コーチングスキルとは?ビジネスでの重要性や高め方を解説

自分で考え、自立的に行動する社員を育成するためにコーチングが注目されています。コーチングスキルにはどのようなものがあり、どうやって鍛えればいいのでしょうか。この記事ではその重要性や高める方法について解説していきます。
- 01.コーチングスキルとは
- 02.社員のコーチングスキルを高めるメリット
- 03.コーチングスキルの構成要素
- 04.コーチングスキルの高め方
- 05.まとめ
01コーチングスキルとは
コーチングスキルとは、コーチングで発揮される様々なスキルのことを指します。コーチングとは、何かの問題を解決する答えは当人に備わっており、コーチがそれを引き出すサポートをする、という考え方を基礎にしています。「課題を解決する方法を教える」のではなく、「課題を解決する方法を生み出せるように導く」とイメージすれば理解しやすいでしょう。コーチングは方法を教えたりマネジメントしたりするのとは異なるため、コーチングならではのスキルが必要です。
ビジネスコーチングとは
ビジネスにおけるコーチングは、ビジネスシーンにおけるコーチングを指します。主には部下を持つマネージャーや育成担当者が、対象者の主体的なアクションや成果創出をサポートするために行われます。 ビジネスコーチングにおいても、明確に問題の解答を与えることはありません。あくまでコーチは問題解決のサポートを行います。そのため、コーチングを受けた側は内省をおこない、自分の力で問題と向き合って解決することになります。このプロセスを経ることで、自立的に課題と向き合う姿勢が形成されていきます。 自分自身で考え抜き、自分の責任のもとに課題解決をしていくという姿勢は、現代のビジネスシーンで最も重要な能力であるといえます。この点からも、人材育成の一環としてもビジネスコーチングを取り入れる企業は増えつつあります。
ティーチングとの違い
コーチングは、課題解決のサポートをし、いずれコーチなしでも課題解決ができるようになることを目標としています。一方でティーチングは、何か課題や問題に対しては、明確な答えを提示して解決に導くという違いがあります。 何か問題が起こった際、早急に解決できるのはティーチングです。しかしそれでは従業員の自主性を育てることは難しく、問題が起こるたびに教えていたのでは指示待ちの社員になってしまう可能性があります。一方のコーチングは従業員の自立性を育てることには向いていますが、中長期的な育成が必要であり、すぐに結果は出ません。 コーチングとティーチングは別のものであり、この二つをバランス良く取り入れる必要があるということを覚えておきましょう。
02社員のコーチングスキルを高めるメリット
社員のコーチングスキルを高めると、次のメリットがあります。それぞれ詳しく説明します。
- ・社員のリーダーシップ強化につながる
- ・社員の主体性を高められる
- ・組織のチームワークが強化される
社員のリーダーシップ強化につながる
コーチングスキルは、リーダーシップの発揮に必要な能力の一つです。コーチングスキルが身についていると、関わるメンバーの主体性を引き出し、改善に導くことができます。リーダーシップとは目標に向けて集団を纏め上げ率いる力を指すため、コーチングスキルを身につけた社員は同時に良きリーダーになりえるのです。 コーチングスキルに触れることで自立性が高まり、課題を自分の力で解決できる能力が育つ、という意味でも次世代のリーダーを育成することができるでしょう。
社員の主体性を高められる
コーチングスキルの多くが、内省的に課題と向き合うことを促進するものです。コーチングスキルをもっているということはすなわち、自立的かつ内省的に課題と向き合い、主体的に解決できる考え方を知っている、ということも意味します。そういった社員は、主体的に業務に取り組むことができるようになります。
組織のチームワークが強化される
リーダー層のコーチングスキルが高まることで、メンバーの主体性が高まり組織のチームワークを強化することができます。 また、リーダーやマネージャーのみならず、各人がコーチングを通じて自立・内省思考を確立させ、なおかつ別の社員にもそのように接することができれば、自立したメンバーが集合した、強いチームを作ることができます。 コーチングを身につける上では様々な対人スキルやコミュニケーション能力を学びます。そのため、円滑なコミュニケーションができる人材も増え、チームワークをより強固なものにできるでしょう。
03コーチングスキルの構成要素
ここからはコーチングスキルを構成する個々の要素について見ていきましょう。
- ・傾聴力
- ・質問力
- ・承認力(褒める力)
- ・メタ認知力
傾聴力
