公開日:2023/09/22
更新日:2024/03/28

週休3日制とは?メリット・デメリットから導入する際の注意点までを解説

週休3日制とは?メリット・デメリットから導入する際の注意点までを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

週休3日制は、働き方改革の一環として、政府が推進する休日制度です。導入する企業が増加傾向にありますが、本制度にはメリット・デメリットが存在するため、導入の際には適切な制度設計が求められるでしょう。 本記事では、週休三日制の概要のほか、メリット・デメリット、導入する際の注意点を企業事例とともに解説します。

 

01週休3日制とは?

週休3日制とは、月に1回以上、週における休日を3日間設定する制度です。2021年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」に、新しい働き方の実現に向けて、本制度の導入・推進が盛り込まれています。 週休3日制の運用パターンは、以下の通りです。

  • ・給与維持型
  • ・総労働時間維持型
  • ・給与減額型

給与維持型

給与維持型は、1日あたりの所定労働時間と毎月の給与額が、週休2日制から変更しないパターンです。休日が3日となるため、月の総労働時間は短くなりますが、給与はそのまま維持されます。 1日8時間勤務を例に挙げると、週の所定労働時間は32時間となり、週休2日制に比べ8時間少なくなります。なお、給与額の変更がないため、実質的に1時間あたりの賃金はアップするのです。

総労働時間維持型

総労働時間維持型は、月の総労働時間を維持するために、1日あたりに働く時間が増えるパターンです。給与額は給与維持型と同じく、週休2日制から変更がありません。 労働基準法第32条により、労働時間は週に40時間以下、1日に8時間以下と規定されており、原則これを超えて設定できません。変形労働時間制を併用し、勤務時間を1日あたり10時間に設定すると、週における労働時間40時間の確保が可能です。 ただし、このケースでは、労使協定の締結が必要となります。

給与減額型

給与減額型は、1日あたりの所定労働時間に変更はないものの、月の総労働時間が減るパターンです。それに伴い、週休2日制に比べると給与額も減少します。 例えば、1日8時間勤務の場合、週休2日制の週40時間から週休3日制の週32時間となり、従来の給与が80%までに減額するイメージです。

 

02週休3日制導入の現状

週休3日制は、現在どの程度普及しているのでしょうか。 ここでは、以下の観点から解説します。

  • ・週休3日制を導入している企業は1割未満
  • ・週休3日制について企業と従業員にギャップがある
  • ・週休3日制の義務化

週休3日制を導入している企業は1割未満

厚生労働省が公表した「令和4年就労条件総合調査」によると、2022年において、完全週休2日制を導入している企業は全体数の48.7%、完全週休2日制よりも休日日数が多い企業は8.6%という結果になりました。 前回の「令和2年就労条件総合調査」では、完全週休2日制よりも休日日数が多い企業は7.7%だったため、今ひとつ導入は進んでいません。 とはいえ、従業員の休日を増やす企業がわずかながら増加傾向にあるのは事実なので、今後長期的に増加していくと期待できるでしょう。

▶︎参照:令和4年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

▶︎参照:令和2年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

週休3日制について企業と従業員にギャップがある

東京都が実施した「令和2年度中小企業労働条件等実態調査 働き方改革に関する実態調査」によると、週休3日制を導入済みと回答した企業はわずか2.2%でした。 60.5%の企業が導入する考えはないと回答しており、時差出勤制度(53.3%)、在宅勤務・テレワーク(40.4%)などの制度に比べ、導入が進んでいるとは言えない状況です。 他方、従業員が今後導入してほしい制度に「週休3日制」54.5%と最も多い結果となり、 企業と従業員にギャップがあることを示唆しています。

▶︎参照:働き方改革に関する実態調査(令和2年)|東京都産業労働局

 

週休3日制の義務化

現在の段階では、週休3日制が義務化される予定はありません。 「経済財政運営と改革の基本方針2021」において、『企業における導入を促し、普及を図る』と義務化を言及しておらず、週休3日制を導入するか否かは企業側に委ねられている状態です。 また、労働基準法35条では、「使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」と定めています。つまり、現行の労働基準法は、週休2日制も要求していないのです。 ただし、労働時間は、1週間40時間以下・1日8時間以下と規制されるため、1日の所定労働時間が8時間であれば、労働日は1週間で5日以内となり、必然的に週休2日制となります。 週休3日制の義務化には法改正の実施が必要であり、その動きは見られないのが現状です。

 

03週休3日制のメリット

週休3日制は、多様な働き方の選択肢として導入する企業が増えつつあります。企業が導入した場合、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。 ここでは、企業が得られるメリットとして以下の3つを解説します。

  • ・離職率の低下につながる
  • ・優秀な人材の採用につながる
  • ・生産性の向上を見込める

離職率の低下につながる

週休3日制の導入によって、従業員の離職率の低下に期待がもてます。前出の東京都が実施した調査結果にあるように、週休3日制を望む従業員は多いでしょう。 妊娠や出産、育児、介護と仕事の両立が難しく、ライフイベントを理由に退職を余儀なくされるケースも少なくありません。休みが増えれば心身の負担が軽減され、仕事を続けられる可能性が高くなります。人材不足が深刻化する中で、定着率の向上、ひいては離職率の低下につながるため、大きなメリットとなるでしょう。

