オフボーディングとは|オンボーディングとの違いやその効果・具体的な実施方法について解説
オフボーディングとは、退職希望の社員が意思表示をして、最終的に退職にいたるまでをサポートする取り組みです。雇用の流動化やワークスタイルの多様化にともない、転職へのハードルは下がっています。こうしたなか、退職者へどのように接するかは、企業イメージを左右する重要なポイントとなりました。 この記事では、オフボーディングの概要、オンボーディングとの違いや効果を解説します。
- 01.オフボーディングとは
- 02.オフボーディングが注目される背景
- 03.オフボーディングとアルムナイの関係
- 04.オフボーディングで期待できる効果
- 05.オフボーディングを実施する際のポイント
- 06.オフボーディングを実施する際のポイント
- 07.まとめ
01オフボーディングとは
オフボーディングとは、社員が退職の意思表示をしてから、実際に退職日を迎えるまでの一連のプロセスをサポートする取り組みです。かつて、退職者は「裏切者」のように捉えられ、こうした手厚いサポートをすることはありませんでした。 しかし昨今では、自社を去る人材であっても、良いイメージをもって退職してもらうことが会社にとってのプラスになるという考えが定着しつつあります。そこで注目を集めるのがオフボーディングというわけです。
オンボーディングとの違い
オフボーディングと対比される施策に、オンボーディングがあります。オンボーディングは入社時のアプローチです。新規に入社する人材に対し、早く職場に馴染んでもらうことや、仕事に慣れてもらうことを目的に関わりをもっていきます。 具体的な取り組みは、新入社員にメンターやOJTトレーナーをつけるなどして、日々の業務の悩みや不安を解消してあげるといったことが挙げられます。人材の定着化を図り、早期離職を防止することが、オンボーディングの大きな目的です。
02オフボーディングが注目される背景
仕退職者と良好な関係を築くことが、会社にとってのプラスになるという考え方が定着しつつあることは前述しました。これまで自社に貢献してくれた社員ですから、退職時に嫌な思いをさせず、気持ちよく送り出してあげたほうが、お互いに気持ちが良いものです。オフボーディングが注目される背景には以下の2点が挙げられます。
- ・従来よりも雇用の流動性が高まったため
- ・ソーシャルメディアが普及したため
従来よりも雇用の流動性が高まったため
終身雇用が全盛であった時代は、転職自体にマイナスイメージがともなう側面がありました。しかし昨今では、より良い条件やキャリアアップを目指しての転職は、ごく一般的なものになっています。 転職に限らず起業やフリーランスへの転身など働き方は多様化しており、自身の価値観に応じて働き方を選べる時代になっています。こうしたなか、退職者に良い印象をもってもらうことは、企業にとって重要な関心事となったのです。
ソーシャルメディアが普及したため
昨今ではソーシャルメディアの普及により、個人が容易に情報を発信できるようになりました。退職時に嫌な思いをさせてしまうと、SNSへ書き込まれ悪い評判が立ってしまうリスクがあります。 逆に退職時に良い印象をもってもらえれば、良い評判を書き込んでくれるかもしれません。SNS経由で求人を検索する求職者が増えている昨今、退職者の投稿が自社の良い文化を伝える手段にもなりうるのです。
03オフボーディングとアルムナイの関係
アルムナイとは、退職者とも良好な関係をもち続け、協業や再雇入など自社にとってプラスになるよう働きかける取り組みです。オフボーディングにより自社に対する愛着をもち続けてもらうことは、アルムナイネットワークの形成においては重要なポイントとなるでしょう。 新規雇用や人材の定着が難しいなか、退職者も自社にとってよい影響を与えてくれる、有益な人的資源となりうるのです。
04オフボーディングで期待できる効果
企業がオフボーディングに取り組むことは、社員の退職に対する意識に変化をもたらします。会社が気持ちよく退職者を送り出していることを知れば、辞めることに対する罪悪感がなくなるでしょう。 こうした意識の変化は、主に以下のような効果が期待できます。
- ・退職の意思を事前に察知できる
- ・SNSに悪評を書き込まれるリスクを低減できる
- ・社内体制の改善につなげられる
- ・離職率の改善につなげられる
- ・企業ブランディングにつながる
退職の意思を事前に察知できる
通常、退職者希望者は引き止めを恐れます。そのため、退職の申告は直前になりがちです。上司は突然の申し出に驚き、十分に話し合いができないまま退職にいたるケースがほとんどでしょう。 社員が退職に対する罪悪感をもたなくなると、退職前に事前に相談しやすい雰囲気が生まれます。事前の相談があれば、じっくりと話し合うことで退職を思いとどまらせることができるかもしれません。オフボーディングの取り組みは、退職希望者に心理的安全性を提供し、本音で話ができる効果を期待できるのです。
SNSに悪評を書き込まれるリスクを低減できる
退職時に無理な引き止めにあったり、理不尽な対応をされたりした場合、これまでの信頼関係が一気に崩れてしまいます。憤慨した退職者が、SNSにその体験を投稿することは、容易に想定できるでしょう。 ネガティブな投稿は、企業イメージを下げるだけでなく、採用活動への悪影響や既存社員の退職につながるなど無視できないリスクとなります。オフボーディングにより、退職時に不満を抱かせないことで、こうしたリスクの低減につながるのです。
社内体制の改善につなげられる
