当事者意識とは?組織強化に不可欠な従業員の当事者意識について解説

従業員が受け身になりやすい、自分ごととして動いてくれないといった課題を感じている経営者や人事担当者、管理職の方は少なくありません。当事者意識は個人の資質の問題として捉えられがちですが、実際には組織の仕組みや風土によって大きく左右されるものです。本記事では、当事者意識の意味や関連用語との違い、組織で当事者意識が低くなる要因、従業員の主体性を引き出すための高め方について解説します。
01当事者意識とは
当事者意識とは、目の前の仕事や組織の課題を「自分に関わる重要なこと」として捉える意識のことです。仕事や課題を自分に関わるものとして受け止めることで、自ら考え、行動しようとする姿勢につながります。
就労者の当事者意識について概念整理を行った研究では、仕事に対する当事者意識の定義は学術的に定まっていない点に触れた上で、「ある事象や事柄を、職務や役職、責任範囲にかかわらず自身に関わる、ないし関わりうる重要事として捉える意識、心理的状態」と整理しています。担当かどうか、責任があるかどうかにかかわらず、目の前の事柄を「自分に関わる重要なこと」として受け止めている点がポイントです。
▼参考:神吉直人(2025)『就労者の「仕事に対する当事者意識」概念の検討』|『追手門経営論集』31(1), 1-18
当事者意識と関連用語の違い
当事者意識と似た言葉として、主体性・責任感・オーナーシップ・自分ごと化・自律性といった言葉があります。ここでは、「当事者意識」への理解を深めるために、類似する用語の意味と関係を整理します。
| 用語 | 意味・ニュアンス | 当事者意識との関係 |
|---|---|---|
| 当事者意識 | 職務や責任範囲にかかわらず、事柄を「自分に関わる重要事」として捉える意識・心理状態 | — |
| 自分ごと化 | 物事を自分に関わることとして捉えること | 当事者意識の重要な構成要素。物事を自分ごととして捉えることは、当事者意識の中心的な側面 |
| 責任感 | 事柄に対する自分の責任を果たそうとする気持ち | 当事者意識の構成要素。直接の責任がない事柄にも責任を感じる姿勢は、当事者意識の表れといえる |
| 主体性 | 自分の意志・判断で行動しようとする態度 | 相互に影響し合う可能性。当事者意識は主体的な行動の土台になり得る一方、当事者意識があれば必ず主体的に行動するとは限らない |
| 自律性 | ・外部からの力に縛られず、自分で立てた規範に従って行動すること ・自分で自分を管理すること |
当事者意識を後押ししうる要素。自分で判断して働いている人ほど、結果を上司や組織のせいにせず、自分の問題として引き受けやすいと考えられる。ただし、上司の指示のもとで働いていても担当業務に当事者意識を持つことはあり、また裁量があっても仕事を他人事と捉える人もいるため、両者は同じものではない |
| 心理的所有 (オーナーシップ) |
対象を「自分のもの」であるかのように感じている状態 | 当事者意識の言い換えや英訳(sense of ownership)として使われることもあり、学術的にも当事者意識と同じものとして扱う見方がある。ただし、心理的所有は「対象をコントロールできる」という所有の感覚を含むため、自分ではコントロールできない事柄にも抱きうる当事者意識とは、完全には一致しない |
このように、自分ごと化と責任感は当事者意識を構成する要素ですが、どちらがどの程度表れるかは対象によって異なり、常に両方がそろうとは限りません。例えば、担当業務には自分ごととして前向きに取り組む一方で、その結果として生じる顧客や他部署の成果にまでは責任を感じない、というケースも考えられます。また、当事者意識は主体的な行動につながりやすいものの、当事者意識があるからといって必ず行動に移るとは限りません。
オーナーシップは当事者意識と重なる部分の大きい概念ですが、学術上の近接概念である心理的所有は、対象を「自分のもの」と感じる所有の感覚を含む点に特徴があります。そのため、同義語として使われることもありますが、自身が「所有している」と認識していない物事に対しても当事者意識は芽生え得る点で、区別されます。
02なぜ組織で当事者意識が課題になるのか
従業員の当事者意識は、組織の生産性や意思決定の質、モチベーションにも関係します。ここでは、当事者意識が組織に与える影響について解説します。
組織の成果・生産性との関係
