組織開発とは|具体的な手法や活用できるツールなどを紹介

「人材開発」という言葉はよく耳にするけど、「組織開発」はあまり耳慣れないという方は少なくないと思われます。これら2つの言葉は同じ開発ではありますが、内容は大きく異なります。 そこでこの記事では、「人材開発」と「組織開発」の違いを解説し、その上で組織開発はどのように進めればいいのか、代表的な手法についても解説します。
- 01.組織開発とは
- 02.組織開発が注目されている理由
- 03.組織開発と人材開発の違いとは
- 04.組織開発の具体的なフロー
- 05.組織開発の手法
- 06.組織開発の事例
- 07.組織開発を学べるセミナー(無料視聴あり)
- 08.組織開発ならSchoo for Business
- 09.まとめ
01組織開発とは
組織開発(Organization Development)とは、「組織の課題を可視化し、チーム全員で対話しながら課題と向き合い、チームメンバーが自分事として課題の改善を行う一連の活動」のことを言います。
また、経済産業省は以下のように、組織開発を定義しています。
組織内の明示的/暗黙的な行動規範や価値観等に意識的・計画的に働きかけることで、個々の構成員の組織への信頼・貢献意欲、組織内の関係性を強化し、組織としてのアウトプットの質の向上や必要な人材の確保・リテンションを図るための一連の活動
▶︎引用:経済産業省主催 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会
組織開発は「人事部の仕事」という認識を持っている人も多くいますが、組織開発は組織に携わる全ての人が取り組むべきことなのです。
02組織開発が注目されている理由

組織開発は1950年代に米国で誕生した概念で、歴史のある分野です。しかし、日本では最近になって注目を集めるようになりました。日本の人事部が発行している「人事白書調査レポート2022」によると、組織開発が重要と考える企業は全体の82.3%もいることがわかっています。
▶︎引用:日本の人事部|人事白書調査レポート2022 組織開発
このように、多くの企業が組織開発を重要と位置付けている理由には、労働に対する価値観の変化や、労働市場の流動化があります。この章では、組織開発が注目されている理由について解説します。
労働に対する価値観の変化
組織開発が注目されている理由の1つには、価値観の多様化への対応があります。特に、仕事に対しての価値観が大きく変化していることが要因です。出世することが全てという価値観は消え去り、プライベートを最優先する人が出てきたり、副業によって出世以外で自己実現を見出す人が出てきたりするなど、それぞれが描く仕事に対しての価値観が多様化してきています。
この流れは止まることがないと想定され、企業は多様な価値観を持った人が、組織という共同体の中で同じ方向を目指していくために組織開発というアプローチを重要視しているのです。
労働市場の流動化
日本が長らく続けてきた「終身雇用」・「年功序列」が崩壊し、転職が当たり前の時代となりました。新卒一括採用はまだ続いていますが、新卒の3割は3年以内に退職する時代となっています。
さらに、日本の人口減少は止めることができず、今後はさらに人手不足を嘆く企業が増えることが予想されます。このような中で、企業としては自社に留まる人をどれだけ増やせるかが、組織の成長に欠かせない指標となっているのです。そのため、組織開発を行い、自社に魅力を感じてもらう必要性が高まっています。
03組織開発と人材開発の違いとは
組織開発と人材開発の違いは、施策の対象にあります。人材開発は「個人」を対象としているのに対して、組織開発は「組織または個人間の関係性」が対象です。
例えば若手社員の離職という課題に対して、人材開発では「管理職のマネジメント能力の向上」というアプローチを取ります。一方で、組織開発では「適切な人材配置」や「社員同士の対話の増加」といったアプローチを取ります。それぞれ、同じ課題への解決策にはなりますが、施策の対象が個人なのか組織なのかという違いがあるのです。
組織開発と人材開発は相互に作用する
組織開発と人材開発は対象こそ異なりますが、相互に作用します。優秀な人材を育成するためには組織開発が必要になり、良い組織をつくるには適切な人材開発が必要なのです。
例えば、チームの課題をチーム全員で対話しながら改善していくには、管理職のマネジメント能力やファシリテーション能力などが必要不可欠です。この能力を向上させるのが人材開発の役割といえます。一方で、人の成長は研修やOJTだけでなく、社員同士の対話や組織文化なども大きく関わります。つまり、組織開発は人材の育成に寄与するものでもあるのです。
