キャリアブレイクとは?注目される背景や有効活用するためのポイントを解説

キャリアブレイクとは、一時的にこれまでの仕事を離れ、自分のこれからのキャリアを改めて考えた学び直しやスキルアップに充てる期間のことです。人生100年時代では、人生において働く期間も長くなり、自分のキャリアを改めて考えて進みたいと考える人が増えています。企業側も、時代の流れの中で多様な人材に対応する必要が生じてきています。キャリアブレイクをポジティブに捉え、将来に活かす方法を考えてみましょう。
- 01.キャリアブレイクとは
- 02.キャリアブレイクが注目される理由
- 03.キャリアブレイクのメリット
- 04.キャリアブレイクのデメリット
- 05.キャリアブレイク経験者を採用する際のポイント
- 06.キャリアブレイクの取り組み事例
- 07.まとめ
01キャリアブレイクとは
キャリアブレイクとは、一時的にこれまでの仕事を離れて、自分のこれからのキャリアを改めて考えて、学び直しやスキルアップ、リフレッシュなどに充てる期間のことです。 これまでの自分が進んできたキャリアを振り返り、これからの自分の人生の在り方を考えて、キャリアを再構築していくための準備期間となります。
キャリアブランクとの違い
キャリアブレイクと似た言葉に「キャリアブランク」があります。 キャリアブランクというと「キャリアの空白期間」というネガティブな印象で、「単なる無職でいた期間」と捉えられます。 それに対してキャリアブレイクは、この先を見据えたうえで必要な準備期間という前向きで積極的な意味で使われる言葉です。ただし、よく似た言葉ですので、混同して使われているケースもあります。
サバティカル休暇との違い
「サバティカル休暇」とは、一定の長期勤続者に対して与えられる長期休暇制度のことです。その違いは、サバティカル休暇は会社の従業員として籍を残して仕事を休む休暇期間とされているのに対して、日本におけるキャリアブレイクは、離職している状態を指すケースが多いです。 アメリカで始まり、ヨーロッパで普及したサバティカル休暇制度は、日本国内でも導入する企業が徐々に増えてきています。
02キャリアブレイクが注目される理由
キャリアブレイクが注目されるようになった理由には、人生100年時代を迎え学び直しの考え方が広まったことや、変化の激しい時代に対応する必要があることなどが考えられます。また自分のキャリアは自分で決めるキャリアオーナーシップの思想が普及していったことも背景となっています。
- ・リスキリング(学び直し)が重要になっているため
- ・VUCAの時代を生き抜いていくため
- ・キャリアについて考える必要性が高まっているため
- ・ワークライフバランスに注目が集まっているため
リスキリング(学び直し)が重要になっているため
人生100年時代といわれるようになったことで、その分仕事に従事する期間も以前と比べて格段に長くなってきています。仕事を始めた頃に考えていたことや時代背景も大きく変化していく中で、時間や経験とともに自分のキャリアに対する考え方も変わってきます。 そこで、次のステージに進むためのステップとして、リスキリングといわれる学び直しやキャリアの再構築に取り組む考え方が広まってきています。
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VUCAの時代を生き抜いていくため
予測できないほどの変化の激しいVUCA時代である現代で生き抜いていくためには、常に時代の変化や新しいニーズに対応できるよう、柔軟な考え方や大胆な行動力が求められています。 ネット社会が高度化しAIがさらに進化していくこれからの社会で、自分らしい働き方も変わっていきます。その対応に必要な期間としてキャリアブレイクが捉えられています。
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キャリアについて考える必要性が高まっているため
終身雇用が当たり前であった時代には、会社側が従業員のキャリアを考え、従業員もそのコースに従って進むのが当たり前と考えられていました。 しかし、人材流動性が進んだ現代では、自分のキャリアは自分の責任で築き上げていくものという、キャリアオーナーシップの考えが広まってきています。自分が求めるキャリアのために必要であれば、一旦仕事を休んで学び直す期間をとるという考え方がキャリアブレイクの背景となっています。
ワークライフバランスに注目が集まっているため
現代の労働者は、働き方と生活のバランスを重要視する傾向が強まっています。特に、ストレスやバーンアウトのリスクが高い職場環境では、心身のリフレッシュや家族との時間、趣味の充実を求める声が高まっています。キャリアブレイクは、こうしたバランスを取り戻し、個人の幸福度や持続可能な働き方を模索するための一つの方法として選ばれることが増えています。
03キャリアブレイクのメリット
キャリアブレイクのメリットについて、企業側と従業員側の両視点からそれぞれから見ていきましょう。
企業のメリット
