公開日:2022/01/26
更新日:2022/06/17

社員の主体性と成長を引き出す目標管理。効果的に運用するためのポイントを解説

社員の主体性と成長を引き出す目標管理。効果的に運用するためのポイントを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

目標管理は、公平で適切な人事評価を下す上で重要なマネジメントツールの一つであり、目標管理の導入は従業員のモチベーションアップにも繋がります。本記事では、目標管理設定のメリット・デメリット、効果的な目標管理運用の方法についてわかりやすく解説します。

 

01目標管理とは

目標管理とは、社員が自ら業績に対する目標を設定し、その達成に向けて自律的に業務へ取り組むことで組織としての目標達成と社員の成長を狙うマネジメント手法を言います。 会社や上司が社員に目標を与えるのではなく、社員が自身で考えた目標によって業務を管理するという点が特徴です。

日本企業と目標管理

目標管理は厳密にいうとマネジメントのツールであり、人事評価のためのものではありませんが、日本においては非常に多くの企業が人事評価の基準として採用しています。 その背景には、1990年代から急速に広がった成果主義の考え方があります。 バブル崩壊後、年功序列制における人件費の抑制を目的として多くの企業で成果評価の導入が望まれました。そこに、目標の達成度というわかりやすい指標で社員の仕事の成果をはかることができる、目標管理の考え方が非常にマッチしたという経緯です。

 

02「目標管理制度」のことMBOという

目標管理は、ピーター・ドラッカー氏によって1950年代に提唱された考え方である”Management By Objectives”の日本語訳となります。頭文字をとってMBOとの呼称を使う場合もあるため、覚えておきましょう。

社員の個人目標を会社の組織目標と連動させる

目標管理制度の目的は、社員の個人目標の達成を通じた「会社の組織目標の達成」と「個人の成長」にあります。前者を叶えるためには、社員が立てる個人目標と、企業全体の方針が合致している必要があります。

MBO評価における目標は具体的に4つの要素に分けられる

目標管理(MBO)における目標とは、厳密にはいわゆる業績目標のことを指します。ただし、社員の自己研鑽を促したり、業務のプロセスを評価しやすくしたりといった効果を狙い、業績以外の部分でも目標を設定することを推奨する企業もあるようです。 代表的な目標の区分4つをご紹介します。

社員の仕事の成果そのものに関する目標です。目標管理制度の基礎となる要素であるため、制度設計の際はウェイトを特に高く設定しましょう。

業務フローの改善やコスト削減、製造現場における安全の向上など、直接的な仕事の成果でなくとも組織にメリットを与える業務改善は、目標に組み込んできちんと評価したい項目です。

行動目標においては、業績目標の達成に向けて取るべき行動そのものを目標として設定します。特に業務のプロセスを重視したい場合は有用な項目です。

セミナー・研修の受講や書籍等、業務外での積極的な能力開発を促したい場合は、自己啓発に関する目標の設定を推奨するのもよいでしょう。

  • 業績目標
  • 業務改善目標
  • 行動目標
  • 自己啓発目標
 

03目標管理導入のメリット

目標管理制度は、そのメリットを認識した上で運用を行えば、さらなる効果が期待できます。主なメリットを3点ご紹介します。

主体的に業務へ取り組む人材の育成

目標管理の手法は、目標の設定や進捗の管理といったプロセスにおいて社員が主体となって実行することになります。もちろん上司のサポートは必要となりますが、自分が決めた目標達成のために、自分で取り組み方を考えやり遂げるというステップを踏むことは、いわゆる指示待ち型でない、自主性のある人材を育成することに役立つでしょう。

社員のモチベーションアップ

目標管理制度においては、社員とその上司とのコミュニケーションを通して、社員の能力に合わせた個別の目標を設定することとなります。会社や上司の設定したお仕着せの成績目標ではなく、会社の方針とすり合わせた上で、社員自身がチャレンジしたいことを目標に盛り込むことが可能です。このように「自分で決めた」目標にチャレンジするということは、社員の業務へのモチベーションアップにもつながります。

