U理論とは|意味や実践方法をわかりやすく解説
U理論とは、複雑で解決が難しい問題に対して、これまでになかったイノベーションを起こして解決する実行力や、その能力を引き出すプロセスのことです。過去の改善では解決できない問題をかかえる現代社会では、U理論で紹介する「出現する未来からの学習」によって新しい解決策が必要になっています。 この記事では、U理論の概要やメリットを紹介し、U理論で述べられている3つのプロセスと実践するための7つのステップについて解説します。
- 01.U理論とは
- 02.U理論のメリット
- 03.U理論の特徴
- 04.U理論の3つのプロセス
- 05.U理論を実践するための7つのステップ
- 06.U理論を身につける方法
- 07.まとめ
01U理論とは
U理論とは、課題に対して過去を分析することでその延長線上に答えがあると考えるのではなく、プロセスを通して集団や個人のポテンシャルを開放することで、イノベーションにたどり着く手法のことをいいます。 マサチューセッツ工科大学のオットー・シャーマー博士が、世界のトップクラスの経営者たちにインタビューするプロジェクトを通じて得られた気づきを体系化した理論です。 イノベーションが生まれるプロセスを言語化したもので、U理論を用いることで全く新しい未来への行動基点が生み出せると考えられています。 「内面の状況」やイノベーションが起こる際の「意識変容」を「出現する未来からの学習」と名付け、その時の感覚や行動を段階的なモデルとして構築しました。
メンタルモデルとの関連性
メンタルモデルとは、これまでの体験から作られた思考回路や行動の特性のことです。私たちは気が付かないうちにメンタルモデルを作り上げ、そこから判断し行動しています。 メンタルモデルは過去の体験の積み重ねからの発想であり、イノベーションを起こすにはメンタルモデルから離れなければなりません。 U理論を活用することで、問題を深く理解し新しい視点を得て、これまでに作られたメンタルモデルの変更や拡充が可能になります。
PDCAとの違い
PDCAサイクルは、過去の計画と実行を評価し改善のための対策を実行していきます。つまりプロセスを辿る「過去からの学習」といっていいでしょう。 一方、U理論は、過去のやり方から学ぶのではなく、瞬間的・感覚的に現れるひらめきやヒントをもとに実現していく「未来からの学習」といえるやり方です。
02U理論が注目される背景
U理論が注目される背景には、主に以下の2つが考えられます。
- ・前例のない問題の解決が求められているから
- ・イノベーションが必要な時代だから
前例のない問題の解決が求められているから
現代では、様々な課題が絡み合うことで、企業にはこれまでにない価値の提供や課題の解決が求められつつあります。日本では少子高齢化による人材の不足、それによって内需が縮小傾向にあり、グローバル化が進んだ現代ではより国際競争力を高めることが求められています。 そのため、これまでのように事業活動をおこなえば、成長を見込めるということではなくなってきました。年々、中小企業では人材の不足を中心に、倒産数も年々増加傾向にあります。過去から学ぶという今までのやり方だけでは課題解決につながらず、新しい取り組みや考え方を取り入れることがより一層重要となってくるでしょう。
イノベーションが必要な時代だから
現代社会はVUCA時代といわれ、これまで予想もしていないことが当たり前のように起こることが予想されており、不確実な事態にも対応する力が求められています。 そういった時代では、これまで正攻法として確立してきた価値提供や課題解決のやり方では不十分であり、技術の進展などを用いたイノベーションを起こすことが必要とされています。 そういった背景から、U理論を用いてイノベーションを起こすプロセスを学ぼうとする人も増加傾向にあるのです。
03U理論のメリット
U理論はイノベーションを生み出すプロセスを解説する理論です。U理論を導入することでイノベーションや創造的な問題解決が生まれるようになりますが、具体的にどのようなメリットがあるのかそれぞれ解説します。
- ・イノベーションや創造的な問題解決を促す
- ・組織変革に役立つ
- ・個人の思考や人間関係が変わる
イノベーションや創造的な問題解決を促す
様々な要素が複雑に絡み合う現代社会では、過去の常識にとらわれていては解決できない問題に直面しています。 過去から学ぶこれまでの手法ではなく、U理論のように未来から学ぶ視点を身につけることで、イノベーションや新しい課題解決の方法のヒントを得ることができるでしょう。その具体的なプロセスについては、記事の後半で解説しています。
組織変革に役立つ
多様なステークホルダーが関わる組織では、それぞれ異なる主張がぶつかり合い、方向性を定めることが難しくなります。 集団でのU理論をもとに対話をしていくことで、それぞれの関心を集約しあるべき未来像が見えるようになります。 その未来像に向けて組織を変えていくことが、理想的な組織変革になります。
個人の思考や人間関係が変わる
U理論のプロセスを身につけることで自分自身の中に確固たる軸が生まれ、自分らしいリーダーシップが発揮されるようになるでしょう。 U理論では、自己のこだわりや執着を全て手放し、無私の状態で状況を見て、他者の視点や大局的な観点からの発想を得るというプロセスがあります。 このようなU理論に基づいて内省を深めながら対話をしていくことで、自己の見方にこだわらないくなり人間関係が改善されます。
