公開日:2022/12/21
更新日:2023/02/02

職能資格制度とは?メリットや導入手順、多くの企業の活用課題を解説

職能資格制度とは?メリットや導入手順、多くの企業の活用課題を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

人事評価制度には複数種類がありますが、その中に個人の仕事に対する能力、職能を評価基準にする人事評価制度として職能資格制度があります。この記事では職能資格制度について、メリットや導入手順、課題について解説します。

 

01職能資格制度とは?

「職能資格制度」とは、個人の「職務遂行能力」を評価基準にした人事評価制度です。 属人的要素を含み、一人一人の仕事、職務への能力を判定するのが特徴と言えます。

個人の職務遂行能力によって等級分けをし、等級に応じて昇給や昇格、配置などを決めるのが特徴です。個人の能力がメインとなって評価されますので、人材育成や自己啓発を促すことができるいい人事評価制度と言えるでしょう。

 

02職能資格制度の賃金の特徴と昇格の仕組みについて

そこで、職能資格制度でどのように賃金が決まって昇給するのかといったことや昇格の仕組みを次に見ていきます。職能資格制度では、2つの昇給方法がありますので参考にしてください。

昇格に関係なく能力によって昇給する「習熟昇給」と上位の等級に昇格した時にだけ昇給する昇格による「昇格昇給」があります。

習熟昇給とは

「習熟昇給」は、能力の向上があったとみなされた場合に一定額昇給していくのが特徴です。昇格に関係なく同一等級内にいても、能力の向上があったとみなされた場合には昇給します。 仕事をこなして習熟度が高くなるほど昇給していきますので、定期昇給し、年功序列的な性質が高くなるでしょう。

昇格昇給とは

「昇格昇給」は、上位等級に等級が昇格した時に昇給するのが特徴です。同一等級にいる場合は、能力の向上があったとみなされても昇給しません。ただし、昇格しない時はその分の昇給額が蓄積されていき、昇格時にまとめて反映される考え方です。 「昇格昇給」では、等級アップを目指す人が増え、社内間で競争や能力アップを目指す機会を作ることができるでしょう。

 

03職務等級制度や役割等級制度との違いとは

職能資格制度と意味を混同しやすい制度として、「職務等級制度」や「役割等級制度」が挙げられます。それぞれどのような人事評価制度であるのか、その基準や特徴について解説します。

職務等級制度との比較

「職務等級制度」は、属人的要素を含まない「職務」を人事評価基準とするのが特徴です。属人的な能力を評価する「職能資格制度」とは大きく違います。 最近の働き方改革によっても普及した「同一労働同一賃金」という考え方と相性が良く、「どういった職務を行うのか」といった職務を中心に評価する制度です。賃金が職務によって変わるため、年功序列にならない点が特徴です。

役割等級制度との比較

「役割等級制度」は、個人の「役割」や「ミッションに対する成果」を評価基準にする制度です。職務だけでなく、個人の役割を評価しますので、属人的要素も含まれたものです。 「職能資格制度」との違いは、やはり年功序列とはならない点にあると言えます。役割を果たせば、年齢やキャリアは関係ないのが違いです。

 

04職能資格制度のメリットとデメリット

次に職能資格制度のメリット・デメリットについてご紹介します。

職能資格制度のメリット

職能資格制度の労働者側から見たメリットは、個人の努力や能力によって昇給していき、年々基本的に昇給していくことです。降格は基本的にはしないので、従業員に安心感を与えて長期的な人材育成が図れるでしょう。仕事を安心してできるため、他部署と連携した仕事も進めやすくなるのがメリットです。

職能資格制度のデメリット

職能で評価する制度では個人の能力をベースに評価が行われますが、主観的に評価されることも多く、実績や作業プロセスといった客観的な要素で評価されにくいのがデメリットとして挙げられます。「公正な評価がされていない」と従業員の不満に繋がることがあるでしょう。そのため離職率を高めてしまうことがあります。 また、企業側としては、基本的に等級が下がることがないため、年功序列的な仕組みになります。そのため人件費がかさんでいく可能性が高いのがデメリットです。

 

05職能資格制度導入の流れと制度の設計について

次に、職能資格制度導入の流れについてご紹介していきます。導入の流れを知ることで、どのように職能の評価基準を作っていけばいいのか、気をつけるポイントを知ることができるでしょう。等級制度を設計していく具体的な流れと方法を参考にしてください。

1.等級数の決定

まず、職能資格制度を導入するには、等級数をいくつにするのかを決める必要があります。 そのために、等級ごとに求める能力「期待能力」を定義していきます。 例えば、等級によって「上司の指示通りに業務が行える」「指示がなくても業務が遂行できる」「後輩に業務の指示が出せる」などと能力を定義します。その際、誰が見てもわかりやすい定義にすることも必要なことです。

