ライフキャリアレインボーとは|注目が集まっている背景やメリットデメリット、作成方法について解説
ライフキャリアレインボーと言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。人生100年時代と言われる今、自分の仕事だけではなく、キャリアを人生全般として捉える考え方が広まっています。 本記事ではライフキャリアレインボーとは何か、そしてライフキャリアレインボーのメリットなどを詳しくご紹介します。
- 01.ライフキャリアレインボーとは
- 02.ライフキャリアレインボーの種類
- 03.ライフキャリアレインボーの種類
- 04.ライフキャリアレインボーを書くメリット
- 05.ライフキャリアレインボーを書く方法
- 06.ライフキャリアレインボーを書く方法
- 07.ライフキャリアを考えるSchooのオンライン研修
- 08.まとめ
01ライフキャリアレインボーとは
「ライフキャリアレインボー」とは、個人のキャリアやライフプランを多様性と包括性の観点から捉える考え方です。従来のキャリアプランニングでは、単一の目標達成を重視していましたが、ライフキャリアレインボーでは、多様な経験や興味、価値観を尊重し、それらを組み合わせて自己実現を図ることを重視します。この考え方では、人生のさまざまな段階や多様な経験を組み合わせて、個々人が自己の能力や幸福を最大化するための柔軟なアプローチを提唱しています。
ライフキャリアレインボーは、ドナルド・E・スーパーによって1950年代に提唱されました。
1950年代頃までアメリカは、個人が一つの職業を選び、その職業に適応していくという方針が主流でした。しかし1950年代頃、職業指導の方針が再定義され、キャリアすなわち仕事ではなく、人生の中の一つの役割として仕事が存在するというライフキャリアの考えが形成されたのです。
ライフキャリアの区分
ライフキャリアレインボーにおけるライフキャリアは以下のように大きく2つに分けられます。
生涯でのライフキャリア
生涯でのライフキャリアは、仕事だけではなく、様々なライフイベントを含みます。進学や就職、結婚や子育て、さらには介護など、人はそれぞれに優先順位をつけて活動を進めていくものです。
ライフキャリアを提供したアメリカの教育学者、ドナルド・E・スーパーは、以下のように定義しています。
- ・人生を構成する一連の出来事
- ・一連の自己発達の中で、労働としての職業と人生の他の役割の連鎖
- ・青年期から引退期に至る報酬、無報酬の一連の地位
- ・役割の中には、学生、雇用者、年金生活者、副業、家族、市民などの役割も含まれる
仕事以外に人生には様々な局面があります。これら全てを生涯でのライフキャリアと呼ぶのです。
企業でのライフキャリア
人生100年時代と言われる中で、余暇の時間が増えますが、必然的に企業で働く時間も増えています。そのため、企業の中でもどのようにライフキャリアを形成し、実行していくのかということを考えることが求められています。人生の中で最も長く過ごすと言っても過言ではない働く時間に対して、どのようにモチベーションを維持するのか、また企業の中でどのようなキャリアを形成していくことが最適なのかを検討する必要があります。
02ライフキャリアレインボーの種類
ライフキャリアレインボーが注目されている背景には、以下の3つの要因が大きく関わっています。
- 1. 多様化の推進
- 2. 高齢化の進行
- 3. キャリア支援の重要性
ライフキャリアレインボーは多様化、長寿化、そしてキャリア支援の重要性が増す現代において、個人の多面的な人生を支えるモデルとして大きな注目を集めています。ここでは、それぞれについて解説していきます。
1. 多様化の推進
現代の社会では、個人のライフスタイルや働き方が多様化しています。従来のキャリアパスは、学校を卒業してから一つの職業に就き、その道を歩み続けるという「直線的」なモデルが一般的でした。しかし、技術の進化やグローバル化により、仕事の選択肢が広がり、複数のキャリアや役割を経験する人が増えています。また、性別や国籍、障がいの有無に関係なく多様な人々が活躍する社会となり、キャリア形成においても「一人ひとりが異なる道を選ぶ」ことが推奨されています。ライフキャリアレインボーは、こうした多様性を反映し、人生のさまざまな局面で異なる役割や活動が共存するキャリアモデルとして認識されています。
2. 高齢化の進行