市場や顧客ニーズの変化が速い環境では、上司がすべての状況を把握して指示を出すことは難しくなります。現場で起きている変化や問題に最初に気づくのは、多くの場合その仕事を担当している従業員です。そのため、従業員が指示を待つ姿勢のままでいると、管理者が逐一判断や指示を出さなければならず、管理負担が増えるうえ、本来注力すべき中長期的な戦略や組織づくりに時間を割きにくくなります。
一方、仕事を自分に関わる重要なこととして捉えている従業員は、気づいた問題を「担当外だから」と放置せずに対応したり、改善のための提案をしたりしやすくなります。こうした一人ひとりの小さな行動の積み重ねが、問題の早期発見や業務改善につながり、組織全体の対応力を高めます。反対に、「自分がやらなくても誰かがやるだろう」と考える人が増えると、課題は誰にも拾われないまま放置され、改善の機会が失われていきます。
当事者意識は、個人の心構えにとどまらず、組織の成果や生産性を左右する組織運営上のテーマだといえるでしょう。
自己決定理論やモチベーションマネジメントから見た重要性
当事者意識は、従業員のモチベーションという観点からも重要です。ここで参考になるのが、Deci & Ryanが提唱した「自己決定理論(Self-Determination Theory)」です。
自己決定理論では、人には「自律性」「有能感」「関係性」という3つの基本的心理欲求があり、これらが満たされることで、自らの意思に基づく自律的な動機づけが高まるとされています。自律性とは、自分の行動を自分で選び、決めていると感じられること。有能感とは、自分にはできる、成長していると感じられること。関係性とは、周囲の人とつながり、受け入れられていると感じられることを指します。
このうち、自律性と関係性の観点から、当事者意識の意義を考えることができます。仕事を自分に関わる重要なこととして捉え、その意義に納得して取り組むことは、「やらされている」のではなく「自分の意思で取り組んでいる」という感覚につながりえます。また、チームの業務や成果を自分ごととして捉え、メンバーと支え合う経験は、周囲とのつながりを実感する機会にもなるでしょう。
このように、当事者意識を持って仕事やチームに関わる経験は、自律性や関係性の欲求の充足を通じて、モチベーションを支える可能性があります。組織が従業員の当事者意識に向き合うことは、組織の成果だけでなく、一人ひとりが納得感やつながりを持って働くことを支える点でも、重要だといえるでしょう。
03当事者意識が低くなる組織的な要因
従業員の当事者意識が低いとき、その原因は本人の意欲だけでなく、組織の仕組みや風土にも目を向ける必要があります。ここでは、当事者意識が低くなりやすい代表的な組織要因を見ていきます。
役割・目標が不明確である
自分が何を期待されているのか、担当業務が組織の目標にどうつながっているのかが見えない状態では、仕事を自分のこととして捉えにくくなります。また、役割分担や責任の所在が曖昧な状態では、課題に対して自分がどのように関わるべきか判断しにくく、他の人に任せてしまうことも考えられます。
裏を返せば、組織が役割と目標を明確に示すことは、従業員が「自分の仕事の意味」を理解し、当事者意識を持って取り組むための土台になると言えるでしょう。
評価基準が不明瞭である
何をすれば評価されるのか、どのような行動が組織にとって望ましいのかが分からない状態も、当事者意識を下げる要因になりえます。例えば担当範囲を超えて動いたり、リスクを取って挑戦したりしても報われるかどうかが分からない場合、「言われたことだけを確実にこなす」ほうが合理的だという判断が広がってしまう可能性があります。
また、評価が上司の主観や好き嫌いで決まっていると感じられる場合、従業員の関心は仕事そのものよりも評価者の意向に向かいやすくなります。このような場合、物事を自分の責任で対応するよりも「上司の判断に委ねる」といった行動が促進され、結果に対しても「自分のせいではない」といった意識が芽生える可能性があります。
慢性的な業務過多で考える余裕がない
慢性的に業務量が多く、目の前のタスクを処理するだけで精一杯の状態では、「どうすればもっとよくなるか」を考える余裕そのものが失われます。当事者意識は目の前の事柄を自分に関わる重要事として受け止め、自分で考えて対応する余白があることで発揮されやすいものです。業務過多はこの余白を奪い、担当外の問題に気づいても「今はそれどころではない」と見送る行動を常態化させてしまう可能性があります。
挑戦や失敗が許容されない風土がある
