ピープルマネジメントとは?導入時のポイントも解説

考え方や働き方が多様化している現代で、人的資本の重要性が高まるなか、ピープルマネジメントに注目が集まっています。ピープルマネジメントは、仕事の成果そのものではなく仕事へ取り組む姿勢や成長を促すマネジメント手法です。 本記事では、ピープルマネジメントの概要および、導入時のポイント・注意点などを解説します。
- 01.ピープルマネジメントとは
- 02.ピープルマネジメントが注目を集める3つの理由
- 03.ピープルマネジメントのメリット3つ
- 04.ピープルマネジメント導入のポイント
- 05.ピープルマネジメントの注意点
- 06.まとめ
01ピープルマネジメントとは
ピープルマネジメントは、仕事の成果や実績のみならず、その社員の仕事に対するモチベーション、エンゲージメント、また考えるキャリアなどを含めて従業員一人ひとりの成長にコミットするマネジメント手法のことを指します。
ピープルマネジメントの目的
ピープルマネジメントの目的は、従業員の潜在能力や可能性が最大限発揮できるようマネジメントを実施し、組織全体の成果を高めることです。個々の従業員と向き合うため、時間と労力が必要ですが、目標設定やフォローアップが適切に実施できます。
ピープルマネジメントの概念は、ドイツの心理学者であるクルト・レヴィンが発表した「クルト・レヴィンの法則」を知っておくと、より深く理解できます。この法則において、レヴィンは「環境の変化により従業員の行動も変わる」と提言しています。環境だけでなく、人間関係や上司によっても従業員の行動が変わってくるというのが、レヴィンの考えです。
タレントマネジメントとの違い
タレントマネジメントとは、日本の企業で行われている従来型のマネジメント手法を指します。従業員が持つスキルやノウハウなどのデータを企業側で集約し、従業員の育成や配置を戦略的に行うものです。タレントマネジメントの目的として、経営目標の達成と部署間の連携を挙げる企業が多くなっています。 一方ピープルマネジメントは、上司と部下が向き合う行為を重視しています。データの管理だけで終わらず、従業員一人ひとりの成功に向けて伴走・サポートすることで、最大限の成果を目指すマネジメント手法です。
02ピープルマネジメントが注目を集める3つの理由
ピープルマネジメントが注目を集めているのには、大きな理由があります。ここでは、そのなかでも特に重要な理由を3つ解説します。
- 1.働き方が多様化している
- 2.雇用の流動性が高まっている
- 3.VUCA時代に突入している
1.働き方が多様化している
ピープルマネジメントが注目される理由には、働き方や価値観の多様化が大きく関係しています。今後の働き手の中心となる世代は、以下の世代です。
- ・ミレニアル世代(1980年代序盤から1990年代中盤頃までに生まれ、2000年代に成人もしくは社会人となる世代)
- ・Z世代(1996年以降に生まれた世代)
これらの世代は、個性や多様性を重視する傾向が強く、新しい価値観を持っています。従来の画一的なマネジメント方法では、ミレニアル世代やZ世代に対して価値観の尊重や人材育成が難しいと考えている企業がほとんどです。個人に寄り添うピープルマネジメントの実行により、個々が持つ考え方や価値観を良い方向に引き出せます。
2.雇用の流動性が高まっている
従来は、終身雇用や年功序列が重視されて、転職を考える人はほとんどいませんでした。しかし現在では、ひとつの企業にこだわらずに転職し、自分の可能性にチャレンジしたいと考える人が増えています。これにより、従業員の離職率増加が懸念されています。 転職を希望する理由のひとつに、満足度の高い仕事をしたいという内容が挙げられます。本業以外に副業をしたり、フリーランスなどの働き方を選んだりする人も増えてきました。優秀な従業員に自社で長く働いてもらうための取り組みとして、ピープルマネジメントを導入する企業が増えているのは、企業に対するエンゲージメントを高めるためです。
3.VUCA時代に突入している
VUCA(ブーカ)とは、以下の4つの頭文字を取った言葉であり、もともとは軍事用語としてアメリカで使われていました。
- ・Volatility(変動性)
- ・Uncertainty(不確実性)
- ・Complexity(複雑性)
- ・Ambiguity(曖昧性)
これらの言葉は、世の中が目まぐるしく入れ替わり、複雑かつ予測困難な状態へ突入していることを表します。今までのように、トップダウン型で上司から部下へ指示を出しているだけでは、変化に対応しきれなくなります。 この状況下においても、最適な意思決定によりビジネスを成功させるためには、従業員の主体性や考察力を引き出すことが重要です。ピープルマネジメントを通じて、ITツールやAIでは対応できない、人間ならではのマネジメントが重視されています。
03ピープルマネジメントのメリット3つ
企業がピープルマネジメントを実行することで、企業と従業員の双方に大きなメリットが生まれます。主なメリットは以下の3つです。
- 1.自社へのエンゲージメントが高まる
- 2.従業員の自主性が育まれて生産性が向上する
- 3.業務へのモチベーションがアップする
1.自社へのエンゲージメントが高まる
