公開日:2022/12/21
更新日:2024/03/21

役割等級制度(ミッショングレード制度)とは?導入するメリットやデメリット、注目された背景などを紹介

役割等級制度(ミッショングレード制度)とは?導入するメリットやデメリット、注目された背景などを紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

日本企業の多くは年功賃金や終身雇用を元として、その人が持つ能力を評価する「職能資格制度」が主流です。しかし、近年の少子高齢化で若者が昇進できずに離職する割合が増えているのも事実。本記事では、役割等級制度の概要や他の等級制度との違い、導入するための手順などを解説します。

 

01役割等級制度(ミッショングレード制度)とは

役割等級制度とは、役職やキャリアなどで社員の役割を設定せずに、社員に任せる役割(ミッション)に応じて等級(グレード)を決める制度を指します。難易度や重要度が高い仕事で成果をだせば、それに見合う評価や報酬を得られるのが特徴で、「ミッショングレード制」とも呼ばれています。この制度を導入することで的確な人材育成や従業員の配置、給与額の決定などを行うことができます。

従来導入されてきた職能資格制度と職務等級制度のハイブリッド型システムといえるもので、新しい等級制度と言われています。しかし、統一的な定義は確立していないため、実際の運用はそれぞれの会社によって異なるのが現状です。

 

02他の等級制度と異なる点

「等級制度」は、人材育成や評価、給与など人事制度の土台といえるため、会社の持つ価値観や目指す方向性によって導入されている制度は様々です。等級制度は、単独または組み合わせて導入することで、社内の柔軟性や透明性を保ちながら従業員を序列化することができます。今回は、日本企業で特に用いられている「職能資格制度」と「職務等級制度」の二つの等級制度の異なる点を解説します。

職能資格制度との違い

日本の大企業では年功賃金や終身雇用を背景に、日本独自の等級制度と言われています。特定の分野に限らず人の能力を評価する「職能資格制度」が主流です。この制度を導入することで、様々な経験を積むことが評価につながるため、部署異動の指示がしやすく、「ゼネラリスト」を育成したい企業にとって社員を評価しやすい制度です。また、長く在籍するほど評価が高くなる傾向があるため、役職や給与がアップし、従業員の離職防止やモチベーションアップの効果などが期待できます。

しかし、在籍年数が長い社員が増えることで人件費の負担が大きくなってしまいます。また、総合的に社員の経験を評価するため、下した評価と貢献度が乖離してしまい、社員のモチベーションやエンゲージメントが低下する恐れもあります。

職務等級制度との違い

「成果主義」とも呼ばれ、海外で多く利用されている人事制度です。国内では、成長スピードが速いベンチャー企業や設立年数が浅い新興企業での導入が多いのが特徴です。職務等級制度は、年齢や在籍年数を問わず、評価対象は仕事のみで行います。そのため、スペシャリストを育成したい場合には適している評価制度です。スキルや知識に紐づく制度のため、従業員のスキルアップや採用時のミスマッチを防ぐことができます。また、在籍している社員から今の会社に足りない能力も見つけることが容易になります。しかし、評価のために社員の仕事内容を詳しく確認しないといけないため、評価作業に時間や手間がかかる可能性があることや、成果以外での評価が難しくなってしまいます。

また、営業活動など、社員がどれだけ真面目に取り組んでも先方の都合で契約が取れなかった場合などの評価が難しくなってしまいます。

 

03役割等級制度の2つのメリットとデメリット

役割等級制度という考え方はまだ新しく、仕組みが細かく決まっていない部分もあります。また役割を中心とした人事制度となるため、組織風土に合った役割を正しく設定する必要があります。ここでは役割等級制度を導入するメリットやデメリットを解説します。

1.社員の主体性が上がる

役割等級制度は実際の成果だけなく、日頃の仕事に対する姿勢やチャレンジも評価に加わるため、様々な角度から評価されるため納得感が生まれやすいです。また、実際の業務が評価基準となるので従業員全体のモチベーションアップにも繋がります。

2.管理職の職務を柔軟に評価できる

日常の業務内容が可視化しづらいマネジメント層は、ジョブディスクリプションなどを用いて職務内容を明示化させるのが難しいという現状がありました。役割等級制度を用いることで、日々の業務が変動的な社員でも、役割価値の大きさを柔軟に評価することが可能となります。

