パルスサーベイとは?関連するテストとの違いや導入メリットから注意点まで解説
従業員調査の一つとしてパルスサーベイがあります。そもそも、パルスサーベイとは何なのでしょうか。また、同様のテストとはないが違うのでしょうか。この記事では、パルスサーベイについての基礎知識を、導入メリットや注意点も含めて解説します。
- 01.パルスサーベイとは従業員意識調査の一種
- 02.他の従業員意識調査との違い
- 03.パルスサーベイ導入のメリット
- 04.パルスサーベイ導入での注意点
- 05.パルスサーベイの効果を高めるためにできること
- 06.まとめ
01パルスサーベイとは従業員意識調査の一種
従業員の状況を知るための調査の一つとして、パルスサーベイという手法があります。 パルスサーベイとは、「パルス=脈拍」「サーベイ=調査」からなる言葉で、脈拍のように、短期間の調査スパンで、なおかつ何度も行われる調査のことです。 パルスサーベイは、社員満足度や会社への想い、心の健康などを把握する目的で実施されるものです。 重要なポイントは、調査と調査の間の時間をそれほど空けず短期的に調査を行うこと、何度も調査を行うこと、一回の調査にかかる時間は1分~5分程度であること、などが挙げられます。 これによって、会社側は従業員の状態をタイムリーに確認・把握することが可能になります。
02他の従業員意識調査との違い
パルスサーベイは従業員意識調査の手法の一つであるとお伝えしました。他にも、様々な手法で従業員意識調査は行われています。 パルスサーベイについて理解するためにも、他の調査の方法や内容について知っておきましょう。
センサスとの違い
センサスは、意味としては「全数調査」などと理解されることが多く、非常に大規模なものであることが特徴です。日本で行われるセンサスとしては、総務省が行う国勢調査や経済センサスなどがあります。 センサスは、その質問も長いものになり、答えるのに時間がかかってしまいます。その性質上、あまり頻繁に行うことができず、1年に1回か、種類によっては数年に1回ということもあります。 短い期間で何度も調査を行い、継時的に変化を確認するパルスサーベイとは、やり方が異なっています。
モラールサーベイとの違い
モラールサーベイは、「モラール=士気、意欲」が意味するとおり、従業員の士気や意欲を調べるための調査です。 その頻度も、1年に1回、または1年に数回であり、ほぼ毎月確実に行われるパルスサーベイとは実施期間が異なります。 また、従業員の変化を調べるパルスサーベイとは目的が異なるため、モラールサーベイでは質問内容も異なったものになります。主に、業務上のやりがいをどこに感じるか、といったタイプの質問が多いことが特徴です。
03パルスサーベイ導入のメリット
パルスサーベイを導入することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。様々な企業が導入しているということは、一定のパルスサーベイにしかないメリットがあるはずです。 この項目で詳しく確認していきましょう。
- 1.継時的に従業員満足度を計測できる
- 2.従業員満足度向上につながる可能性がある
- 3.リアルタイムに結果を知ることができる
1.継時的に従業員満足度を計測できる
パルスサーベイがその大きな特徴としているのが、連続してデータを取り続けるという点です。 同じ質問事項を毎月や2週間ごとなどの短い期間で調査し続けるため、だんだんと特定の従業員の性質や状態を蓄積していくことができます。 ずっと調査をしつづけ、継続して従業員満足度を計測できるという点は大きなメリットではないでしょうか。 また、今までとは違う変化があったとき、その変化に気づきやすいというのも、継時的に計測できるからこそのメリットです。
2.従業員満足度向上につながる可能性がある
定期的にサーベイによって従業員の意見を聞くことは、大きなメリットとなります。 もちろん、何度も調査することでそのたびに従業員が訴えたい内容を意見できる、という点は素直なメリットでもあります。 しかし、思わぬ副次的なメリットをもたらす可能性もあります。それが、意見しやすく、相談しやすい会社であると従業員に感じてもらえることです。そういった環境であれば心理的安全性が増し、従業員満足度の向上につながっていきます。 また、意見しやすさを業務にまで広げることができれば、物おじせず発現でき、場合によっては新たなイノベーションを生み出す原動力になるかもしれません。
3.リアルタイムに結果を知ることができる
毎月、または2週間に1回程度の頻度で調査を行うため、変化を感じ取りやすいというのはメリットです。 この際の変化とは、個人の変化も当然含まれますが、会社全体としての変化や、従業員全体としての感じ方の変化なども含みます。 例えば、「セキュリティに厳しくなったが、そのせいで業務が停滞するのではないか」といった意見が上がったとします。もし一人だけが唱えているのであれば、それは個人の感じ方にすぎません。その個人に対してフォローするなどのアクションを取ればよいでしょう。 しかし、もし多くの社員から訴えが上がっていたらどうでしょうか。 実際に業務を圧迫し、業績に影響を与えるかもしれません。あるいは、業務に影響を与えまいとするあまり、セキュリティ的に問題がある行動をしてしまう社員が多発する可能性もあります。 リアルタイムに全社的な調査結果を知ることができるということは、すなわち「今の組織の課題」を知ることができるという意味なのです。
エンゲージメントの変化にすばやく対応できる
従業員の返答の先月と今月との違いなどから、すぐに打ち手を用意できるのもパルスサーベイの特徴です。 前述した調査で挙げたセンサスでは、実施期間は1年スパンです。 1年も従業員を放置しておくと、その間に対象従業員が会社に不満を覚え、転職を決意し、転職活動を行い、場合によっては活動結果が実って転職していく、という一連の流れを一切把握すらせずに流してしまうことになりかねません。 変化を把握できるからこそ、すばやく対応できるのです。