04組織開発の具体的なフロー
組織開発の概要について解説しましたが、具体的にどのように進めればよいのでしょうか。 ここでは組織開発において一般的に取り入れられている具体的なフローについてご紹介します。
組織のミッションやフィロソフィーを決める
多くの企業でミッションやビジョンは、その企業が社会に存在する意義であり、社会に提示する価値です。そして、どのような社員が理想の姿なのかを明示したものがフィロソフィーです。組織開発の具体施策を議論する前に、組織がどのような状態を目指すのかを、これらと共に整理しましょう。
そして、この状態は組織のフェーズによっても変化するというポイントが重要です。特に会社が成長フェーズで、社員が年々増えているような場合は、組織に求められる状態も年々変化します。そのため、この整理は定期的に実施して、最終的に目指す姿と現在求められている姿の2軸で整理をする必要があるのです。
現状から課題を把握する
目標を明確にできれば、次はその目標に対して現状どうなっているのかを把握します。つまり、組織としての課題を見つけるフローです。 複数の社員の関係性にフォーカスする組織開発では、その課題も複雑なものであることも少なくありません。そのため、各社員へのヒアリングなどの調査を行い、事実情報を整理したうえで、客観的に課題を把握する必要があります。
組織のトップに課題解決が必要なことを理解してもらう
課題を発見したら早速解決に着手したいところではありますが、人材開発とは異なり、解決には大がかりな取り組みが必要となります。組織の関係者を巻き込んで施策を実施することになるためです。 そして組織開発をスムーズに進めていくためには、対象組織のトップの課題解決に対する理解が必要となります。 組織内でどのような課題があり、なぜ今解決に取り組む必要があるのか、解決によって得られるメリットなどを理解してもらうことで、トップを主導とした課題解決を進めることが可能になります。
スモールスタートで課題解決の施策を実施する
いきなり組織全体を改善しようとすることはあまり得策とは言えません。なぜなら、効果があると言われる施策だとしても、本当に効果があるのかは実施してみない以上はわからないことも多いためです。 そのため、特定の部署に絞って試験的に施策を実施してみることがベターです。スモールスタートであれば、施策の効果が比較的早期にわかるだけでなく、もしうまくいかなかった場合も、素早く施策の中止も可能です。 また、検討している施策が複数ある場合も、スモールスタートであれば一度に複数の組織で実施することも容易です。
施策がうまくいけば組織全体に展開する
スモールスタートで実施した施策で期待した効果が得られたら、次は組織全体に展開していきましょう。 その際には、試験的に実施した際に起こった問題を洗い出して、施策をブラッシュアップしておきましょう。小規模の組織開発で起こった問題は、規模が大きい組織においてはより深刻な問題になってしまうことも考えられます。 また、施策を全体に展開した後も継続的に効果検証を行うことが望ましいです。施策をさらに改善していき、組織として掲げている目標を達成できるよう、社員がモチベーション高く働けるような職場環境の構築を目指しましょう。
05組織開発の手法

日本の人事部が実施した調査によると、組織開発の手法として最も多く取り入れられているのは「マネージャー研修」で39.0%という結果でした。その他にも、研修によって組織開発を実施している企業は多く、研修は組織開発において重要な役割を果たしていることが伺えます。
さらに、「社内の対話の強化」・「上司と部下の1on1」も上位に位置しており、これらは「対話」による組織開発手法と言えるでしょう。また、「サーベイフィードバック」や「アセスメント」といった組織状態を可視化する手法も上位にランクインしており、これから組織開発に取り組もうという企業が増加していることが伺えます。
▶︎引用:日本の人事部|人事白書2019
社員研修
組織開発の手法として、最も多く取り入れらているのが社員研修です。主に、マネージャー研修・コーチング研修といったマネジメント層に向けた研修を実施する企業が多く、組織開発においてマネジメント層の重要性がわかります。
一方で、チームビルディング研修やファシリテーション研修といった若手社員や中堅社員向けの研修も実施されており、組織開発はマネジメント層だけでなくチームで取り組むべきものという認識が広まっているようです。
人事評価の改善
組織開発の手法として、人事評価の改善に取り組んでいる企業も多いです。働き方が多様化し、リモートワークを導入する企業も増えてきています。さらに、カゴメや富士通を筆頭にジョブ型雇用といった選択肢を導入する企業も増え、これまでの出社を前提とした人事評価が機能しなくなってきていることが伺えます。
