キャリアビジョンとは|キャリアプランとの違いや考え方について紹介
キャリアビジョンとは、人生や仕事において、将来こうなりたいと思う姿のことです。本記事では、キャリアビジョンの重要性やメリットを解説しています。キャリアビジョンを思い描く方法も紹介しているため、人材育成の担当者は、ぜひ本記事を参考にしてください。
- 01.キャリアビジョンとは
- 02.キャリアビジョンが注目されている理由
- 03.キャリアビジョンを持つメリット
- 04.キャリアビジョンがない日本人
- 05.キャリアビジョンの考え方
- 06.キャリア開発を支援|Schoo for Business
- 07.まとめ
01キャリアビジョンとは
キャリアビジョンとは、人生や仕事において、将来的にこうなりたいと思い描く姿のことです。キャリアビジョンはあくまで将来についての理想であるため、キャリアビジョンを思い描くうえでは実現可能性を気にする必要はありません。
例えば、商品開発部門でスキルを磨き、大ヒット商品を生み出したいといったことや、将来は営業マンとしてグローバルに活躍したいといったことが、キャリアビジョンの一例です。また、仕事と私生活のバランスを取りながら、毎日元気に働きたいという考えも、キャリアビジョンに含まれます。
キャリアプランとの違い
キャリアビジョンと類似した言葉に、キャリアプランが挙げられます。キャリアプランとは、人生や仕事における将来の自分の理想像を実現するための、具体的な行動計画です。 そのため、キャリアプランの最終的な目標地点が、キャリアビジョンであると言い換えられます。キャリアプランは、キャリアビジョンを実現するために必要なスキルや経験をリスト化したうえで、時系列に行動目標を立てて作成します。
02キャリアビジョンが注目されている理由
キャリアビジョンは、主に以下のような背景で注目されています。
- 1.日本では終身雇用制度が崩壊しつつある
- 2.社会の変化に対応できるキャリアを実現するため
- 3.優秀な人材を企業にとどまらせるため
技術革新が早く、商品やサービスのコモディティ化が進む中で、日本企業が長年続けてきた終身雇用を前提としたキャリア開発が機能しなくなっています。誰もが知っている大手企業でも大規模に早期退職者を募ったり、ジョブ型人事制度への移行したりと改革がまさに現在進行形で進んでいるのです。
1.日本では終身雇用制度が崩壊しつつある
昨今のビジネスシーンにおいては、働き方の多様化により、新卒で入社した企業に定年退職まで勤め続けるという終身雇用制度の考え方が崩壊しつつあります。そのため、社会人の多くは転職に備えて、必要なスキルや業務経験を主体的に思い描き、自分の市場価値を高める必要が出てきたのです。 キャリアビジョンを思い描くことは、スキルアップの計画を立てるプロセスの第一歩として、とても重要な取り組みです。終身雇用制度が崩壊し、自分のキャリアは主体的に考えなければならない時代において、キャリアビジョンは欠かせない存在になりました。
2.社会の変化に対応できるキャリアを実現するため
勤続年数が増えれば昇進・昇格が約束される年功序列制度は身を潜め、昨今のビジネスシーンでは、勤続年数や年齢に関わらず実力で社内のポジションが決まる企業が増えてきています。 そのため、かつてのようにキャリアに対して受身の姿勢のままでは、気が付いたら社内の居場所を失っていたということになりかねません。こうした社会の変化に対応するためには、将来の自分の理想像を主体的に思い描くことが重要です。
3.優秀な人材を企業にとどまらせるため
ここまで解説した通り、昨今のビジネスシーンでは主体的にキャリアを設計する重要性が高まっています。その事実に気が付いている優秀な人材は、キャリアビジョンを思い描くことを重視する可能性が高いです。 そのため、企業側が人材配置や研修を通じて、従業員のキャリアビジョンの実現を支援することで、優秀な人材がその企業にとどまるようになると期待できます。人材不足に悩む企業が多い現状では、いかにして優秀な人材を外部に流出させないかが重要です。
03キャリアビジョンを持つメリット
キャリアビジョンを持つことで、主に以下のようなメリットが期待できます。
- 1.自分の価値観を把握できて自己分析につながる
- 2.仕事をするうえでの目標が明確になる
- 3.仕事のモチベーション向上につながる
キャリアビジョンを持つということは、自身のキャリアの向かうべき先が見えているということです。そのゴールが見えることにより、何が足りていないのかが明確になると同時に、そのゴールまでの道筋も考えることができるようになります。
1.自分の価値観を把握できて自己分析につながる
キャリアビジョンを思い描く過程では、自分の弱みや強みなどの現状、キャリアに対する自分の価値観を把握する必要があります。したがって、キャリアビジョンを描くことで、これまで気が付かなかった自分の強み・弱み、価値観を見つけられて、自己分析につながると期待できます。 自己分析が実現すれば、日々の業務で伸ばすべきスキルや自分の得意分野が明確になり、自分の長所を活かした仕事やスキルアップへの取り組みを積極的に行えるようになるのです。
2.仕事をするうえでの目標が明確になる
キャリアビジョンは、将来に向けて目指すべき自分の姿、いわば最終目的地です。キャリアにおける最終目的地が定まっていると、到達に向けて必要な行動やスキルが自ずと明確になります。その結果、キャリア選択がしやすくなったり、目標をより明確に立てられるようになったりといったメリットを期待できます。
3.仕事のモチベーション向上につながる
キャリアにおいて目指すべき場所がわからなくなると、モチベーションが低下し、目の前の仕事に打ち込めなくなるおそれがあります。しかし、自分が目指す姿がはっきりしていると、担当している仕事にやりがいを感じやすくなり、前向きな気持ちで仕事に取り組めるようになるはずです。 キャリアビジョンの形成によって従業員一人ひとりのモチベーションが上がれば、企業全体の生産性アップにつながるという、企業側のメリットも期待できます。