04パルスサーベイ導入での注意点
パルスサーベイを導入すると、様々なメリットがある一方でデメリットは生じないのでしょうか。 結論としては、明確なデメリットは存在しないと言ってもいいでしょう。しかし、注意して導入・運用していかなければ、メリットを享受できなかったり、あまりにも度合いが過ぎるとデメリットに感じられてしまう、というポイントは存在しています。
- 1.実施担当者に負担がかかる
- 2.実施後のフォローとセットで考える
そのような、パルスサーベイ導入に関する注意点を2つほどご紹介していきましょう。
1.実施担当者に負担がかかる
パルスサーベイの最大のメリットを生み出している、短期間で何度も調査し、しかも調査しつづけるという手法そのものが、注意しなければデメリットになりかねません。 端的に言うと、実施担当者に負担がかかってしまう可能性があるのです。 パルスサーベイは、一般的なテストよりもコストが安い、という解説もあります。しかし、それは1回の実施に際してです。1年または半年に1回行うような大規模な社内調査と比べれば、たしかに1回のコストは安上がりでしょう。 ただし、それを1年のうちに何度も行います。毎月であれば12回。2週間に1回や、毎週という場合ではさらにコストは増していきます。結果的に積みあがる負担としては大きなものになる可能性すらあるのです。 これを防ぐためには、質問内容を固定したり、サーベイに関する業務をルーチン化したり分散化したりするとよいでしょう。 慣れた作業となれば、質問フォームをコピーし、対象者のメールリストに送信するだけで完了できるようになります。
2.実施後のフォローとセットで考える
パルスサーベイは、従業員の変化に対して迅速にフォローできる、というメリットがあるとお伝えしました。この注意点は、その裏返しでもあります。 すなわち、何か違和感を感じ取った場合、すぐさまフォローしなければならない、ということを意味するのです。 最低でも毎月サーベイを実施するため、質問は簡易なものになっている場合が多いものです。おのずと表層的な質問になりがちなため、質問から従業員の状態すべてを察知することは不可能でしょう。 つまり、明確で大きな変化というよりも、最初は何らかの違和感という形で検知し、なおかつその詳細までは不明、という状態でフォローが必須となるのです。 例えば違和感が認められた従業員には、パルスサーベイより少し深めのアンケート調査を特別に行い、どういったフォローが必要か事前に知っておく、といった手法で苦労を緩和できます。 とはいえ、「従業員へのフォローが必要となる」という点を解消することは難しいでしょう。そもそも、パルスサーベイを行おうと行うまいと、従業員の変化を察知してフォローすることは必須であるためです。
05パルスサーベイの効果を高めるためにできること
前項では、パルスサーベイ導入に関して、メリットを弱めかねないポイントについて注意点と解決方法をご紹介しました。 この項では、パルスサーベイのメリットをさらに高め、より高い効果を得られるためにできるポイントを2つご紹介します。
- ・1.業務内容・会社の理念・仕事のやりがいに関する設問を入れる
- ・2.心理的安全性を確保する
1.業務内容・会社の理念・評価に関する設問を入れる
パルスサーベイの質問には、業務内容に関する項目、会社の理念に対して想うことや感じること、正当に評価されていると感じるかを聞く内容を入れておくとよいでしょう。 ここでお伝えした3種は、どれか一つでも欠けるとエンゲージメントが下がってしまうためです。
- ・業務内容がつまらない/仕事にやりがいがない
- ・会社の理念に共感できない/価値観が変化し共感できなくなった
- ・正しく評価されていないと感じる/自分が尊重されていないと思う
上記のような回答は、エンゲージメントが下がっている際に聞こえてくる代表的な従業員の声です。 しかし、これらの変化が生じたばかりであれば、フォローして解決できる場合も多いのです。1年以上、この状態を放置しておけば転職してしまう可能性もありますが、パルスサーベイなら最低でも1ヶ月間の期間で察知可能です。 業務やキャリアについて希望をヒアリングする、業務量や業務内容を変える、といった対処もでき、何より、まずは「自分の変化に対して声をかけてくれた」と従業員に感じてもらうことが重要です。 そのためにも、ここで挙げた項目を質問に取り入れることをおすすめします。
2.心理的安全性を確保する
調査を行う場合にもっとも重要となるのが、匿名性の有無や結果の開示範囲です。 調査に対する不信感が生まれると、正しい結果を得られません。評価を上げようと必要以上に良い内容を書いたり、転職の決意を察知されまいと当たり障りないことを書いたりするようになります。 この調査によって不利益がないことを明示することが重要です。 また匿名を謳う場合でも、「この結果を上長や上司に開示することを希望する」といった設問を設け、希望する従業員にはすぐにでも対処できるようにしておくという手もあります。
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・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
パルスサーベイは、従業員の意識調査に関する手法の一つです。 従業員の状況を知り、適切なフォローを行うことは現代では必須となっています。 パルスサーベイである必要はありませんが、従業員の変化に対して何か打ち手を講じるためには、まずは変化したことを把握しなければならないでしょう。 これを機に、ぜひ自社内での従業員意識調査や社員の変化の把握手法について確認してみてください。