リーンマネジメントとは?結果を最短で生み出す方法を徹底解説
リーンマネジメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。経営の最適化を図りながら、最短距離で結果を出すことができるリーンマネジメントは、現在注目を集めているマネジメント手法です。 今回は、リーンマネジメントの概念や、リーンマネジメントが注目されている背景について詳しくご紹介します。
01リーンマネジメントの概念
リーンマネジメントとは、プロセス管理を徹底することで、製造やサービス工程における無理や無駄を一切省き、最小限の経営資源で最大限の顧客価値を提供することを目的としています。言い換えれば、本質的には顧客起点で経営を最適化するということです。
しかし、実際のところは説明の印象ほど大がかりなものではなく、企業全体のマネジメントが変わらなくても、ある組織やあるチームといった小さな単位でも影響を与えることができるマネジメント手法とされています。
そのため、大企業が新規事業部門のみマネジメント手法を変更したい時などに、積極的にリーンマネジメントが求められます。
リーンとは?
「リーン」という言葉の意味についても確認しておきましょう。英訳すると「lean」となり、贅肉や脂肪が少なく、無駄がない状態を意味します。本当に顧客への価値提供に必要な部分のみに注力することで徹底的に無駄を省く意味があります。
プロジェクトに置き換えて考えると、リーンなプロジェクトとは最も無駄なく、スムーズに進行できる状態を指します。余分な脂肪となる部分を排除することで、プロジェクトの遅延やパフォーマンス低下を未然に防ぎます。
リーンスタートアップとは?
同様に「リーン」を使用したキーワードに、リーンスタートアップがあります。リーンスタートアップとは、コストを最小限に抑えながら最低限の機能の商品やサービスをつくり、提供することを通して顧客の反応を獲得し、高頻度でブラッシュアップを行っていく手法を指します。
商品やサービスを提供しても、実際に使う人がいなければ意味がありません。しかし、企業内の思考や視野のみで商品やサービスを開発しても、顧客から受け入れらない場合は少なくありません。そのような事態を未然に防ぐという観点で、リーンスタートアップは重宝されているのです。
リーン生産方式とは?
また、「リーン」という言葉が付くものにリーン生産方式があります。リーンとつく以上、やはり無駄をできる限り排除した生産方式であることが読み取れます。
リーン生産方式はトヨタ自動車が、海外に自社工場を建設し車を生産・販売したことが由来とされている手法で、「自働化」と「ジャストインタイム」を基本の考えとします。「自働化」とは、製造段階で不良品検知する仕組みを作り生産の無駄を省く考え方、「ジャストインタイム」とは必要なものを必要な時に必要な量だけ生産する考え方です。このような効率化を図ることで、良質な製品を低コストで製造し、企業そして顧客ともにwin-winの状態を目指す仕組みとなっています。
02リーンマネジメントが注目されている背景
では、そのように様々なシーンで用いられる「リーン」マネジメントが、なぜ今注目を集めているのでしょうか。代表的な例を2つご紹介します。
日本企業ではイノベーションが起きにくい
1つは、日本企業ではイノベーションが起きにくい文化・風土が確立していることです。
イノベーションが起きにくい理由をたどると、一度失敗してしまうと、取り返すことが難しい雰囲気が挙げられます。そんな中リーンマネジメントは、失敗と呼ぶほど大きな失敗をしてしまう以前に、顧客の声を的確に拾い集め軌道修正します。
その結果、企業は最も必要な機能に絞った新たな商品やサービスを世の中に提供し、ユーザーからのフィードバックを受けやすくなり、それがイノベーションにつながります。
この工程を繰り返していくことで、顧客にとっては真にニーズを満たす商品やサービスが提供されやすくなり、大きなイノベーションになっていきます。リーンマネジメントは、イノベーションの起こりにくい日本企業で、それを起こす可能性を秘めたマネジメント手法なのです。
実践できるマネジメント方法である
リーンマネジメントは、決して難しいマネジメント方法ではありません。これまでの無駄を少なくすることを前提に事業を進めていけば、必然的にリーンマネジメントに手を掛けていることになります。
また、ニーズがない商品やサービスは提供に至らないため、企業としての損失も最小限に抑えることができます。その結果、企業として投資判断もスムーズに行うことができ、経営陣に納得してもらうためにも非常に有効なのです。
03リーンマネジメントを成功に導くポイント
では、リーンマネジメントを成功に導くためには、どのようなポイントがあるのでしょうか。代表的なポイントを3点ご紹介します。
アウトプットから逆算する