人事評価の公平性・透明性の担保

目標管理制度においては目標の達成度というわかりやすい指標を評価の基準としますが、これは人事評価における評価指標のうち、成果評価と非常に相性がよいやり方です。目標管理制度を適切に運用し、ある程度定量的な目標達成度=成果を人事評価の尺度とすることで、評価制度の公正性・透明性の担保につながり、社員に納得感を持たせることができるでしょう。

 

04目標管理導入で想定されるリスク

目標管理制度は適切に運用すれば多くのメリットを享受できます。しかし、特に人事評価のツールとして利用する場合、以下のようなリスクに留意する必要があります。

目標が「人事評価のため」のものになる

人事評価制度全体に対して目標管理の占める存在感が大きなものである場合、目標の達成度によって社員自身の評価や昇格、昇給が大きく左右されることになります。このような条件下においては、社員は自身の評価が下がることを恐れて確実に達成できる目標、つまり自分の能力に対してやや低いレベルの目標を立てようとする傾向があります。それでは、目標管理制度の目指すところのひとつである「社員の成長」にはつながりません。 このような現象を防ぐためには、目標の達成度だけではなくそのプロセスも評価するような仕組みを作ることが有効です。また、そもそもの目標設定時に、そのレベル感が適切なものであるかをチェックする体制を整えることも必要です。

業務に対する長期的な視野が養われにくくなる

多くの企業では、目標設定から評価までのスパンは1年以内に設定されています。期初に目標を設定し、期末にその達成度を評価するというケースがほとんどです。 ここで注意したいのは、それによって社員の業務に対する長期的な視野が失われる恐れはないかということです。目標の達成は大切なことではあるものの、あまりにそれに目が向きすぎると、現在の目標と直接的な関連のないスキルを身に着けるインセンティブが失われるリスクもあります。また、1年ごとの目標設定では、じっくりと腰を据えて取り組む数年規模の大きな仕事を、目標として据えづらくなるという可能性も出てきます。これらを防ぐためには、目標の中に自己啓発を盛り込むことを推奨したり、数年単位の大きなプロジェクトに取り組む際の目標の立て方をケーススタディのような形でアナウンスするとよいでしょう。

役職者の負荷が増大する

目標管理制度の運用には、上司のサポートが必須ですが、このサポートによって上司の負荷が増大しやすいということも目標管理制度の特徴です。 部下が自主的に立てる目標を適切なレベルにまで導くというところから始まり、進捗の確認とアドバイス、評価と、上司の役割は多岐にわたります。上司が一方的に部下へノルマを課すというやりかたに比べると、コーチング的な役割が加わる分負荷が高まるのです。 そのため、人事部門としては、なるべく役職者の負荷を軽減するための工夫が求められます。システム化の検討や、進捗管理面談の頻度ややりかた、各プロセスで使用する帳票などを、現場が実際に掛けている時間を踏まえて定期的にブラッシュアップしていくことが望まれます。

 

05効果的な目標管理運用における目標設定

目標管理の最初のステップである「目標設定」は、そのやり方によって、その後のプロセスの精度も左右されます。注意すべき点を見ていきましょう。

「頑張れば達成できる」レベル感を意識

目標管理の手法において、目標のレベル感は非常に重要です。低すぎれば社員の成長にはつながらず、高すぎると達成できなかった場合に評価が下がり、社員のモチベーションも落ちてしまうでしょう。望ましいのは、社員の業務遂行能力に沿いながらも、すこしストレッチが必要なレベル感。達成に向けての試行錯誤の過程や、完遂した時の達成感によって、社員の成長やモチベーションアップを実現することができます。

組織が持つ目標と個人の目標のベクトルを一致させる

目標管理制度における目標は、あくまで社員自身が自主的に設定するものです。しかし、自分がチャレンジしたい内容であればなんでもよいわけではありません。制度自体の趣旨は「社員一人一人の目標達成によって組織全体の目標が達成される」ことにありますので、それぞれが同じベクトルを向いている必要があります。

