危機意識とは?人材の意識を健全に高めるための方法や注意点について解説
中長期的な事業の成長を達成するためには、経営者だけでなく従業員も危機意識を持たなくてはなりません。しかし、社内に危機意識を醸成させる方法を誤ってしまうと、かえって生産性が低下してしまうおそれがあります。当記事では、従業員に健全な危機意識を醸成させるための方法やその注意点ついて解説します。
- 01.危機意識とは
- 02.ビジネスにおいて危機意識が言及される背景
- 03.社員が適切な危機意識を持つことのメリット
- 04.従業員の危機意識を高める方法
- 05.人材の危機意識を高める際の注意点
- 06.まとめ
01危機意識とは
「危機意識」とは、危機が迫っていることを感じることを意味します。ビジネスにおいては、現状のままでは立ち行かないことを自覚し、自ら変革に対する意思を持つこととして使用されます。企業において適切な危機意識が浸透すると、従業員は目の前の課題を自分ごととして取り組むことにつながるため、企業経営においても重視されている概念です。02ビジネスにおいて危機意識が言及される背景
ビジネスにおいて、危機意識が言及される背景にはどのような内容が挙げられるのでしょうか。
- 1.人口減少やグローバル化などの環境変化
- 2.産業界全体でのデジタルトランスフォーメーション
以下では、ビジネスにおいて危機意識が言及される背景について説明します。
人口減少やグローバル化などの環境変化
ビジネスで危機意識が重視される理由として、企業を取り巻く競争環境の激化があります。そしてこの背景には、急速に進む少子高齢化と人口減少、またグローバル化による海外企業との競争があります。 近年、日本では国際競争力の低下が課題視されています。今も国別のGDPでは世界3位ですが、一人あたりGDPでは低下傾向が続いており、G7国内では最低ランクとなっています。また、今後急速に進む少子高齢化によって国内市場の縮小や、新興国を含む様々な国の台頭による競争激化が見込まれており、企業を取り巻く環境は楽観できない状況だと言われています。 このような見通しの中、今まで通りの企業活動を続けていては存続が危ぶまれる可能性もあり、これまで以上に企業自体の変革や、それを支える従業員の危機意識が求められるようになっています。
産業界全体でのデジタルトランスフォーメーション
上述したような外部環境を背景に、企業に求められる変革手段の一つとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されています。DX化とは、ビジネスの持続性確保のため、ITシステムについて技術的負債となることを防ぎ、計画的なパフォーマンス向上を図っていく取り組みです。人口減少やグローバル化といった変化に対して、生産性や付加価値を高め、競争力を向上させていくための手段として注目されているのです。 こうした社会構造の大きな変化により、様々な企業において「危機意識」というキーワードがより重視されるようになっているのです。
03社員が適切な危機意識を持つことのメリット
ここまで、危機管理の定義やビジネスにおいて危機意識が言及される背景について見てきました。では、社員が適切な危機意識を持つことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。次の2つの観点で解説します。
- 1.企業の成長や競争力を高められる
- 2.事業や組織の変革が促進できる
企業の成長や競争力を高められる
まず、社員が適切な危機意識を持つと企業成長や競争力にプラスの影響があります。上に記載した環境の中で企業が成長を続けていくためには、従業員一人ひとりの生産性の向上の他、現在事業を展開している市場自体の縮小が想定される場合には新たな市場に打って出るなどの対策が必要です。これらはいずれも、今までのやり方を踏襲していては達成が難しい内容です。そのため、既存のやり方を変えたり新しい領域にチャレンジするための原動力として、適切な危機意識が役に立つのです。
事業や組織の変革が促進できる
危機意識を持つことは、事業や組織の変革を促す源泉となります。心理学や行動経済学で使われる言葉に「現状維持バイアス」というものがあります。私たちは自然と現状維持を望んでしまう傾向があることを示す言葉です。このような性質があるため、大きな変化を起こすには変革の必要性を冷静に受け止めることが必要なのです。 危機意識がある従業員は周囲の状況を冷静に捉え、未来に起こり得る問題や困難に対して積極的に対処しようとする傾向があります。そのような姿勢が、事業や組織の変革を促す源泉となるのです。
04従業員の危機意識を高める方法
従業員の危機意識を高めることは、企業の成長や競争力を高めるために欠かせない要素です。しかし、健全な危機意識を持った人材を育成することは容易なことではありません。以下より、従業員の危機意識を高める際に押さえておきたいポイントについて見ていきましょう。
- 1.従業員の状況を把握する
- 2.変革の目的やビジョンを明確に伝える
- 3.経営環境や外部環境の理解を促進する
- 4.課題認識を組織で共有する
- 5.会社の方針と個人の目標を接続・腹落ちさせる
- 6.各部署でチームビルディングを実施する
- 7.管理職を中心にマインドセット研修を実施する
従業員の状況を把握する
まず、従業員が自分たちの会社や環境、働くことに対してどのように感じているのかを適切に把握することが大切です。経営層や管理者層が自社の経営環境や方針についてシェアをしているつもりでいても、それが実はあまり理解されていなかった、伝わっていなかったということもあり得ます。
変革の目的やビジョンを明確に伝える
適切な危機意識を企業に根付かせていくためには、変革の目的やビジョンを明確に示すことも肝要です。組織変革をどのような目的で実行し、どのような方法を用いて実行するのか、また従業員にどのような影響が出るかなどを、明確かつ具体的に示しましょう。 また、これらのメッセージは受け取る相手の経験や立場によっても理解度が変わってきます。そのため、画一的な方法で伝えるのではなく、従業員のポジションによって伝達の方法を変えたり、経営者だけではなくマネージャーを含めた様々な人から発信をしていくことも大切です。