3.主体性や自発的に行動するという風土がないと運用が難しい

役割等級制度では、自分で考えて行動するという主体性が一番重要になります。そのため、上司が部下の役割を決めてしまうようなマネジメントを行っている組織が導入すると混乱を招く恐れがあります。事業の成長が成熟している会社だとルーティン作業が多く主体的に動く事が少ない事があります。しかし、役割等級制度を導入することで保守の役割が明確になり作業効率が上がることも期待できます。

4.組織再編で制度の見直しが必要なケースが出てくる

職務が固定化しがちのため社内のジョブローテーションが困難になる傾向があります。また、組織変更や部署異動により、仕事内容が変化することで在籍年数が長い場合でも等級が下がる可能性があります。そのため、意図しない収入の減少や降格が起こりえることがデメリットとしてあげられるでしょう。

 

04役割等級制度を施行する4ステップ

ここまで役割等級制度のメリットやデメリットを見てきましたが、いきなり制度を変更することで、社内から反発を招かないか心配になる人もいるはずです。実際に導入する場合の方法を4つのステップに分けて解説していきます。

制度の方向性を決める

役割等級制度は、他社が実際に行っている方法を持ち込んでもうまく機能しないのが現実です。制度を導入する際は、まず最初に社内の経営理念や経営目標を振り返り、「自社が直面している課題は何か」「今後どんな人材・能力を必要としているか」を洗い出すことが必要です。また、導入後のゴールの認識を経営陣と社員がしっかりと合わせることが重要です。

等級数と各役割を定義する

導入するための方針が決まったら、社員の等級分けと各グレードで求められる目標・あるべき姿を決めましょう。まず等級数は、適切な数で分けることが重要です。等級が少ない場合、同じグレードに多くの社員が該当してしまい、実力が上がっても次の等級に移るまで時間がかかってしまいます。しかし、等級を細かく分けると各等級の定義付けが難しくなります。等級を分ける際は管理ポジションで2〜3程度、一般職で4〜5程度にしておくのがちょうどいいでしょう。社内で設定する等級数が決まったら、各等級の役割の基準を設定をします。基準は誰が読んでもすぐに理解できるように、簡潔に書くようにしましょう。また、誤解が起きないような言葉を選ぶことも大切です。

評価プロセスを具体化する

等級ごとの役割を決めたら、評価のプロセスを決めます。役割等級制度は評価の基準と評価のプロセスがあいまいだと、うまく機能しません。プロセスを決めるポイントとして、「目標管理と評価をするタイミングが連動しているか」「会社の長期目標や経営目標からズレていないか」「私情が評価の邪魔をしないか」の3点です。社内の目標管理のスケジュールが既にある場合は、目標管理を無理に変更する必要はありません。

導入時期を検討する

最後に、役割等級を社内に導入するタイミングを決めます。突然導入すると社内の混乱を招く可能性があるため、「導入前に従業員へ説明会を開く」「仮導入」などのいくつかの段階に分けて現在のシステムから移行することをおすすめします。また正式導入後、社内の浸透レベルの調査を行うことが重要です。管理される側・する側の両者から意見をもらうことで、すれ違っている部分や改善点を見つけやすくなります。また、管理する側の評価訓練を行うことも大切です。一つ一つ丁寧に対応することで、社員も導入の理由に納得し、役割等級を受け入れてくれるはずです。

 

05各社の導入事例

実際の導入方法までを解説してきましたが、既に導入している会社はどのような効果を得ているのでしょうか?

役割等級制度を導入している会社の一つとして、株式会社ココナラがあります。株式会社ココナラは、日本最大級のスキルマーケット「ココなら」を運営している東証グロース上場企業です。一人一人が「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくるというミッションを掲げているほど社内でも個人の裁量を大切にしているのが特徴です。

また導入した目的として、マネージャーによって異なる評価基準を統一するためだそうです。等級を11段階に区分し、「裁量」「コミット範囲」「育成責任」「業務レベル」「ノウハウレベル」という5つの軸によって明確に定したことで、人事評価でありがちな堂々巡りな会議が無くなったという効果が出たといいます。ただ、等級を用意するだけでなく等級と給与を連携させたことでシステムを導入した後も機能するようになっているそうです。


 

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06まとめ

社員の人事評価は、会社によって異なりますが自社にあった評価を選ぶことが大切です。今回の記事では、等級制度の概要やそれぞれの違い・導入する際のメリットデメリットなどを紹介しました。役割等級制度は、新しい概念ですが社員一人一人を効率良く評価することができるとの声もあります。自社にあった等級制度の設計や導入をしてみてください。

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