日本をはじめとする多くの先進国では高齢化が進んでおり、定年後のライフステージをどのように過ごすかが重要な課題となっています。これにより、退職後の生活や「第二のキャリア」が注目されています。高齢者が社会に参加し続けるための方法や、新しいスキルの習得、ボランティア活動など多様な選択肢が必要とされており、ライフキャリアレインボーの多面的なキャリアモデルが高齢者の豊かな人生設計に貢献しています。
3. キャリア支援の重要性
終身雇用制度が弱まり、個人が自らのキャリアを積極的に設計する必要性が高まっています。若年層から中高年層まで、人生の各段階で異なるキャリア支援が求められています。ライフキャリアレインボーは、職業だけでなく、家庭生活、学習、余暇など人生全般の視点からキャリアを考えるためのフレームワークを提供し、個人のニーズに応じた柔軟な支援を可能にします。これにより、個人が自分の目標に向かってキャリアを積み上げることが容易になり、充実した人生を送ることができます。
03ライフキャリアレインボーの種類
ライフキャリアレインボーには幾つか種類があります。ライフキャリアレインボーをより理解するために、詳しく見ていきましょう。
ライフステージとライフロール
ライフキャリアレインボーは、ライフステージを表す「場面」と、ライフロールを表す「役割」で表現されます。それぞれのライフステージとライフロールを組み合わせることで、私たちが歩むライフキャリアを表現することが可能です。
ライフキャリアは、その人の人生を俯瞰的に観るものとされています。そのため仕事や生き方など、いずれかに重点を置くのではなく、人生の様々な場面においてその人の役割が変わることは至極当然という考え方なのです。
ライフステージについて
ライフステージは、以下の5つに分類されます。
- ・成長段階(0歳~14歳)
- ・探索段階(15歳~24歳)
- ・確立段階(25歳~44歳)
- ・維持段階(45歳~64歳)
- ・解放段階(65歳~)
0歳から14歳までは成長段階と呼び、「自分はどのような人間なのか」ということについて考えを発達させていきます。仕事をする年齢ではないため、仕事という世界への興味・関心を高める時期として設定されています。
15歳から24歳までは探索段階と呼び、様々な経験を通じて自身の役割や好みを把握していきます。このころには学校生活や仕事、余暇などを通じて周囲との交流も活発になっており、自身の特性を把握するために必要な条件が十分に揃っているのです。25歳から44歳までは確立段階と呼び、自分の立場や役割を確立していく時期です。キャリアビジョンが明確になるのはこの頃で、人生の安定の礎を築いていきます。
45歳から64歳は維持段階と呼び、44歳までに確立した立場や役割を守っていく時期です。若手の成長が顕著になる時期でもあるため、立場や地位を守ることに関心が高くなる時期とされています。
65歳以降は解放段階と呼び、肉体的・精神的にパワーが衰えていく時期です。そのため、仕事という場面から退いていく時期と言えます。ただし、何も役割を担わないのではなく、シニアはシニアなりの役割を楽しむ時期とも言えます。
ライフロールについて
ライフロールは、以下8つに分類されます。
- ・子供
- ・学生
- ・職業人
- ・配偶者
- ・家庭人
- ・親
- ・余暇人
- ・市民
これらのライフロールは、どれか1つに限定されることはほぼないと言えます。ライフステージに応じて、人はそれぞれ複合的にライフロールを担っています。
ライフステージとライフロールの基準組み合わせ
ドナルド・E・スーパーは生涯において、それぞれのライフロールの始まりと終わりと、相互に重なり合うそれぞれの役割を、「キャリアの虹」と呼ばれる概念に集約しました。この概念こそが、ライフキャリアレインボーの由来となっています。
04ライフキャリアレインボーを書くメリット
ライフキャリアレインボーを描くことで、自身の人生に大きなメリットをもたらすとされています。代表的な例を3点ご紹介します。
現状を把握する事ができる
ライフキャリアレインボーを描くことで、自分が置かれている現状を知ることができます。ライフステージやライフロールといった観点はもちろん、理想の未来を描いた時に不足している内容も把握することができます。より理想的なライフキャリアレインボーを描くために、現状把握は非常に重要です。
過去と未来のライフイベントバランスを可視化できる
ライフキャリアレインボーを描くと、過去と未来のライフイベントを可視化することができます。その結果、各ライフロールやライフステージに応じたライフイベントバランスを把握することができるため、今後の未来を描く上で役立つ指標となるでしょう。
理想の生活の道筋がわかる