傾聴力とは相手の言葉を背景まで深く理解するためによく聴く力を指します。これは積極的傾聴やアクティブリスニングとも呼ばれ、言外の仕草などからも真意を読み解くスキルを指します。もともとは心理学のカウンセリングで用いられるスキルであり、米国の心理学者カール・ロジャーズによると「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致(聴き手が相手に対しても自分に対しても真摯に向き合うこと)」の3つの要素が必要されます。 コーチングでは答えは本人の中に眠っているという考えのもと、当人がうまく言語化できていないことや、勘違いしてしまっていることにも気づけるようなコミュニケーションが必要です。これらを行うのに、傾聴力は非常に重要なスキルなのです。
質問力
あわせて、相手に気づきを与えるような質問を行う力も必要です。 コーチングでは当人が気づいていない課題や、すでに当人の中に答えが出ていることなどに対して、自分自身で気づけるような質問を行います。「なぜ?なぜ?」と問い詰めるのではなく、「なぜそう思ったのか」「どうしていくべきと考えているのか」「自分はどうしたいのか」といった、広がりがあるような質問が効果的でしょう。 また、相手が解答に困っているようなら、答えやすいような別の質問や視点を与えるというフォローも大切です。
承認力(褒める力)
承認とは、相手を認める行為です。コーチングにおける承認は、ただ成功を称賛することではなく、その人の存在をありのまま肯定し、相手にもそれを伝えることを指します。 何かプロジェクトがあったとき、成功していればもちろんそれを認め、具体的に褒めることは効果的です。しかし、常に何らかの「評価」を伴うコミュニケーションは、成果という理由のある承認であり、安心感のある関係構築に繋がりにくくなることもあります。 一方、たとえ具体的な成果を称賛されるわけでなくとも、相手が自分の変化に気づいたり、こまめに声をかけてくれたり、しっかりと目を合わせて会話をしてくれることで、存在が受け容れられているという安心感が生じます。これによって心理的安全性が保たれ、お互いの信頼関係を醸成できるでしょう。
メタ認知力
メタ認知とは、自分の認知のあり方、即ち思考や感情・行動の背景を客観的に自己理解することを指します。 メタ認知力が低い場合、自己客観視できていないことにつながるため、自身のコミュニケーション上の悪癖や周囲からどのように見えるのかについて自覚しづらくなります。コーチングはここまで解説してきた通り、相手の中に眠る思考や行動を引き出すアプローチです。相手との信頼関係が必ず必要になりますが、自己客観できない人の場合、つい感情的な対応や主観的な反応をしがちになります。そのため、コーチングを行う側が冷静に自分の振る舞いを自己認識できることは、重要なスキルの一つとなるのです。
04コーチングスキルの高め方
コーチングスキルをどうやって高めればいいのか、確認していきましょう。
- ・コーチングマインドを身につける
- ・基本のフローを理解する
- ・コミュニケーションタイプを理解する
- ・コミュニケーションのコツを身につける
- ・実践の機会を設定する
- ・コーチング研修を活用する
コーチングマインドを身につける
まずは、コーチングに関する基本的なマインドを身につけましょう。 もっとも重要なのは、「課題を解決するのに必要な要素は、すべてその課題に向き合っている人の中にある」という認識です。コーチングを行う側は、それを引き出すためのサポートをする、という意識が基本となります。
- ・話を遮らずに相手の話をすべて聞く。
- ・アドバイスではなく、質問することで相手に気づいてもらう。
- ・相手を否定しない。
- ・相手の意見を尊重する。
- ・相手の得意分野を伸ばし、それを使って課題解決してもらう。
上記のような認識で進めていくと良いでしょう。
基本のフローを理解する
コーチングの基本フローはGROWモデルと呼ばれており、下記の頭文字をとったものです。
- G:GOAL(目標)
- R:REALITY(現実)
- R:RESOURCE(資源、リソース)
- O:OPTIONS(選択肢)
- W:WILL(意思)
それぞれ、各段階では以下のような質問を行います。
- G:目標を明確化するような質問をする
- R:現実を把握できるような質問をする
- R:資源(経営資源などのリソース)を見つける質問をする
- O:選択肢を考えられるような質問をする
- W:意思を確認するような質問をする
重要なのは、いずれの段階でも意見を押しつけるのではなく、質問によって相手に気づいてもらうことです。 フローについて詳しく知りたい方は、以下も確認してみてください。
▶︎コーチングとは?コーチングの意味や有効性、具体的な手法を紹介
コミュニケーションタイプを理解する
