管理職の育成方法とは|ポイントや研修プログラム例を紹介
管理職の育成が重要だと分かっていても、育成計画の立案に苦労している企業は少なくありません。しかし、管理職の育成を行わないことには大きなリスクが伴います。本記事では、管理職の育成の重要性や育成計画のポイントを効果的な研修事例とともに解説します。
- 01.管理職の育成における課題
- 02.管理職に求められる能力
- 03.管理職の育成方法
- 04.管理職研修の進め方
- 05.管理職の育成計画を立てる際のポイント
- 06.管理職研修|Schoo for Business
- 07.管理職の育成に関する事例
- 08.管理職研修のよくある質問
- 09.まとめ
01管理職の育成における課題
マンパワーグループが、企業の人事担当者を務める20代~50代の男女400名を対象に、管理職について抱えている課題と対処策について調査した結果、管理職に対しての課題で最も多かったものは、「将来的な管理職候補が育っていない」で23.0%となっています。
また、3位には、「管理職への研修・教育が十分でないと感じる」が15.5%が入ってきており、管理職の育成は多くの企業が課題に感じているということがわかります。
▶︎参考:マンパワーグループ|「管理職」に対する課題を抱えている企業は全体の5割超。人事担当者が実感している課題や具体的な対処策とは
厚生労働省が実施した調査でも、企業が最も課題に感じているのは、「管理職候補者の能力・資質にムラがある」で49.1%となっています。次いで、「マネジメント能力の水準が高まっていて、業務負担が増えている」が46.9%が続いています。
つまり、管理職候補の育成にも困っている上に、管理職に登用しても求める能力水準は高くせざるを得ず、業務負担も増しているのです。
02管理職に求められる能力
管理職に求められる能力は、主に以下の9つがあります。
- 1:業務管理・改善
- 2:部下育成
- 3:コンプライアンス
- 4:チームマネジメント
- 5:リスクマネジメント
- 6:調整力
- 7:戦略策定
- 8:組織マネジメント
- 9:コーポレートガバナンス
以下ではそれぞれの内容について詳しく解説します。
1.業務管理・改善
業務管理とは、メンバーに「何を、いつまでに、どうやってやるか」という明確で具体的な指示を与え、業務の進捗や結果を管理する能力です。また、チームや部署の生産性を向上させるために、業務改善の視点も管理職には求められます。
2.部下育成
部下を育成する能力は、管理職に必要不可欠なスキルです。主に、コーチングやフィードバックなどが育成スキルとして挙げられますが、適切な目標設定をする力であったり、任せる範囲を見極める能力なども求められます。
▶︎関連記事:部下の指導・育成のポイントとは?4つのタイプ別指導法を紹介
3.コンプライアンス
パワハラやセクハラなどの管理職のコンプライアンス違反は、企業に大きな不利益をもたらす事態になりかねません。また、パワハラを恐れるがあまりに、部下の育成ができないという事態になっている管理職も少なくありません。そのため、正しいコンプライアンス知識を身につけることは、管理職にとって必要
▶︎関連記事:コンプライアンス教育の重要性とおすすめの実施方法と教材を紹介
4.チームマネジメント
管理職の最も重要な役割は、チームの能力を最大限活かして目標を達成することです。そのため、メンバーの強みや持ち味を把握し、適切な人材配置を行うといったチームマネジメントの能力は欠かせません。
▶︎関連記事:チームマネジメントに失敗しないために、必要なスキルやポイントを解説
5.リスクマネジメント
リスクマネジメントとは、企業経営において損失が発生しうるリスクを把握し、それを事前に回避もしくは最小に抑える対策を講じる管理プロセスのことを指します。管理職は担当する事業におけるリスクを洗い出し、その影響の評価方法や組織におけるリスク管理の体制を作るための手法も習得する必要があります。
▶︎関連記事:リスク管理とは?そのプロセスやリスク管理の実効性を高める方法を解説
6.調整力
同じ組織といえども、利害関係が異なることもあれば、チーム内で意見が対立することも日常茶飯事です。その際に、各関係者の意見や主張を傾聴した上で、最終的な着地点を調整する能力は管理職に必要なスキルです。
▶︎関連記事:調整力とは?ビジネスで求められる理由や身につける方法まで解説
7.戦略策定
