プレゼンティーイズムとは｜原因と企業の対策・労働者が克服する方法について解説

01プレゼンティーイズムとは

プレゼンティーイズムとは、労働者が仕事に出勤しているにもかかわらず、実際には健康やパフォーマンスの問題で効率的に仕事ができない状態を指します。具体的には、体調不良やストレスなどが原因で、労働者が本来の能力を発揮できない状態を指します。

アブセンティーイズムとの違い

アブセンティーイズムとプレゼンティーイズムは、両方とも労働者の生産性に影響を及ぼす問題ですが、アブセンティーイズムは欠勤、つまり労働者が仕事を休んでいる状態を指し、プレゼンティーイズムは出勤しているものの、効果的な仕事ができない状態を指します。

02プレゼンティーイズムによる損失額

プレゼンティーイズムは企業にとっても大きな損失をもたらすことがあります。健康リスクのある社員がプレゼンティーイズムの影響を受けた場合、その労働生産性損失は年間で膨大な額に上ることがあります。例えば、健康リスク中と判断された社員の労働生産性損失は年間73.0万円とも言われています。

▶︎参考：https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/hiroshima/kouhou/2022090701.pdf

03プレゼンティーイズムの原因

プレゼンティーイズムの原因は多岐にわたります。主な原因として以下の点が挙げられます。

健康問題

健康問題はプレゼンティーイズムの主要な原因の一つです。慢性疾患、体調不良、精神的な健康問題などが労働者の生産性に影響を及ぼすことがあります。労働者が健康であることは、組織の成功にとって不可欠な要素です。そのため、健康問題の予防策や管理は、組織にとって重要な課題となります。

仕事への献身度

労働者が過度に仕事に献身的である場合、適切な休息を取らずに働き続けることがあります。このような行動はプレゼンティーイズムと呼ばれ、労働者の健康や幸福に悪影響を及ぼす可能性があります。適度な休息や仕事とプライベートのバランスを取ることは、労働者のパフォーマンスや生産性を向上させるために重要です。

過酷な労働環境

過度な労働負荷やストレスの多い労働環境は、社員の健康やパフォーマンスに深刻な影響を与える可能性があります。プレゼンティーイズムとは、労働者が体調がすぐれないにもかかわらず、出勤し続ける状態のことを指します。この状態が続くと、生産性の低下やモチベーションの低下、身体的な健康問題のリスクが増加する可能性があります。

経済的圧力

経済的な問題や財政的な圧力は、労働者にとって重要な休暇を取ることを困難にする一因となります。休暇は、労働者の健康と幸福にとって重要な要素であり、十分な休息とリフレッシュの機会を提供します。しかし、経済的な問題や財政的な圧力が存在する場合、労働者は休暇を取ることを躊躇するか、取ることができない場合があります。

04プレゼンティーイズムの測定方法4つ

プレゼンティーイズムを正確に測定することは重要です。以下はプレゼンティーイズムを測定するための4つの方法です。

WHO-HPQ

WHO-HPQは、労働者の健康に関する質問を通じて、プレゼンティーイズムの程度を評価する方法です。具体的には、労働者の身体的な症状や障害、心理的な健康状態、ライフスタイルの要素（食事、運動、睡眠など）に関する質問が含まれます。さらに、労働者の仕事への関与度や仕事への満足度、ストレスの程度なども評価されます。この方法を使用することで、組織は従業員の健康状態や生産性の問題を把握し、適切な対策やプログラムを導入することができます。

東大1項目版

東大1項目版は、単一の質問を通じて、プレゼンティーイズムの有無を判断する方法です。この方法は非常にシンプルで効果的です。質問の内容は、プレゼンティーイズムの特徴や行動に関連しています。この質問には、プレゼンティーイズムの有無を正確に判断するための指標が含まれています。また、この方法は、他の方法と比較して短時間で結果を得ることができます。

WLQ

WLQ（Work Limitation Questionnaire）は、労働者の仕事に対する制約を評価するためのツールです。このツールは、仕事における制約がプレゼンティーイズムに与える影響を測定することができます。プレゼンティーイズムとは、労働者が仕事に制約を感じることで、生産性やパフォーマンスが低下する状態のことを指します。WLQは、労働者の制約の種類や程度を明確に評価し、労働環境の改善や適切なサポートの提供に役立つ情報を提供します。

WFun

WFunは、労働者の業務遂行能力と仕事に対する満足度を総合的に評価することで、労働環境の改善や生産性向上に貢献する重要な指標です。労働者のパフォーマンスやモチベーションの向上を促進し、組織の成果や競争力の向上につながる役割を果たしています。 また、WFunは労働者の働き方や労働条件に関するフィードバックを提供することで、労働者と組織とのコミュニケーションを促進し、相互の理解と信頼を深めるのにも役立ちます。さらに、WFunは労働者の個人的な成長やキャリアの発展にも関心を持ち、適切なサポートやトレーニングの提供を通じて、労働者の能力向上と成長をサポートすることも重要な役割となります。