ライフキャリアレインボーでは、必然的に理想的な未来を描くことが求められます。その結果、自分にとってどのような生活が理想的なのかを把握することができます。また、理想にたどり着くためにはどのような道筋を辿るのかを検討する必要が生じます。 これにより、今後何を大切に生活のバランスを取っていくかが分かりやすくなるのです。
05ライフキャリアレインボーを書く方法
ライフキャリアレインボーを導入する際のデメリットとして、「人生における仕事や企業の重要性が薄れる」「優先順位を間違えてしまう」といったポイントが挙げられます。これらのデメリットは、ライフキャリアレインボーの理念が個人の選択に委ねられる一方で、選択の結果に対して十分な支援や理解が得られない場合に発生しやすいといえます。ここでは、それぞれについて解説していきます。
人生における仕事や企業の重要性が薄れる
ライフキャリアレインボーは、仕事やキャリアだけでなく、家庭生活や余暇、学習、地域活動など、人生における多様な役割を重視するモデルです。そのため、仕事や企業での役割があくまで「人生の一部」であり、他の活動とバランスを取ることが推奨されます。この視点は、従来の「仕事中心のライフスタイル」から離れるというポジティブな側面もありますが、同時に「仕事や企業での重要性が相対的に薄れてしまう」デメリットもあります。
特に企業にとっては、従業員が仕事よりもプライベートや他の活動に重きを置くようになると、企業への忠誠心やコミットメントが低下するリスクがあります。仕事が人生の主軸ではなくなることで、組織への貢献度が下がったり、業績に悪影響が出たりする可能性が指摘されています。
優先順位を間違えてしまう可能性
ライフキャリアレインボーの導入によって、個人は仕事、家庭、趣味、学習など、複数の役割を同時にバランス良くこなすことを求められます。しかし、この「多様な役割のバランス」を適切に管理できない場合、優先順位の判断が難しくなるリスクがあります。たとえば、仕事でのキャリア形成が最優先であるべき時期に、プライベートや趣味に過剰な時間を割いてしまうと、結果的にキャリアに悪影響を及ぼす可能性があります。
また、人生のどの段階でどの役割に重点を置くべきかの判断が個人に委ねられるため、自己管理が苦手な人にとっては、かえって迷いやストレスを生じることがあります。バランスを保つことが難しく、最終的にどの役割も中途半端になるリスクもあるため、計画的なキャリア支援や指導が必要です。
06ライフキャリアレインボーを書く方法
では、実際にライフキャリアレインボーを書いてみましょう。書く際には、ライフキャリアレインボー用のワークシートを準備します。
ワークシートは縦列にライフロール、横列に5段階で年齢を入れます。真ん中の年齢は現在の年齢に設定しましょう。そして横列の最後の項目は「理想」に設定します。 ここまでの準備が整ったら、実際に記入を進めます。
現状の把握
まず現状の把握を行う前に、必要となる年齢を横列に記入します。5段階のうち現在の年齢を真ん中とした時に、過去そして未来の2つの年齢はライフロールやライフステージの変化があった年齢を記入するのがおすすめです。
ここまで完了したら、それぞれの年齢の時に各何%ずつそれぞれのライフロールを担っていたかを記入します。幼少期などを含む場合には、「親」「職業人」などの項目を含まない可能性があります。この場合には0%と記入しましょう。
過去事象の整理
%の入力が完了したら、過去に起きた事象を整理していきます。この時、シート内には年齢ごとに端的に過去に起きた事象を記入するのがおすすめです。
例えば「余暇人」であれば学生時代のサークル活動に触れたり、「市民」であれば選挙へ行く、納税するといった内容が含まれます。
将来設計
ここまで完了したら、横列最後の欄である「理想」に理想の生活と%を記入しましょう。理想とする生活を送る年齢はそれぞれ異なるため、自身の中で何歳と想定しているのか、きちんと考えることは大切です。なお、この時設定する理想の生活は、可能な範囲で具体的な内容にしましょう。
想定できるアクシデントの整理
最後に、想定できるアクシデントを整理します。アクシデントの中には、意図しないライフロールの変化などが含まれます。自身にとって最悪となる想定をしておくことで、万が一のアクシデントにも同様せず対応することが可能です。
07ライフキャリアを考えるSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級8,500本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は4,000社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