また、360度評価を取り入れる企業も増えてきており、これまでの「上司が評価者で、部下が被評価者」という関係性から、「上司も部下も評価者」という関係性へと変化させようという動きも増えてきています。
対話
新型コロナをきっかけに、1on1を導入する企業も増えました。また、同時期から1on1支援ツールを提供するベンダーも増え、さらに1on1の導入率が増えたように思えます。
また、一部の企業では「対話による学び」取り組む企業も増えてきています。社会関係資本を伸ばし、社員同士が学び合う文化を根付かせようと社内勉強会や企業内大学といった施策を推進している企業が、特に大企業を中心に増えています。
組織開発の手法として、認知されつつある「ワールドカフェ」も対話を重視した施策です。ワールドカフェとは、カフェにいるような雰囲気で参加者がリラックスして会話ができるような対話のことです。特定のお題に対して、4人~5人のグループで、20~30分議論を行ったあと、1人を残して別のテーブルに移動して異なる参加者と再び話し合います。部署横断で実施されることが多く、社内で話したことがない人と対話する機会を増やし、社会関係資本を伸ばそうというのがワールドカフェの目的です。
アセスメント
アセスメントや従業員サーベイなど、組織課題を定量的に可視化する企業も増えています。組織開発に取り組むには、まず課題の特定が不可欠なので、アセスメントを実施する企業が増えるのは当然かもしれません。
昨今では人的資本経営が注目され、プライム市場の企業では人的資本開示が義務化されました。このような背景もあり、従業員エンゲージメントを開示項目として上げる企業が増えています。
組織課題の可視化をする手法として、アクション・リサーチも有効です。アクション・リサーチとは、組織内に隠れている人間的な課題を洗い出し、その課題を当事者との対話をしながら解決策を思案し、当事者に課題解決に向けてのアクションを取ってもらうという、組織開発の手法です。可視化と対話の両方の側面を兼ね備えた施策ではありますが、この当事者との対話の難易度が高いため、管理職の力量が問われると言えるでしょう。
06組織開発の事例
組織開発の手法には、大きく「研修」・「対話」・「人事評価」の3つがあります。それらを実際に実践している企業の事例をこの章では紹介します。
旭化成株式会社
旭化成株式会社は、「多様な"個"の終身成長+共創力で未来を切り拓く」という人材戦略を掲げ、組織開発に注力しています。マネジメント研修やKSA(旭化成独自のアセスメント)、1on1支援、さらには学び続ける組織文化をつくるためにCLAPという学習プラットフォームを導入するなど、多角的に組織開発を行っています。
導入事例|旭化成株式会社
富士通株式会社
富士通株式会社も、組織開発に注力している企業の1つです。ジョブ型雇用を導入し、人事評価の仕組みを変え、自社で学習プラットフォームを立ち上げ、公募による人事異動の制度をつくるなど、アジャイルでさまざまな施策を走らせているのが、富士通の特長です。
株式会社アントレ
独立・開業などの支援を中心に行っている株式会社アントレでは、オンライン学習サービスを活用し、会社全体で社員の成長をサポートするという形の組織開発を行っています。社員それぞれが自分自身の目標を半期ごとに設定し、その目標達成につながる講座を受けることで、社員のスキルアップを図っています。社員がどのように学び、その成果がどの程度出ているか、ということを定期的に上司と面談して確認するというシステムを採っており、会社全体での組織開発が行われています。
▼株式会社アントレの事例をさらに見たい方はこちら▼
【関連記事】株式会社アントレの組織開発事例
07組織開発を学べるセミナー(無料視聴あり)
オンライン学習サービスのSchooでは、組織開発を学べるコンテンツも多く取り揃えています。研修や人材育成のご担当者、組織開発のご担当者であれば、限定 10日間の無料デモアカウントを配布しております。興味のあるものがございましたら、ぜひご連絡くださいませ。
自律的組織を目指した組織開発において必要なこと
この授業では、ティール組織の3つの突破口を切り口に、株式会社オズビジョンの試行錯誤を実践的に振り返ります。オズビジョンの事例から、何を学び、どう考え、次につなげたのか、成功と失敗の生々しさを知ることができます。自律的な組織を目指すロードマップのような授業になっているので、これから組織変革に取り組もうとしている方におすすめの授業です。
