マインドフルネスとは?注目される背景からやり方までご紹介
働く人のメンタルヘルス向上やその予防のため、近年マインドフルネスに取り組む企業が増加しています。 この記事ではマインドフルネスとはどのようなものかから、やり方まで詳しく解説します。
01マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは新しい物事に評価や判断を加えることなく、能動的に意識を向けることを指します。 マインドフルネスな状態を維持することで、今自分が置かれた状態やその瞬間を精一杯生きることにつながるでしょう。
心理学におけるマインドフルネス
心理学におけるマインドフルネスとは、1979年に国際観音禅院の崇山行願に禅を学び、マサチューセッツ大学医学大学院教授となったジョン・カバット・ジンにより体系化されました。 仏教の修行法と心理学における注意の焦点化理論を組み合わせることでマインドフルネスが生まれましたが、すぐに効果の出る治療法といった位置づけではないことを覚えておきましょう。
02マインドフルネスが注目される背景
マインドフルネスとはどのような背景から企業の注目を集めているのでしょうか。 その主な理由としては、以下の3つが挙げられます。
- ・1.メンタルヘルス不調の労働者が増加しているため
- ・2.ストレスを軽減できるため
- ・3.多くの企業が研修として導入しているため
1.メンタルヘルス不調の労働者が増加しているため
2021年に厚生労働省が行った「令和3年 労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者や退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%で、前年度と比較すると0.9%増加しています。 また現在の仕事や職業生活に関することで強い不安やストレスとなっている事柄がある労働者の割合は53.3%で、その内容として「仕事の量」と回答した人は43.2%、「仕事の失敗、責任の発生等」と回答した人は33.7%、「仕事の質」と回答した人は33.6%でした。 このことから仕事や職業生活に対する不安やストレスからメンタルヘルス不調となる労働者が増加し、休職や退職に追い込まれて企業の生産性が低下するという課題が出てきている現状がうかがえます。
▶︎参考:厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」
2.ストレスを軽減できるため
マインドフルネスはアメリカやヨーロッパではその医学的効果が実証されていますが、異なる文化的背景を持つ日本でも効果があるのかどうかについて、慶應義塾大学ストレス研究センターが研究を続けています。 2016年11月に日本マインドフルネス学会第3回大会で発表された研究では、健康な人12名と精神疾患(不安障がい、適応障がい、うつ病のいずれかの診断基準を満たす)の人12名を対象に毎週2時間計8回のマインドフルネス教室を行った後、月1回2時間計6回のフォローアップ教室を行いました。 その結果マインドフルネス教室終了時には、健康な人も精神疾患を持つ人も幸福度や健康度、ストレスが改善され、フォローアップ教室終了時にもその効果は持続していたのです。 このことから、マインドフルネスは日本においてもストレス軽減に役立つことが少しずつわかってきていると言えるでしょう。
▶︎参考:慶応義塾大学 ストレス研究センター「マインドフルネス」
3.多くの企業が研修として導入しているため
既に企業では、マインドフルネス研修を取り入れ始めています。 従業員のメンタルヘルス向上はもちろんのこと、精神疾患で休職した人の現場復帰のためのプログラムとして用いたり、現場の生産性の最大化を目指すために導入したりと目的は様々ですが、自社の社風に合った取り入れ方をするのがマインドフルネス研修で効果を出すために大切なことだと言えるでしょう。
03マインドフルネスを行うメリット
マインドフルネスを行うと、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは下記の2つが挙げられます。
- ・1.身体的効果
- ・2.精神的効果
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
身体的効果
マインドフルネスの身体的効果は次の通りです。
- ・痛みを和らげる
- ・身体がリラックスする
呼吸が整い緊張状態の身体がほぐれるため、上記のような効果が得られるのです。
▶︎参考:神経科学ジャーナル「マインドフルネス瞑想ベースの痛みの軽減は、プラセボやシャムマインドフルネス瞑想誘発鎮痛とは異なる神経メカニズムを採用」
精神的効果
