テクニカルスキル(業務遂行能力)とは?スキルの主な特徴と高めるための方法について解説する

テクニカルスキルとは、業務を円滑に進めるために必要とされるスキルで、業務遂行能力とも呼ばれます。では、テクニカルスキルには、具体的にどのようなものが該当するのでしょうか。本記事では、テクニカルスキルの主な種類や特徴、また従業員がテクニカルスキルを高める方法について解説します。
- 01.テクニカルスキルとは
- 02.テクニカルスキルが求められる人材とは
- 03.テクニカルスキルの主な種類とは
- 04.テクニカルスキルの具体的な例とは
- 05.テクニカルスキルを高めるメリットとは
- 06.テクニカルスキルを高めるデメリット
- 07.テクニカルスキルを高める方法
- 08.テクニカルスキルを高めるコツ
- 09.まとめ
01テクニカルスキルとは
テクニカルスキル(業務遂行能力)とは、与えられた職務を遂行するために欠かせない知識や技術、技術熟練度のことを指しています。この考え方は、ハーバード大学のロバート・カッツ教授(Robert L. Katz)が1955年に発表した論文『スキル・アプローチによる優秀な管理者への道(Skills of an Effective Administrator)』の中で定義付けらたビジネス用語です。ロバートは、管理者に必要なビジネススキル(仕事力)の1つとして提唱したことにより、世界的に浸透をしています。
ヒューマンスキルとは
ヒューマンスキルとは、個々人が持つ能力(知識や経験)を指します。業務を遂行する上で必要となる能力を総称して呼ぶ場合もあります。テクニカルスキルとは類似している用語であり、2つに違いを持たさず利用されることも多々あります。2つの違いは、保有しているスキルであるのか、業務を遂行するためのスキルであるかです。このように、利用シーンに応じた使い分けを行う必要があります。
コンセプチュアルスキルとは
コンセプチュアルスキルとは、物事の本質を的確にとらえることにより個人や組織の持つ可能性を最大限にまで高めることができる能力を指します。日本語では「概念化能力」と訳されビジネスシーンで利用されます。コンセプチュアルスキルについては、物事の本質を見極めるためにロジカルシンキングなどを活用していくことが一般的だとされています。
02テクニカルスキルが求められる人材とは
前述したテクニカルスキルを含む3つのスキルは、人材ごとに求められる割合が異なります。それぞれロワーマネジメント(監督者)、ミドルマネジメント(管理職)、トップマネジメント(経営陣)の3種類の人材の層に分けられ、このことを「カッツ・モデル」と言います。テクニカルスキルが主に求められるのは、現場で業務を遂行することの多い係長、主任、チーフといった「ロワーマネジメント」です。もちろん3つのスキル全てがどの階層でも必要になりますが、現場に近づくほど顧客の対応や商品開発などでテクニカルスキルが求められるため、ロワーマネジメントでは特に高い割合で必要になります。逆にミドルマネジメント、トップマネジメントと現場から離れ、経営側に近づくほど高い割合で求められるのがコンセプチュアルスキルです。ヒューマンスキルに関しては、3つの階層いずれも同様の割合で求められます。
03テクニカルスキルの主な種類とは
テクニカルスキルは、大きく分けて3つのスキル特性に整理できると言われています。「汎用スキル」「専門スキル」「特化スキル」については、その特性に特徴があります。ここでは、この3つのスキルの特性について解説していきます。テクニカルスキルについては、ここでご紹介している3つのカテゴリで整理することができます。
汎用スキル
汎用スキルとは、テクニカルスキルの中でも基礎となるスキルであり、日常の業務を行う上でも必要となるスキルといえます。主に、業務を行う上での業務知識や商品知識を指しますが、ビジネスマナーやPC操作なども含めるとされています。汎用スキルとは、業務を行う上で、そして社会人としての基礎スキルと理解しておくと分かり易いのではないでしょうか。こうしたスキルは、社歴やポジションに関係なく広く利用できるスキルです。そのため、汎用スキルとよばれ区別されています。
専門スキル
