公開日:2022/12/21
更新日:2024/03/18

業績連動型賞与とは?メリットやデメリット、他の賞与との違いを解説

業績連動型賞与とは?メリットやデメリット、他の賞与との違いを解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

 

01業績連動型賞与とは?

業績連動型賞与とは、従業員の業績や組織全体の業績に基づいて支給される賞与制度のことを指します。経団連が毎年発表している「夏季・冬季賞与・一時金調査結果」の2021年度版によると、業績連動型賞与を採用している企業は55.2%となりました。前年よりは4.9%減少したものの、6年連続で50%を超える企業が導入していることから、主流の賞与の決定方法と言えるでしょう。

▶︎参考:2021年「夏季・冬季 賞与・一時金調査結果」の概要

計算方法について

業績連動型賞与は基本的に、①賞与の原資総額を決める、②個人の成績を加味して支給額を決める、というフローで支給されます。そしてこの原資総額の計算においては、各企業が重視したい項目や指標を組み入れて定められるので、計算方法は企業によって多種多様です。一般的な計算方法は「半期の粗利益×労働分配率-既払いの人件費(給与や福利厚生費など)」です。労働分配率とは「企業の生み出した価値に占める人件費の割合」を指します。導入する場合は、原資をどのくらいにするのかや分配率を役職ごとにどのようにするのかを考える必要があります。

 

02賞与の概念と種類について

そもそも賞与とは何かについて説明します。賞与とは、給与の1つで、普段もらっている月給とは別の形で従業員に支給される臨時の給料のことを指します。日本では、夏(6月)と冬(12月)に2回、夏季賞与・冬季賞与という形で支給されるのが一般的です。労働基準法上の定義はないものの、通達では「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」とされています(昭和22年9月13日発基17号)。また、会社の定める就業規則内で、賞与が支給されることもあると記載されていても支給されない場合や、賞与に関する規定がそもそも存在しないケースもあります。

賞与の中には、今回取り上げている業績連動型賞与の他、基本給連動型賞与、決算賞与などといった種類があります。その他似た言葉として業績連動型報酬があり、次で詳細を説明します。

▶︎参考:労働基準法の施行に関する件

基本給連動型賞与

ポイント制賞与とも呼ばれ、賞与の計算方法として業績連動型賞与を採用していない多くの企業で取り入れられている方式です。例えば「月給の2か月分」などのように、賞与算定基準日現在の基本給に支給月数を掛けて計算します。そのため年功序列的に基本給が設定されている場合は、賞与額も必然的に年功序列になってしまうというデメリットがあります。

決算賞与

決算賞与とは決算を行った後、その年の業績が好調な場合に社員に利益配分を行うため賞与という形式にて臨時支給される賞与を指します。法人税法にて損金扱いする場合の支給要件が定められているため、基本的に決算月からその翌月に支給されます。企業は事業年度を自由に定めることができますが、一般的に決算月は、3月もしくは9月、12月であることが多いです。「臨時賞与」、「年度末手当」、「特別賞与」など、その名称は企業により様々です。

業績連動型報酬について

業績連動型報酬とは、その名の通り業績に連動して額が変動する報酬のことです。民法上報酬とは、雇用契約を結んでいる労使間の間で支払われる労働対価を指しており非常に広い言葉です。そのため通常の従業員に支払う給与が業績連動で決まる場合も業績連動型報酬に該当します。また、近年は企業役員に対して株主との利害を一致させるために、業績連動型の役員報酬制度を取り入れる会社も多くあります。特に、ここ数年は報酬の一部を株式報酬として支給することで、企業価値向上に向けた長期的なインセンティブが働くような制度設計が注目されています。

 

03業績連動型賞与を導入するメリット

業績連動型賞与を導入することで、指標となる業績から賞与原資原資が自動的に算出・確定されるので、支給額に透明性を担保することができます。また、会社の業績と連動するため社員のモチベーションアップにも効果的です。 上記にあげた以外にも、会社に与える3つのメリットを解説します。

1.人件費の経営圧迫リスクの低減

業績連動型賞与を採用することで、賞与額が企業の業績に連動するため、企業は業績に見合った賞与額を負担するだけになります。業績が悪ければ支払い額が減るため、賞与過払いが原因となる経営圧迫リスクを減らすことができます。また、業績向上に伴う従業員側のメリットも大きくなるので、生産性を高める努力を引き出しやすくなります。

2.支給額に対する納得を得やすい

業績連動型賞与を導入することで、年功序列で支給されるケースと比較して支給額の不公平さを緩和することができます。元々、賞与は業績に応じて従業員にも利益を配分するというものですが、なぜその額が支給されているのかという理由まで説明されることが少ないのも事実です。業績連動型賞与を導入することで、支給額の変化の理由も明確にすることができます。

3.賞与額に関する労使交渉が不要になる

従来、賞与額は給与額と合わせて春闘の労使交渉の場で決定されることが多いです。春闘の労使交渉とは、新年度となる4月に向け、労働組合が月給やボーナスなどの労働条件についてを経営側に要求し、交渉して決定する交渉のことを指します。業績連動型賞与では事前に業績指標を取り決めてから運用します。算出方法については労使間の合意を要しても、決定後の支給額については毎年交渉する手間を省くことができます。

