公開日:2021/05/27
更新日:2024/08/31

競業避止義務とは?その意味と理解しておくべき点を解説

競業避止義務とは?その意味と理解しておくべき点を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

競業避止義務とは、会社の取締役や社員などは、自分が所属する企業と競合する会社などに転職したり、自ら競合する会社を設立したりするなどの競業行為を行ってはならないという義務のことです。社員と取締役とでは、義務とされる範囲や内容が異なります。また、退職後は競業避止義務を負わないとされます。 当記事では競業避止義務について、その内容と意味、理解しておくべき点を解説していきます。

 

01競業避止義務とは

会社の取締役や社員などは、自分が所属する企業と競合する会社などに転職したり、自ら競合する会社を設立したりするなどの競業行為を行ってはならないという義務のことを指します。社員は、在職中は労働契約における信義誠実の原則に基づく義務として、競業避止義務を負うとされています。また、取締役については、会社法の定めにより在任中は取締役会の承認なしに会社の営業の部類に属する業務を行うことが禁止されています。退職後は、憲法で定める職業選択の自由の観点から、競業避止義務は生じないとされています。

秘密保持契約における競業避止義務

現在、企業の営業秘密漏洩の過半数は、社員・取締役による故意または過失によるものとされています。それを未然に防ぐために、企業は社員と秘密保持契約を締結する場合が多くあります。その際にポイントとなるのが「競業避止義務の有効性」です。在職中の社員・取締役については競業避止義務の法的根拠が明確であるため、その有効性が問題になることはまずありません。しかし、退職後も秘密保持契約を根拠に競業避止義務を課すことは、しばしば裁判でその有効性が争われます。

職業選択の自由との関連性

憲法第22条1項には、職業選択の自由が明記されています。そのため、特に退職後も競業避止義務を課すことは、職業選択の自由に反するものであるといえます。そのため、会社が退職後の社員にも競業避止義務を課す場合には、労働契約や就業規則などに必要かつ合理的な範囲で明示する必要があります。

 

02社員の競業避止義務について

労働契約法は第3条第4項で、「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」と定めています。この規定により、社員は競業行為を避ける義務があると解釈されています。このため、在職中の社員が競業行為を行った場合には、懲戒処分や損害賠償請求の対象になり、場合によっては解雇事由にもなり得ます。

競業避止義務は法律に定められている

社員は、労働契約法の定めにより競業避止義務を負うとされています。つまり、競業避止義務は企業が就業規則や労働契約などで独自に定めるものではなく、法を根拠としているものです。そのため、これに反すれば就業規則のみではなく、労働契約法にも反することとなるため、懲戒処分や損害賠償請求の対象となることに加えて、解雇事由になる場合もあります。

 

03取締役の競業避止義務について

取締役については、会社法第356条で「競合及び利益相反取引の制限」について定められています。取締役が、自身や第三者の利益を図るために会社との間で取引を行う場合等には株主総会の事前承認が必要となります。また、取締役会設置会社においては、事前に重要な事実を取締役会に開示し承認を得ること、事後報告することが定められています。

一般の社員よりも高度な義務を負う

上で見たように、取締役にはより詳細な規定がなされています。これは、会社の業務を執行する取締役が、会社の利益を犠牲にして自身や第三者の利益を図ることを防止する目的があります。一般の社員には取締役ほどの権限や会社を代表する立場がないため、取締役に求められるほどの規定がなされていません。

 

04退職後の競業避止義務

社員は、不正競争防止法により会社の営業秘密の不正使用や不正開示、不正手段で取得した情報の利用や開示は禁じられおり、企業はこれらから保護されるべきであるとされています。社員の転職によって、重要な営業秘密などを競合する企業に利用されることを防ぐために、社員の在職中はもちろん、退職後も「競業避止義務」を求める企業も多くあります。 一方で、先に見たように憲法で定める職業選択の自由の観点から、これを不当に制限する契約は民法の定める「公序良俗違反」として無効とされます。両者の関係性などについて、見ていきましょう。

