内集団バイアスとは?具体例やメカニズム、企業の対策について解説

内集団バイアスとは、自身が所属する集団(内集団)やそのメンバーを、他の集団よりも好意的に評価・扱う心理的傾向です。このバイアスは集団内の人間関係を円滑にする要素もある一方で、公平な判断を妨げたり、外部の意見を排除したりするリスクを伴うため、企業や組織においては注意が必要な心理現象と考えられています。本記事では、内集団バイアスの具体例やメカニズム、企業ができる対策を解説します。
01内集団バイアスとは?
内集団バイアスとは、自分が所属している集団(内集団)やそのメンバーを、他の集団(外集団)よりも高く評価したり、好意的に接する心理的傾向を指します。いわゆる「身内びいき」であり、同じ組織、出身地、趣味などの共通点がある相手に対して、無意識に信頼感や親近感を抱く現象です。このバイアスは内集団における結束を強めたり、人間関係を円滑にしたりする効果がある一方で、公平な判断を妨げる、外部の意見を排除するといったリスクも伴います。そのため、組織や企業においては注意が必要な心理現象といえます。
02内集団バイアスの具体例
内集団バイアスは、私たちの日常生活から職場での意思決定まで、さまざまな場面で現れます。ここでは、身近な人間関係における具体例と、ビジネスシーンで発生しやすい具体例に分けて紹介します。
実生活で見られる内集団バイアスの具体例
実生活において内集団バイアスは、居住地域や趣味、出身校といった共通点を持つ相手に対して自然と働きます。例えば「近所に住んでいると分かると急に親近感を持つ」「同じスポーツチームを応援している人により親切にする」といった行動が典型です。
人は他者との相違点・共通点で「自分らしさ」を知覚するため、自分と似た特徴をもつ人や集団には自身を重ねやすく、内集団への利益を自分にとっての利益と感じやすいと考えられています。一方でこの傾向が強すぎると、異なる価値観を持つ人や背景の異なる人を不当に低く扱ってしまうリスクもあります。またこれらの「身内びいき」は意識せず、自然と行っていることも多いため、自分自身では自覚がないこともあります。
▶︎参考:三船恒裕|ソトよりウチをひいきする心の仕組み|日本心理学会
ビジネスシーンで見られる内集団バイアスの具体例
ビジネスシーンでも内集団バイアスは多様な形で現れます。例えば、部門間横断プロジェクトにおいて、同じ部門の人が提示する案を他の部門の案よりも優れていると感じることなどが挙げられます。
また「内集団」の範囲はさまざまなので、「自分の企業のやり方が一番だ」と強く信じ、外部からのアドバイスや異なる意見を聞き入れないケースなども該当します。自社に誇りや愛着を持つことは、従業員エンゲージメントの観点から望まれることですが、それが客観的な判断を歪めてしまうような場合には注意が必要です。
03なぜ起きる?内集団バイアスが強まるメカニズム
内集団バイアスが強まる主なメカニズムを説明するものとして、「社会的アイデンティティ理論」があります。「社会的アイデンティティ理論(Social Identity Theory)」は、心理学者のヘンリ・タジフェルとジョン・ターナーによって提唱され、1970年代後半〜1980年代に体系化された理論です。
タジフェルとターナーが理論を打ち出す以前は、集団対立はなんらかの利権をめぐって起きるとする説が有効でした。一方彼らの実験では、何ら利害関係を生まない実験用に割り当てられたグループであっても、「身内びいき」を引き出すことが明らかにされました。ここから人は、自分が所属するグループや仲間に自己を投影し、それらが高い評価を受けると自身の自尊心も満たされるという性質を持っており、これが内集団バイアスを引き起こす要因となると考えられるようになりました。
もちろん、何らかの利害関係が働く場合もあります。自分のグループが他のグループと利害対立関係にある時、あるいはグループ内で仲間に良い行動をすれば報酬が得られる期待がある時には、内集団バイアスはより強まる傾向にあります。
▶︎参考:柿本敏克|社会的アイデンティティ研究における動機論的アプローチと認知論的アプローチ(1996)
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

04企業で内集団バイアスが強まることのリスク
企業内で内集団バイアスが強まると、公平性を欠いた人事評価や部門間の対立が生じやすくなります。さらに外部の意見を受け入れにくくなり、変化への対応力が低下するなど、組織全体の成長を阻害するリスクにつながります。
不当・偏った人事評価
内集団バイアスが働くと、同じ部署や同じ大学の出身といったシグナルをもとに、「内集団」にあたるメンバーに対して評価を甘くし、その他を過小評価するといった偏りが生まれる可能性があります。企業において、公正な評価は人事運用の基盤です。これが損なわれると、昇進や昇給の判断を誤るだけでなく、モチベーションの低下や信頼の崩壊を招く恐れがあります。
部門間の対立と生産性の低下
内集団バイアスが「部門」という単位で発生すると、社員同士が「自部門優先」の姿勢を取りがちになります。本来であれば目標を同じくする仲間のはずですが、目標の不整合やリソースの競合などが組み合わさると、場合によっては敵対意識やセクショナリズムの発生にもつながります。これは協働や情報共有の阻害、無駄な摩擦や意思決定の遅れを生みやすく、生産性の低下や創造的な協働の阻害要因にもなり得ます。