マインドフルネスの精神的効果は次の通りです。
- ・パニック障がい、社会不安障がい、強迫性障がいの改善
- ・ストレスと幸福度の改善
- ・うつ病の改善
今を受け入れ物事に執着しなくなるため、メンタルの状態が整い前向きな気持ちが生まれてきます。
04マインドフルネスのやり方
マインドフルネスとはどのようなやり方があるのでしょうか。
- ・1.マインドフルネス瞑想のやり方
- ・2.マインドフルネスストレス低減法のやり方
2つご紹介します。
1.マインドフルネス瞑想のやり方
心をマインドフルネスの状態に持っていく方法の1つとして、マインドフルネス瞑想があります。 マインドフルネス瞑想には4つの種類があるので、それぞれの手順をご紹介します。
- ・1.呼吸瞑想
- ・2.歩行瞑想
- ・3.食べる瞑想
- ・4.ボディスキャン瞑想
1.呼吸瞑想
呼吸瞑想は次の手順で行います。
- ①姿勢を整え目を軽く閉じて座る
- ②自然な鼻呼吸をし、お腹が膨れることと縮むことに意識を集中する
雑念もそのまま受け止め最初は2~3分、慣れてきたら10分程度行うのが望ましいため、新入社員向け研修としても比較的取り入れやすいでしょう。
2.歩行瞑想
歩行瞑想は次の手順で行います。
- ①姿勢を整え背筋を伸ばし、3~4m先を見て立つ
- ②ゆっくり歩き出し足の裏の感覚に意識を集中する
- ③方向を転換して再度歩く
畳1畳ほどのスペースを1往復2分ほどかけてゆっくり歩くのがコツですが、あまり広くない場所でもできるため、少人数での研修に取り入れやすいでしょう。
3.食べる瞑想
食べる瞑想は次の手順で行います。
- ①視覚・嗅覚・触覚に集中して食材を観察する
- ②味や食感をイメージする
- ③ゆっくり噛みしめる
- ④ゆっくり飲み込む
一口あたり1分間程度かけて行いますが、ストレスから食欲が落ちている従業員や、反対にダイエットを希望する従業員を対象に研修を行うと、食事に対して前向きな気持ちを取り戻すことができるのではないでしょうか。
4.ボディスキャン瞑想
ボディスキャン瞑想は次の手順で行います。
- ①仰向けになりゆっくり呼吸をする
- ②目を閉じ身体全体の感覚を確認する
- ③身体の各部位の感覚を確認する
- ④緊張や不安感があれば呼吸で外に吐き出すイメージをする
- ⑤つま先と指先を動かしてから目を開ける
12分~15分程度行うことで自律神経が整うため、体調不良や不眠に悩む従業員を対象に研修で行うと少しずつ快方に向かうでしょう。
2.マインドフルネスストレス低減法のやり方
マインドフルネスストレス低減法とはMBSR(Mindfulness-based stress reduction)とも呼ばれ、8週間かけて行うストレス、不安、うつ病、痛みなどを軽減するための瞑想プログラムです。 1979年に前の項目でご紹介したジョン・カバット・ジンにより開発されました。 マインドフルネスストレス低減法を行う手順は次の通りです。
期間 | 手順 |
オリエンテーション | ・マインドフルネスの基本姿勢やプログラムの概要説明を行う |
1週目~2週目 | ・ボディスキャン瞑想45分 ・静座瞑想10分 ・日常生活の1つをマインドフルネスに行うトレーニング |
3週目~4週目 | ・ボディスキャン瞑想45分 ・静座瞑想15分~20分 ・日常生活の1つをマインドフルネスに行うトレーニングを行い、3週目は1日の中でうれしかったこと、4週目は1日の中でいやだったことを日記に書く |
5週目~6週目 | ・静座瞑想45分 ・歩行瞑想(好きな時間でよい) ・自分に合ったメニューで瞑想トレーニングを実践する |
7週目 | ・合計45分になるように瞑想トレーニングを組み合わせて実践する |
8週目 | ・自分の状態に合わせた瞑想トレーニングを行う |
マインドフルネスストレス低減法は時間や手間はかかりますが、従業員が自分でストレスケアができるようになるため、会社としてじっくり取り組んでみるのもおすすめです。
05企業でマインドフルネスを導入する際に気を付けたいポイント
企業でマインドフルネスを導入する際は、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
- ・1.マインドフルネスを導入する目的を明確にする
- ・2.導入を担当する人や経営者がマインドフルネスを理解する
- ・3.習慣化し定期的に効果測定する
主に挙げられる3つについて、それぞれご紹介します。
1.マインドフルネスを導入する目的を明確にする
会社でマインドフルネス研修をするなら、導入前に必ずターゲットとなる従業員や目的を明確にしましょう。 マインドフルネスは効果ややり方が様々であることから、ターゲットを新入社員にするのか管理職にするのかで内容が異なってきます。 目的やターゲットが曖昧だと研修をしても社内に定着させるのは難しいため、必ず事前準備としてこれらを決めておくことが重要です。