コーチングをするうえで、人のコミュニケーションタイプを知っておくのは重要です。単純にタイプ分けをすることは難しいものですが、代表的な2種をお伝えします。
ソーシャルスタイル理論
これは、感情を抑えるか出すか、意見を言うか聞くかの2軸でマトリクスに分け、4つのタイプに分類する手法です。
- ・感情を抑え、意見を聞く:アナリティカル
- ・感情を抑え、意見を言う:ドライバー
- ・感情を出し、意見を聞く:エミアブル
- ・感情を出し、意見を言う:エクスプレッシブ
完全に分類分けはできなくても、「この人はアナリティカルの特徴に近いな」というようなイメージはできるのではないでしょうか。「この人はこういう傾向がある」と認識するだけでも、どのような言葉かけをすれば良いのか把握できるため、コミュニケーションを円滑にすることができるでしょう。
DiSC理論
DiSC理論も、2つの特徴をもとにマトリクスを描き、4つのコミュニケーションタイプに分類する手法です。
- ・ペースが速く感情的、仕事重視で冷静:主導型(Dominance)
- ・ペースが速く感情的、対人志向で楽観的:感化型(influence)
- ・ペースが遅く協力的、対人志向で楽観的:安定型(Steadiness)
- ・ペースが遅く協力的、仕事重視で冷静:慎重型(Conscientiousness)
こちらも、この人はこういった傾向がある、と認識しておけばコミュニケーションに役立ちます。質問や承認を行ううえで、「このタイプの人にはこういった言い方がいいだろう」というような対応ができるようになるためです。
コミュニケーションのコツを身につける
コーチングスキルは対人コミュニケーションスキルでもあるというのは何度か述べたとおりです。特に傾聴・質問・承認においてそれぞれコツを知っておけば、より良いコミュニケーションが可能になるでしょう。
傾聴姿勢を示す
傾聴姿勢でもっとも大事なのが、相手の話を遮らず、最後まで話を聞くことです。 そのうえで、いくつかのテクニックがあります。 ペーシング:話す速度やテンションを相手の速度に合わせる オウム返し:相手が言った言葉を復唱したり言い換えたりする うなづき:適切なタイミングでうなづいたり、相槌をうったりする 上記のようなテクニックが知られています。 重要なのは、相手に「しっかりと話を聞いている」という姿勢を伝えることです。
:質問のバリエーションを持つ
コーチングでは質問によって相手に気づきを与えるとお伝えしてきました。 質問のバリエーションをもっておけば、より効果的に気づきを与えることが可能です。
- ・答えを引き出す質問
- ・相手に確認する質問
- ・考えを深めてもらう質問
上記のような質問のパターンをもっておくといいでしょう。 これから自分がする質問はどの目的で行う質問であるかを意識するだけで、聞き方も変わってきます。
承認はIメッセージで
「あなた(You)は、〇〇です」というのは、Youメッセージと呼ばれるもので、どうしても決めつけのニュアンスが含まれてしまいます。 一方で、「私(I)は、あなたのことを〇〇だと思います。」という言い方であれば、「私がそう思っている」ことなので、相手からは否定することができません。 これをIメッセージと呼びます。 相手を承認するときには、Iメッセージを利用して伝えることで、押しつけや決めつけなどのイメージを払拭することができるでしょう。
実践の機会を設定する
社員にコーチングスキルを身につけてもらったら、実際にそれを発揮する場を設けましょう。1on1やチームのミーティングで、若いメンバーや次世代のリーダー候補に積極的にコーチングを行う機会を与えると良いでしょう。
コーチング研修を活用する
コーチングを体験したことがなかったり、実践者から具体的な内容を聞かなければ、何が正しいコーチングなのかわからないものです。そのため、管理職やリーダーに向けたコーチング研修を活用するのもおすすめです。講師から実践的なワークを通じてコーチングを学ぶ、オフラインの研修だけでなく、対象者が学びたい時に学ぶオンライン研修も有効です。 オンラインによるコーチング研修であれば、いくつかのテーマやケースにわけた授業を受けることができ、自身が直面している課題に対する回答を得やすくなります。また、コーチングの解決策は千差万別で、1人の講師のやり方が必ずしも自身の直面したケースに合致するわけではありません。そのため、オンライン研修で複数のコーチングのあり方について学んでみると、対象となる社員も積極的にコーチングについて理解を深められるでしょう。
05まとめ
コーチングによって自立性をもった社員を増やすことは、今後の社会で生き残り成長していくうえで必要不可欠ではないでしょうか。 そのためにも、社員のコーチングスキルを育成するのは有用です。 ぜひこれを機に、コーチングスキルを伸ばすような施策を検討してみてください。