「ピープルマネジメントとは」の項でも解説したように、ピープルマネジメントは従業員一人ひとりに寄り添うマネジメント手法です。従業員と親身に向き合うため、従業員と上司の距離が縮まり、企業に対するエンゲージメントの向上が期待できます。その結果、従業員の離職率アップや定着率低下も見込めます。
2.従業員の自主性が育まれて生産性が向上する
ピープルマネジメントでは、上司がサポート役に回り、従業員が主体となって考える点が大きな特徴です。目的達成のためにどのような行動を取るべきか自主的に考えることで、自主性が育まれます。 自主性を身につけた従業員は、課題の解決策を自ら考え、筋道を立てて行動を起こせるようになります。上司からの指示を待たず行動することで、業務のスピードとパフォーマンス力の向上が期待できます。
3.業務へのモチベーションがアップする
ピープルマネジメントを通じて個々の従業員にフォーカスし、細やかな目標設定やフィードバックを行うと、従業員は自分が担う役割を理解しやすくなります。さらに、目指す成果へどのくらい達成しているのか、到達段階も感じやすくなる点が、大きなメリットです。 従業員は、自らが企業に必要とされていると感じることでモチベーションが格段に上がり、業務に前向きに取り組めるようになることでしょう。
04ピープルマネジメント導入のポイント
ピープルマネジメントを導入する時には、ポイントを押さえておくことで効果をさらに高められます。以下のポイントを重視しながら、導入を進めていきましょう。
- 1.1on1ミーティングは従来よりも高頻度で行う
- 2.360度評価を用いて評価の透明性を高める
- 3.OKRなどの目標設定フレームワークを活用する
1.1on1ミーティングは従来よりも高頻度で行う
従業員と上司が1対1で行う1on1ミーティングは、従業員が主体となって対話することが重要です。従業員の主体性を引き出し、本音を聞き出せるよう、信頼関係を持ってミーティングを行うには、ミーティングの実施回数を増やすと効果的です。 実施していくうちに、ミーティングの中でより細かい部分まで追求できるようになるでしょう。
2.360度評価を用いて評価の透明性を高める
360度評価(多面評価)とは、評価対象者(従業員)に対して、上司・同僚・部下など幅広い立場の人の意見を取り入れ、多角的に評価する仕組みです。人材育成とモチベーション向上を目的としています。 すべての従業員を公平かつ客観的に評価するには、ひとりの上司の意見だけでは十分とは言えません。質と公平性が高い360度評価を実施することで、企業に対する従業員の信頼感も高まります。 360度評価を実施する際、アナリティクスツールも同時に導入すると、人事評価の透明性と効率を高められます。アナリティクスツールは、ツール提供型・コンサル支援型・タレントマネジメント型に分類できるため、自社に合ったツールを導入しましょう。
3.OKRなどの目標設定フレームワークを活用する
OKRとは、「ObjectivesandKeyResults」の略語であり、日本語では「目標と主要な結果」と訳します。アメリカ・Intel社の元CEOである、アンディ・グローブ氏が考案したフレームワークです。 OKRでは、1つのObjectives(目標)に対して、KeyResults(主要な結果)を3つから5つほど設定します。目標を高めに設定することで、従業員が同じ方向を向いて取り組めるよう促すのが、OKRの大きな目的です。 ピープルマネジメントとOKRを同時に活用すると、従業員全員で企業の目標を共有できます。さらに、従業員同士のコミュニケーションも円滑になり、社内の雰囲気も変わってくるでしょう。
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05ピープルマネジメントの注意点
ここまで解説したように、ピープルマネジメントは働き方の多様化や雇用の流動性などに対応できるマネジメント手法です。一方で、取り組む際にはいくつか注意点があります。ピープルマネジメントの効果を最大限発揮するために、しっかり準備を行ったうえで導入するようにしましょう。 従来のタレントマネジメントで長年取り組んできた従業員にとって、ピープルマネジメントへの転換に対して大きな抵抗を感じる可能性があります。企業の方針を急に変えてしまうと反発が出て、かえって悪影響になりかねません。ピープルマネジメントの導入は、従業員全体の理解を得ながら、時間をかけてじっくりと進めることが重要です。 また、1on1ミーティングやフィードバックが形骸化してしまうと、時間ばかりが過ぎて成果を伴わない可能性があります。ミーティングの実施前には、話題を前もってリストアップし、そこから選ぶなどの工夫が必要です。
06まとめ
本記事で紹介してきたように、ピープルマネジメントは個々の従業員の仕事に対する姿勢を重視するマネジメント手法です。働き方や価値観が多様化している社会において、従業員と良好な関係を保ちながら仕事をしていくためには、ピープルマネジメントの考え方が必要不可欠となっています。 従業員のエンゲージメントを高め、より良い企業づくりを目指していきたいと考えている担当者の方は、ぜひピープルマネジメントの導入を検討してみてください。