当事者意識が高い従業員は、気づいた課題について提案したり、担当範囲を越えて協力したりすることがあります。ただし、こうした行動には、うまくいかないリスクもあります。その失敗や挑戦の過程を学びとして受け止められる職場であれば、挑戦を続けやすい一方、失敗が厳しく責められる職場では、従業員は慎重にならざるを得ません。
その結果、「自分の担当以外には関わらない」「前例のない提案は避ける」といった行動を取りやすくなります。この状態が続くと、問題を自分ごととして捉え、よりよい結果に向けて自ら関わろうとする姿勢が育ちにくくなるでしょう。
意思決定の機会が少ない・裁量が少ない
業務の進め方や優先順位がすべて上から決められ、現場に裁量がない状態では、従業員は自分の仕事を「自分で選んだもの」として認識しにくくなります。これは「自律性」が満たされにくい状況であり、仕事が「やらされているもの」になってしまいます。
意思決定の機会が少ないと、たとえ良いアイデアを持っていても提案する場がなく、次第に考えること自体を控えるようになる可能性があります。トップダウンの意思決定はスピード面でのメリットがある一方、現場の裁量や納得感が不足すると、当事者意識が育ちにくくなる場合があります。経営層・管理職は、どこまでを現場に任せ、どの部分を組織として決めるのかを意識的に設計することが重要です。
04当事者意識が低い人の特徴
当事者意識が低い状態は、日々の行動にいくつかの共通した傾向として表れます。ここでは代表的な特徴を整理しますが、これらは個人の資質というより、前章で述べた組織要因の結果として現れている場合も多い点に留意が必要です。
受け身・指示待ちになりやすい
当事者意識が低い人に見られやすいのが、指示がなければ動かないという行動パターンです。仕事を依頼されたら対応するものの、自ら課題を見つけて動いたり、「自分にできることはないか」と考えたりすることは少なく、判断が必要な場面では上司や周囲に委ねようとします。
目標達成に向けた工夫や改善に消極的である
当事者意識が低く、仕事が他人事になっている状態では、目標に対しても主体的に「どうやって達成するか」を考える姿勢が生まれにくくなります。
仕事は計画どおりに進むとは限りません。予定していた施策が思うように効果を上げなかったり、想定外のトラブルが起きたりすることは日常的にあります。当事者意識のある人は、こうした状況に直面したとき、「どうすれば目標に近づけるか」「今から自分にできることは何か」と対応策を考えようとします。
一方、当事者意識が低い状態では、「市場環境が悪かった」「他部署の協力が得られなかった」など、外部要因だけに目が向きやすくなります。その結果、自分にできる工夫や次の打ち手を考える前に、目標の未達を仕方のないこととして受け止めてしまうことがあります。
自分の担当範囲以外に関心を示さない
「それは自分の仕事ではない」という線引きが強くなり、担当外の業務や他部署の課題に関心を向けにくくなることがあります。チームや組織全体の課題を「他人ごと」として捉えることで、自分に割り当てられた範囲を守ることを優先しやすくなるためです。もちろん役割分担は必要ですが、境界を厳密に守ることばかりに意識が向くと、担当が決まっていない課題への対応が進まず、組織としての成果が損なわれる可能性があります。
意見を主張しない
会議や打ち合わせの場で自分の意見を述べず、決定事項に従うだけという姿勢も、当事者意識が低い状態にあるときのサインです。
仕事を自分ごととして捉えている人は、「このままでいいのだろうか」「もっとよい方法はないか」と考えながら仕事に向き合うため、さまざまな問題や改善点に気づきやすく、それを周囲に伝えたり、解決に向けて働きかけたりする行動につながりやすくなります。反対に、物事を他人事として捉えていると、問題に気づいたとしても「自分が口を出すことではない」と受け流してしまいます。その結果、気づいた問題や改善のための考えを、会議の場で伝えようとする姿勢が生まれにくくなります。
ただし、意見を出さない背景には、本人の当事者意識だけでなく、発言しにくい雰囲気や、意見を出しても受け止められない職場環境が影響している場合もあります。そのため、組織としては「なぜ意見が出ないのか」を個人の姿勢だけに求めるのではなく、安心して考えを共有できる場づくりもあわせて見直すことが重要です。
自分の利益を優先しがち
チームや組織の成果よりも、自分の評価や負担の軽減を優先する傾向が見られることもあります。例えば、手間のかかる仕事を避けたり、自分の評価につながる業務だけを選び、チームに必要な仕事を避けたりするといった行動です。組織の課題を「自分ごと」として捉えていないと、全体最適の視点を持ちにくくなるためです。