最も重要なのは、アウトプットから逆算して工程を検討していくことです。ここで言うアウトプットとは、商品やサービスの最終形態ではなく、何を満たすと顧客のニーズに応えることができるのかという部分です。
もちろん、アウトプットは仮説にしか過ぎません。実際にリーンマネジメントの工程を踏んでいく中で、アウトプットが想定と全く異なる場合もあるでしょう。しかし、まずはその時点の材料できちんと仮説を立てることが大切なのです。
人やリソースを厳選する
リーンマネジメントを行う際は、メンバーやリソースを厳選することが求められます。「リーン」は無駄がないという言葉の意味通り、メンバーは最少人数でありながら能力は最大化できる工夫が必要です。
もちろん工程によって、必要となるメンバーが異なる可能性は少なくありません。しかし、まずはこのメンバーがいれば問題ないという人選を行うことが大切です。
加えてリソースに関しても、適切な判断を持って厳選する必要があります。最小限の投資にすることは大切ですが、最小限にしすぎるあまり効果が出なくては意味がありません。効果とのバランスを上手く取ることができるリソース投下を行いましょう。
現場のメンバーにも経営力を求める
また、現場のメンバークラスであっても、経営目線を求めることも大切です。
リーンマネジメントを実践しようと考えた際、多角的な視点で観察して、スピード感を持って判断していくことが求められます。その結果、経営陣のような目線を持って日々の業務に当たる必要があります。
メンバー招集の段階で、経営目線を持っているか否かを確認するのは非常に難しいです。これまでの実績や上司や周りの社員のヒアリングなどから客観的に判断をするのがおすすめです。
04リーンマネジメントを実践するために
では、実際にリーンマネジメントはどのように実践していくのでしょうか。実践方法をご紹介します。
「The Basic Lean Process」を活用する
実践方法として最も有名なのが、「The Basic Lean Process」です。「The Basic Lean Process」は全5ステップから成り、リーンマネジメントにおける仮説検証をよりスムーズに行うことを目的としています。
- 「The Basic Lean Process」の5ステップは以下の通りです。
- 1.価値の特定
- 2.価値を出さない工程の排除
- 3.価値の流れの創造
- 4.直前の価値の引き出し
- 5.継続的改善
これらのステップは、無駄なく顧客への価値が提供されていると考えられるまで継続します。
MVPとは?
「The Basic Lean Process」を実践するにあたり、有用なフレームワークがMVPです。MVPはMinimum Viable Productの略であり、顧客に提供する上で最低限の価値を持つ商品を指します。
顧客価値を構成する「Emotional Design」「Usable」「Reliable」「Functional」のそれぞれの要素を、どれかだけ満たしているのではなく、全てを網羅的に満たしていることが重要視されます。
リーンマネジメントを実行するにあたり、MVPを活用し、適宜改善を加えながら商品やサービスを開発していくことが非常に重要なのです。
ツールを活用する
リーンマネジメントを円滑に進めるためには、ツールを活用するのがおすすめです。今回は、代表的なツールをご紹介します。
バリデーションシート
最も代表的なのが、このバリデーションシートです。
バリデーションシートには、「成し遂げたい内容」「成功の基準」「どのくらい伸びたら成功か?」「初期アイディアの仮設」を記載します。この内容に沿って、最初に「検証したい仮説」と「検証方法」、そして進捗と結果を記載します。
このシートを活用することで、どこまでいくと成功なのか、また仮説検証にどの程度時間を費やしていいのかを明確にすることができます。また、撤退のポイントも可視化できるため、このシートが1枚だけあればとても便利に活用することができるでしょう。
現状を先入観なく客観的に見ることができるため、複数人で確認するツールとしても非常におすすめです。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
05リーンマネジメントを活用し確実な業績向上を
リーンマネジメントを上手く組織に応用することができれば、企業としても大きな負担なく新たなチャレンジを創出できる可能性があります。
もちろん人事視点に立つと、誰をどのように起用するかといった課題は、実際に取り組んでみなければ分からない側面も大きいと言えるでしょう。しかし、リーンマネジメントに適した人材はある程度目星を付けやすいため、比較的スムーズにリーンマネジメントを取り入れることができるでしょう。
リーンマネジメントは、リーンマネジメントに直接的に関わる人はもちろん、そうでない人にも無駄が少ないことから、メリットが大きいマネジメント手法です。ぜひ今一度、自社の組織に取り入れてみてはいかがでしょうか。