組織効力感とは?企業が高めるメリットや実施のポイントを解説

組織やチームが高い目標を達成するためには、「自分たちなら達成できる」という意識が重要です。組織効力感とは、このような組織全体の自信感や有能感です。本記事では、組織効力感の意味や高める方法、メリットなどについて紹介していきます。
- 01.組織効力感とは
- 02.組織効力感を高める3つのメリット
- 03.組織効力感を高める方法4つ
- 04.組織効力感を高めるポイント3つ
- 05.まとめ
01組織効力感とは
組織効力感とは、組織のメンバー一人ひとりの自己効力感の相互作用によって、組織全体が「目標を達成できる、成功できる」と認識する有能感、自信感のことです。高い組織効力感を持つことで、より高い目標を掲げて積極的な行動を行えるようになり、生産性アップを期待できます。
ここでは、組織効力感の定義やチーム効力感及び自己効力感との違い、組織効力感と同じ意味で使用される言葉について紹介していきます。組織効力感を高めるメリットやポイントを確認する前に、しっかりと理解しておきましょう。
心理学者のバンデューラ氏が提唱した理論
組織効力感は、20世紀を代表する心理学者であるバンデューラ(Bandura)によって提唱された理論です。バンデューラは、集団効力感(collective efficacy)の概念を以下のように定義しています。 「課題の達成に必要とされる行動を系統立て実行するための能力に対する集団で共有 された信念」 集団効力感は、個々人の自己効力感を、集団へ応用した考え方です。言い換えると、組織や集団のメンバー同士で共有する、「自分たちならできる」という気持ちです。 集団効力感は社会心理学の研究から生まれた概念ですが、組織や集団での課題解決における重要な考え方として、教育経営心理学や教育社会心理学など、さまざまな分野で注目されています。
チーム効力感との違い
チーム効力感とは、チームのメンバー同士の自己効力感の作用により得られる、目標や課題をチームで達成できる、成功できるという自信感です。チーム効力感を高めることで、チーム全体の自信と士気が上がり、目標達成の行動を実行できます。 一方で組織効力感は、個人の自己効力感の相互作用により、組織全体が「目標を達成できる、成功できる」と認識する有能感、自信感のことです。このようにチーム効力感と組織効力感は、どちらもメンバーの自己効力感の作用により集団全体の効力感を高めます。そのため、チーム効力感と組織効力感はほぼ同義で使用されることも多いです。
自己効力感との違い
自己効力感とは、自身の目の前に乗り越えるべき課題や目標が現れたとき、「自分は乗り越えられる、達成できる」という自信感、有能感のことです。自己効力感は、英語で「セルフ・エフィカシー(self-efficacy)」であり、組織効力感と同様にバンデューラによって提唱された概念です。
「特定の課題に対して,適切な行動を成功裡に遂行できるという予測や確信の程度」
自己効力感が高いと、目標達成へ向けて積極的に努力したり、逆境へ立ち向かったりできるようになります。このように、自己効力感は個人への効力感であるのに対して、組織効力感は組織全体への効力感という違いがあります。
組織効力感と意味が同じ言葉
バンデューラ(Bandura)が提唱した心理的概念である集団効力感(collective efficacy)は、ほかの先行研究のなかでさまざまな呼称が用いられています。どの研究においてもバンデューラが提唱した定義に準じているため、ほぼ同じ意味といえるでしょう。ここまでにも出てきた通り、特に集団効力感やチーム効力感という言葉は、組織効力感と同じ意味で使われることが多いです。
02組織効力感を高める3つのメリット
次に、組織効力感を高めることで、組織にとってどのようなメリットがあるかを紹介していきます。具体的なメリットは以下の3つです。
- 1.従業員同士の人間関係が良好になる
- 2.従来より高い目標に取り組めるようになる
- 3.組織全体のパフォーマンスが向上する
組織効力感が高まると組織内でのメンバー同士の関係が良くなったり、パフォーマンスが向上したりします。
1.従業員同士の人間関係が良好になる
企業において組織効力感が高まることで、従業員同士の人間関係が良好になるメリットがあります。高い組織効力感があると、組織全体で同じ目標や課題に向けて行動ができるようになります。 同じ目標や課題に向かって一致団結する雰囲気が醸成されることで、従業員同士の絆が深まり、人間関係が良好になることが期待できるでしょう。また、チーム内の生産性が向上したり、チームを超えた連携が取りやすくなったりといったメリットもあります。
2.従来より高い目標に取り組めるようになる
企業における組織効力感の向上による2つ目のメリットは、従来より高い目標に取り組めるようになることです。組織効力感は、「自分たちは目標を達成できる」という自信感、有能感です。自分たちはできるという組織効力感が高まるに伴い、従業員一人ひとりをはじめ組織全体に自信が付いていくため、失敗を恐れにくくなります。そのため、従来設定していた目標よりも、さらに高い目標を設定し、取り組めるようになる可能性が高いでしょう。
3.組織全体のパフォーマンスが向上する
最後のメリットとして、前述のメリットの掛け合わせにより、組織全体のパフォーマンスが向上することが挙げられます。組織効力感の高まりにより従業員同士の人間関係が良好になることで、プロジェクトにおいて従業員同士が自発的に協力し合うようになります。 さらに、目標を達成する過程で壁に直面しても、すぐに挫折することなく、困難を乗り越えようと行動を行えるでしょう。その結果として、従来では達成できなかった高い目標をこれまで以上のパフォーマンスで達成し、大きな業績を収められるかもしれません。