汎用スキルの上位に位置するのが専門スキルです。専門スキルとは、業務などにおける専門性の高いスキルのことを指します。人事部門においては、給料計算だけではなく、法律的な知識などもここに位置付けられます。業務を行う上で、専門性をもって担当できるスキルを専門スキルと呼び、汎用スキルとは分けて考えることができます。このように、汎用スキルではなく業務に特化したスキルを専門スキルと呼び、このスキルが高ければ高いほど、専門性の高い業務をこなすことが可能です。
特化スキル
特化スキルとは、業界においても市場性の高いスキルを指します。業界においても追従することが難しい、保有している人が少ない特殊なスキルと称されます。このスキルを保有している人材が多ければ、業界における優位性は格段に上がります。しかし、その人材はスキルチェンジを行うことが難しいとも言われているため、その汎用性は低くなるといった弱点があります。
04テクニカルスキルの具体的な例とは
次に、テクニカルスキルと呼ばれるスキルを具体的に紹介していきます。テクニカルスキルはいくつものスキルの総称として呼ばれます。そこで、より具体的な事例としてご紹介していきます。テクニカルスキルの内容を理解することで、人材育成の観点を整理していくことも可能になると理解していきましょう。
商品知識
業務を行うには、自分が扱う商品知識を保有している必要があります。自分が扱う商品とは、形のあるものだけではありません。サービスなども含まれます。人事部門においては、入退社処理や給料計算などの方法も提供するサービスに含まれると考えておくと分かり易いのではないでしょうか。このように、自分が行うサービスや商品についての知識が無ければ業務を担当することができないと理解しておきましょう。
市場理解
自社がサービスや商品を展開している市場や業界の理解もテクニカルスキルの1つになります。どのような領域でビジネスを展開しているかを知らなければ、業界の中で生きのこることはできません。また、競合との差別化を行う競争力も弱くなってしまうため、業界の情報は常に意識して収集し他社との差別化を促進できる競争力を高めていく活動をしていきましょう。
分析力
分析力とは、業務の改善や課題の解決に必要となる能力です。この能力がなければ、業務の効果的な方法や本質を見極めることができません。分析力の基礎となるのは、基本となる業務を理解していることが必要になります。本来あるべき姿と実態の差などを客観的な視点で整理する能力を分析力として捉え、課題発生時などにも活用していくと理解しておきましょう。
ビジネスマナー
ビジネスマナーは、社内外で信頼を得るのに必須のスキルです。どれだけ他のスキルがあろうと、礼儀作法ができていなければ他者からの信頼を得ることはできません。また、従業員一人ひとりの態度・言動は個人だけでなく、所属する組織への信頼度にも影響します。特に現在はコロナ渦によるオンラインでのコミュニケーションの普及で、対面とは異なるマナーでの対応を求められることもあり注意が必要です。立場や職種に限らず、ビジネスマナーは必ず身につけておくべきテクニカルスキルと言えるでしょう。
文章作成能力
文章作成能力も、テクニカルスキルにあたります。具体的には、相手に伝えたい情報をわかりやすくまとめる能力です。事務などの書類作成が多い部署で特に求められるイメージが強いですが、社内外への報告・プレゼンや、メールやチャットでのコミュニケーションなど、様々な場面で求められます。高いレベルで業務を行うためには必須とも言える、重要なテクニカルスキルです。
マネジメント能力
業務運営を行う上で必要となるマネジメント能力もテクニカルスキルの要素になります。ここでいうマネジメント能力は、組織の運営を行うマネジメントのみではありません。自己管理を行い、業務を円滑に行うためのスキルもマネジメント能力の一環として考えておくことが必要です。このマネジメント能力は、自己、他社ともに管理を行うことを指しますが、まずは自己管理能力から身に付けていくことが重要と言えるでしょう。
05テクニカルスキルを高めるメリットとは
次に、テクニカルスキルを高めるメリットについて解説していきます。テクニカルスキルを保有している人材が増えることで、どのようなメリットがあるのか確認していきましょう。
業務ノウハウの蓄積による競争力の強化
テクニカルスキルを保有しているということは、商品知識を保有し業界に精通している人材がいるということです。こうした人材が増えれば増えるほど、業務ノウハウを社内に蓄積しより競争力を強化することが可能になります。競争力が高まることで、企業のブランド力の強化、優位性が高くなります。
