ストレスチェック研修はなぜ重要?研修内容や注意点を解説
ストレスチェック制度とは、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止を目的に、平成27年に施行された新たな制度です。本記事では、ストレスチェック研修の重要性や目的、効果的な取り組み方について紹介します。担当者の方はぜひ参考にしてください。
- 01.ストレスチェックの重要性
- 02.ストレスチェックの方法
- 03.社内ストレスチェック時の課題点
- 04.ストレスチェック研修の主な内容
- 05.ストレスチェック研修の注意点
- 06.まとめ
01ストレスチェックの重要性
ストレスチェックを実施することで、職場環境におけるストレスの状況と健康へのリスクを詳細に把握することができます。また、その結果をもとに、従業員が安心して効率良く働けるような職場づくりに活用することも可能です。 従業員のストレスから来るメンタルヘルスの不調を未然に防止するためにも、事業者は積極的にストレスチェックについて考えることをおすすめします。
2014年より企業のストレスチェックが義務化
労働安全衛生法の改正により、従業員が50人以上の会社では2014年から毎年1回、ストレスチェックを常時使用する労働者に対して実施することが義務付けられています。 2021年現在、ストレスチェックを行わないことに対する罰則は設けられていません。しかしながら、事業者には労働者が心身の健康を維持しながら働けるように配慮する義務があるため、ストレスチェックを実施しないことは労働契約法の違反にあたります。
- ▶︎参考:労働安全衛生法の改正について
人事担当者はストレスチェックをできない
ストレスチェックは医師や保健師、もしくは厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師、精神保健福祉士、歯科医師、公認心理師が行うことを義務づけられています。これらに該当しない職務者は、ストレスチェックを行うことができません。
従業員のメンタルヘルス予防・対応策
ストレスチェック実施後は、医師による面接指導や対策を行わなければなりません。また、企業にはしかるべき機関への報告の義務があり、守らない場合、罰金を科されることもあるので、担当者は注意が必要です。
02ストレスチェックの方法
ストレスチェックの実施にあたって、するべきことがいくつか存在します。
- 1:社内ルールの設定・担当者の決定
- 2:ストレスチェックの質問表の作成
- 3:ストレスチェックの実施と評価
- 4:高ストレス者への対応
- 5:職場分析と環境の改善
どの種類を選ぶとしても、「ストレスチェック義務化法案」に対応したストレスチェックを行うことが重要です。 ここでは厚生労働省において推奨されている実施方法を紹介します。
1:社内ルールの設定・担当者の決定
まずは、ストレスチェックにおける担当者の選定を行います。「誰が」「いつ」「どのように」ストレスチェック制度を運用していくかを社内で協議・検討しましょう。この際、選出された担当者間で社内の方針やルールを設定しておけば、その後の運用をスムーズに行うことができます。
2:ストレスチェックの質問表の作成
次にストレスチェック実施者と相談しながらストレスチェックの質問表を作成します。具体的な質問事項については、厚生労働省作成の「ストレスチェック制度実施マニュアル」にて推奨されている57項目の質問票を参考にしてください。
3:ストレスチェックの実施と評価
ストレスチェックの質問表の作成が終わったら、いよいよストレスチェックを実施します。 実施方法は、 1.作成した質問表を対象者全員に配布して記入する 2.記入済みのチェックシートは中が見えない封筒に入れ、内容がわからないようにした状態で、実施事務従事者が回収する といった流れが一般的です。 全従業員の質問票を回収し終えたら、その質問票をもとに医師や実施事務従事者が評価を行います。
4:高ストレス者への対応
高ストレス者と診断を受けた従業員から、面接を受けたいとの申し出があった場合は個別で面接に応じます。 同時に、事業者は医師による面接指導の結果をもとに、労働環境の改善を検討・実施します。この際の実施期限は、医師から結果報告、意見聴取を受けた1か月以内です。忘れないように注意しましょう。
5:職場分析と環境の改善
ストレスチェック制度には、努力義務として「職場分析」を行うことも求められています。職場分析とは、部、課などのチームごとにストレスチェックの結果を比較・分析し、ストレスの原因を特定して職場環境の改善を図る手法です。 ストレスチェックをより有意義なものとするためにも、職場分析には積極的に取り組みましょう。
03社内ストレスチェック時の課題点
ストレスチェックは労働者の心身の健康を守るために実施されているものですが、課題も多く残っています。よく挙げられるストレスチェックの課題点として、次のようなものが挙げられます。
- ・外部へ依頼するとコストがかかる
- ・従業員のプライバシーを守らなければならない
自社の実施方法に不備や改善点はないか、改めて検討する際の参考にしてください。
外部へ依頼するとコストがかかる
いざストレスチェック制度を導入しようというときに問題となるのが費用です。ストレスチェックの実施には、実施方法についての審議、質問票の作成、医師による面接指導、受検結果をもとにした集団分析など、さまざまな工程で人件費が発生します。 全工程を外部企業に委託することも可能ですが、その分のコストは発生します。ストレスチェックにおける予算を設定したうえで、外部に委託するのか、それとも自社で行うのかを検討しましょう。
従業員のプライバシーを守らなければならない