柔軟に変化対応できなくなる
内集団バイアスは「身内」に対する評価を甘くするため、集団外のアイデアや異なる視点を受け入れにくくすることがあります。自身に対する客観的視点を持てないと、結果として環境や市場・技術の変化に対する反応力が鈍り、革新性の低下や、競争力の低下につながります。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

05内集団バイアスを防ぐための対策
内集団バイアスは組織の公平性や生産性を損なう要因となり得ます。これを防ぐには、客観的な評価や多様な視点を取り入れる仕組みが重要です。ここでは評価基準や共通目標、外部の視点を活用した具体的な対策を紹介します。
客観的な評価基準の設定とクロスレビュー
組織運営をする上で、公正な評価は企業と従業員の信頼関係の基盤となるものです。ここに内集団バイアスが入らないようにするには、評価を「属する集団」ではなく成果や行動に基づかせることが基本です。評価基準を定量的かつ明確に設定し、属人的判断を排除することが求められます。
さらに、部門横断レビュー(クロスレビュー)を導入することも有効です。評価者が部門をまたいで集まり、共通の基準にもとづいて根拠を持ち寄りながら議論することで、評価に多様な視点を取り入れられます。こうした仕組みは、公平な判断とともに社員の納得感を高め、バイアスによる不公平や不満を未然に防ぐ効果があります。
共通のゴールを設定する
「内集団」は利害関係が特にない場合でも発生し得るものであり、そのサイズもさまざまです。それらを乗り越えて、組織としての一体感を強めるには、異なる部門やチーム間で共通のゴールを設定し、協力を促すことが重要です。共通の目標は「目標を共にする者」としての一体感を生み、相互理解を促進します。共通目標に向けた協働は、他部門への尊重を育み、偏見や排他性の低減につながります。
外部人材やアドバイザーの活用
同じ部署、職種といった内集団の中だけで物事を進めていると、どうしても考え方や視点が偏りがちになります。そこで客観性を保つのに有効なのが、外部人材やアドバイザーをプロジェクトや会議に参加させることです。新たな視点で率直な意見をもらうことは、自分たちが無意識に醸成していた「当たり前」の基準や価値観に気づくきっかけになり得ます。また、信頼できる第三者からのフィードバックは、公平な議論を促し、グループ思考や排他的な慣習の打破にも役立ちます。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
研修と自己啓発で学び続ける組織を作るスクーの資料をダウンロードする
■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

06内集団バイアス防止に役立つSchoo for Business
Schoo for Businessは、国内最大級である9,000本のコンテンツを用いて、ビジネスパーソンのスキルアップに役立つサービスを展開しています。豊富なコンテンツを組み合わせて研修を実施できるほか、従業員がすき間時間に学べるeラーニングとしても活用できます。サービスの強みは、学びやすさにこだわったオリジナル授業と、そのカバー範囲の広さです。内集団バイアスの防止にも関連する、組織づくりやコンプライアンス関連の授業も取り揃えています。
内集団バイアス防止におすすめの講座
内集団バイアス防止には、実務で活用できる知識とスキルを効率的に学べる講座の選定が重要です。ここでは、Schooが提供する講座の中で、おすすめの講座を紹介します。
アンコンシャス・バイアス - 無意識の偏見
本講座では、誰もが持つ「アンコンシャス・バイアス=無意識の偏見」について、その正体と具体的な対応策を学びます。人事領域で豊富な経験を持つパク スックチャ氏が講師となり、アンコンシャス・バイアスが組織や個人に与える影響、組織がこれに対応する目的、バイアスがどのように形成されるのか、そして個人がどう対応すべきかといった内容を深掘りします。この授業はすべての階層を対象としており、無意識の偏見を理解し、職場や日常生活における多様性(ダイバーシティ)推進とより良いコミュニケーションに貢献するための知識を習得できます。
-
株式会社アパショナータ 代表&コンサルタント
日本生まれ,韓国籍。 米国ペンシルバニア大学経済学部BA(学士)、シカゴ大学MBA(経営学修士)取得。 米国と日本で米国系企業に勤務後、日本に戻り米国系運輸企業に入社。同社にて日本・香港・シンガポール・中国など,太平洋地区での人事,スペシャリストおよび管理職研修企画・実施を手がける。 2000年に退社し、日本で最初にワークライフバランスを推進するコンサルタントとして独立。 同時に米国とアジアに精通したグローバルな経験を活かし、多様化が進む人材マネジメントと受容的環境構築(インクルージョン)へのコンサルティング、講演、研修、執筆、等に携わる。 近年ではダイバーシティ推進を阻むアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)及び「女性特有の自信のなさ」への意識と行動変革にも向け力を注ぐ。 著書: 「アンコンシャス・バイアス—無意識の偏見— とは何か」(ICE新書) 「アジアで稼ぐ『アジア人材』になれ」(朝日新聞出版) 「会社人間が会社をつぶす-ワークライフバランスの提案」(朝日選書)