2.導入を担当する人や経営者がマインドフルネスを理解する
社内に誤った情報を提供したり、ネガティブな印象を与えたりしないためにも導入を担当する人や経営層の人がマインドフルネスを実践し、効果を実感することが大切です。 担当者や経営者が効果を自分の言葉で語れるようになることが、マインドフルネスを社内に浸透させるのには必要だと言えるでしょう。
3.習慣化し定期的に効果測定する
マインドフルネスは習慣化し、継続的に行うことで効果を発揮するため担当者は定期的に効果を測定し、分析するようにしましょう。 思うような効果が得られていない場合、原因を特定し改善することが重要です。
06企業でマインドフルネスを取り入れた事例
企業でマインドフルネスを取り入れた事例にはどのようなものがあるのでしょうか。 代表的な例として挙げられる、Google LLC、Sansan株式会社の2つをご紹介します。
2007年にGoogleの社員であるチャディー・メン・タン氏によって考案されたのが「Search Inside Yoursel(SIY)」という研修プログラムです。 仕事のパフォーマンス向上、リーダーシップ、ウェルビーイングを目的とし、呼吸瞑想、ジャーナリング(書く瞑想)などの手法を用いてマインドフルネスを行っています。 また1人でマインドフルネスを実践するのではなく、「G pause」というグループを世界中で作り、週に1度昼間の時間帯にマインドフルネスを行うことで習慣化にも成功しています。
Sansan
Sansanでは2017年9月に従業員や組織の生産性向上を目的に、全部門のリーダー以上の社員を対象に、GoogleのSIYを行いました。 その後2018年1月には全社員を対象に同じくSIYを行いましたが、重要なエッセンスとして呼吸瞑想とジャーナリングを取り入れたのです。 今ではマインドフルネスが社内の共通言語となるほど浸透し、ビジネスシーンでのアウトプットを高めるために継続して取り組まれています。
07マインドフルネスも学べるSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級8,500本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は4,000社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級8,500本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
マインドフルネスも学べるSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、マインドフルネスも学べる授業を紹介いたします。
危機を乗り越えるマインドフルネス
この授業では、昨今の現状を鑑み、コロナの時代を共に生き抜くためのメンタルのつくり方をマインドフルネスによって磨いていきます。
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精神科医・作家
1957年、神戸生まれ。1982年、鹿児島大学医学部卒業。 2011年、心のトリセツ研究所を設立。日本キネシオロジー学院 顧問。メールマガジン「3分で読める幸せになるコツ・365日のレッスン」を通じて、心理学・東洋医学・氣の知識や情報をわかりやすく発信している。40年の瞑想歴、25年以上のマインドフルネス瞑想の実践から、日常生活のなかで手軽にマインドフルネスを習得できる方法を提案。セミナーなどで指導、普及活動を実施してきた。そのわかりやすさと取り入れやすさに定評がある。長きにわたって多くの人のネガティブ思考による悩みを解決してきており、瞑想を説く精神科医として雑誌など、取材も数多い。 著書には『マインドフルネスの教科書』『マインドフルネス 「人間関係」の教科書』(ともにクローバー出版)『ビジネスマンのための「平常心」と「不動心」の鍛え方』(同文館出版)などがある。 公式ブログ:心のトリセツ.com 公式メルマガ:https://www.agentmail.jp/form/pg/1793/1/
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
08まとめ
マインドフルネスとは新しい物事に評価や判断を加えることなく、能動的に意識を向けることですが、企業においてはストレスの軽減や生産性の向上を目指して積極的に取り入れられています。 この記事も参考にして自社に合った形でマインドフルネス研修を行い、内容を浸透させていってください。