04キャリアビジョンがない日本人
アデコグループが実施した調査によると、キャリアビジョンを持っている人は27.2%しかいないという結果となっています。
転職が当たり前になった時代とはいえ、まだまだ日本ではキャリアは会社が決めるものという発想が根強いのかもしれません。
▶︎参考:アデコグループ|「人生100年時代」のキャリアビジョンに関する調査
ロールモデルの不在が原因
厚生労働省の調査によると、39歳以下でロールモデルがいると回答した人は27.9%という結果となっています。
ロールモデルがいると回答した人の割合は、先述したキャリアビジョンを持っている人の割合とほぼ同値となっており、ロールモデルの不在がキャリアビジョンの有無に大きな影響を与えていることが読み解けます。
05キャリアビジョンの考え方
キャリアビジョンの考え方には、主に以下のような方法があります。
- 1.ロールモデルを探す
- 2.プライベートを軸に考える
- 3.なりたくない姿から逆算する
- 4.自身の得意なこと・好きなことから考える
- 5.視野を拡げるために学ぶ
唐突に「どうなりたいのか」を考えても、キャリアビジョンはすぐに考えられません。自身に適した考え方を模索しながら、1つずつ試していくと良いでしょう。
1.ロールモデルを探す
キャリアビジョンの考え方として、まずロールモデルを探すという方法があります。職場で憧れる人がいれば、その人のどの部分に憧れているのかを深掘りしましょう。
例えば、上司がロールモデルだった場合、上司の周りを巻き込む力に憧れているのか、自分を含めたメンバーを大事にして育成している姿に憧れているのかで、自身の目指すキャリア像が変わってくるでしょう。
また、もし憧れる人がいない場合は、スキル軸で考えても問題ありません。「あの人のコミュニケーション能力を身につけたい」・「あの人のプロジェクトマネジメントは秀でている」などのように、その人自身をロールモデルとするのではなく、その人の特定の能力を目指すべき指針にするという方法もあります。
2.プライベートを軸に考える
プライベートを軸にキャリアビジョンを考えるというのも、1つの方法です。
「30歳で結婚して、35歳までに子供が2人欲しい」といったように、まず自身のプライベートの理想を描きます。
次に、その理想から逆算して、35歳までに給料がいくら必要か、その給料をもらうためには役職や業務内容がどのようになっていなければいけないかを考えます。
このように、プライベートの理想から自身が歩むキャリアを考えるという方法も1つの手段として持っておくと良いでしょう。
3.なりたくない姿から逆算する
キャリアビジョンは、憧れや理想の姿からしか考えられないわけではありません。なりたくない姿からも考えることができます。
「部下に慕われない上司にはなりたくない」・「つまらない仕事をこなす人生は送りたくない」といったように、なりたくない姿を想像し、そうならないためにはどうすれば良いかを考えるという方法もあります。
4.自身の得意なこと・好きなことから考える
自身の得意なこと・好きなことからキャリアビジョンを考える方法もあります。その際には、動詞で考えるというのがポイントです。
例えば、「サッカーが好き」というように名詞で好きなことを考えても意味がなく、「サッカーで周りに指示を出してディフェンスをするのが好き」といったように動詞で考えると、自身が周囲を動かすことに楽しさを感じていることが見えてきます。
このように、自身の得意なことや好きなことを列挙していき、それらの共通項を探していくと、自身がどのようなことに向いているのかが分かります。その向いていることから、キャリアビジョンを考えていくと良いでしょう。
5.視野を拡げるために学ぶ
キャリアビジョンは、自身の見えている世界からしか描くことができません。そのため、視野を拡げるために多様な学びを意図的にするという方法も良いでしょう。
自身の職種に限らず、興味・関心のあることを五月雨に学んでいき、自身が本当に何がしたいのかを考える材料を増やしていきます。
図書館で本を借りる、Youtubeを利用するといったように視野を拡げるための学びは、金銭的な負担をかけずともできます。会社でeラーニングや書籍購入制度を導入していれば、それを利用するという方法もあるでしょう。
06キャリア開発を支援|Schoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約8,500本の講座を用意しており、様々な種類の研修に対応しています。キャリア研修によるマインドセットの変革だけでなく、自律的な学習を通じて、社員の主体的なキャリア形成を支援することができます。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,500本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
大企業から中小企業まで4,000社以上が導入
Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで4,000社以上に導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
キャリアビジョンに関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、キャリアビジョンに関する授業を紹介いたします。
データで考えるキャリアデザイン
