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感情労働とは? 概要と企業が行うべきケアについて解説

公開日:2021/05/28
更新日:2021/06/02
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感情労働とは? 概要と企業が行うべきケアについて解説 | オンライン社員研修・eラーニング研修 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

近年「感情労働」という概念が注目されています。日々の業務において感情のコントロールが必要不可欠な職業のことです。ある一定の感情を顧客の前で、常に表現することを強いられるため、ストレスをためる労働者も多く企業として正しくサポートする必要性が出てきています。当記事では「感情労働」の概要と、企業が行うべきケアについて解説します。

 

感情労働とは

感情労働とは、顧客に対し、ある一定の感情で接することを求められる労働のことです。たとえば「お客様には常に笑顔で接しましょう」というように、常に「あるべき」とされる感情で接することが求められる労働を指す言葉です。たとえ、理不尽なクレームや非常識な要求を向けられたとしても「怒り」といったマイナスの感情を表に出すことは許されません。接客業など、人と接することが業務の大半を占める職種が感情労働といえます。

肉体労働、頭脳労働との違い

感情労働という概念が示される前は、「肉体労働」「頭脳労働」といった分類が一般的でした。肉体労働とは、文字通り体を動かすことで報酬を得る仕事で、一般的に「ブルーカラー」と呼ばれます。主に、農業や土木、建築、工場作業といった、肉体的な疲労をともなう労働のことです。頭脳労働とは、アイデアや企画など、頭を使ってアウトプットを生み出す仕事で「ホワイトカラー」とも呼ばれます。知識、見識、思考力を提供する労働で、生み出したアウトプットの質が成果として評価されます。この2つに加え、感情労働は、顧客満足のために自分の感情をコントロールし、報酬を得る仕事として新しい概念が提唱されました。

ホックシールド氏による感情労働の分類とは

この感情労働という新しい概念は、アメリカの社会学者であるアーリー・ラッセル・ホックシールド氏が提唱したものです。ホックシールド氏は、感情労働の性質は「表層演技」と「深層演技」の2種類に分類されるとしています。「表層演技」とは「愛想笑い」に代表されるように、自分の内面に関係なく「表面上の笑顔」で接するといった表現を指します。反対に「深層演技」とは表面的ではなく、自分の「内面の感情」そのものをコントロールして「心からの笑顔」を「演技」するものといえます。

 

感情労働が求められる職種

感情労働が求められる職種は多岐に渡りますが、人と接することが業務の大半を占める職種は、ほぼ感情労働に当てはまるといえます。顧客満足を第一に考え、労働者が感情のコントロールを求められる点が共通しています。また、その職業に特有の「あるべき姿」が社会通念として一般化されている職種も、広い意味で感情労働といえます。

販売や飲食などの接客業

顧客満足のために「あるべき振る舞い」を要求される接客業は、感情労働の典型といえるでしょう。顧客には常に笑顔で接し、理不尽な要求やクレームに対しても、誠実に対応することが求められます。「会社を代表してお客様に接している」という意識が必要であり、顧客を不愉快にさせることが最大の「悪」とされます。近年では、サービス業の競争が激化し「心のこもったサービス」が当たり前とされ「深層演技」による感情のコントロールが必須とされるケースも多くなっています。

お客様の問い合わせに対応するコールセンターなど

顧客の問い合わせに対応する、コールセンター業務も感情労働といえます。コールセンターに問い合わせをする顧客は、電話を手にとった時点で、製品やサービスに対し不便を感じています。そのため、コールセンターのスタッフは常時、顧客のネガティブな感情に対応しなくてはなりません。そのうえで、企業としての誠実な対応や、責任感を見せつつ、顧客の誤解や不満を解消するといった、高度な感情のコントロールとコミュニケーションを要求されます。

看護師や介護士

専門的な知識が必要な医療職、看護師や介護士も感情労働といえます。病気の治療や身体的な補助、介護が必要な人に接するため、常に丁寧で、優しさがある応対が求められます。また、判断ミスや不注意が命に関わる側面もあり、常時緊張を強いられます。そうしたなかで、求められる感情を表現し、業務を遂行する看護師や介護士は、高い精神的負荷がかかる仕事といえます。

感情労働は様々な職種に幅広く求められる

近年、感情労働は、さまざまな職種にも幅広く求められるようになっています。たとえば教師の場合は「社会通念としての教師像」が一般化されているため、常に教師らしい振る舞いが求められます。また職場における、上司と部下の関係にも当てはまります。上司の機嫌を損ねないよう、自分の感情をコントロールする部下、上司は常に上司らしく振る舞う、といったことも、広い意味では感情労働といえるのではないでしょうか。

 

感情労働が増加した背景

感情労働が増加した背景には、顧客満足が企業価値を測る基準として定着した点が挙げられます。製品やサービスの品質だけでなく、提供する『人材の質』までも含めて、企業イメージを表現する必要性に迫られています。そのため、顧客対応のあり方がマニュアル化され、一定の「あるべき感情」の表現が求められるようになったのです。

