公開日:2023/09/20
更新日:2023/10/13

バランススコアカード(BSC)とは?4つの視点やメリットについて解説

バランススコアカード(BSC)とは?4つの視点やメリットについて解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

企業が継続的に成長するためには、優れた経営戦略が欠かせません。かつては財務の視点中心に戦略が練られていましたが、現代のように変化の激しいビジネス環境においては、より多角的な視点で練られた経営戦略が求められます。そこで、注目を集めているのが「バランススコアカード(BSC)」です。 この記事では、バランススコアカード(BSC)の概要や、基本となる4つの視点、メリットについて解説します。

 

01バランススコアカード(BSC)とは

バランススコアカード(BSC)とは、企業の業績評価や経営戦略を財務の視点だけでなく、より多角的な視点から評価する手法です。「財務」に加えて、「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点から多角的に分析しようとするものです。 バランススコアカード(BSC)は、ハーバード大学教授である、R・S・キャプラン氏と、コンサルティング会社社長の、D・P・ノートン氏の二人により1992年に提唱されました。 バランススコアカード(BSC)が提唱された背景には、高度化・複雑化するアメリカ国内のビジネス環境があります。「VUCA時代」と呼ばれる予測できないビジネス環境は、アメリカにとどまらず世界中の潮流となりました。こうした背景のなか、従来の財務指標中心の業績評価の欠点を補う手法として、バランススコアカード(BSC)が注目されるようになったのです。

 

02バランススコアカード(BSC)4つの視点

ここでは、バランススコアカード(BSC)を構成する、4つの視点について解説します。これら4つの視点は独立しながらも有機的に結びついており、その因果関係を論理的な思考で導き出すことで、より精度の高い分析ができるようになっています。

  • ・財務の視点
  • ・顧客の視点
  • ・社内業務プロセスの視点
  • ・学習と成長の視点

財務の視点

一つ目は財務の視点です。株主・従業員をはじめとしたステークホルダーの期待に対し、収益面での成功をどのように導き出すかという視点です。企業として、収益を追求するための視点ともいえます。財務面はステークホルダーからの評価に直結するものです。

主な評価指標の例

  • ・売上額
  • ・利益額
  • ・利益率
  • ・自己資本比率

顧客の視点

顧客からの支持を得るための行動を決める視点です。自社の戦略実現に向け、どの層の顧客に、どのようなアクションを起こし、支持を獲得していくのかを決めていきます。「どうすれば顧客に喜んでもらえるか」、と考えるとわかりやすいかもしれません。

主な評価指標の例

  • ・顧客満足度
  • ・リピート率
  • ・市場占有率
  • ・顧客獲得率

社内業務プロセスの視点

財務視点・顧客視点の評価を向上させるために、社内の業務プロセスをどのように構築・運用していくかといった視点です。顧客面では、顧客の要望に十分に応えられているかといった視点で業務プロセスを評価します。 財務面では、生産性向上やコスト削減における、業務プロセスが評価の対象となるでしょう。

主な評価指標の例

  • ・新商品の売上高(シェア)
  • ・リードタイム
  • ・不良品発生率
  • ・レスポンスタイム

学習と成長の視点

経営戦略実現(財務・顧客・業務プロセスの戦略目標達成)のために、組織と人材の変化対応力や学習能力をどのように進化させるのかといった視点です。従業員のモチベーション向上や、能力開発といったソフト面への働きかけが中心となるため、単年度の成果を期待するよりも長期的に考えるべき視点といえるでしょう。

主な評価指標の例

  • ・モチベーション指数
  • ・従業員満足度
  • ・エンゲージサーベイ
  • ・従業員定着率
 

03バランススコアカード(BSC)のメリット

バランススコアカード(BSC)のメリットは、企業を取り巻く環境をあらゆる側面から検証し、より精度の高い経営判断が可能になる点にあります。 具体的には、以下4つのメリットが考えられます。

  • ・戦略や業績を多角的な視点で分析できる
  • ・戦略を業務活動に具体的に反映できる
  • ・バランスのとれた経営改善が継続できる
  • ・新たなビジネスの創出につながる