戦略策定とは、会社もしくは担当事業における将来の理想像に向けて、現在の姿とのギャップを把握して、埋めるための道筋を検討し意思決定することを指します。上級管理職は、より経営に近い立場であるため、自社を取り巻く外部環境や自社の内部環境を把握することで将来を把握し、それをもとに戦略を立てて実行していく能力が必要とされます。
8.組織マネジメント
組織マネジメントとは、組織の活動を円滑に行えるよう、会社の資源・資産・リスクなどを網羅的に管理することです。経営活動に必要な、ヒト、モノ、お金、情報の資源について深く理解し、どのように配分すれば組織が効率良く動いていくのかを考えていくことになります。
9.コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスとは、会社が株主や顧客、従業員といったステークホルダーなどの立場を考慮したうえで、それらの利益を最大限に発揮できているかを管理監督するシステムのことです。一般的には、企業の不正競争を防止と長期的な企業価値向上を目的として、社外取締役・監査役の設置などを行います。
03管理職の育成方法
管理職を育成するためには、まず管理職研修で正しい知識をインプットした後に、実務で経験を積み重ね、グループワークやラウンドテーブルなどで振り返るというサイクルを繰り返す必要があります。
1:研修による正しい知識のインプット
まずは正しい知識をインプットすることが重要です。正しい知識のインプットの方法としては、研修が最も採用されている手段でしょう。昨今では、アーカイブ型のオンライン研修を導入する企業も増えてきており、忙しい管理職でも隙間時間で研修を受講してもらうことが可能になりました。
特定の会場に赴く集合研修を実施する企業はまだまだ多いですが、インプット・実践・振り返りというサイクルを回すという育成方法を取る場合は、いつでも復習できるアーカイブ型のオンライン研修サービスが理想的です。
2.現場での実践
正しい知識をインプットした後は、職場での実践を行います。最初から研修で学んだことを完璧に実施できる必要はなく、職場で実践を積みながら、何が得意で何が不得意かを自身で把握することが重要です。
3.振り返り
振り返りは、他者と相互にフィードバックし合う形式で行いましょう。自分だけでは気づけない部分は多く、他者の意見を聞き入れることで得られる発見もあるためです。
例えば、管理職同士で集まり、ワークショップ形式でマネジメントにおける課題を相談し合ったりするのも良いでしょう。至らなかったり、苦手な部分だけを振り返るのではなく、上手くいったことや得意な部分も振り返るようにすることが大事です。そして、振り返りをした後は、さらに伸ばしたいスキルや復習したい能力を再度学び直すというサイクルにつなげていきます。
04管理職研修の進め方
ここまで管理職に求められる役割や、管理職を育成するメリットについて説明しました。ここでは管理職の育成をどのように進めればいいのか紹介します。 管理職の育成の進め方は4つのステップに分けることができます。それぞれステップでやるべきことを以下で説明します。
1.目標設定と評価
管理職育成の初めに、組織の目標と管理職が達成すべき能力やスキルを明確に設定します。それぞれの管理職候補者の現在の能力や成果を評価し、育成プランの方向性を決定します。
2.研修プログラムの設計
育成プランに基づいて、管理職が必要とするスキルや知識をカバーする研修プログラムを設計します。研修内容はリーダーシップ開発、コミュニケーションスキル、人材管理、戦略思考などに焦点を当てることが一般的です。
3.実践とフィードバック
研修プログラムの一環として、実践の機会を提供します。管理職候補者には、学んだスキルや知識を実際の業務で適用し、経験を積む機会を与えます。同時に、フィードバックを提供し、成長のためのアドバイスや指導を行います。
4.成果の評価とフォローアップ
管理職育成の成果を評価し、定期的なフォローアップを行います。成果の評価は、目標の達成やパフォーマンスの向上、組織への貢献などを基準に行われます。また、成果に応じてさらなる成長のための支援や追加の育成プランを検討します。
05管理職の育成計画を立てる際のポイント
ただ研修制度を導入するだけでは、効果的に管理職の育成をすることはできません。ここでは、管理職の育成計画を立てる際のポイントを解説します。
企業が求める理想の管理職像を明確にする