 

04業績連動型賞与を導入するデメリット

業績連動型賞与は、社員にとって支給額の透明性や労使間の決定の手間が省けるなどのメリットがある一方、デメリットもあります。ここでは2つのデメリットを紹介します。

1.資金不足が起こる可能性がある

業績連動型賞与を導入すると、企業は収益によって賞与を変動させます。そのため、経営が好調な時と不調な時で変動幅が大きくなってしまいます。まとまった現金支給を行う必要がある場合、タイミングによっては資金不足が発生するリスクもあります。

2.却って従業員の不満につながるケースもある

企業の収益に応じて賞与が決定されるため、急激な外部環境の変化などで賞与がゼロになる・減額になるなどの可能性もあります。そのため、たとえ従業員の個人成績が前年より優れていたとしても、会社全体の業績によっては賞与額が下がるということも起こり得ます。賞与が見込めない場合、従業員の家計に影響を与えるほか、会社への不満が増加したり、モチベーションの減退に繋がる可能性があります。

 

05業績連動型賞与を導入する際の流れと注意点

業績連動型賞与を導入する際の流れは、大きく以下の通りです。流れと共に解説していきます。

  • 1.導入する目的を明確にする
  • 2.賞与額の算出方法を検討する

1.導入する目的を明確にする

最初の段階として必要なのが、業績連動型賞与のメリット・デメリットを確認し、現在導入されている給与制度の問題点を整理します。社員が多くなり、「賞与決定に時間がかかるようになった」「合併のタイミングで制度を一新したい」など、それぞれ制度を変更しようと思った理由があるはずです。そして導入する目的を明確にするのです。ここで決定した目的は、具体的な制度設計に関する土台になります。また、実際に導入を決定した時に社員に説明をするための根拠にもなります。

2.賞与額の算出方法を検討する

続いて、算出方法を定めます。そのためにはどの業績に連動させるのかという指標を選定する必要があります。「会社が掲げる長期的なゴールとマッチしているか」「従業員にも理解しやすいか」をポイントに指標をひとつもしくは複数を選びましょう。ここでは、一般的に用いられる5つの基準を紹介します。

売上高基準

売上高や生産高などを指標としている基準です。採用するメリットとして、従業員に一番身近で分かりやすい点です。売上高や生産高は、社員が掲げた目標や実績から算出しているため、指標として簡単に導入することができます。一方、売上高が大きくともコスト効率が悪く利益率が悪化した場合など、売上高は必ずしも企業の利益と連動しない点は考慮する必要があります。

株主価値基準

株主価値とは、企業が将来どれだけのキャッシュフローを生み出せるかを踏まえた現在価値である企業価値から、負債を差し引いて株主に帰属する価値を算出したものを指します。そしてここでの株主価値基準とは、具体的にはROAやROE、ROIやEVAなどを指します。株主価値基準を採用すれば、「財務表からの視点」や「株主の視点」などといった、社内外からの多角的な視点を賞与に連動することが可能となります。デメリットとして、これら指標は企業の稼ぐ力を示すものとしては有効な一方、従業員目線では自身の業務との連動性が見づらくなるという点があります。

キャッシュフロー基準

会社における資金の流れを指標としている基準です。メリットとして、キャッシュフローを基準にしているため、一般の社員でもキャッシュフロー計算書を見ればその流れがわかります。キャッシュフローは、支出より収入が多い場合にはプラスとなり、収入より支出が多い場合にはマイナスになるというシンプルな構造であるため、原資の増減が理解しやすいのです。しかし部門によってはキャッシュフローと業務の連動性が薄くなり、あまり自身の事業との関連性を感じられなくなるデメリットもあります。

利益基準

利益基準とは、営業利益や当期純利益、経常利益などを指標としている基準です。利益と一口にいっても、さまざまな指標があるため利益基準を選択した場合はその理由まで明確にしておく必要があります。営業利益を基準にすることで、売上がわかりやすく社員のモチベーションに直結するでしょう。また、当期純利益を基準にする場合は経費なども公開するため社員に財務の知識を与えるきっかけになるでしょう。

付加価値基準

付加価値とは、企業活動で生み出した価値全体のうちその会社の活動によって生み出された価値部分を指します。付加価値を企業会計上で表す数値は粗利益です。 一般的に企業活動で向上を目指す指標として粗利益がメインで使用されることは少なく、その観点で実際に賞与算出の基準として導入されている割合も、2021年度の経団連調査において5%にとどまっています。

▶︎参考:2021年「夏季・冬季 賞与・一時金調査」(日本経済団体連合会)


 

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06まとめ

業績連動型賞与は社員の賞与について透明性を持たせるために、おすすめの方法です。本記事では、業績連動型賞与の特徴、導入するメリットや方法について、紹介してきました。今回の記事を参考に、賞与による社員のモチベーションアップや業績向上を目指してください。

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