企業はキャリアブレイクを経験した人材を採用することで、多様な人材が確保でき、在籍する従業員に刺激を与えられます。また、新しい働き方ができることを企業内外に示す機会となります。
- ・多様な人材を確保できる
- ・在籍する従業員への刺激になる
- ・新しい働き方を示すことができる
多様な人材を確保できる
キャリアブレイクの期間を経て入社してきた人材は、バックグラウンドがこれまで採用してきた人たちとは異なり、今まで社内になかった価値観を持ち込んでくれる可能性があります。 新しい発想で仕事に取り組み、これまでとは違ったアプローチで事業を広げてくれることが期待できます。
在籍する従業員への刺激になる
既存の従業員にとっても、キャリアブレイクを経験した人材が入ることで、新しいものの見方や考え方に接してこれまでにない刺激となります。 主体的に自分のキャリアをとらえる考え方が浸透すれば、従業員が仕事に取り組む姿勢にも変化すると期待できます。
新しい働き方を示すことができる
キャリアブレイクを経験した人材が社内で活躍することで、これまで主流であった一つの会社で勤め上げる働き方や、会社が提示するキャリアの道を進むだけでない、これからの時代に合った新しい働き方を会社の内外に示すことができます。 多様な価値観を受け入れる企業と認められれば、人材の採用活動にも大きなプラスの要素となります。
キャリアブレイク取得者のメリット
キャリアブレイクを取得することで、従業員にとっては、自分のキャリアを見つめ直し、心身のリフレッシュができる時間となります。
- ・自分のキャリアを見つめ直す機会となる
- ・心身のリフレッシュができる
自分のキャリアを見つめ直す機会となる
思い切って仕事から離れることで自分の時間がゆっくりと取れ、これまでなんとなく歩んできた自分のキャリアを改めて考え直すいい機会となります。 自分の考え方や大切なものが、年齢とともに変化していくのは当然のことです。それを踏まえた上で、これから進む方向を定めていく有効な期間となります。
心身のリフレッシュができる
これまで仕事に追われている人の中には、数日程度の休暇では仕事のことが頭から離れないため十分に休まらないという人もいるでしょう。 キャリアブレイクをとって一旦仕事から離れることで、頭を切り替えることができ、心身のリフレッシュができます。
04キャリアブレイクのデメリット
キャリアブレイクのデメリットについて、企業側と従業員側の両視点からそれぞれから見ていきましょう。
企業側のデメリット
キャリアブレイクには、企業側のデメリットとして、「コストがかかる」と「人材流出」が挙げられます。ここでは、それぞれについて解説していきます。
コストがかかる
キャリアブレイクを導入する企業には、さまざまなコストが発生します。まず、キャリアブレイク中の従業員を補うために代替人材を雇用する場合、採用やトレーニングにかかる費用が発生します。特に専門的なスキルが必要な職種では、適切な人材を見つけるのが難しく、時間やコストが増大します。また、キャリアブレイクから復帰した従業員が職務にスムーズに戻るために再研修やトレーニングを提供する必要もあります。さらに、代替要員や業務負担を増やした既存の従業員の生産性が低下する可能性があり、企業全体の業務効率に影響を与えることがあります。このように、キャリアブレイク制度は短期的な人材確保や業務遂行において企業に直接的および間接的なコストをもたらすリスクが伴います。
人材流出
キャリアブレイクを提供することで、企業は従業員に柔軟な働き方を許容し、モチベーションを高めることを目指しますが、一方で人材流出のリスクも増大します。キャリアブレイク中、従業員は新しいスキルを習得したり、他の業界や企業とのネットワーキングを通じて新しい機会に触れることができます。その結果、より良い条件での転職を決断することや、新たなキャリアを模索する可能性が高まります。特に高いスキルを持つ人材が他社へ移籍する場合、企業にとって貴重な人材を失うリスクが大きくなります。また、キャリアブレイクを通じて従業員が自身の価値観やキャリアの方向性を見直し、元の職場に戻らずキャリアチェンジを決断するケースもあり、企業にとって大きな損失となる可能性があります。
従業員側のデメリット
キャリアブレイクには、従業員側のデメリットとして、「転職に不利になる可能性がある」と「金銭的な影響が出る」が挙げられます。ここでは、それぞれについて解説していきます。
転職に不利になる可能性がある
キャリアブレイクを取ることは、転職活動において不利に働く可能性があります。ブレイク中に業務経験が途切れるため、採用担当者から「キャリアの一貫性がない」と見なされ、採用を懸念されることがあります。特に、ブレイク中にスキルや経験を十分に維持・向上させていない場合、競争力のある労働市場では他の候補者と比較して不利になることが考えられます。また、キャリアブレイクを取った理由やその間に何を学んだかを明確に説明できない場合、面接でネガティブな印象を与えやすく、採用側に不安を感じさせる可能性があります。特に、キャリアブレイクが長期にわたる場合、従業員のスキルや知識が最新の業界標準から遅れていると見なされるリスクもあるため、転職活動においてハンディキャップとなることがあります。