まず、企業が求める理想の管理職像を明確にします。企業や組織によって管理職に期待する役割やスキルは異なるので、社内で共有し、研修制度を導入する際に活用できるようにすることが大切です。 また、社内で企業が求める管理職像が共有されていると、ただ辞令を出すのではなく、事前に社員と役割の確認を丁寧に行うことができ、心の準備を促すことができるでしょう。
理想と現状を把握して課題を洗い出す
次に、現時点での管理職の働きと理想像とのギャップを洗い出します。これには、管理職や候補者が今まで経験してきた業務、能力レベルや成果、得意分野と不得意分野などを細かく分析することが関係します。 管理職の中でも、部長、次長、課長、主任など、それぞれに求められる役割やスキルが異なるため、現状の把握と課題の洗い出しを丁寧に行うことが大切です。また、今後の事業戦略を考慮して、管理職のポジションの増減についても考えると良いでしょう。
研修により達成したい目標を設定する
課題の洗い出しができたら、それに合わせて研修を通じて達成したい目標を設定します。目標設定の際には、理解させたい学習目標と、研修後に実務で活用できるような行動目標を設定します。管理職が学んだことを理解し、実行することで、研修ははじめて意味を成すと言えるでしょう。
研修のカリキュラムを作成する
課題に基づいて研修の目標を設定したら、研修のカリキュラムを作成します。研修内容や参加者の数、日数などを決めていきます。研修の実施方法も、ひとつの会場に集めて集団研修を行うか、eラーニングなどオンライン研修を導入するかを考えます。参加者の予定を確認し、業務に支障がないよう調整することも重要です。
研修を実施して効果を測定する
研修カリキュラムに従って研修を実施します。研修を実施して終わりにするのではなく、研修の効果を測定することも大切です。測定方法としては、受講者の反応、学習、行動、結果の4段階で評価する「カークパトリックの4段階評価法」が有名です。 さらに、アンケートなどを通して研修内容に対する受講生の満足度を調査することで、次回の研修の際に、内容の見直しや改善を行えるようになるでしょう。
06管理職研修|Schoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約8,000本の講座を用意しており、様々な種類の研修に対応しています。管理職研修はもちろんのこと、その他の階層別研修からDX研修まで幅広いコンテンツで全てを支援できるのが強みです。
また、アーカイブされた動画を視聴する研修方式なので、忙しい管理職の方でも自身の好きな時間や場所で研修を受講できます。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,000本 ※2023年3月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,500円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
Schoo for Businessの資料をダウンロードする
管理職研修のプログラム例
Schoo for Businessは上述の通り、8,000本のアーカイブ動画の中から育成項目に応じて研修内容を作成することができます。この章では、管理職研修のプログラム例を紹介します。
急成長を導く『マネージャーの型』
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株式会社EVeM 代表取締役CEO
リクルート、DeNA、ハウテレビジョンを経てベンチャーマネージャー育成トレーニングを行うEVeM設立。DeNAでは広告事業部長、株式会社AMoAd取締役、株式会社ぺロリ社長室長兼人事部長などを担当。ハウテレビジョンでは取締役COOとして同社を東証マザーズ上場に導く。2020年株式会社EVeMを設立。マネジメントナレッジの展開やマネジメントプログラムの提供を通じてベンチャー企業を中心とした組織能力の向上を支援している。2021年技術評論社より「急成長を導くマネージャーの型〜地位・権力が通用しない時代の"イーブン"なマネジメント〜」を出版。
授業名 | 急成長を導く『マネージャーの型』 |
時間 | 1時間 |
学べること |
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組織を育てるリーダーのコーチング思考と対話法
授業名 | 組織を育てるリーダーの コーチング思考と対話法 |
時間 | 180分(60分×3コマ) |
学べること |
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ハラスメントの対処法-管理職向け-
授業名 | ハラスメントの対処法-管理職向け- |
時間 | 100分(25分×2コマ,30分×1コマ,20分×1コマ) |
学べること |
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07管理職の育成に関する事例
この章では管理職の育成に取り組んでいる企業の事例をご紹介いたします。
コニカミノルタジャパン
コニカミノルタジャパンでは、新任管理職に対して事前課題としてSchooで知識の習得を行い、3日間の集合研修で自分の想いを整理したり視座を高めたりして変革プランを練り、その後半年間は職場で実践するという形をとっています。
Schooで学んだことを職場で実践し、その中で感じた課題を解消するためにまたSchooを使うというサイクルを意図的に作っています。会社から指示されたから学ぶというだけでなく、自分で課題を見つけて自律的に学ぶツールとして、Schooで学んだことが現場に活きるようにしているのが特徴です。
▶︎関連記事:導入事例|コニカミノルタジャパン
株式会社日立不動産
株式会社日立不動産では、管理職と経営陣の間に共通言語を作ることを目的として、管理職研修を実施しています。研修動画を視聴した後には、レポートの提出やディスカッションを通じて、学んだ知識の実務への落とし込みを行っています。
レポートの提出のみで終わらせず、週次のマネジメント層が集まる会議で視聴した動画についての振り返り会を実施して、学んだことの共有や共通言語の確認、実務への応用方法についてディスカッションを行うなど、継続的な学習と実践の反復で、知識が定着するようにしています。
▶︎関連記事:導入事例|株式会社日立不動産
株式会社BitStar
株式会社BitStarでは、管理職の育成を対話型のワークショップを用いながら行っています。まずマネジメントや管理職に必要なスキルに関する授業をオンラインで視聴してもらい、共通知識をインプットしてもらいます。そして、現場での実践を経た後に、改めて受講者を集めて対話型のワークショップを実施しています。
対話型のワークショップでは、意見交換を通じてマネジメント同士の横のつながりを作ってもらうことも目的としつつ、インプットした知識を実践してみた結果の振り返りも兼ねています。
▶︎関連記事:導入事例|株式会社BitStar
08管理職研修のよくある質問
ここからは、Schooの管理職研修についてのよくある質問を、Q&A形式でご紹介します。
質問:管理職研修の内容について教えてください。
回答:Schoo for Businessを使った管理職研修では、部下とのコミュニケーションや組織マネジメントなどを学ぶことができる「マネジメント」や、「ビジョンマネジメント」、「コーチング」などの講座がよくご利用いただいております。 研修を通じてマネジメントの基礎を身につけ、組織課題解決力の向上を目指します。
質問:授業はどのように選んだらよいですか?
回答:スクーでは職種別・階層別に様々な研修パッケージをご用意しています。研修パッケージはいくつかの授業によって構成されており、目的や対象に合わせて研修パッケージのテンプレートを選択するだけで簡単に研修を開始することができます。管理職研修パッケージの一例をご紹介すると、「新任マネージャー研修パッケージ」や「指導力研修パッケージ」「メンタルヘルス研修パッケージ」などがあります。
質問:当社の状況を踏まえた管理職研修パッケージは作れますか?
回答:授業を組み合わせてオリジナルの研修パッケージを作成することが可能です。 またスクーでは階層や職種に応じて様々な研修テンプレートをご用意しているので、1から研修を作る手間をかけずに社員に合った研修を始めることもできます。まずはお気軽にご相談ください。<お問い合わせフォーム>
09まとめ
管理職育成の重要性、育成計画のポイントや効果的な研修例をまとめました。人手不足や企業を取り巻く環境の変化のスピードを考えると、企業の今後を担う管理職は重要なポジションにあると言えます。強くて高い効果を上げる組織作りには、管理職の育成が欠かせません。