ただし、こうした行動は評価制度が「個人の成果だけを見る」設計になっている場合に強化されやすい点にも留意が必要です。
05従業員の当事者意識を高める方法とは
当事者意識は、単に「持とう」と呼びかけるだけで高まるものではありません。従業員が仕事を自分に関わる重要なこととして捉えられるよう、組織として環境を整えることが重要です。ここでは、経営者・人事・管理職が取り組める具体的な方法として、以下の6つを紹介します。
- 仕事と組織のつながりを明確にする
- 意見交換の場を設ける
- 評価基準を明確にする
- 失敗から学べる環境をつくる
- 強みを活かせる機会をつくる
- 主体的な行動を後押しする
仕事と組織のつながりを明確にする
当事者意識を育む出発点は、「何を期待されているのか」「その仕事が組織の目標にどうつながるのか」「なぜその目標が必要なのか」を明確に伝えることです。個人の目標と組織の目標がつながって見えることで、自分の仕事の意味が理解でき、「自分がやる理由」が生まれます。
また、個人の目標と組織の目標をつなぐうえでは、その上位にある企業理念やミッションへの理解も重要です。Schoo for Businessの授業『企業理念の自分ごと化チャレンジ』に登壇する阿部真弥先生は、理念の自分ごと化は、①背景理解、②解釈、③行動にうつす、という3つのステップによって成立すると説明しています。背景理解とは、理念が掲げられた背景や、外部環境・経営方針を理解することです。解釈とは、理念やパーパスと、個人のこだわり・価値観との重なりを見つけることを指します。そして最後に、理解し解釈した理念を、日々の行動に落とし込んでいくことが重要だとされています。
意見交換の場を設ける
従業員が自分の考えを表明し、それが受け止められる場をつくることは、当事者意識を高めるうえで有効な取り組みの一つです。具体的には、1on1ミーティングやチームでの対話の機会を定期的に設け、上司が聞き役に回ります。そのうえで、出た意見への考えや対応方針を伝えることで、「自分も組織の改善に関われている」という実感を得やすくなるでしょう。
一方、部下がなかなか意見が持てなかったり、考えを言葉にできなかったりすることもあります。そのような時に参考になるのが、部下の思考を促し、意見を引き出すコーチングのアプローチです。
Schoo for Businessの授業『リーダーのためのコーチング -主体性を促す質問力-』に登壇する本間達哉先生は、コーチングはアドバイスをする場ではない、と説明しています。アドバイスが有効なシーンはありますが、そこに偏ると相手が受け身になって、自分で考えることが少なくなってしまう可能性があります。「質問」を用いて相手に考える機会・話す機会を作り、視点を変えたり、増やしたりするサポートをすることは、自律的に考え、行動する力を養うことにつながります。
評価基準を明確にする
どのような行動や成果が評価されるのかを明示することで、従業員は安心して主体的に動きやすくなります。特に、担当範囲を超えた貢献や、結果に至らなかった挑戦のプロセスも評価対象に含めることで、「動いた人が報われる」というメッセージが組織に浸透しやすくなります。
評価基準の明確化は、評価者の主観への依存を減らし、従業員が過度に上司の顔色をうかがう状態を防ぐうえで有効です。評価の透明性と納得感は、従業員が安心して主体的に行動するための組織基盤になります。
<評価についてのSchooおすすめ授業>
評価基準を明確にするには、その前提として「自社は何のために評価を行い、どのような人を高く評価したいのか」という設計思想が定まっている必要があります。この思想が曖昧なまま、等級や給与テーブルといった制度の外側だけを整えても、従業員からは「結局は上司次第」と映り、評価への納得感は高まりにくいでしょう。
この授業では、株式会社キャスター取締役CROの石倉秀明先生を講師に迎え、自社ならではの人事評価基準を設計するときの考え方と、設計した評価を運用するうえでのポイントを学びます。
従業員が「何を頑張れば報われるのか」を理解し、安心して主体的に動ける評価制度をつくるためのヒントを学んでいきましょう。
『人事評価に"自社の基準"はあるか 設計思想の考え方から運用まで考える』
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株式会社キャスター取締役CRO