退職後も一定の制約を受ける

社員と会社の関係は、退職により終了するものと考えられます。しかしながら、退職後に同業他社などへ転職したり、競合する事業を興したりする場合は、会社の営業秘密が外部へ漏洩するおそれがあります。営業秘密の持ち出しは、プライバシー保護の観点からも、看過されるべきものではありません。そのため、会社は誓約書や就業規則などによって競業避止義務を定め、これに違反した場合はなんらかの制裁を課す規程を盛り込むことが多くなっています。 一方で、在職中はともかく、退職後まで競業避止義務を負わされるのは不合理と考えることもできます。企業の利益と社員の職業選択の自由の線引きは難しく、裁判で争われることも多いため、過去の判例により事案ごとに判断されています。

 

05競業避止義務の有効性

会社は、一般的には就業規則や労働契約で社員の競業避止義務について定めています。その有効性が認められるためには、退職後を含めて社員の職業選択の自由を過度に損なわないよう配慮することを前提として、必要かつ合理的な範囲で定められているということの法的根拠を示す必要があります。競業避止義務の有効性が認められる場合について、具体的な基準を見ていきましょう。

有効性が認められる基準

会社が定める競業避止義務の有効性が認められるためには、次の基準を満たしているかどうかで判断されます。

1.会社に守るべき利益があるかどうか

競業避止義務契約を定めてまで守るべき会社側の利益があるかどうかです。不正競争防止法によって法的保護の対象とされる「営業秘密」はもちろんのこと、個別の判断において、「営業秘密」に準じて取り扱うことが妥当な情報などについても、守るべき会社側の利益と判断されます。

2.競業避止義務を課す必要がある社員かどうか

社員の地位について判断を行なった判例では、会社が守るべき利益を保護するために、 競業避止義務を課す必要がある社員かどうかが判断されます。

3.競業避止義務が適用される地域の定義

競業避止義務が適用される地域の範囲は、具体的に定める必要があります。例えば、「日本国内」や「東京都内」などのように、地理的な範囲が限定されていないと、義務の有効性が失われる可能性があります。競業避止義務が過度に広範囲にわたると、不合理とみなされることがあり、裁判所で無効とされるリスクがあります。そのため、適用地域は企業の事業活動が実際に行われている場所や、その地域での競争が特に重要とされる範囲に限定されるべきです。

4.競業避止義務の適用期間

競業避止義務の有効期間も重要です。この期間が不当に長い場合、元従業員の職業選択の自由を過度に制限することになり、義務の有効性が問われる可能性があります。一般的に、合理的な期間は数ヶ月から数年とされており、具体的な業界や職務内容によって適切な期間が変わります。裁判所はこの期間が適切かどうかを、企業の利益保護の必要性と元従業員の権利のバランスを考慮して判断します。

5.競業避止義務における行為の定め

競業避止義務で禁止される行為の範囲も明確に定める必要があります。これには、同業他社での就業、新規事業の立ち上げ、特定の顧客や取引先との関係の継続などが含まれます。行為の範囲が広すぎる場合、元従業員の経済的な活動が不当に制限されるため、義務の有効性に疑問が生じることがあります。禁止する行為は、企業の正当な利益を保護するために必要最小限の範囲に留めることが望まれます。

6.競業避止義務の代償措置が講じられているかどうか

競業避止義務を課すことの対価として、代償措置とみなされるものが存在するかどうかで判断されます。例えば、何らかの手当が支給される場合や、給与が高額に設定されているような場合がこれに当たります。


 

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06競業避止義務を違反した場合のペナルティ

競業避止義務に違反した場合、企業はさまざまなペナルティを従業員や元従業員に対して課すことができます。主なペナルティとして次のようなものが挙げられます。

  • ・競業行為の停止
  • ・懲戒処分
  • ・損害賠償請求
  • ・退職金の減額もしくは没収

これらのペナルティは、競業避止義務を守らせるための手段として効果的であり、企業が自社の利益を保護し、従業員が契約上の義務を果たすよう促す役割を果たします。また、競業避止義務の内容や違反した際のペナルティについては、契約書や就業規則に明確に記載しておくことが重要です。ここではそれぞれについて解説していきます。

競業行為の停止

競業避止義務に違反した従業員に対して、まず考えられるのは、競業行為の即時停止を求めることです。企業は、裁判所に差し止め請求を行うことで、競業行為の継続を阻止することができます。この措置は、企業が元従業員の行為によって被る損害を未然に防ぐために重要です。裁判所が差し止め命令を発令すると、元従業員は直ちにその行為を停止しなければなりません。