具体的なプロセス、行動まで踏み込んで設定する

目標の設定においては、その達成に至るまでのプロセスや、必要となる行動もセットで検討しましょう。そうすることで進捗管理もしやすくなり、もし目標のレベルが高すぎるような場合、達成までの具体的な道のりを事前に検討することでそれに気づくことができます。また、目標が最終的に達成できなかった場合、事前に計画したプロセスのうちどこまでは遂行でき、どこで躓いたのかを振り返ることで、達成度の評価がしやすくなるとともに、次回の取り組みにその反省を活かすことができます。

 

06効果的な目標管理運用における進捗管理

設定した目標を達成するには、定期的にその進捗を確認することが大切です。その際のポイントをご紹介します。

日常業務の中で目標を意識できる仕組みを作る

目標の進捗管理でまず注意したいのは、期初に立てた目標やそのプロセスの詳細が社員の中で薄れてしまうことです。はっきりとした目標を立て、その達成に向かって主体的に行動することで社員の成長を促すという、目標管理の趣旨からすると望ましくないことでありながら、日々の業務の中で忙殺される社員にとってはありがちな事象です。 これを防ぐためには、例えば1on1や定期的な打ち合わせの中に目標の進捗管理を入れ込むなど、日常業務の中で目標とその進捗について意識できる仕組みの構築が有効です。

進捗フォローでは本人の自主性を重視する

進捗フォロー面談の場で意識したいのが、社員が主体となってその場を取り仕切ることです。上司としてはつい、部下の目標に対しての進捗にあれこれとアドバイスをしたくなってしまうかもしれませんが、目標管理の主体はあくまで社員自身です。上司は社員に並走する姿勢を意識し、コーチング力を発揮しましょう。

状況に応じて修正を加える

しっかり考え抜いて設定した目標であっても、場合によっては修正を加えることが必要な場合があります。例えば以下のようなケースです。

  • 予定より大幅に早い段階で目標を達成しそうなとき
  • 目標を達成することが明らかに難しそうであるとき
  • 経営方針その他、社内外の状況が大きく変化したとき

進捗管理の際にこのような傾向が見られる場合は、社員のモチベーションの維持のためにも柔軟に目標を修正しましょう。もちろんその際も、社員自身が主導して修正を行うことが大切です。

 

07効果的な目標管理運用における評価とフィードバック

最後に、目標管理制度における評価とフィードバックのプロセスについて、留意すべき点をご紹介します。

目標達成度と目標のレベル感の2軸で評価する

目標管理の評価においてまず留意すべきは、社員一人一人が異なった目標を掲げており、横並びにすることが難しいという点です。例えば同じ等級の社員2名がそれぞれ目標を100%達成していたとしても、そもそもの目標のレベル感が異なる場合、同じ評価をつけることは平等ではありません。そのため、目標管理を人事評価に組み込む際は、目標の達成度とそもそもの目標のレベル感との2軸で評価を行うことが大切です。

納得感が得られる丁寧なフィードバックを行う

目標達成度の評価に関して、社員の自己評価と上司の評価が食い違うことがあります。もちろんそのような現象を防ぐため、目標を完全に定量的なものとすることが理想です。しかし業務内容によってはどうしてもそれが難しい場合もあるため、フィードバックは社員の納得感を得ることを意識して丁寧に行いましょう。そのためには、上司が普段から社員の行動に目を配ったり、進捗管理の場を十分に設けたりといった対策が有効です。お互いの目標達成度に関する認識をすり合わせるための客観的な材料をどれだけ示せるか、という点が鍵となります。

社員の主体性を引き出し、次の目標設定へのサイクルを作る

目標管理制度は社員の主体性と成長を引き出すのに有用な手法です。そして、当期の目標管理の結果を来期の取り組みに生かすことを意識すればその効果はさらに高まります。フィードバックの際にはぜひ、「この結果を来期にどう生かすのか」という点についても上司と社員の間で共有するようにしましょう。例え目標達成度が思わしいものでなくとも、社員の成長へつながるはずです。


 

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08まとめ

目標設定・進捗管理・評価と、目標管理制度のプロセスは非常に明白です。しかし、人事部門や現場がその意義を理解し、それぞれのプロセスが適切に運用されているか否かによって、その効果は大きく変わってきます。社員ひとりひとりの成長や、組織全体の目標達成につなげるために、運用方法の組み立てには工夫を凝らしましょう。

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