サービス業の増加

感情労働が増加した背景の理由には、サービス業の増加、多様化による競争の激化が挙げられます。現在では、製品やサービスにおける他社との競合において、明確な差別化が図りにくくなっています。そのため、提供する「人材の質」を向上させ、顧客に心理的な高い価値を提供する必要性が出てきました。顧客を不快にさせない最低限の対応だけではなく、より顧客を満足させる独自の対応を行う必要に迫られているのです。

インターネット・ SNS の普及

インターネットや SNS が急速に普及したことも、感情労働の増加に拍車をかけました。現在は、SNS により誰でも簡単に情報を発信できる環境にあります。些細な接客応対の不手際が、一人の顧客から発信され、拡散するといった事例も増えています。こうしたことから企業イメージを守るため、業務中のみならず、業務外の行動においても良識を求める風潮が強くなっています。「企業に属すること」そのものが、感情労働であるといっても過言ではありません。

 

感情労働が引き起こす問題点

感情労働は、従業員に心理的な負荷を強いるため、さまざまな問題を引き起こします。主にストレスから生じる、心身の不調がそれに当たります。企業には、常にそれを想定し管理していくことが求められます。

ストレスに日常的にさらされる

感情労働のストレスは、自分の本当の感情と、表現する感情のギャップにより生じます。顧客に喜んでもらうため、感情を押し殺し対応することも少なくありません。また、顧客の過度な権利意識の高まりも問題視されています。理不尽な要求やクレームを想定し、常に神経を使う必要に迫られる状況は、ストレスの原因としては大きなものです。

ストレスが蓄積しやすい

感情労働のストレスは、回復しにくく、蓄積しやすい点も問題といえます。肉体労働や頭脳労働は、体や脳を休めることで回復できますが、感情に関わる部分は切り替えが難しいものです。仕事で生じた嫌な感情をプライベートに引きずり、オンとオフの切り替えがうまくできずに、ストレスを蓄積していくケースも多いようです。

バーンアウト(燃え尽き症候群)に発展することも

日々、感情をコントロールすることは、非常に大きなエネルギーを必要とします。精神的な負担が限界を超えると「バーンアウト=燃え尽き症候群」に発展することもあります。バーンアウトとは、それまで精力的に業務に当たっていた人が、ある日を境に人が変わったように無気力な状態に陥ることを指します。責任感が強く仕事熱心な人ほど、この状態に陥りやすい傾向があり注意が必要です。

精神疾患の発症

日常的に感情を抑制することは、それだけで大きな精神的負荷となり、精神を摩耗させます。感情労働により受けたストレスは、バーンアウトをはじめ、うつ病や依存症といった、さまざまな精神疾患の原因となります。このことは、職場からの離脱といった生産性の低下を招き、企業活動にもたらす影響も大きいため、組織的ケアが必要となります。

 

感情労働におけるストレスから従業員をケアする企業の対策とは

感情労働におけるストレスから従業員を守るために、企業はさまざまな対策をとる必要があります。従業員に対する適切なストレスケアの実施、問題が生じたときに適切に対応すること、相談窓口の設置といった体制作りが求められます。

ストレスチェック制度の導入

労働者が50人以上いる事業所は、ストレスチェックが義務づけられています。ストレスチェックを適切に行い従業員のストレス状態を把握し、傾向をつかむことが有効な対策となります。特定の部署や業務で、高ストレス状態になっていないか、といった傾向を分析し、問題点の洗い出しや、ケアの優先順位を決定していきます。

相談窓口の設置

相談窓口を設置することも有効な対策です。相談できる場所があることが、従業員の安心感につながります。また、実際に相談を受けることで、現場で起きている問題を把握し対策が可能になります。必要に応じ、産業医の面談や医療機関との連携などを実施すれば、事態が深刻になる前に対処できるでしょう。

ケアを受けるハードルを下げる

企業としてのフォロー体制を整えていても、従業員が利用しにくい状態であれば改善が必要です。窓口だけでなく、普段の職場環境、たとえば上司と部下の関係においても相談しやすい雰囲気を作る必要があります。また企業として、どのようなケアを行っているのかを従業員に周知し、必要があればいつでも対応できる、という姿勢を明確に打ち出しておくこともケアを受けるハードルを下げることにつながります。

悪質クレームへの対応の明確化

クレーム対応は、感情労働のなかでも特に負荷の高いものです。現場で対応するクレームと、組織的に対応するクレームの線引きを明確にしておく必要があります。近年、顧客へのクレーム対応から精神疾患を発症するといったケースも発生しています。悪質クレームについては、現場まかせにせず、企業として毅然とした対応を行う必要があります。

ストレスケアのスキルを上げる教育や研修

実際に問題が起きてからの対応も重要ですが、予防の意味でのストレスケア教育を実施するのも有効な手段です。ストレスに対する向き合い方、回復する手段といったレジリエンス力を高める研修を実施し、従業員のメンタルを守ることも企業の大きな責任といえます。

 

まとめ

企業には、感情労働が労働者にとって大きな心理的負荷となることを正しく認識し、従業員を適切にケアしていく責任があります。「仕事だから我慢するのは当たり前」といった考えを捨て、従業員一人ひとりが心の健康を保てるような、さまざまな取り組みを実施する責任があるのではないでしょうか。

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