経営環境や外部環境の理解を促進する
また、変革の目的やビジョンを伝えるにあたっては、その背景にある経営環境や外部環境についてもセットで正しく伝える必要があります。抽象的な方向性だけがあっても、従業員がそれを自分ごと化するのは難しくなるためです。 従業員に外部環境への正しい理解を促進する際には、企業が情報を適切に伝えることが重要です。また従業員には、自分たちの役割や業務が企業の経営環境や外部環境にどのような影響を与えるのかについても理解してもらいます。そうすることで、従業員自身が環境変化に対応できるようになり、企業全体の危機意識への高まりが期待できます。
課題認識を組織で共有する
組織全体で課題認識を共有することも忘れてはならない要素です。組織全体で課題認識が共有化されていない状況では、従業員は変化の必要性に気づけず、危機意識を醸成するのは難しくなります。 また、自分たちの行動が改善につながるという意識を醸成することも大切です。そのためには従業員が積極的に自分たちの業務に関する問題や改善点を報告できるよう、適切なガイドラインを設けましょう。 加えて、上層部も従業員からの意見やアイデアを真意に受け止め、向き合うことが求められます。従業員からの報告を無視したり、受け入れたりするだけで何もアクションを取らない場合には、従業員のモチベーションや危機意識の低下につながるおそれがあります。
会社の方針と個人の目標を接続させる
企業の危機意識を高めるには、会社の方針と個人の目標を接続・腹落ちさせることも重要です。会社が直面している課題や目指すべき方向性を従業員が正しく理解し、自分自身の目標として設定することで、企業としての一体感や目的意識が生まれます。
各部署でチームビルディングを実施する
組織としてパフォーマンスがアップする適切な危機意識を醸成するためには、立場によらず改革のための発信やアクションが取りやすい環境や、困難なことにも組織で立ち向かうための一体感が大切です。そのため、そこに課題がある場合はチームビルディングを行うのも有効です。 チームビルディングによって、各部署の従業員が協力して課題を解決する体制を構築することで、従業員たちはより強いチームとして結束できるようになります。また、チームビルディングを通じて、組織全体における目標や方針に対する理解を深めることも可能です。
管理職を中心にマインドセット研修を実施する
管理職は従業員の指導やチームのマネジメントなど、企業の中心的な役割を担っています。そのため、一般社員よりも強い危機意識を持たせることが、組織全体の成長や競争力の向上につながります。管理職に危機意識を促す方法には、さまざまな方法が存在しますが、なかでもおすすめなのがマインドセット研修の実施です。 マインドセットとは、考え方を変えて率先して行動を起こすための意識改革のことです。常に変化に対応できる柔軟性を持ち、失敗をおそれずに挑戦する勇気を持つ管理職が組織を牽引することで、企業全体の危機意識が高まり、より良い効果をもたらすでしょう。
05人材の危機意識を高める際の注意点
人材の危機意識を高める際は、人材の特性を十分に理解したうえで、危機意識の醸成に取り組む必要があります。以下では、人材の危機意識を高める際の注意点について詳しく説明します。
- 1.危機感を煽ればよい訳では無い
- 2.変革の先にある未来もセットで伝えていく
- 3.社員毎の役割やポジションに応じたコミュニケーションを取る
- 4.組織の心理的安全性を高める
危機感を煽ればよい訳では無い
従業員が健全な危機意識を持つことで、潜在的な問題に対応する準備ができるようになります。この際、単に不安を煽るような内容で危機感を醸成すれば良いというわけではありません。従業員がただ不安になるような伝え方をすると、「この現状でも働き続けたい」「努力していきたい」というマインドが得られなくなり、場合によっては人材の流出に繋がってしまいます。 自社の状況を伝える際には、置かれる現状や中長期的な見通しを伝えながらも、どのようにそれを打破していくのか、そのために何が必要なのかも伝え、併せて従業員がチャレンジにやりがいを感じられるような環境整備も必要です。
変革の先にある未来もセットで伝えていく
変革による環境の変化は、大きなインパクトをもたらすため、時には不安を生むこともあるでしょう。従業員がネガティブな感情に陥らないようにするためには、ビジョンが実現するまでに必要な取り組みや課題、その取り組みによってどのような成果が得られるかを伝えることが欠かせません。 また、従業員が変革に関わるとなれば、どのような成長やキャリアアップの機会が得られるかを示すことも有効です。未来のビジョンを共有することで、従業員同士のコミュニケーションも活発化し、組織全体がひとつになって変革に向けて進むことができます。
社員毎の役割やポジションに応じたコミュニケーションを取る
従業員に対して的確な情報を伝えるためには、個々の役割やポジションに応じたコミュニケーションが必要です。また、従業員のモチベーションや危機意識を高めるためにも、役割やポジションに応じた目標設定や評価制度の整備をしましょう。組織内でのコミュニケーションを充実させることで、協力体制の構築を促し、企業の危機管理能力向上につなげられます。
組織の心理的安全性を高める
組織の心理的安全性を高めることは、従業員が危機意識を持つことと同様に重要な要素です。従業員が自由に意見を述べ、時には不安も共有することができ、アイデアを出し合い、問題を解決できるようになることで、より良い結果を生み出しやすくなります。 組織の心理的安全性を高めるためには、トップ層が率先して、従業員の意見やアイデアを受け入れる姿勢を示しましょう。従業員が自由に話せる雰囲気を作ることが、従業員同士の信頼構築に大きく寄与します。
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06まとめ
従業員が危機意識を持つことは、組織の存続や成長に欠かせない重要な要素です。また、経営者や管理職は、その重要性を従業員に伝え、危機意識を高めるための教育や研修を実施することが求められます。ぜひ当記事を参考に、従業員の危機意識を醸成する取り組みを検討してみてはいかがでしょうか。