スムーズな業務運営による生産性向上
ノウハウだけはなく、業務運営に必要なスキル向上は、生産性の向上、精度の向上にも関係していきます。業務スキルが高い人材の集団が構築できれば、その分、円滑な業務運営が可能になります。こうしたスムーズな業務は生産性に大きく影響するだけではなく、業務の精度の向上、そして、企業成長にも大きく寄与することが期待できます。
新しいサービスやアイデアの創出
業務の円滑な運営には、新しいサービスやアイデアの創出にも寄与します。業務が円滑に運営されることで、新たな発見や気付きを生むことが期待できるでしょう。こうした気付きは、新サービスの創出に大きな期待を持つことができます。アイデアの創出については、自発的な意見を発信しやすい環境がなければ実現には至りません。高いテクニカルスキルを保有した人材の集団においては、ディスカッションを通した意見交換の場を作ることも可能になります。
意欲的な業務への取り組み
意欲的に業務へ取り組めるようにもなることも、テクニカルスキルを高めるメリットです。業務に関する知識・技術を習得することで、意思決定の裁量が大きくなり、自分の意見・考えを業務により反映できるようになります。自分で考えて仕事を進められることはモチベーションの向上につながり、意欲的に業務に取り組めるようになるでしょう。
顧客満足度の向上
テクニカルスキルが高まれば、顧客の満足度を向上させられます。顧客への迅速・丁寧な対応や高品質な商品・サービスの提供ができれば、顧客は満足感を抱き、積み重なれば組織全体の評判を上げることが可能です。逆に、低いスキルでの業務は顧客に不信感を与えることになり、組織全体の評価を下げることにつながります。顧客満足度の向上は、ビジネスを行う上でテクニカルスキルを高める大きなメリットの一つです。
円滑なコミュニケーションの実現
テクニカルスキルの中には、コミュニケーション力も向上し活発な意見交換や情報交換を実現できる能力が含まれています。業務を行うには、関係者でのコミュニケーション能力が必須です。反対に、能力が不足していると円滑な業務運営はできないとさえいえます。コミュニケーションスキルは、円滑な業務だけではなく人間関係や信頼関係の構築にも必要となる点を踏まえると、業務運営には欠かせない要素だといえます。
06テクニカルスキルを高めるデメリット
テクニカルスキルを高めるのには、デメリットも存在します。メリットだけでなく、こちらも理解しておくことが重要です。以下より、どのようなデメリットがあるのか解説していきます。
研修の参加により業務へ支障が出る
テクニカルスキル向上のために研修に参加することで、業務の進捗に支障が出る可能性があります。従業員のテクニカルスキルを高めるとなると、研修などで時間をとる場合が多いです。一度に多くの従業員が研修に参加してしまうと、工数や人材の不足から、業務に影響が出て円滑に進まなくなってしまうことがあります。そういった事態に陥らないためにも、研修実施時にはあらかじめ業務の状況を見直して、スケジュールや人員を調整しておくことが重要です。
スキルに偏りが発生する
テクニカルスキルだけを向上させてしまうと、スキルに偏りが発生してしまうこともデメリットとして挙げられます。前述したように、テクニカルスキルを高めるメリットは多くあります。しかし、テクニカルスキルのみを高めて、他のスキルを軽視してしまうことはよろしくありません。現場で発揮できる知識・技術を高いレベルで備えていても、ヒューマンスキルがないと円滑なコミュニケーションが取れず、コンセプチュアルスキルがなければ将来的に経営を任せられる人材となりません。どのような立場であろうと、いずれも重要なスキルです。一つのスキルだけを高めるのではなく、偏りが出ないようにスキルを向上させていくことが大切です。
07テクニカルスキルを高める方法
次に、テクニカルスキルを高める方法について解説していきます。既に、テクニカルスキルがもたらすメリットについてご紹介しています。こうしたメリットを得るためには、手順を明確にした計画を立案しスキル向上をはかる必要があります。ここでご紹介している内容を参考にして頂き、自社のテクニカルスキル向上の具体的な計画を立案していきましょう。