05プレゼンティーイズムの改善方法

プレゼンティーイズムを克服するために、以下の対策を実施することが重要です。

健康促進プログラムを提供する

労働者の健康を促進するために、さまざまなプログラムを導入し、従業員の健康状態の向上をサポートします。例えば、定期的な健康チェックアップやフィットネスクラスの提供、栄養指導、ストレス管理プログラムなどが含まれます。

柔軟かつ多様な働き方を推奨する

労働者には、柔軟な労働スケジュールやリモートワークの選択肢を提供することで、彼らのワークライフバランスを向上させることができます。柔軟な労働スケジュールを提供することにより、労働者は自分の都合に合わせて働くことができ、仕事とプライベートの両方をバランスよく行うことができます。これにより、労働者はより充実した生活を送ることができ、仕事に対するモチベーションや生産性も向上するでしょう。

ストレスチェックや従業員サーベイの実施

労働者のストレスや満足度を定期的に評価し、問題を早期に発見して対策を講じます。この評価は、労働環境の改善や労働者の福利厚生の向上につながる重要な手段です。労働者の心身の健康を保護し、生産性を向上させるために、評価結果に基づいてさまざまな改善策を検討し、実施します。

ストレス管理プログラムを実施する

ストレス管理プログラムを導入することで、労働者のストレスを効果的に管理するためのサポートが可能です。このプログラムは、労働者が日常の業務や生活の中で発生するさまざまなストレス要因に対処し、適切な対策を講じることができるよう支援します。具体的には、ストレスの原因を特定し、ストレスへの対処方法を学ぶトレーニングセッションやワークショップを実施します。また、労働者がストレスを軽減するためのリラクゼーションテクニックやメンタルヘルスのケア方法についても情報を提供します。

ストレスマネジメント研修の実施

労働者にストレスマネジメントの重要性を理解させ、適切なスキルを身につけるための教育プログラムを提供します。また、プレゼンティーイズムのリスクを軽減するために、労働者の健康とウェルビーイングに関する取り組みを強化します。これには、定期的な健康チェックや心理的なサポートの提供、適切な労働環境の整備などが含まれます。労働者のストレスを軽減し、生産性と満足度を向上させるために、組織全体でストレスマネジメントに取り組む重要性を認識しましょう。

06プレゼンティーイズム対策を行う企業事例

プレゼンティーイズムに対する効果的な対策を実施する企業事例として、以下の企業が挙げられます。

RIZAPグループ株式会社

RIZAP 株式会社は、oVice株式会社と企業の健康経営を共同で支援するための協業を行い、共同でメタバースを活用した健康経営促進サービス「RIZAPメタバースフィットネス」を2023年5月より提供しています。 当取り組みにより仕事の生産性が低下している状態であるプレゼンティーイズムや運動不足の解消だけでなく、コミュニケーションの活性化にも繋げています。さらに企業の従業員の健康促進を支援し、それぞれの企業での健康経営の実現に寄与していくことが狙いです。

▶︎参考：RIZAP、ビジネスメタバースを提供するoViceと協業 健康経営促進サービス「RIZAPメタバースフィットネス」を共同で展開

株式会社パソナグループ

パソナグループでは、自社の仕事を「人々の心豊かな生活の創造」と捉え、健康経営を実践しています。具体的には、オフィス環境を自然との共生をコンセプトにし、従業員が癒しや季節感を感じられるような環境となっています。オフィス内には植物だけでなく、田や畑も設けられ、従業員が果物や野菜を育てることができます。 カフェテリアを設置し、従業員がコミュニケーションを取る機会を増やし、社内で栽培した野菜を食べ放題の従業員食堂で提供しています。これらの取り組みは、従業員の健康と幸福を重視し、プレゼンティーイズムの予防に役立っています。

▶︎参考：健康経営オフィスレポート

SCSK株式会社

従業員の充実したワーク・ライフ・バランスの実現によって、生産性が高く創造性が豊かな仕事ができ、お客様や社会への貢献に繋がるとされています。また、従業員が「働きやすい、やりがいのある会社」と実感することで、好循環を生み出しています。この思いを推進力として、オフィス環境の整備を含む健康経営の施策を積極的に展開しています。 具体的な施策として、移転を機に従業員のデスク幅を1.5倍に広げました。これにより、作業効率が向上し、無理のない姿勢で仕事ができるようになり、快適性や従業員の満足感が高まっています。

▶︎参考：健康経営オフィスレポート

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07まとめ

この記事では、プレゼンティーイズムの概念や効果的な対策について説明しました。 プレゼンティーイズムは、労働者が仕事に制約を感じることで生じる状態であり、生産性やパフォーマンスの低下につながることがあります。労働者の仕事に対する制約を評価するためのツールであるWLQやWFunの紹介も行いました。 プレゼンティーイズムを克服するためには、健康促進プログラムの提供や柔軟な働き方の推奨、ストレス管理プログラムの実施などが重要です。また、企業事例としてRIZAPグループ株式会社や株式会社パソナグループ、SCSK株式会社の取り組みを紹介しました。 プレゼンティーイズムの対策は労働環境の改善や生産性向上につながる重要な取り組みです。企業は労働者の健康と幸福感を重視し、定期的な評価や対策の実施を通じてプレゼンティーイズムの軽減に取り組むべきです。