金銭的な影響が出る
キャリアブレイクを取ると、収入が一時的に停止するため、金銭的な負担が大きくなります。ブレイク中は給与が支払われないことが多く、生活費や家族の支出、ローン返済など、日常生活の維持に対して貯蓄を取り崩す必要があります。さらに、キャリアブレイクをリスキリングや教育のために利用する場合、研修費用や学費なども自己負担になることが多く、これも追加の出費となります。また、キャリアブレイク中は社会保険や年金などの福利厚生が停止する場合もあり、経済面での影響を及ぼす可能性があります。従業員にとって、キャリアブレイクを取る際には、金銭的な準備と計画が不可欠であり、十分な貯蓄がない場合にはリスクが伴います。
05キャリアブレイク経験者を採用する際のポイント
企業がキャリアブレイク経験者を採用する際に、見ておくべきポイントを解説します。
- ・ポジティブに捉えているか
- ・期間中のスキルや経験を有効に活用しているか
- ・これからのキャリアを具体的に考えているか
ポジティブに捉えているか
キャリアブレイク期間を、単に無職だった時期としてネガティブに捉えているのではなく、これから先の長い人生に必要な時間であり、この期間がプラスになったと取得者自らが考えていることが重要です。
期間中のスキルや経験を有効に活用しているか
キャリアブレイクで仕事を離れていた期間を、どのように活用していたのかを確認しておきましょう。 新しい知識やスキルの習得、海外留学、ボランティア活動など、自分の将来に向けてどのような活動をして、何を身につけたかが大切になります。
これからのキャリアを具体的に考えているか
キャリアブレイクが有効な時間であったかどうかは、本人がどれだけ自分のこれからのキャリアを具体的に考えているかにかかっています。 そこが曖昧なままで学び直しや留学に取り組んだとしても、いまひとつ身になっていない可能性があります。
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06キャリアブレイクの取り組み事例
次に、キャリアブレイクに取り組んでいる企業の事例を3つ紹介します。
- ・キャリアブレイク研究所
- ・ヤフー株式会社
世界中のビジネスパーソンに活用されているビジネス用SNSのLinkedInは、自己紹介ツールとしても知られています。そこに、自分のキャリアを紹介する際の項目としてキャリアブレイクが追加されたことが話題となりました。 LinkedInが項目を追加したことは、キャリアブレイクを肯定する意味を持ち、職歴の空白期間を無意味な時間ではなく、前向きに捉えようという考え方の後押しとなっています。
キャリアブレイク研究所
代表の北野氏自身やパートナーの経験から、キャリアブレイクを応援する活動をしているのが、2022年にスタートしたキャリアブレイク研究所です。 無職であれば無料でお酒が飲めるイベント「無職酒場」、キャリアブレイク当事者がライターになる情報誌「月刊無職」の発行、キャリアブレイク中の人が集まり一緒に活動しながら学び合う「むしょく大学」という3つの事業を運営しています。 キャリアブレイク中の人たちの交流を深めたり、キャリアブレイクの考え方の普及活動をしたりしています。
▶︎参考:“無職期間=小休止”という文化を、日本に根付かせたい。「キャリアブレイク研究所」がつくる、休・離職者が“感性を取り戻す”場とは?
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社では2013年から、勤続10年以上の正社員を対象とした、最長3ヶ月間の長期休暇を取得できる休暇制度の導入を開始しました。 社内で一定のキャリアを積んだ社員が、自らのキャリアや経験、働き方を見つめ直し、考える機会を作ることで、さらに成長することを目指した制度で、社員のより豊かなキャリア形成を会社側から支援しようという取り組みです。 これは、会社に籍を置きながら長期休暇を取得できる「サバティカル制度」で、厳密にはキャリアブレイクとは異なりますが、キャリアブレイクの考え方と基本的には通ずるところがあります。
▶︎参考:Yahoo! JAPAN、最長3ヶ月の長期休暇を取得できる 「サバティカル制度」の導入を開始 ~ 社員が自らのキャリアや働き方を見つめなおす機会を創出 ~
07まとめ
これまでネガティブなイメージが強かったキャリアの空白期間は、人生100年時代を迎えこれから長い就業期間があることを考えると、自分らしいキャリア形成のために必要な時間と前向きにとらえることができます。 自分のキャリアは自分で作り上げていく時代となり、キャリアブレイクは自分のスキルと経験を棚卸し、人生にとって重要な位置を占める仕事をさらに充実させることにつながります。 企業側にとっても、多様な人材を迎えて新しい発想を取り入れるきっかけとなり、時代に対応する企業に変化していく可能性が生まれるでしょう。