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株式会社オズビジョン 取締役COO
1977年生まれ 千葉県船橋市出身 中小企業診断士 MBA in Innovation Management 大学卒業後、システムエンジニアからスタートしたキャリアが、上場準備を契機に管理部門へシフト。その後2社で2度のIPOを経験。 社会人大学院の修了に合わせて組織開発の実践の場を求め『ティール組織』に日本企業で唯一紹介された株式会社オズビジョンに参画。取締役COOとして事業と組織の統合を推進。
自律的組織を目指した組織開発において必要なことを視聴する(無料)
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ビジネスパーソンとして押えておきたい「人材マネジメント」の基礎
本授業では、「人材マネジメント」について解説します。 いまさら聞けない「人材マネジメント」の言葉の意味や目的、効果的な方法、今後のマネジメントを皆さんで学んでいきましょう。
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株式会社壺中天 代表取締役
1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺』(2018)、『図解 人材マネジメント入門』(2020)など。
「人材マネジメント」について -理論と実践のツボ-を無料視聴する
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
「なんとなく学んでない」のメカニズム
この授業では、より良いリスキリングを実践するための仕組みについて学ぶことができます。本記事で紹介した「リスキリングの工場モデル」や「リスキリングを進める具体策」について、『リスキリングは経営課題』の筆者でもある小林祐児先生に、ご講演いただいています。
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株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員
上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。NHK 放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年よりパーソル総合研究所。働き方改革・ミドル・シニア層の活性化・転職行動など、労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は人的資源管理論・理論社会学。 著作に『リスキリングは経営課題 日本企業の「学びとキャリア」考』(光文社)、『早期退職時代のサバイバル術』(幻冬舎)など多数。
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08組織開発ならSchoo for Business
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受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,000本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
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Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで3,200社以上に導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
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09まとめ
組織開発は人材開発とは異なり、個人間の関係性にフォーカスして改善を行い、様々な価値観が共存してバラバラになった個人を組織として機能させるように整え、全体の目標に対するモチベーションを上げることが目的です。 しかし、組織開発を行うためには、社員それぞれが何を考え、何を目的として働いているのかを調査し、それぞれの意見を尊重した施策を講じる必要があります。 また、いきなり組織全体を変えることはリスクと難易度が高いため、初めはスモールスタートから開始し、うまくいけば展開していくことが理想的です。そして、継続的に効果検証を行い、改善を繰り返していくことで、より連携が強化された組織の構築を図っていきましょう。