2.職能の評価基準を作成

各等級の職能の評価基準としては、次の3つの基準によって評価することを考えることが大切です。 属人的な能力を3つの基準で評価するようにし、主観的な要素が含まれますが、できるだけ公平に評価できる基準を作成することが大事なことと言えるでしょう。

【情意評価】

「情意評価」とは、個人それぞれの勤務意欲や職務に臨む姿勢、努力などを評価基準にするものです。会社のビジョンに基づいた行動をしているのかなどで従業員を評価します。 規律性や協調性、積極性、責任感などを評価しますが、数値化して評価しにくいのが難点です。ただ、企業のビジョンを実現していくためには大切にしたい指標です。

【能力評価】

「能力評価」では、長期的な視点で評価を行うのが基本です。短期的な業績や成果で評価せず、個人の理解力や企画力、実行力、折衝能力、コミュニケーション能力などを評価するのが基本となります。 「能力評価」が適切に行われれば、企業にとって人材育成ができている指標となるでしょう。

【成績評価】

「成績評価」では一定期間の成績、成果によって評価します。目標達成率、仕事の正確さや成果を効率的に出すことやスピード、プロジェクトへの貢献度などを評価します。 数値化して計測しやすいため、従業員の意欲も上がり、企業利益も上がっていい指標と言えます。

3.職能要件書の作成

職能資格制度導入の流れとしては、等級数を考え、等級の定義、職能の評価基準を決めた後には、「職能要件書」を作成します。 「職務要件書」は、企業が従業員に期待する「期待能力」を等級別に具体的に作成したものになります。

職能要件書作成のポイントを紹介

「職能要件書」を作成するポイントとしては、人材の職種や等級ごとに作成することが挙げられます。 例えば、一般職と管理職では職能ごとに求められる評価基準が異なります。情意評価、能力評価、成績評価でわけた場合、従業員への期待能力や個人の達成すべき目標の難易度が異なるためです。

また、職能要件書は職種ごとに期待する能力、評価基準を踏まえて作成する必要があります。職種、また部署によっては定量目標を追うだけでなく、定性目標を主軸にしているところもあります。そのため、同様の評価基準を適用してしまうと公平性が保てなくなってしまうでしょう。そのため、等級、職種などに合わせた職能要件書をそれぞれ作成することが重要となります。

 

06職能資格制度の課題とは

職能資格制度を導入する企業においては、基準を設定しているにもかかわらず、適切に運用されず、職能、能力による適正な評価がされていないことが課題として挙げられます。 特にその大きな要因となるのが、人事評価者を行う人にアンコンシャス・バイアスがかかってしまうことが挙げられます。

アンコンシャス・バイアスとは、人の無意識による思い込みのことを指し、特にビジネスシーンにおいては「本人が気づいていないことがもたらす影響」について注視されています。 職能資格制度が設定されていたとしても、評価の仕組みや評価者への教育が整備されていないと、意思決定にバイアスがかかり、適正な評価に支障をきたすことがあるでしょう。その結果、業務遂行量に対する適切な評価がなされず、企業の慣習に左右される評価がなされるなどの課題につながってしまいます。

職能資格制度の課題に関する解決法とは

こうした職能資格制度の課題を解決する方法としては、「職能要件書」をより具体的なものにすることが大切と言えます。「職能要件書」は、業務内容によって実際には変わるでしょう。それぞれの業務内容別の「職能要件書」を作成することも大事なことです。 そのためには、部署ごとに職務内容を具体的に洗い出すことが必要でしょう。そして、その職務に必要な能力を現場から聞き出すことが大事なことです。 また、作った「職能要件書」は、職務内容が変化していくこともありますので、定期的な見直しをして変更することも必要です。従業員の能力が適正に評価されているのかをいつもチェックしておくことが課題解決のために大事なことと言えるでしょう。 加えて、職能要件書の見直しを行うと同時に、人事評価者の教育も実施することが重要です。人事評価によっては、バイアスがかかることによる影響も考えられることから、評価者に対する研修の実施や、評価者を複数用意するために360評価を導入するなどの方法も推奨されています。


 

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07まとめ

職能資格制度について特徴や職務等級制度、役割等級制度との比較をしてきました。 職能資格制度は、個人の属人的な能力で評価しますのでメリットも多い人事評価制度です。導入手順も知っておくといいでしょう。 ただし、多くの企業の活用課題も起きています。「具体的な基準で評価されていない」というデメリットがあり、企業の課題も生じています。それらを解決する方法も知っておくといいでしょう。 適正に個人の能力が評価されることで、職能資格制度は活きてきます。職務内容の具体化をし、適正に評価されるよう評価基準を見つめ直してチェックしていくことが必要と言えるでしょう。

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