03組織効力感を高める方法4つ
組織効力感の向上は、組織全体のパフォーマンス向上につながります。それでは、組織効力感を高める具体的な方法について、見ていきましょう。組織効力感を高める方法は、次の4つの方法があります。
- 1.成功した他者の代理体験をする
- 2.励ましの言葉をかけ合う
- 3.成功体験によって達成感を得る
- 4.メンバー一人ひとりの健康状態に配慮する
この4つの方法はどれも組織効力感を高める重要な要素のため、しっかりと理解しておきましょう。
1.成功した他者の代理体験をする
組織効力感を高める方法のひとつとして、成功した他社の体験を取り入れることが挙げられます。これを、「成功した他者の代理体験」と言います。
自分たちの組織で成功を体験できれば良いですが、必ずしも自分たちで達成できない場合もあります。 そのような場合、自分たちの組織に類似している組織の成功体験を観察、認知するのです。「この組織で成功できるなら、自分たちの組織でもできる」と、組織効力感の向上につながります。このとき、代理体験の対象とする組織は、可能な限り近い存在が望ましいです。 競合他社よりも自社内のほかの組織の成功体験を認知することで、強い刺激を受けて一層効力感が高まります。
2.励ましの言葉をかけ合う
周囲からの励ましの言葉によっても、組織効力感を高めることも可能です。周囲から激励や認めてもらうことで、やる気や自信にもつながります。励ましの言葉は、特に上司から部下に対して行うことが有効です。このとき、根拠のない励ましは効果が十分に得られないため、行動や実績に対して明確かつ具体的に励まし、賞賛することが大切といえるでしょう。また、組織効力感の向上には信頼をおける上司からの言葉が必要なため、普段から信頼関係を構築しておくことも重要となります。
3.成功体験によって達成感を得る
組織効力感を高めるのに最も効果的な方法は、自分たちの組織が実際に成功体験を獲得することです。その成功体験のなかで得られる達成感が、メンバー個人ならびに組織全体の自信へつながります。 そのため、まずは小さな成功体験で良いので、できる限り早期に成功を体験することが大切です。小さな成功体験を積み重ねていくことで、「自分たちは次のことができる」と自信が芽生えていきます。それを繰り返していくことで、最終的に大きな目標を達成できるという組織効力感を高めてくれます。
4.メンバー一人ひとりの健康状態に配慮する
チームメンバーの健康状態は、組織効力感にも影響します。メンバーの健康状態が良いチームに比べて、悪いチームは仕事のパフォーマンスが落ちてしまうことがわかっています。その状態をメンバー一人ひとりが認知することで、負の影響を受けやすく、結果的に組織効力感も悪化してしまうのです。高い目標に向けて全力で取り組むことも大切ですが、従業員の健康状態が悪化してしまっては中長期的に大きな問題につながってしまいます。残業の制限や意図的に適度な休息を入れるなど、チームの健康状態にも配慮するようにしましょう。
04組織効力感を高めるポイント3つ
先ほどは組織効力感を高める方法を紹介してきましたが、その取り組みのなかで気を付けたいポイントがいくつか存在します。そこで最後に、組織効力感を高めるためのポイントを3つ紹介します。
- 1.まずは個人レベルで効力感を高める
- 2.OKRなどの目標フレームワークを採用する
- 3.社内外の成功事例を学んでもらう
1.まずは個人レベルで効力感を高める
組織効力感は、従業員一人ひとりの自己効力感の相互作用によって創り出されます。そのため、まずは従業員の個人レベルで自己効力感を高めることが重要です。具体的には、1on1ミーティングでのフィードバック、対話を通じて、従業員一人ひとりの自己効力感を高めていきます。
また、自己効力感が高い従業員は、反対に自己効力感が低い従業員にとってのロールモデルになります。さらに個人レベルで自己効力感を高めれば、従業員同士が互いに刺激を与えあい、組織全体の効力感の向上にもつながるでしょう。
2.OKRなどの目標フレームワークを採用する
組織効力感を高める方法として、OKRなどの目標フレームワークを採用することも効果的です。OKR(Objective and Key Results)とは、目的(Objective)に対して結果指標(Key Results)を設定・管理する、目標達成に向けた指標管理方法です。 目的に向けて、企業の目標と社員個人の目標を四半期など細かなスパンで設定し、週単位で進捗管理を行います。そうすることで小さな成功を高頻度で積み重ね、効力感を高めていきます。 また、各組織のOKRは基本的に全社員向けに公開するため、他チームの成功を認知し、代理体験を行える状況が創り出されます。
3.社内外の成功事例を学んでもらう
組織効力感を効果的に高めるためには、積極的な代理体験が非常に重要です。2つ目のポイントのように、OKRの社内共有によって、自社内の成功事例を認知できる仕組みは効果的です。 また、自社内で成功事例を代理体験できない場合、他社における成功事例を学べるように事例紹介を行うと良いでしょう。社内外のチームがどのような困難に遭遇し、どのようなステークホルダーと連携し、アクションを起こし達成したのかを認知してもらいます。
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05まとめ
組織効力感を高めることで、より高い目標に向けて、これまで以上のパフォーマンスを発揮できるようになります。本記事では、組織効力感の意味や高めるメリット、企業の組織効力感を高める方法、ポイントについて、紹介してきました。本記事を参考に企業の組織効力感の向上に取り組みましょう。