【1】国内最大級8,500本以上の講座数
【2】研修設定・管理が簡単
【3】カスタマーサクセスのサポートが充実
ライフキャリアに関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、ライフキャリアに関する授業を紹介いたします。
多様性社会を生きるライフキャリア論
ダイバーシティ、多様性、D&I、DEIという言葉を知っていますか? 知っている人は、なぜ現代社会においてそれらが重要視されているのかを理解していますか? 1960年代〜70年代の工業中心の経済社会において定着したキャリア・人材育成のフォーマットは、男女が仕事と家庭でそれぞれの役割を分ける事を前提としたものでした。そして1980年代以降に産業の中心がサービス業になり、女性の社会進出が必要とされている現代においても、そのかつての仕組みが色濃く残ってしまっています。それは人々が各々の能力・個性を十分に発揮することを阻む大きな要因となっています。 そんな中で、それぞれが自身のライフキャリアをどのように考えればよいのか、社会の変遷というマクロな視点から学びます。
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日本女子大学人間社会学部 名誉教授
南イリノイ大学経済学部博士課程修了。Ph. D(経済学)。 シカゴ大学ヒューレットフェロー。ミシガン大学ディアボーン校助教授、亜細亜大学助教授・教授を経て2021年3月31日まで日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。同現代女性キャリア研究所所長。専門は労働経済学。 主な著書は『ワークライフバランス社会へ』(岩波書店)『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社、2015)など。
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「所属している会社で定年まで居続ければ、一生安泰」そんな時代は終わりを迎えようとしています。これからの時代は、会社中心の人生計画を見直し、「人生を悔いのないものにするためには何が必要なのか?」を考え、自分の力で仕事を、そして人生をデザインしていくことが必要になるのです。
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- 1.変身資産とは何か?
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- 3.先駆者はどのようにライフシフトを実践しているのか?
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多摩大学大学院教授研究科長/株式会社ライフシフトCEO
日産自動車人事部、欧州日産を経て、1999年よりフライシュマン・ヒラード・ジャパンのSVP/パートナー。また、2006年から多摩大学大学院教授を兼任。 多摩大学大学院教授 ・研究科長。野中郁次郎名誉教授との共同開発によるMBB(思いのマネジメント)の第一人者。著書に『40代からのライフシフト実践ハンドブック』、『MBB:思いのマネジメ ント』(野中郁次郎名誉教授、一條和生教授との共著)、『ビジ ネスモデルイノベーション』(野中名誉教授との共著)、『人工知能×ビッグデータが「人事」を変える』(福原正大氏との共著)、 『イノベーターシップ』など多数。東京大学教養学部卒業。
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08まとめ
ライフキャリアレインボーを検討していくと、自身の仕事以外の面に積極的に目を向ける必要が生じます。その結果、顕在化していなかった自分の理想を洗い出したり、理想の生活に向かって努力する必要性などに気付くことができます。
また、自身も時間の経過と共にライフロールが変化しますが、周囲の人も同様です。そのことを念頭に置いた時に、様々な要素を踏まえてライフキャリアを設計する必要があることを強く理解できるのではないでしょうか。人生100年時代と言われているからこそ、長期的に人生を楽しむためにもライフキャリアレインボーは有効です。余力がある今のうちにライフキャリアレインボーを描くことで、真に理想的な生活を手に入れるきっかけを掴んでみてはいかがでしょうか。