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
ありがちな偏見のワナ -脱出ワークショップ-
この講座では、私たちが当たり前だと感じている「常識」や「無意識の偏見」が、組織や社会にどのような影響を与えるのかを学びます。そして、その根底にある「無意識のバイアス」とどのように向き合い、多様性を尊重する社会の実現に向けて、一人ひとりが具体的な行動に移せるようになるための方法について考察します。特に、座学に留まらず、ワークショップ形式を取り入れることで、偏見のワナから抜け出す方法を体験的に学ぶことができます。講師はIKIGAI AUTHENTIC代表取締役CEOの蓮見勇太先生で、ダイバーシティ&インクルージョンを活かした経営戦略の専門家として、無意識のバイアスや思い込みが引き起こす機会の不均等や成長機会の損失といった問題に対する意識変革と行動変容を促します。
-
IKIGAI AUTHENTIC 代表取締役CEO
外資系企業においてアジア太平洋地区・グローバル人事、タレントマネジメントおよびダイバーシティ&インクルージョン推進日本&韓国地域統括責任者を経験のち、現職。日本およびイギリスの2拠点にて活動する。世界の先行事例をもとに、ダイバーシティを活かした経営コンサルティング、講演・研修、経営者向けコーチング、女性活躍推進、働き方改革を他企業・団体と一緒に企画・実行する。早稲田大学大学院 経営管理修士(MBA)修了。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
「ニューロダイバーシティ」入門
この講座では、職場における多様な属性を持つメンバーそれぞれの個々の力を最大限に活かし、組織全体の力を高めるための「ダイバーシティマネジメント」について学びます。マネージャーやリーダー層が、多様性への理解を深め、実際のマネジメントにおいてどのような点に留意し、どうすれば効果的に関われるかを把握し、実践できるようになることを目標としています。講師は株式会社クオリア代表の荒金雅子先生で、女性の能力開発や組織活性化、ダイバーシティ&インクルージョン推進支援における豊富な経験に基づき、実践的な視点から多様性を受け入れ、全従業員が能力をフルに発揮できる組織構築の考え方を提供します。
-
一般社団法人子ども青少年育成支援協会 共同代表
臨床心理士、公認心理師。公的機関での心理相談員やスクールカウンセラーなど主に教育分野で勤務し、発達障害、聴覚障害、不登校など特別なニーズのある子どもたち、保護者の支援を行う。支援を行う中でニーズに対する支援の少なさを実感し、一般社団法人 子ども・青少年育成支援協会の設立に参画。あすはな先生事業の立ち上げに従事し、特別なニーズを持つ子どもたちや保護者への支援活動を多数実施。現在は発達障害サポーター’sスクールの運営を通じ、全国に正しい知識を持った理解のある支援者を増やすべく取り組んでいる。主な著書:『ニューロダイバシティの教科書』(金子書房)、『ラーニングダイバーシティの夜明け』(そだちの科学(日本評論社)にて連載)
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
多文化チームで働く職場デザイン
近年、人口減少・少子高齢化による人手不足などを背景に、多国籍社員とのチーム作りは重要なテーマとなっています。この講座では、職場におけるダイバーシティー&インクルージョン(D&I)を推進するための視点を学びます。具体的には、「日本人」「外国人」と区別せず、多様なバックグラウンドを持つメンバーの「違い」を価値として活かすチームづくりや職場づくりの視点を提供します。講師は株式会社An-Nahal代表の品川優先生で、高度外国人材を活用したD&I推進やグローバル人材育成の専門家です。現在多文化チームで働いている人、または将来的にその可能性があるすべての企業や組織で働く人が対象で、海外の人たちと働くことについて学び、自らの職場で考えを深めることを目指します。
-
株式会社An-Nahal 代表
2019年高度外国人材を切り口に企業のダイバーシティ&インクルージョン推進を人材・組織開発の面から支援する株式会社An-Nahalを設立。創業前はグローバル人材育成分野における制度・研修の設計、新規事業開発、フリーランスコンサルタントとして世界銀行や国際機関との教育関連プロジェクト、またNPOにて難民申請者の就労支援にも携わる。世界経済フォーラム(ダボス会議)任命のGlobal Shaperとして横浜を拠点に、多文化共生、教育など幅広いテーマでプロジェクトに取り組む。ボストン拠点のフィッシュファミリー財団Japanese Women’s Leadership Initiativeのフェロー。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
07まとめ
企業で内集団バイアスが強まると、不当な人事評価や部門間の対立を招き、結果として生産性低下や変化への対応力喪失のリスクがあります。このリスクを防ぐためには、客観的な評価基準の設定と部門横断的なクロスレビューの導入が重要です。また、異なる部門間での共通のゴールを設定し、外部人材やアドバイザーを活用することで、偏った視点を見直し、組織の公平性と競争力を高めることが可能となります。