04U理論の特徴
U理論は、単なる思考モデルを超えて、様々な場面で実践的に活用できるという特徴があります。U理論の主な特徴について、解説します。
- ・社会のあらゆるレベルに対する対応が可能
- ・机上の理論ではなく実践的なフレームワークである
社会のあらゆるレベルに対する対応が可能
U理論は、課題解決に活用できるだけでなく、これまでにない新しい切り口やあるべき姿を見つけ出すプロセスです。そのため、企業だけでなく、個人、1対1、チームなど、社会のあらゆるレベルに対応できるのが大きな特徴といえるでしょう。 自己のこだわりや執着から離れて大きな観点からの発想を得るという考え方は、場面が変わっても有効に活用できる手法といえます。
机上の理論ではなく実践的なフレームワークである
U理論は、もともと多くのリーダーたちが実践していることを理論化したものです。そのため、頭の中だけで作られた理論とは違い、実践に落とし込むことができ、再現性が高いといえます。 U理論で提唱するイノベーションは、特別な人だけが得られるものではなく、U理論の中のプロセスに沿って思考することで、誰でも手に入れられる可能性があります。
05U理論の3つのプロセス
U理論では「未来からの学習」をするまでの過程を、3つのプロセスに分けて説明しています。
- 1.センシング
- 2.プレゼンシング
- 3.クリエイティング
1.センシング
現状をただひたすらに観察するプロセスです。ここでは一切の評価をせず、決定を行いません。自分のこだわりや過去の体験などをすべて排除し、無の状態で観察します。
2.プレゼンシング
自己の執着を解放し、相手側の視点や大局的な視点から物事を見ることで、様々な見方が融合し新しい感覚やひらめきを得ることができます。
3.クリエイティング
得られた感覚やひらめきを、実行できる形に昇華させ、素早く行動に移していきます。06U理論を実践するための7つのステップ
上記3つのプロセスは、さらに細分化され7つの行動ステップとして紹介されています。
- 1.ダウンローディング
- 2.シーイング(観る)
- 3.センシング(感じ取る)
- 4.プレゼンシング
- 5.結晶化
- 6.プロトタイピング
- 7.実践
1. ダウンローディング
過去の枠組みや思い込みのことを指します。過去の考え方にとらわれていると、経験したことがない事態に陥ったときに対応できなくなります。 まずは、どのような考え方にとらわれているかを再現し、客観的に見られるようにしていきます。
2. シーイング(観る)
これまでの考え方を一度脇において、目の前の情報や事象をできるだけ客観的に分析していきます。3. センシング(感じ取る)
過去の枠組みをすべてはずして目の前の事柄に向き合うことで、新しい感覚を感じ取っていきます。
4. プレゼンシング
自己の執着や過去の思い込みから離れ、相手側の視点や大局的な視点から物事を見ることで、見方が融合し新しい感覚をつかみ取ります。頭にこびりついた雑念を取り払って覚醒する状態で、いわば「悟りを開く」ような感覚といえるかもしれません。
5. 結晶化
プレゼンシングでつかみ取った感覚やアイディアを、具体的な言葉に落とし込んでいきます。感覚やアイディアは、形にしなければ使うことができません。言葉に表すことは、形として表現する次の段階に非常に重要なステップです。
6. プロトタイピング
感覚やアイディアをさらに具体的な形にしていきます。実際に行動し試していきながら、実現可能性を見出していく段階です。
すぐにうまくいかなくても、実践を繰り返しながら、実現の手掛かりを探っていくことが大切です。7. 実践
ここまでのステップを踏んで形になった感覚やアイディアを、行動に移していく段階です。 アイディアを商品の形として市場に出してみたり、感覚を広めて組織のルールとして実践したりします。
07U理論を身につける方法
U理論の思考法や実践のしかたを身につけるには、どのような方法があるでしょうか。主な方法2つについて解説します。
- ・社内研修で理論を学ぶ
- ・ワークショップ形式で体験する
社内研修で理論を学ぶ
U理論は本で読むだけでは、すぐに理解するのは難しいかもしれません。社内研修などを通じてU理論の基本的な考え方を教えてもらうといいでしょう。 U理論は、フレームワークの理論ですが、感覚的なところがあります。本で読んだだけではわかりにくい点ですので、専門家にわかりやすく解説してもらうようにします。
ワークショップ形式で体験する
U理論の考え方を理解し、実践できるようになるには、ワークショップなどの形式で実際に体験するといいでしょう。 継続して何度か学び体験していくうちに感覚が身に付き、実践できるようになっていきます。
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08まとめ
VUCA時代といわれる現代社会では、これまでの考え方にとらわれていては解決が難しい問題に多く直面しています。これまでにない新しいアプローチをするためにはイノベーションが必要といわれていますが、イノベーションを起こすにはどうすればいいのかを具体的なプロセスで解説したのがU理論です。 U理論を身につけることで、今までなかったような革新的なアイディアが思い浮かぶようになるかもしれません。