「キャリアの選択肢を広げたい、もしくは維持し続けたい」「キャリアについて考えたいが何から手をつければいいのかわからない」と考えている方に向け、オープンになっている様々なデータを活用しながらキャリアをデザインする方法や考え方を学ぶコースです。全5回にわたって、自主的にキャリアデザインを描いていく上で必要な「①自分を知る」「②市場を知る」「③プロセスを知る」という視点で、キャリアデザインに関する知識を学ぶことができます。
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ワンキャリア 経営企画部 Evangelist
1988年兵庫県生まれ。京都大学工学部卒業。就職活動中にリーマンショックを経験。メガバンクで企業再生やM&A関連の業務に従事したあと、IT広告、組織人事のコンサルティングなどの経験を経てワンキャリアに入社。現在は仕事選びの透明化と採用のDXを推進。「ONE CAREER PLUS」リリース後、キャリアの地図をつくるプロジェクトを推進。専門はパブリック・リレーションズ。
幸せに生きるための最新キャリア術
「目まぐるしく変化する現代に不安を抱えている、終身雇用崩壊と言われるがどのようにアクションを起こせばよいかわからない…など、キャリアに不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。この授業では、プロティアンキャリアの第一人者である法政大学教授のタナケン先生こと、田中研之輔さんをお迎えし、受講生のみなさんひとりひとりが幸せにキャリアを切り開いていくためのヒントを学ぶことができます。
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博士(社会学) 法政大学キャリアデザイン学部 准教授
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。ソフトバンクアカデミアにも外部一期生として在籍。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。
女性がリーダーへ踏み出すためのマインドセット
この授業では、ジャーナリスト・前Business Insider Japan統括編集長・元AERA編集長の浜田敬子氏をお迎えし、女性がいかに「やりたいことをやる」ためのマインドを獲得すればいいのか、学んでいきます。
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ジャーナリスト
1989年に朝日新聞社に入社。前橋支局、仙台支局、週刊朝日編集部を経て、99年からAERA編集部。記者として女性の生き方や働く職場の問題、また国際ニュースなどを中心に取材。米同時多発テロやイラク戦争などは現地にて取材をする。2004年からはAERA副編集長。その後、編集長代理を経て、AERA初の女性編集長に就任。編集長時代は、オンラインメディアとのコラボや、外部のプロデューサーによる「特別編集長号」など新機軸に次々挑戦した。 2016年5月より朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして、「働く×子育てのこれからを考える」プロジェクト「WORKO!」や「働き方を考える」シンポジウムなどをプロデュースする。2017年3月末で朝日新聞社退社。 2017年4月より世界17カ国に展開するオンライン経済メディアの日本版統括編集長に就任。2020年12月末に退任。 「羽鳥慎一モーニングショー」や「サンデーモーニング」などのコメンテーターや、ダイバーシティーや働き方改革についての講演なども行う。 著書に『働く女子と罪悪感』(集英社)。
07まとめ
将来的にこうなりたいという自分の姿を思い描く、キャリアビジョン。終身雇用制度や年功序列制度が崩壊しつつある昨今のビジネスシーンにおいては、従業員一人ひとりが明確なキャリアビジョンを持って、主体的にスキルアップに取り組むことが求められます。キャリアビジョンを描くことは、従業員自身のモチベーション向上だけではなく、企業全体の生産性アップにもつながります。 キャリアビジョンを描くことは一見簡単そうですが、実はフレームワークに関する知識や独自のノウハウが必要なのです。そのため、キャリア形成に精通した専門講師に依頼して、キャリアビジョンを立てるコツを従業員に学んでもらうことがおすすめです。優秀な人材を自社にとどまらせたい、または企業の生産性を上げたいといった企業の担当者は、ぜひキャリアビジョン研修の実施を検討してみてはいかがでしょうか。
▼【無料】人的資本を最大化するキャリアオーナーシップ型組織のつくり方|ウェビナー見逃し配信中
自律的な組織を作るうえで重要なキャリアオーナーシップについてのウェビナーアーカイブです。社員のキャリア形成について悩んでいる方、社員の自律性の低さに課題を感じる方、人的資本を最大化するためのキャリアオーナーシップ型組織の作り方をお話します。
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登壇者:田中 研之輔 様法政大学キャリアデザイン学部 教授
一橋大学大学院(社会学)を経て、メルボルン大学・カリフォルニア大学バークレー校で、4年間客員研究員をつとめ、2008年3月末に帰国。2008年4月より現職。教育・研究活動の傍ら、グローバル人材育成・グローバルインターンシップの開発等の事業も手がける。一般社団法人 日本国際人材育成協会 特任理事。Global Career人材育成組織TTC代表アカデミックトレーナー兼ソーシャルメディアディレクター。 著書―『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(筑摩書房)『走らないトヨタ―ネッツ南国の組織エスノグラフィー』(法律文化社)『都市に刻む軌跡―スケートボーダーのエスノグラフィー』(新曜社)他多数