優秀な人材の採用につながる

週休3日制を導入している企業はまだまだ少ない現状にあるため、求職者に向けてアピールできれば、優秀な人材の採用につながります。 厚生労働省労働統計要覧によると、年間休日120日以上の企業は全体数の30.2%、130日以上を含めても31.2%にとどまるのが実態です。よって、勤める企業が年間休日120日以上であれば、休日制度において非常に優れた企業と言えるでしょう。 加えて、年間休日に含まれない有給休暇は、年5日の取得が2019年4月に義務化されたため、取得率の開示も同時に進めると採用力が強化され、優秀な人材の確保につながると考えられます。

▶︎参照:令和4年就労条件総合調査の概況|厚生労働省(P5)

生産性の向上を見込める

週休3日制の導入により、生産性の向上が見込まれます。光熱費や交通費の負担の減少によるコスト削減、組織の見直しや業務プロセスの改善による効率化が図られるのが大きな要因です。 さらに、従業員にとってもリフレッシュしやすくなり、業務に対するモチベーションアップにつながり、総じて生産性の向上に期待できるでしょう。

 

04週休3日制のデメリット

週休3日制を導入する際には、メリット・デメリット双方を把握し、自社に合った制度となるか検討してみましょう。 ここでは、想定される以下のデメリットを解説します。

  • ・業務が滞る可能性がある
  • ・ビジネス機会を損失するリスクがある

業務が滞る可能性がある

週休3日制により労働力が不足するため、従来の業務量をこなせなくなる可能性があります。製造現場など、常に一定数の従業員を確保しなければならない場合は、より深刻な事態となるでしょう。 業務の自動化・簡略化で業務量を20%削減、もしくは増員の検討といった対策が必要となります。ただし、総労働時間維持型は、1日あたりに働く時間を増やし、月の総労働時間を維持するため該当しません。

ビジネス機会を損失するリスクがある

週休3日制を導入している企業が少ないため、ビジネス機会の損失を生じるリスクがあります。 取引先の営業日が自社の休業日となると、交渉のタイミングが合わない、コミュニケーションに支障が出るなど、担当者不在で対応できないといったケースが挙げられるでしょう。 シフト制やフレックスタイム制を導入し、従業員が常駐する体制を整える必要があります。さらに、業務管理も徹底しなければなりません。 機会の損失は、企業にとって大打撃となる可能性があるため、最小限に抑える対策が求められます。

 

05週休3日制を導入する際のポイント

週休3日制の導入にあたり、留意するポイントがあります。事前に整理しておくと、導入メリットを最大限に活かし、デメリットを回避できるでしょう。 週休3日制を導入する際のポイントは、以下の通りです。

  • ・目的を明確にして従業員と共有する
  • ・定期的な面談を行い連携体制を強化する

目的を明確にして従業員と共有する

週休3日制を導入する際には、目的を明確にし、従業員と共有しましょう。 目的を明確にするには、自社の状況から制度のメリット・デメリットを精査し、経営課題を解決する手段としてどの運用パターンが有効なのか十分な試算が重要です。 導入に伴い、給与の減少や労働時間の増加がある場合は不満になりやすく、離職者が出る可能性があります。具体的に企業や従業員にどういったメリットがあるのか丁寧に説明し、全社で周知徹底を図りましょう。

定期的な面談を行い連携体制を強化する

週休3日制の導入する際には、定期的な面談を行い、連携体制を強化するといった環境整備に重点をおきましょう。 チーム全員が揃う機会が減ると、当然ながらコミュニケーション不足が懸念されます。業務がうまく回らず、遅滞が発生する可能性も否めません。 導入の前から、業務属人化の解消やコミュニケーションの見直しを図り、円滑に業務が遂行できるよう、社員の意見に耳を傾けるようにしましょう。


 

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06週休3日制を導入している企業事例

ここでは、すでに週休3日制を導入した企業事例を紹介します。 2017年佐川急便、2020年みずほフィナンシャルグループが、いち早く週休3日制を導入している代表例です。

佐川急便

佐川急便は、2017年から一部地域(東京都、山梨県)のセールスドライバーを対象に、週休3日制を導入しました。ドライバーの人材確保を目的としています。 導入前は、フルタイム制を基本とする週休2日制を採用しており、法定労働時間に則った「1日8時間・1週40時間」です。 対して、週休3日制では、1日8時間の法定労働時間の適用を受けない変形労働制を採用しています。「1週の就業日が4日・1日の労働時間を10時間」とし、週の総労働時間に変更のない制度です(総労働時間維持型)。 また、休日の副業も認めるなど、多様な働き方を用意し、人材確保に努めています。

▶︎参照元:佐川急便 働き方の多様化、人材の多様化

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループは、2020年から選択的週休3日制・4日制を導入しました。 いずれも給与は所定労働時間に応じてフルタイムの給与から減額する制度です(給与減額型)。具体的には週休3日で従来の8割、週休4日では6割の給与となります。 選択的週休3日制・4日制を導入した理由として、社内外で通用する専門性を高める職場環境を目指しています。社内外兼業や副業制度も導入し、専門性を身につけ、そのスキルを業務に活かして、さらなる成果につなげるのがねらいです。

参照元:Oneシンクタンクレポート みずほファイナンシャルグループ

 

07まとめ

週休3日制の導入は、新しい働き方の実現に向けて、政府が推進している取り組みのひとつです。企業においては、退職を余儀なくされた従業員の離職防止、優秀な人材の確保、生産性の向上といったメリットがあります。 一方で週休3日制の導入によって、労働力が不足するため業務が滞る可能性やビジネス機会が損失する点が課題です。 そのため、導入目的を従業員と共有し、定期的な面談を行い連携体制を強化するのが導入のポイントになるでしょう。

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この記事を書いた人
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