退職者の心理的安全性が確保されることで、退職者の本音を聞きやすくなる効果が期待できます。退職者の本音は、組織の問題改善の重要なヒントとなり得ます。なぜ辞めようと思ったのか、「耳の痛い話」であっても、退職者が率直に話してくれることで、その問題を直視できるためです。 こうした本音を真摯に汲み取り改善していくことが、より良い組織体制を構築していくことにつながるのです。
離職率の改善につなげられる
退職者からの率直な意見を聞くことで、退職につながりやすい不満を把握できます。それを受け止めることで、社員満足度向上のために何が必要かがわかります。社内体制が改善されていけば、社員の満足度も向上し離職者も減少していくことでしょう。 また、社員が抱きやすい不満を把握しておけば、退職の兆候も事前に察知しやすくなります。早めに面談を実施するなどして、不満を解消することで退職を思いとどまらせることができるのです。
企業ブランディングにつながる
オフボーディングの取り組みは、退職者の自社に対する感謝の気持ちを醸成します。退職時に暖かい声をかけてくれた同僚などは、忘れられない存在となるでしょう。 感謝をもって退職した退職者は、SNSや口コミサイトへポジティブな書き込みをするものです。結果として自社の評判を高めるでしょう。 また、辞めた後も自社に好意をもってくれる退職者の存在は、既存の社員にとっても誇れることであり、エンゲージメントを高める効果が期待できます。
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05オフボーディングを実施する際のポイント
オフボーディングの取り組みでは、退職は悪いことではなく、会社はその後の活躍を応援するスタンスであると伝えることが大切です。 退職者の辞めた会社に対する印象は、もっとも充実していた体験(ピーク)と辞め際(エンド)の印象であるといわれています。ピーク・エンドの意識をもって、退職者に接することも忘れてはいけません。
- ・退職することを否定しない
- ・事務手続きや引継ぎを最大限サポートする
- ・社内体制の改善につなげられる
- ・率直なフィードバックをもらう
退職することを否定しない
退職者に罪悪感を与えない唯一のポイントは、退職を否定しないことです。優秀な社員であった場合、辞めてほしくないあまり強く引き止めてしまうかもしれません。その際に、退職者の決断を否定的に捉えてしまうことは避けるべきでしょう。 あくまで退職者の選択を尊重し、これまでの貢献に対する感謝を伝え、転職の成功を願うスタンスで接することが大切です。
事務手続きや引継ぎを最大限サポートする
退職時にはかなり煩雑な事務手続きが発生します。後任への引継ぎも始まるため、退職前はかなりハードな状況が続きます。こうした状態を、会社や周囲の人々が暖かくサポートすることで、退職者には感謝の気持が芽生えるでしょう。 もっとも避けるべきは、退職してしまうのだからと冷たくしたり、無関心な態度をとってしまったりすることです。居心地の悪さや孤独を感じさせない配慮は、オフボーディングにおける基本的な姿勢となります。
率直なフィードバックをもらう
退職を申し出た社員であるからこそ、聞きだせる本音というものがあります。こうした意見は組織改善の重要なヒントであるため、可能な限り率直にフィードバックをもらうようにしましょう。 これまでの待遇や人事評価、職場環境から人間関係にいたるまで、さまざまな側面から「どのように感じていたのか」をできるだけ詳しく教えてもらいます。そして、貴重な意見に感謝の気持ちを伝え、改善に役立てることを約束するとよいでしょう。
06オフボーディングを実施する際のポイント
次にオフボーディングの具体的な実施方法について、以下のフェーズに分けて解説します。
- ・退職前に実施すること
- ・引継ぎ期間~退職日に実施すること
- ・退職後に実施すること
退職者は、意思表示をした後、自身が周囲からどのように思われているのか気になるものです。退職をよく思わない人もいるかもしれません。周囲との摩擦や軋轢を生じないように、最大限の配慮をする必要があります。
退職前に実施すること
退職の意思表示があったら、それを否定せず面談の約束をとりつけましょう。面談ではこれまでの感謝を伝えつつ、どのように貢献してくれたのか、これから自社でどのような活躍を期待しているのかを伝え、一旦は引き止めます。 意思が固いようであれば、その意思を尊重し仲間として応援する旨を伝えます。 具体的な退職手続きや提出書類の説明は、退職が完全に決まってから丁寧におこなうようにしましょう。
引継ぎ期間~退職日に実施すること
引継ぎ期間は、疎外感や孤独を感じさせないよう、周囲は接し方に最大限の配慮が必要です。可能であれば、親しい同僚もしくは会社・部署主催で送別会を実施するとよいでしょう。 最終出勤日には、朝礼等で挨拶をしてもらうなどセレモニーを用意します。花束や贈り物を用意して見送ることも大切です。これまでの貢献に感謝し、労をねぎらう気持ちを伝えましょう。
退職後に実施すること
退職後に必要な事務手続きが残っている場合は、遅滞・遺漏なく確実に処理するようにしましょう。アルムナイネットワークがある場合は登録してもらう、あるいは親しい同僚と定期的にやり取りしてもらうなど、関係が切れない努力を続けます。 また、退職時にフィードバックをしてもらった場合は、その内容からおこなった改善や検証を報告すると、誠実な印象をもってもらえるでしょう。
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
雇用が流動化し転職が一般的となるなか、オフボーディングはどの企業においても必要な取り組みとなるでしょう。退職者と良好な関係を維持することは、長い目でみて企業のプラス要素となります。新規入社や人材の定着化が難しい昨今、退職者は貴重な人的資源として考えなくてはなりません。 オフボーディングの取り組みをぜひ検討してみてください。