ストレスチェックの実施には、以下の3つの要件を全て満たしていることが絶対条件となります。 A.事業者および実施者において、個人情報の保護や改ざん防止のための仕組みが整っており、それに基づいて実施者またはその他の実施事務従事者による個人の検査結果の保存が適切になされていること B.本人以外に個人のストレスチェック結果を閲覧することのできる者の制限がなされている(実施者以外は閲覧できないようにされている)こと C. 実施者の役割(調査票の選定、評価基準の設定、個人の結果の評価等)が果たされる 回答済みのチェックシートは、医師と実施事務従事者以外が閲覧することは禁じられています。従業員のプライバシーを守りながらテストが実施できるように、担当者は細心の注意を払う必要があります。
ストレスチェックにて、コストを抑えながらさまざまな課題を解決するためには、自社の従業員への依頼が最適な方法です。また、自社でストレスチェックを実施する際には、不正が出ないようにあらかじめ研修を行い、チェック担当者に心構えやチェック方法を指導しなければなりません。 ストレスチェック研修に取り入れたい内容は以下の通りです。
04ストレスチェック研修の主な内容
ストレスチェック研修の内容について、主には以下の内容が挙げられます。
- ・労働者の健康管理について
- ・職場のメンタルヘルス対策
- ・質問表の作成方法
- ・ストレスチェックの分析方法
上記について、それぞれ以下で解説します。
労働者の健康管理について
はじめに、労働者の健康管理の基本的な考え方について学習します。労働衛生関係法令を用いた労働者の健康情報とその評価、また労働者の健康情報の保護や職場の労働衛生管理体制などを改めて担当者全員で学びます。
職場のメンタルヘルス対策
事業場におけるメンタルヘルス対策の基本的な考え方も、ストレスチェック研修に組み込みたい内容です。労働者にメンタルヘルスが起こった際の具体的な対応や、職場復帰支援策を今一度受講者全員に周知します。
質問表の作成方法
質問表の作成方法の確認も研修で行ったほうがよいでしょう。どのような質問票を使ってストレスチェックを実施するのか、自社にとって最適な方法でストレスチェックを行えるように、担当者全員で話し合うことをおすすめします。
ストレスチェックの分析方法
ストレスチェックの分析については、「総合健康リスク」と「高ストレス者」のふたつを見ることが重要です。どのような基準でストレスの高い人を選ぶのか、ストレスチェックの分析方法についても研修で確認しておきましょう。
05ストレスチェック研修の注意点
ストレスチェック研修を行う際には、いくつかのポイントに気を付けなければなりません。研修の成果を実感できるようになるためにも、ここではストレスチェック研修を行う際のポイントについて理解を深めておきましょう。
オンライン研修も視野に入れる
ストレスチェック研修で学ぶ内容の多くは、座学で学べる内容です。そのため、オンラインミーティングツールを活用して研修を行うことで、コスト削減や担当者の負担軽減に役立ちます。ぜひ一度オンライン研修を検討してみてください。
受講者は企業側で熟考する
ストレスチェック研修を受講する人員は、企業側で熟考する必要があります。なぜならストレスチェックでは、従業員のプライバシーを守ることを最優先で考えなくてはならないためです。口が軽い人や、チェックを受ける人と関係の近い人は、候補者から外すようにしましょう。
短期間で実施してくれる外部業者を選ぶ
ストレスチェック研修の実施を請け負っている業者は数多く存在します。外部への委託を考えている場合には、「ストレスチェック研修 業者」と検索してみてください。また、外部業者を選ぶ際には、短期間で実施してくれる業者を選ぶことを推奨します。
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・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
06まとめ
ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを管理するために企業が取り組まなければならない重要な制度です。 企業側もストレスチェックを行うことで、社員ひとり一人のストレスの有無を確認でき、より良い会社運営につなげられます。 ストレスチェックを行う際には、ぜひ本記事を参考にストレスチェック研修を実施し、スムーズに研修が実施されるように努めましょう。
<メンタルヘルスについてのSchooおすすめ授業>
ストレスは多かれ少なかれ、誰もが感じているものです。
同じストレス下に置かれている人であっても、その捉え方や対処法によって感じているストレスの程度は違うものなのです。
今回の授業のテーマは「ストレスレスな職場環境を作る」こと。
共に働く全ての人がストレスを押しつぶされることなく、健全に働くことが出来るように明日から出来るストレス対策の方法を学んでいきます。
この連載授業で学ぶのは「自分自身のストレスケア方法」だけではありません。
毎日、顔を合わせる同僚や、自身の部署のメンバーなどの他者にも目を向けていきます。
普段のコミュニケーションの中で気づける「メンタル不調者の前兆」や、「メンタル不調を相談された際の対処方法」、「休職中の同僚とのコミュニケーション」など、さまざまな観点から、専門家ではない私たちにでも出来る気くばりの方法を学んでいきましょう。
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医師、医学博士、日本医師会認定産業医
産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある。