更新日:2026/01/24

生存者バイアスとは?ビジネスにおける具体例や対策を徹底解説

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生存者バイアス(Survivorship Bias)とは、成功した事例や生き残ったものだけに注目し、失敗や脱落したものを見落としてしまう思考の偏りのことです。ビジネスの意思決定においては、失敗事例を無視して成功例のみに着目すると、物事の本質を見落とすリスクが高まります。本記事では、生存者バイアスを正しく理解するための基本の解説と、対処方法について扱います。

 

01生存者バイアスとは?

生存者バイアス(Survivorship Bias)とは、成功した人や事象だけを分析対象とし、それ以外を無視することで誤った結論を導き出してしまう、認知の歪みのことです。この背景には、人間の「自分が目に見えているものがすべてだと思い込む性質」があります。成功事例や事象は発信も注目もされやすいため、そこだけに目がいくと、失敗のリスクや成功の本質を見誤る可能性があり、注意が必要です。

 

02生存者バイアスの具体例

ここでは生存者バイアスの理解を深めるために、以下のような事例を紹介します。

  • ・第二次世界大戦中の戦闘機
  • ・成功するには大学を出る必要がないという言説
  • ・「企業の成功法則」をテーマにした書籍
  • ・ビジネスにおける具体例

第二次世界大戦中の戦闘機

生存者バイアスの例としてよく紹介されるものに、コロンビア大学の統計研究グループ(SRG)に所属していた数学者、エイブラハム・ウォールド(Abraham Wald)の逸話があります。

第二次世界大戦中、米軍は爆撃機の品質を高めるため、基地に無事に帰還した機体の損傷箇所を調べました。すると、帰還機体は胴体に弾痕が集中しており、逆にエンジン周辺への被弾は少ないことが分かりました。

軍は当初、これらの情報から、翼や胴体を集中的に補強する案を考えました。これに異を唱えたのが、エイブラハム・ウォールドです。彼の指摘は、帰還できた機体は、操縦席やエンジンといった致命的な箇所に被弾しなかったからこそ戻ってこられたというものでした。つまり、帰還機体における弾痕が少ない「エンジン周辺」こそ、本当に補強すべき箇所だと提言したのです。

この逸話は、失敗した対象を考慮せず、成功した(生き残った)対象のみを基準に判断してしまう認知の偏り、すなわち生存者バイアスの典型例とされています。

▶︎参照:AMS :: Feature Column :: The Legend of Abraham Wald

成功するには大学を出る必要がないという言説

「成功するために大学を出る必要がない」という考えも、生存者バイアスの一例です。たとえばApple創業者のスティーブ・ジョブズや、Meta(旧Facebook)創業者のマーク・ザッカーバーグのように、大学を中退しながらビジネスで大成功した起業家がいます。しかし実際には、大学を中退しても大きな成功に至らないケースはあり、そうした事例はメディアで可視化されにくい点に注意が必要です。また、卒業して成功した多数のケースを母集団から外してしまう点でも、判断が偏るリスクがあります。

「企業の成功法則」をテーマにした書籍

「企業の成功法則」をテーマにした書籍は、生存者バイアスの典型例と言えます。これらの書籍は、成功した企業のみを研究し、その共通点や行動パターンを「成功法則」として紹介する傾向があります。しかし、企業の成功法則は、失敗した企業や、同じような戦略をとっても成功しなかった多数の企業を考慮に入れていません。

例えば、『エクセレント・カンパニー』や『ビジョナリー・カンパニー』のような人気書籍で取り上げられた企業の多くは、研究期間終了後に業績が急落しています。これは、特定された「成功要因」が、実は業績の結果として後付けされた特性であり、真の原因ではない可能性を示唆しています。企業業績は本質的に相対的で不確実であり、過去の成功事例だけを鵜呑みにし、「同じように行動すれば成功できる」と考えることは、誤った結論を導くリスクがあるため、注意が必要です。

▶︎参照:Rosenzweig, Phil(2007)「Misunderstanding the Nature of Company Performance: The Halo Effect and Other Business Delusions」

ビジネスにおける具体例

身近なビジネスの場においても、生存者バイアスはあります。例えば、「悪しき伝統」の継承も生存者バイアスの一例です。他にも、「AI学習データの偏り」や「調査・サーベイ結果が現実を反映しない」ということも、生存者バイアスの例と言えます。

組織における「悪しき伝統」の継承

ビジネスにおいて起こりがちな生存者バイアスの例として、「悪しき伝統の継承」が挙げられます。例えば、いわゆる「ブラック企業体質」と呼ばれるような過度な精神的負荷を与える新卒研修や長時間労働の強要が、慣行化してしまうケースなどです。

このような環境でも離職・休職に至らず残った人々は、その苦労を乗り越えた経験から、「これが正しい成長方法だ」「このやり方こそが自社らしさだ」と解釈してしまうことがあります。しかしこの時、適応できずに離職した人の声やデータは組織内で参照されにくく、意思決定が“生き残った人の経験”に偏りやすい点に注意が必要です。その結果、世代を超えて同じ慣習が正当化され、問題が温存されるリスクがあります。

AI学習データの偏り

昨今、生成AIサービスの急拡大によって、ビジネスにおけるAI活用は非常に身近なものになりつつあります。一方でAIの業務への活用にも、生存者バイアスによる偏りが生じる可能性があります。その一つが、AI学習データの偏りです。

具体的な例として、Amazonにおける採用活動支援ツールの開発の取り組みがあります。同社では、自社の保有する採用関連データを用いてAIを訓練し、履歴書審査の効率化を図りました。しかしReutersによると、このアルゴリズムが意図せず、ソフトウェアエンジニアやその他技術者の採用において、女性応募者を不公平に評価するものになっていたことが分かりました。

これは、AIが過去に同社へ提出された履歴書データのパターンを学習した結果であり、テクノロジー業界全体における男性優位を反映したものと解釈されています。技術職では男性比率が高い傾向があることから、性別を成功の要素として認識し、アウトプットに偏りが生まれたのです。

▶︎参考:Insight - Amazon scraps secret AI recruiting tool that showed bias against women | Reuters

調査・サーベイ結果が現実を反映しない

生存者バイアスは、調査・サーベイ結果が現実を反映しない例でも見られます。例えば、研修の満足度調査で高評価が得られても、その研修が任意参加の場合は扱いに注意が必要です。これは成長意欲や研修への参加モチベーションが高い社員の声を集めたものであり、フラットな評価を反映していない可能性があるためです。

同様に従業員サーベイでは、離職者や休職者の意見は含まれず、現職者(生存者)のみのデータとなり、組織の課題が見過ごされることがあります。通常通り勤務できている社員の観点からだけでは、休職や離職に至るプロセスやそこに潜む問題が発見できない可能性があるのです。定量的な調査はとても役立つものですが、実施にあたってはデータの偏りを認識し、全体像を把握することが重要です。


 

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03生存者バイアスに陥らないための対策

ここでは、生存者バイアスに陥らないための対策を紹介します。特に効果のある対策は、以下の3つです。

  • ・成功例だけで因果を語らない
  • ・プロセスと再現性を見極める
  • ・分析対象のうち「見えていないデータ」を捉える

それぞれの対策について、以下で詳しく紹介します。

成功例だけで因果を語らない

生存者バイアスを避けるには、成功事例だけに目をむけず、似た取り組みで失敗した事例や撤退したプロジェクトにも目を向けることが重要です。なぜ一方は成功して一方は失敗したのか、何が違いなのかを深く分析しましょう。対照群や比較基準を正しく設定することは、物事の全体像を正確に把握し、判断の偏りを減らすのに役立ちます。

プロセスと再現性を見極める

成功事例について研究する際に、そのプロセスと再現性を見極めることも、生存者バイアスを避けるためのポイントです。ビジネスにおける成功は、さまざまな要素で成り立つためです。

たとえば組織運営の手法や製造プロセスに強さの源泉がある場合、手法を真似ることで類似の効果が得られる可能性はあるでしょう。一方、たまたま投稿したSNSが大きな「バズ」を生み出して商品がヒットしたようなケースでは、再現性を求めるのは難しい可能性があります。

成功の要因は何なのか、それは狙って引き起こされたものなのか、他の人が同じような方法を実践して再現できる可能性があるのか、といった観点で精査することが重要です。

分析対象のうち「見えていないデータ」を捉える

成功例や残った情報だけでなく、失敗事例や離職者といった「見えていないデータ」を積極的に捉えることも、生存者バイアスを避けるうえで重要です。一方で、プロジェクトの失敗や商品の撤退といったネガティブな情報は、特に社外に向けて積極的に広報するような内容ではありません。つまり一般に失敗に関する情報は、成功例と比較すると得にくい傾向があるのです。

そのため情報収集や分析にあたっては、手元にあるデータの範囲のみで考えるのではなく、「反証となるデータはないか」「何の情報が得られていないのか」といった切り口で棚卸しする必要があります。


 

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この授業では素早く的確な意思決定を行う方法について解説しています。「なぜ、意思決定が難しいのか」・「意思決定の基本テクニック」などを学ぶことができます。

  • ワークスタイルデザイナー(キャリアコンサルタント/講師/著者)

    ワークスタイルデザイナー(キャリアコンサルタント/講師/著者) 商社秘書、コピーライターを経て、1990年(株)東海総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)に入社、人材開発に関わるようになる。約11年間の勤務で、講演・セミナーの出稿回数でNO.1の経営コンサルタントに。2001年に独立開業、有限会社アリーナアドヴァンス代表としてキャリア支援事業を立ち上げる。 2002年、特定非営利活動法人キャリアデザインフォーラムを設立、行政との連携を深める。同年には、キャリアコンサルタント養成講座の講師に着任。国家資格キャリアコンサルタントの草分けである。現在は、国家資格1級キャリアコンサルティング技能士として、国家資格キャリアコンサルタントのスーパービジョン(指導)も行っている。2024年4月、『みんなのキャリアデザイン』(ディスカバー・トゥエンティ・ワン)が電子図書化される。​2006年、産能マネジメントスクール外部講師として「段取り力開発セミナー」を開講。そのエッセンスを『面倒くさがりやでもうまくいく! ラク段取り』として発刊する(2013年)。手順設計と実践のコツを説く同著の2章「ラクな段取りで、決めるのがラクになる」をKDP『仕事が早くなる 決断の習慣: 決めれば終わる! 決めれば進む!』として再出版。仕事が早くなるための意思決定の仕方を紹介する。 開業からのぶれないテーマは「夢づくり 人づくり」。著書『ハーバード流 幸せになる技術』 (PHPビジネス新書)の知見をベースに、「働く幸せ(Happiness at Work)」を実現するキャリアデザイン研修を提供。2022年12月、キャリア界の巨星 花田光世先生(慶應義塾大学名誉教授)による「組織版キャリアコンサルティング指導者育成プログラム」を修了。戦力型「セルフ・キャリアドック制度」の導入コンサルティングをとおして、個人の元気(wellbeing)を組織の繁栄(prosperity)へつなげる仕組みづくりに挑んでいる。 ライフワークはコミュニティづくり。ロバート・モンダヴィ・ファンクラブ(2000年ファミリー公認/活動休止)、即興劇団「名古屋プレイバックシアター」(2005年/活動休止)、プロ講師養成スクール(2008年)、3.11復興協働アクトチーム一緒にがんばろ~ず!(2012年)、復幸キャラバン百年塾(2015年)、キャリアコンサルタント三田会(2020年)等を立上げてきた。​​座右の銘:すべては夢からはじまる(ウォルト・ディズニー) 趣味:和飲(ワインを飲みながらの会食)・愛車でのドライブ 学歴:慶応義塾大学法学法律学科、商学部卒業、南山大学人間文化研究所修了​現職: 有限会社アリーナアドヴァンス 取締役 特定非営利活動法人キャリアデザインフォーラム 代表理事 愛知県労働協会 評議員 ヤング・ジョブあいち運営協議会 委員 キャリアコンサルタント養成講座 講師(CDAインストラクター) キャリアコンサルティング協議会更新講習 講師 キャリアアドヴァイザー協議会 登録キャリアアドヴァイザー キャリアコンサルタント三田会 代表理事

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  • コラボ・ソリューションズ合同会社代表

    コラボ・ソリューションズ合同会社代表/一般財団法人 DRIジャパン理事/筑波大学大学院非常勤講師。1998年に日本ヒューレット・パッカード株式会社に新卒入社後、株式会社日本総合研究所、デル株式会社を経て、ケプナー・トリゴー・グループ日本支社にて企業幹部・管理職向けに問題解決・意思決定力の強化に関する研修講師、および業務プロセス改革支援のコンサルティングに従事。2011年、事業の推進力のコアとなる人材育成・組織変革を支援するコラボ・ソリューションズ合同会社を起業。実務に直結した研修とハンズオン型のコンサルティングサービスを提供している。前職含め16 年以上にわたり、大手企業の新人から管理職まで、のべ 1万5000 人、500 回以上の思考力強化に係る研修(実務支援含む)を行ってきた。 『意思決定の精度と速度を上げる思考の「ステップ」と「武器」 』(プレジデント社)

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失敗談から学ぶ「意思決定」

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  • 相模女子大学 学芸学部 英語文化コミュニケーション学科 教授

    明治学院大学法学部卒業後、日本航空にて27年間、客室乗務員・外国人訓練教官・客室統括を歴任。1998年、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了、MBA取得。2010年より現職。専門は人材開発(HRD)。グローバル環境におけるキャリア形成や女性のキャリア支援に注力。学生による海外での障がい児支援や企業との産学連携を通じ、国際的に活躍できる人材育成を実践している。学生のコンテスト指導では14年間で64件の受賞に導く。相模原市観光大使研修講師、観光審議委員、進路アドバイザー検定委員、大学における社会人リカレント講座「リーダーシップ育成講座」の監修・講師を務める。著書に『キャリア教育で人間力が伸びる』『海外駐在員のための教科書』ほか多数。

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クリティカルシンキングと認知バイアス

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    外資系コンサルティングファーム勤務。専門領域における日本支社の実務責任者を務め、IT部門に対するコンサルティングを手がける。「クラウド」×「インフラ」×「サービス管理」を専門分野とし、ファシリテーションやコーチングにも造詣が深い。著書に『図解作成の基本』(すばる舎)『資料作成の基本』『フレームワーク使いこなしブック』(以上、日本能率協会マネジメントセンター)、『外資系コンサルのビジネス文書作成術』(東洋経済新報社)、『外資系コンサルの仕事を片づける技術』(ダイヤモンド社)など多数がある。

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  • 株式会社データミックス 代表取締役/データサイエンティスト

    サンフランシスコ大学大学院 データ解析学専攻(修士)修了。一橋大学商学部卒。2017年に株式会社データミックスを創業し、データサイエンス教育事業とEdTech事業を展開。データミックス創業前は、ニュースアプリのスタートアップでのデータサイエンティスト、監査法人トーマツにてデータ分析コンサルタント、KPMG FAS(あずさ監査法人子会社)で事業再生コンサルタント、外資系メーカーでの経理・マーケティングなど幅広い経験をもつ。

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05まとめ

生存者バイアスとは、成功した人や事業のみを見て、物事の全体像を判断してしまう認知の歪みです。第二次世界大戦の戦闘機の逸話、「成功するために大学を出る必要がない」という言説、企業の成功法則をテーマにした書籍、組織における「悪しき伝統」の継承、AI学習データの偏り、調査・サーベイ結果の偏りなど、様々な具体例があります。このバイアスを避けるためには、成功例だけで因果を語らず、プロセスと再現性を見極め、分析対象のうち「見えていないデータ」を捉えることが重要な対策となります。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
Editor
Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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