懲戒処分

競業避止義務違反は、現職の従業員がその義務を破った場合には、企業は懲戒処分を行うことができます。懲戒処分には、注意や警告、減給、降格、そして最悪の場合は解雇が含まれます。懲戒処分の内容は違反の程度や企業の規定によって異なりますが、違反行為が重大であると判断された場合、解雇という最も厳しい処分が下されることもあります。

損害賠償請求

企業は、競業避止義務に違反した従業員や元従業員に対して、損害賠償を請求する権利を持ちます。損害賠償請求は、違反行為によって企業が被った損害を補填するためのものです。例えば、元従業員が競業行為を行った結果、企業が顧客を失った場合、その損失額に対して賠償を求めることができます。賠償額は、実際の損害額を基に算出されますが、場合によっては、違約金が契約書に定められていることもあります。

退職金の減額もしくは没収

競業避止義務に違反した場合、退職金の減額や没収もペナルティとして適用されることがあります。特に、退職後に競業避止義務を破った場合には、退職金の一部または全額が支払われない、あるいは返還を求められることがあります。この措置は、企業が競業避止義務の遵守を強制するための強力なインセンティブとなります。

 

07競業避止義務を防ぐ方法

競業避止義務を効果的に防ぐためには、事前に適切な対策を講じることが重要です。主な方法として、次のようなものが挙げられます。

  • 1:誓約書の締結
  • 2:副業の許可
  • 3:社内研修の実施
  • 4:就業規則・雇用契約への明記

これらの方法を組み合わせることで、企業は従業員が競業避止義務を守るようにし、違反行為を未然に防ぐことができます。また、これらの措置は従業員と企業の双方にとって、誤解や不適切な行為を防ぐための透明性を高める手段でもあります。ここではそれぞれについて解説していきます。

1:誓約書の締結

競業避止義務を明確にし、従業員にその義務を遵守させるための一つの方法は、誓約書を締結することです。この誓約書には、従業員が企業の利益を守るために競業行為を行わないことを誓う内容が含まれます。誓約書を締結することで、従業員は自分が競業避止義務に従うことを認識し、それに違反した場合にはペナルティが科される可能性があることを理解することになります。これは、従業員に対して強力な抑止力となります。

2:副業の許可

競業避止義務違反を未然に防ぐために、副業の許可制を導入することも有効的です。従業員が副業を希望する場合には、企業に申請し、企業がその副業が競業避止義務に抵触しないかを判断する仕組みを設けます。このプロセスを通じて、企業は従業員が行おうとしている副業が自社の利益を脅かさないことを確認することができ、競業避止義務違反のリスクを減らすことができます。

3:社内研修の実施

従業員が競業避止義務について十分に理解していないと、無意識のうちに違反行為を行ってしまう可能性があります。そのため、社内研修を通じて、従業員に競業避止義務の重要性や具体的な内容を教育することが重要です。研修では、競業避止義務が企業の利益保護にどのように関与しているか、そして従業員がその義務を守るためには何をすべきかを詳しく説明します。これにより、従業員が意識的に義務を守るようになります。

4:就業規則・雇用契約への明記

競業避止義務を徹底するためには、就業規則や雇用契約に明確にその内容を記載しておくことが不可欠です。就業規則や雇用契約に競業避止義務の詳細が記載されていることで、従業員は入社時からその義務を理解し、遵守すべき事項として認識します。また、これにより、後々のトラブルが発生した際に、企業が法的に強制力を持って義務の履行を求めることが容易になります。

 

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管理画面の使い方2

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管理画面の使い方1

さらに、受講履歴からは受講者がどのような分野の動画を頻繁に見ているかが簡単にわかるようになっており、受講者の興味のある分野を可視化することが可能です。これにより、社員がどのようなキャリアプランを持っているのかを把握できるだけでなく、社員のモチベーションを高めながら人材育成するためのヒントを得ることができます。

さらに、社員に自己啓発を目的として受講してもらっている場合、社員がどのような内容の授業を受講する傾向があるのかを把握できるため、社員のキャリアプランを把握することができます。

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09まとめ

ここまで見てきたように、競業避止義務は会社の営業秘密などを守る目的がある一方で、社員の職業選択の自由を侵害するおそれがあるものです。そのため、どういった内容であればその有効性が認められるかの基準を踏まえた規定をすることが重要となります。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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