株式会社キャスター取締役CRO。(株)リクルートHRマーケティング入社。09年6月に当時5名の(株)リブセンスに転職し、ジョブセンスの事業責任者として入社から2年半で東証マザーズへ史上最年少社長の上場に貢献。その後、DeNAのEC事業本部で営業責任者ののち、新規事業、採用責任者を歴任し、2016年より現職。2019年7月より「bosyu」の新規事業責任者も兼任。
失敗から学べる環境をつくる
挑戦には失敗がつきものです。従業員に当事者意識を持って仕事を進めてほしいのであれば、組織には、挑戦に伴う失敗を責めるのではなく、学びとして扱う姿勢が求められます。気づいた課題について提案したり、担当範囲を越えて協力したりする行動には、うまくいかないリスクもあります。失敗が厳しく責められる環境では、従業員は慎重にならざるを得ません。
失敗から学べる組織をつくるうえで重要になるのが、心理的安全性です。Schoo for Businessの授業『チームの心理的安全性を高めよう』に登壇する井上洋市朗先生は、心理的安全性を「対人関係においてリスクのある行動をしても、このチームでは安全であるという、メンバーに共有された考え」と説明しています。また、無知だと思われる不安、無能だと思われる不安、邪魔をしていると思われる不安、ネガティブだと思われる不安の4つが、心理的安全性を下げる要因になると解説しています。
心理的安全性を高める方法としては、管理職がチームの目指す方向を明確に発信したうえで、失敗事例を責任追及ではなく学びの共有として振り返る場を設けたり、管理職自身が失敗をオープンに語ったりすることが有効です。こうした積み重ねが、「失敗しても学びとして扱われる」という安心感を生み、気づいた課題に自ら関わろうとする当事者意識の土台になります。
強みを活かせる機会をつくる
従業員の強みを活かせる業務や役割を任せることも、当事者意識を高めるうえで有効です。自分の得意なことや自然に力を発揮できる領域であれば、「自分なら貢献できる」という実感を持ちやすくなります。その実感は、仕事を単なる割り当てられた作業ではなく、自分が関わる意味のあるものとして捉えるきっかけになるでしょう。
また、得意なことを通じて周囲に貢献できているという感覚も、当事者意識を支える要素になります。自分の強みがチームの成果に役立っていると感じられれば、その仕事は「誰かの仕事」ではなく、「自分が力を発揮できる仕事」として受け止められやすくなります。
そのためには、上司が1on1や日々の観察を通じて、「この人はどのような場面で力を発揮しているのか」「どんな役割で周囲から頼られているのか」を把握することが重要です。そのうえで、「この分析はあなたに任せたい」「チームの取りまとめをお願いしたい」と、本人の強みを活かせる役割を意図的に差し出し、貢献を具体的に言葉で伝えることが、当事者意識を育むきっかけになります。
主体的な行動を後押しする
従業員の当事者意識を高めるには、現場に一定の裁量を委ねることも重要です。すべての判断を上司が行う前提では、従業員にとって仕事は「上司が決めたことを実行するもの」になり、結果についても「決めたのは自分ではない」と捉えやすくなります。反対に、「この範囲はあなたの判断で進めてほしい」と任されれば、その領域は自分が責任を持つべきものとして受け止めやすくなります。
ただし、ただ丸投げするのではなく、任せる範囲と、上司が判断する範囲をあらかじめ明確にしておくことが大切です。範囲が曖昧なままだと、従業員は「どこまで自分で決めてよいのか」が分からず、結局は上司の判断を仰ぐことになります。また、任せた後も放任するのではなく、困ったときに相談できる状態を保ち、必要に応じて支援することが求められます。
そして、任された従業員が自ら考えて動いたときには、その行動を見逃さずに承認することが重要です。結果の大小にかかわらず、「自分で判断して動いたこと」自体を認めるフィードバックは、任された領域を自分ごととして捉える姿勢を強め、次の行動を後押しします。
06当事者意識を高めることで期待できる効果・メリット
従業員の当事者意識が高まると、個人のパフォーマンス向上にとどまらず、組織全体にもさまざまな好循環が生まれやすくなります。ここでは、当事者意識の向上によって期待できる主な効果を整理します。
主体的な行動が生まれやすくなる
当事者意識が高まると、従業員は指示を待つだけでなく、自ら課題を発見し、改善に向けて動きやすくなります。「自分の仕事をよりよくしたい」という内発的な動機が行動の源泉になることで、管理職が細かく指示しなくても、自ら判断して動く場面が増え、マネジメントの負荷軽減につながる可能性があります。