業務別テクニカルスキルの整理
まずは、業務の種類別に必要となるテクニカルスキルを整理することからはじめます。業務により必要となる商品知識などに違いが出ることや、業務において必要スキルが異なるためです。こうした整理には、時間を要するもののその後の人材育成にも影響を与えることを考慮し、複数の視点を持ってでスキルの整理をしていきましょう。
習熟レベルの整理とスキルマップの作成
次に、整理したスキルのレベル(習熟レベル)の整理を行い、スキルマップの作成を行っていきます。ここでいうスキルマップは、汎用スキル、専門スキル、特化スキルの区分けも整理の軸として利用し整理を行うことで、より分かり易くなります。また、作成したスキルマップは社内にも公開し、従業員個々人で何を目指すべきかが分かる仕組み作りも行う必要があります。
個別のスキルアップ計画の作成
共通のスキルマップが作成できれば、従業員個々人に合わせたスキルアップ計画を立案していきます。現状保有しているスキルとレベル、不足しているスキルを整理し不足しているスキルに焦点をあてた計画を作成します。こうすることで、個々人レベルの標準化を促進し、より具体的なスキルアップ計画を立案することができます。
研修を通じてスキルアップを図る
最後に、実際のスキルアップを図っていきます。社内、社外研修の活用、書籍などによる自己啓発などスキルアップを行う方法は多数あります。何をもってスキルアップすることが有益であるかを判断し、計画立案と実施を促進します。スキルアップするためには、一定の時間を要するため、中期間ごとチェックポイントや振り返りの時間を設け、計画的、段階的にスキルアップを図る計画策定しましょう。また、研修にもいくつか種類があるため、業務に支障がでないように状況にあったものを実施することが重要です。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

OJT
「OJT」は、社内で実施する実践的な研修方法です。経験があり高い技術・知識を持つ従業員から、実践を通じて直接指導を受ける方法のため、業務を実施しながらテクニカルスキルを高められます。ただし、成果は指導者の能力に左右されやすく、相性次第で人間関係に問題が発生する場合もありますので、人選には注意が必要です。
Off-JT
「Off-JT」は、社外で体系的に学習できる研修方法です。社外の指導者の元で技術・知識を学ぶため、自社にはないノウハウを身につけることができ、汎用性・専門性の高いスキルを習得できます。社外での研修中は自社の業務に取り組めないため、あらかじめスケジュールや人員の調整が必要になります。
eラーニング
「eラーニング」は、PCやモバイル機器を使用して行う研修方法です。時間や場所に縛られることなく学習できる方法で、業務の合間や空き時間を活用して実施できます。また、テキストや人件費のコストを抑えられることや、対象者のそれぞれのレベルに合わせて教育を施せるのもメリットです。便利な方法ではありますが、直接指導者が対面で教えるわけではないため、研修内容に限界があることは理解しておく必要があります。
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08テクニカルスキルを高めるコツ
テクニカルスキルを高めるコツとして、自分の持つスキルを客観的に見ることが重要になります。業務に必要なスキルを把握し、自分がどれだけ習得できているかを、周りの人物の意見を参考に客観的に評価しましょう。そうすると、自分が高いレベルで持っているスキルと、足りていないスキルが見えてきます。そこからは高いスキルをさらに伸ばしていくのか、足りないスキルを向上させるのか、どちらが業務に必要なのかを考えたうえで、研修などでスキルを高めていきましょう。テクニカルスキルの向上には、主観的な評価だけではなく、客観的な評価を取り入れることが大切です。
09まとめ
本記事では、テクニカルスキルとは何か、そのメリットやスキルアップの方法について解説しています。テクニカルスキルを保有している人材が多いことは、企業の業務運営がスムーズに行われるだけではなく企業成長にも期待できます。本記事を参考に自社におけるテクニカルスキルの定義やそのレベルアップについての計画を立案し実践することで、競争力の高い企業を目指していきましょう。