相性に左右されてしまいます。
04ヒューマンスキルの構成要素
ヒューマンスキルは他者と良好な人間関係を構築・維持し、仕事を円滑に進めていくスキルです。ここからはヒューマンスキルを構成する7つの要素について詳しく見ていきます。 いずれの要素も、人と関わる上で欠かせない要素であるといえます。
1.コミュニケーションスキル
コミュニケーションはヒューマンスキルの根幹をなすスキルです。自分の考えを正しく伝え、相手の考えを理解することは仕事を円滑に進める上で非常に大切なことです。どんな人とも、ストレスなく良好な人間関係を築くために不可欠なスキルであるといえます。
2.傾聴のスキル
相手の話すことをしっかりと聴き、理解する傾聴力も重要なスキルです。多様な考えをもつメンバーの意見を引き出し集約するには、あらゆる工夫が求められます。相手に好意的な関心を寄せ、それが伝わるような態度で話を聴き、相手の考えを深いレベルで理解しようとする姿勢が必要です。
3.交渉のスキル
交渉力は取引先との折衝や部署間の調整、または部下の目標設定など、さまざまな場面で必要となるスキルです。一方的に自分の要求や意見を押し付けるのではなく、相手にとってもメリットがあるように妥協点を探る必要があります。相手の要望を読み取り、自身の要望も率直に伝わるような意思疎通を行う交渉のスキルが重要であるといえます。
4.プレゼンテーションスキル
プレゼンテーションスキルは自分の意志を正しく理解してもらうために必要です。目標を共有し協力して達成するためには、メンバーに対し目標に取り組むメリットを理解してもらう必要があります。メンバーの意識を統一するという点において、実務性が高いスキルです。
5.動機づけのスキル
動機づけのスキルは、相手の意欲を引き出すスキルであるといえます。何のために取り組むのか目的を明確に伝え、取り組むことで得られるメリットを意識させます。また相手に関心を寄せ、適度に支援やアドバイスすることで意欲を引き出していきます。
6.向上心
自らのスキルを磨き続ける能力が向上心です。メンバー個人に直接に働きかけるものではありませんが、向上心をもつ人材が組織にいることで、周囲に対しても良い影響を与えることがあります。マネージャーとしての言動に説得力をもたせる意味でも必要なスキルです。
7.リーダーシップ
上記6つのスキルを総合して発揮されるのがリーダーシップです。近年のリーダーシップの解釈は、「メンバーに対し目標達成のための道筋を示し、メンバーとともに目標を達成するスキル」とされています。メンバーを支援し、信頼関係のもと目標達成に向け行動するリーダーシップが求められるのです。
8.ファシリテーションスキル
傾聴や交渉、プレゼンテーション、リーダーシップといったスキルを総合して発揮するスキルとして、ファシリテーションスキルも挙げられます。ファシリテーションスキルは会議が円滑に進むようサポートするスキルです。会社やプロジェクトが掲げる目標やミッションを示し、チームを牽引する役割であるリーダーシップに対して、メンバーを支援することが求められるのがファシリテーションです。
05マネージャーに必要なヒューマンスキル
ここまでヒューマンスキルの構成要素について見てきました。マネージャーとして任務を遂行するにあたり、これらの要素をどのように発揮すれば良いのでしょうか。 人間関係が円滑で成果を出しつづけるチームを構築する過程に沿って見ていきます。
関係性を構築するスキル
チームを作るにはまず、メンバーとの関係性を構築する必要があります。一人ひとりのメンバーと密なコミュニケーションを図り、意見やアイデアを傾聴することで人間関係を築いていきます。普段の挨拶や何気ない会話を大切にし、些細なことでも率直に意見交換ができる信頼関係を育む段階です。
説得力に関わるスキル
メンバーにチームが達成すべき目標を共有し、行動を促すためにはプレゼンテーションスキルが必要となります。ときには方針に理解を示さないメンバーがいる場合もあります。こうした場合は、交渉力を発揮して粘り強く理解を促さなくてはなりません。こうした局面でマネージャーの普段の向上心あふれる態度が説得力として機能します。
チームをまとめるスキル
チームとして成果を出しつづけるには、メンバーに目標達成に向けた動機づけを行い、力を存分に発揮してもらう必要があります。リーダーシップを発揮し、メンバーの士気を高めることで目標達成の可能性は高まります。組織の活性化には、人をまとめ上げる力は必須であるといえます。
06ヒューマンスキルを高める取り組みとは
これからの時代において、ヒューマンスキルは重要度を増してきます。しかし、ヒューマンスキルを身につけ、向上させるには、単発の研修やセミナーで知識を学ぶといった取り組みだけでは難しいと思われます。 日々の業務や日常生活における人との関わりで生じる気づきや、失敗・成功体験の蓄積によりヒューマンスキルは構築されます。こうした経験を理論として理解し、自身のスキル向上に役立てるには、継続的な研修等で振り返りの機会をもち、新たな気づきを得ることが必要になります。
定期的な研修の実施
マネージャーをはじめ従業員のヒューマンスキルを高める企業の取り組みとしては、まず研修を定期的に実施することから始めてみてはどうでしょうか。 こうした研修を定期的に行うことで、ヒューマンスキルの存在とその重要性を認識してもらい、日々の業務に活かしてもらうのです。 定期的に行う理由については前述の通り、振り返りの機会をもつことが一つあります。またマネージャーに昇格するタイミングで、「効果的な面談の方法」などの具体的なテクニックを学ぶことがもう一つの理由です。マネージャーとなる人物に、部下との関わりに苦手意識をもたせないというような工夫が求められます。
面談の機会を増やす
定期的な面談を、会社の取り組みとして実施することも効果的です。制度として構築し、マネージャーは「必ず週に1回、担当するすべての部下と30分の面談を行う」といった取り組みを行います。頻繁に1対1の面談を繰り返し、部下と向き合うことに時間を費やせば、おのずとヒューマンスキルは磨かれていくでしょう。 また、部下の側も面談により上司と話したことで、悩みが解消したり停滞していた業務がスムーズに進むようになったりと、メリットを実感できます。こうした経験があれば、将来、自分が部下をもつ立場になったときに、自分も実践しようという気持ちになるものです。 こうした良い循環が、人間関係が良好な組織風土の構築に貢献するのではないでしょうか。
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07まとめ
この先、企業が永続的に発展していくためには、従業員のヒューマンスキルを向上させることは不可欠です。当記事で触れたとおり、ヒューマンスキルは簡単に強化できるものではありません。長い年月をかけて組織の風土として育んでいく必要があるものです。働きやすい企業を目指し、できるだけ早い取り組みを検討してはいかがでしょうか。