戦略や業績を多角的な視点で分析できる

これまで財務視点でのみ検証されてきた、業績や経営戦略を4つの視点で分析することで、より深く検証できるようになります。多角的に経営を検証することにより、さらに明瞭に企業のビジョン・戦略・業績を可視化できます。 これまで盲点であった強みの発見や、課題の洗い出しにつながっていくでしょう。

戦略を業務活動に具体的に反映できる

学習と成長の視点が加味されることで、現場で実務にあたる従業員の視点が、経営戦略に反映されるようになります。経営戦略が抽象的なものにならず、具体的な現場レベルの施策として落とし込めるようになるでしょう。

現場の声が反映された経営戦略に携わることで、意識変革が進みモチベーションも向上していきます。

バランスのとれた経営改善が継続できる

財務視点のみで経営改善をした場合、短期的な視点から無理なコストカットを断行するなど、好ましくない経営判断に至る可能性があります。バランススコアカード(BSC)により、多角的な視点を加えることで、こうした事態を防げるでしょう。 多角的な視点により評価分析し、定期的に見直すことでタイムリーな経営改善ができるのです。

新たなビジネスの創出につながる

バランススコアカード(BSC)の活用により、企業の将来ビジョンを明確にしたり、戦略的思考を深めたりといった、経営スキルを高めることにつながります。経営を多角的に俯瞰することにより、新たな視点を得ることもあるでしょう。こうした状況からアイデアが生まれ、新たなビジネスの創出につながることは、十分に考えられます。

 

04バランススコアカード(BSC)の作成手順

バランススコアカード(BSC)を作成する手順としては、以下の通りに各内容を設定する必要があります。

  • 1.ビジョン・経営戦略の策定
  • 2.戦略目標の設定
  • 3.重要成功要因の設定
  • 4.業績評価指標の設定
  • 5.アクションプランの設定

作成するうえでは、具体的かつ明確で実現可能な「戦略目標」を設定することがポイントです。あいまいで抽象的な「戦略目標」であった場合、うまく機能しないことが予測されます。 こうした事態を避けるためには、「SMARTの法則」などのフレームワークを用いると有効です。

  • ・Specific(具体的に)
  • ・Measurable(測定可能な) ・Achievable(達成可能な) ・Relevant(経営戦略に関連した) ・Time-bounded(期限を定めた)

上記5つの要素を満たす目標を立てることで、単なるお題目では終わらない、確実に機能する目標が設定できるでしょう。

ビジョン・経営戦略の策定

企業理念(ミッション)、自社を取り巻く市場環境や競合の状況を確認したうえで、経営戦略の策定に移ります。自社の企業理念を実現するべく、企業としてのあるべき姿を明確なビジョンとして示すのです。すでに設定されている場合は、それが適切か検証が必要になるでしょう。 検討した内容は複数のメンバーで、よくすり合わせをおこない、ブレのないものにしなくてはなりません。

戦略目標の設定

戦略目標の設定は、バランススコアカード(BSC)作成における重要なポイントといえます。「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」それぞれの視点から、目指すべきビジョン実現のための目標を設定するプロセスです。 各視点で設定した目標は、相関的に把握することが必要です。戦略マップを作成し各視点の因果関係を可視化すると、それぞれの目標の有機的なつながりが把握できるでしょう。

重要成功要因の設定

各視点の戦略目標を達成するために、何に対してアプローチをするか決めるプロセスです。例を挙げると、戦略目標が「収益の拡大」であった場合、その実現のために取り組むこととして、「(高利益の)新製品の売上増大」を設定するといったことです。 この「新製品の売上増大」が「収益拡大」成功のための、「重要成功要因」となります。

業績評価指標の設定

各視点の戦略目標と重要成功要因が定まったら、それぞれの測定指標とターゲット数値を決めるプロセスに移ります。先の例によると、重要成功要因が「新製品の売上増大」であれば、業績評価指標は「新製品の売上高」となります。そしてターゲットは「5千万円」というように、具体的な数値で設定していくのです。