また、想定外のトラブルや変化が起きたときにも、「誰かが対応するだろう」ではなく「自分に何ができるか」を考えて動く人が増えることで、組織としての対応力や変化への適応力が高まりやすくなります。
意思決定の質が高まりやすい
当事者意識を持つ従業員は、自分の仕事について自分なりに考え、意見を持ちやすくなります。その結果、会議や意思決定の場に現場の知見や多様な視点が持ち込まれ、上層部だけでは気づきにくい好機やリスクを検討しやすくなるでしょう。
Schoo for Businessの授業『職場を元気にするシェアド・リーダーシップ』に登壇する石川淳先生は、VUCAの時代には過去の成功体験が通用しにくく、誰も正解を知らない場面が増えていると説明しています。また、そのような状況では、1人のリーダーに判断を委ねるだけでなく、メンバー全員がそれぞれの強みを発揮しながら、試行錯誤を通じて学習していくことが重要だと述べています。
一人ひとりが当事者意識を持ち、必要に応じて情報や意見を出し合うことで、意思決定の材料が豊かになります。さらに、出された意見を踏まえて検討し、判断の理由を共有することで、決定への納得感が高まり、実行段階での協力も得やすくなるでしょう。
モチベーションを維持しやすくなる
仕事を自分ごととして捉えている人は、外からの報酬やプレッシャーだけに頼らず、自分なりの意味や納得感を持って仕事に取り組みやすくなります。「なぜ自分がこの仕事に関わるのか」が明確になることで、日々の業務にも前向きに向き合いやすくなるためです。
そのため、困難な状況でも「自分に関わること」として粘り強く取り組み、達成したときの充実感も得やすくなるでしょう。こうした仕事への意味づけや達成感は、継続して取り組もうとする意欲を支える要素になると考えられます。
協働や相互刺激が生まれやすい
チームや組織全体の課題を自分ごととして捉える人が増えると、担当範囲を超えて協力する動きが生まれやすくなります。困っているメンバーに手を差し伸べたり、部署をまたいで課題解決に取り組んだりする動きも期待できるでしょう。
また、主体的に動く人の姿は、周囲にもよい刺激を与える可能性があります。「あの人がやっているなら自分も」と感じる人が増えれば、当事者意識は個人の姿勢にとどまらず、チームの文化づくりにもつながっていきます。
07変化に強い組織をつくるには従業員の当事者意識が欠かせない
変化の激しい環境において、すべての判断を経営層や管理職が下し、従業員が指示を待つだけになっている組織では、スピードや柔軟性を確保しにくくなります。そこで現場の一人ひとりが自分の仕事を自分ごととして捉え、考え、動くことで、組織は環境変化に適応しながら成果を出し続けやすくなるでしょう。
重要なのは、当事者意識を「個人の資質」や「意識の問題」として従業員に求めるだけでなく、それが育つ環境を組織として整えることです。従業員が仕事を自分に関わる重要なこととして捉えられる職場をつくることは、経営者・人事・管理職が主導して取り組むべき重要な役割です。
役割と目標の明確化、透明性のある評価、失敗から学べる風土、強みを活かせる機会、そして主体的な行動への承認。これらを地道に積み重ねていくことが、従業員一人ひとりの当事者意識を引き出し、変化に強い組織をつくる土台となります。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

08当事者意識を研修で育むSchoo for Business
Schoo for Businessは、国内最大級9,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができる人材育成プラットフォームです。導入企業数は4,500社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広く支援しております。
Schoo for Business |
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| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級9,000本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
当事者意識に関するSchoo for Businessの講座を紹介
ここでは、現場の管理職が当事者意識をメンバーに養う上で、意識したいコーチングやマネジメントに関する授業を紹介します。
目標設定と管理への基礎理解
この授業では適切な目標設定やその具体的な手法、フレームワークについて学ぶことができます。講師は、人材開発領域にてプロコーチとして活躍される大坂谷先生です。
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㈱LEBEN CAREER CEO
秋田県は男鹿市の生まれ。 大学卒業後、小売流通業界にて店舗運営責任者として従事。 前社退職後、東南アジアにて半年間のバックパッカー生活。 帰国後、製薬業界にて、人事戦略室、社長秘書室、人事総務業務に従事。 2014年に人材開発事業「LEBEN CAREER」を創業し、法人設立後は代表取締役に就任。 同社では「コーチングを受けたい・学びたい」というビジネスパーソン向けにコーチングサービスの『LCPコーチング』及び、コーチングスクール『LCPコーチングアカデミー』を運営。 専門領域は、キャリア変革を目的とした行動変容的アプローチ。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
組織を育てるリーダーのコーチング思考と対話法
ビジネスの場において、育成手法やコミュニケーションのあり方としても注目されているコーチング。この授業では、組織づくりやメンバーとの関わりに着目し、実践できる考え方と対話法を解説します。
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㈱LEBEN CAREER CEO
秋田県は男鹿市の生まれ。 大学卒業後、小売流通業界にて店舗運営責任者として従事。 前社退職後、東南アジアにて半年間のバックパッカー生活。 帰国後、製薬業界にて、人事戦略室、社長秘書室、人事総務業務に従事。 2014年に人材開発事業「LEBEN CAREER」を創業し、法人設立後は代表取締役に就任。 同社では「コーチングを受けたい・学びたい」というビジネスパーソン向けにコーチングサービスの『LCPコーチング』及び、コーチングスクール『LCPコーチングアカデミー』を運営。 専門領域は、キャリア変革を目的とした行動変容的アプローチ。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
09まとめ
当事者意識とは、仕事や組織の課題を「自分に関わること」として捉える意識のことです。当事者意識を持つ従業員は、気づいた問題を放置せずに対応したり、改善に向けて意見を出したりしやすくなります。こうした行動は、組織の成果や意思決定の質を高めることにもつながります。
一方で、当事者意識は、役割や評価基準の不明確さ、業務過多、失敗を許さない風土、意思決定機会の少なさといった組織要因によって育ちにくくなることがあります。そのため、従業員に「意識を変えよう」と呼びかけるだけでは不十分です。
目標や評価基準の明確化、意見交換の場づくり、失敗から学べる環境づくり、強みを活かせる機会の提供、任せる範囲を明確にした権限委譲などを通じて、当事者意識が育つ環境を組織として整えていくことが、変化に強い組織づくりの土台となります。
▼【無料】心理的安全性の作り方〜統率から自走への組織変革法〜|ウェビナー見逃し配信中
組織の根幹を蘇らせ、健全な組織状態を作るための「心理的安全性の作り方」をテーマにしたウェビナーのアーカイブです。人事界隈で、組織の心理的安全性を確立するための方法論は広まっています。しかし、多くの企業が背景の理解もないまま、枠組みをそのまま組織に当てはめるような小手先の施策だけ行い、組織状態が改善されない事例を聞くことが多い現状です。本セミナーでは、同氏の調査・分析内容と、組織の機能不全の原因と組織づくりの方法をお話しいただきます。
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登壇者:斉藤 徹 様ループス・コミュニケーションズ 代表取締役
1991年、日本IBMを退職、ICT技術を活かしてベンチャーを創業。携帯テクノロジーが注目され、未上場で時価総額 100億円超。その後、組織論と起業論を専門として 学習院大学 客員教授に就任。幸せ視点の経営講義が Z世代に響き、立ち見のでる熱中教室に。現在は ビジネス・ブレークスルー大学 教授として教鞭をふるう。2018年には、社会人向け講座「hintゼミ」を開講。卒業生は 600名を超え、三ヶ月毎に約70名の仲間が増えている。