アクションプランの設定

それぞれの業績評価指標における数値目標が設定できたら、その達成に向けて何を実行するのか、具体的なアクションプランを設定します。企業全体のアクションプランだけでなく、部署ごと、さらに個人ごとにまでブレイクダウンする必要があります。それぞれに数値目標を振り分け、各人が何をすべきかが明確になるように細かく設定することが重要です。


 

研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする


■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など


Schoo_banner
 

05バランススコアカード(BSC)の具体例

バランススコアカードの具体例を紹介します。関西電力の評価制度改革は、代表的なバランススコアカード(BSC)の導入事例として多方面で紹介されています。電力自由化に備えた組織改革の一環として業績評価制度の改革がおこなわれ、その改革の効果的手法としてバランススコアカード(BSC)が採用されました。

視点 戦略目標 業績評価指標 財務 1.企業価値の向上 2.各市場分野における売上の拡大 3.経費削減による低コスト構造の確立 4.最適設備形成を図る 1.PCA 2.需要開拓電力量 3.販売電力あたりコスト 4.フリーキャッシュフロー 顧客 自家発対象顧客への最適エネルギー提供 自家発対象顧客のうち当社の顧客数 業務プロセス 1.顧客にとって最適な○○の展開 2.自家発検討(導入・リプレース)顧客 の早期発見 1.○○実施件数 2.お客様設備把握率 学習と成長 ○○による総合提案力の強化 目標レベルの達成率
財務 戦略目標 業績評価指標
財務 1.企業価値の向上
2.各市場分野における売上の拡大
3.経費削減による低コスト構造の確立
4.最適設備形成を図る
1.PCA
2.需要開拓電力量
3.販売電力あたりコスト
4.フリーキャッシュフロー
顧客 自家発対象顧客への最適エネルギー提供 自家発対象顧客のうち当社の顧客数
顧客 1.顧客にとって最適な○○の展開
2.自家発検討(導入・リプレース)顧客 の早期発見
1.○○実施件数
2.お客様設備把握率
学習と成長 ○○による総合提案力の強化 目標レベルの達成率

▶︎引用:バランススコアカードナビ

 

06バランススコアカードの効果

バランススコアカード(BSC)の優れている点は、多角的な視点を加えることで戦略目標が明確になり、達成のためにやるべきことと、その達成度が明確になることです。目標と達成度を、個人レベルまで落とし込むことで、従業員の日々の業務行動に影響を与えられるのです。

従業員が進むべき方向を理解できる

バランススコアカード(BSC)を見れば、会社が掲げた経営戦略やビジョン実現の道筋がわかります。その実現のため「何を実行すればよいか」、とるべき行動も明確になるのです。 こうした効果により、意識のベクトルが統一され、従業員全員が同じ方向を見て仕事をする、強い組織に成長していけるでしょう。

従業員の意識が高まり業務改善が推進される

従業員一人ひとりが、自身の行動が経営戦略の実現にどのように貢献するのかを理解できるようになります。このことは、モチベーション向上に大きく作用するでしょう。 会社への貢献意欲・熱意が高まり、積極的な提案がなされる効果が期待できます。その結果、業務改善が推進されるのです。

 

07まとめ

バランススコアカード(BSC)は、曖昧になりがちな経営戦略やビジョンの輪郭をはっきりさせ、明確に示す優れたフレームワークです。多角的な視点が加わることで、より精度の高い戦略策定が可能になります。 従業員一人ひとりの戦略実現に向けた行動を促せる点は、組織力の強化に大きな効果が期待できるものです。貢献意欲が高まることで、結果を出しやすい組織に成長していけるでしょう。

  • Twitter
  • Facebook
  • はてなブックマーク
  • LINE
この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
執筆した記事一覧へ

20万人のビジネスマンに支持された楽しく学べるeラーニングSchoo(スクー)
資料では管理機能や動画コンテンツ一覧、導入事例、ご利用料金などをご紹介しております。
デモアカウントの発行も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

お電話でもお気軽にお問い合わせください受付時間:平日10:00〜19:00

03-6416-1614

03-6416-1614

法人向けサービストップ