組織課題とは?見つけ方から解決までの流れ、具体例や役立つフレームワークも紹介

組織課題とは、企業が目指す理想の姿と現状のギャップを埋めるために取り組むべき課題の総称です。人事評価、組織構造、企業文化、戦略、業務プロセスなどさまざまな領域が含まれます。組織のあり方は時代や環境の変化に応じて常に変わるため、組織の持続的な成長には、課題の特定と適切な解決が不可欠です。
- 01.組織課題とは
- 02.主な組織課題例
- 03.組織課題を見つける方法
- 04.組織課題を解決する流れ
- 05.組織課題を解決する際のポイント
- 06.組織課題の特定に役立つフレームワーク
- 07.Schooの講座が組織課題の解決をサポート
- 08.まとめ
01組織課題とは
組織課題とは、企業が目指す理想の姿(To-Be)と現状(As-Is)のギャップを踏まえ、その差を埋めるために取り組むべき事項の総称です。これには、企業の経営戦略の実現を妨げる要因となり得る、多岐にわたる領域が含まれます。具体的には、ガバナンス、人事評価、組織構造、企業文化、戦略の浸透、業務プロセス、人材育成などが挙げられます。これらは、従業員に認識されている「顕在課題」と、まだ表面化していない「潜在課題」に大別され、時代や会社を取り巻く環境によって常に変化します。また、それぞれの領域は相互に影響し合い、課題が複合的に絡み合うことも多いため、解決にあたっては構造(因果関係)の整理と本質の見極めが求められます。
組織に関するよくあるお悩み
上でも述べた通り、組織に関する課題にはさまざまな切り口が存在します。ここではその中でも顕在化しやすい、組織に関するよくあるお悩みについて、次の内容を紹介します。
- ・戦略と実行にギャップがある
- ・組織力が低い
- ・離職率が高い
- ・社員が疲弊している・休職が多い
- ・生産性が低い
- ・人手不足・採用できない
- ・人材が育たない
戦略と実行にギャップがある
組織に関するよくあるお悩みとして挙げられるのが、「戦略と実行のギャップ」です。これが発生する背景にはさまざまな要因が考えられ、例えば経営からのメッセージの出し方、マネジメントの品質、情報共有不足、部門間連携の不足などが挙げられます。こうした要因は単独で起こるというより、連鎖してギャップを拡大させることも少なくありません。 この状態に陥ると、個々の従業員の改善行動や努力の方向が噛み合わず、非効率や生産性の低下を招きかねません。経営戦略の実行は各部門・現場の活動によって具体化されるため、目標達成に直結する重要課題と言えるでしょう。
組織力が低い
組織力とは、共通の目的を達成するために、個々の力が「掛け算」となって機能する、組織としての総合的な実力のことです。各個人の実力が不足していては組織力は上がりませんが、反対に各個人の実力が十分であっても、チームワークが機能していなければ組織力は高まりません。一般に、社員を結びつける共通の目標が浸透していないことや、組織に対するエンゲージメントが低い状況は、組織力の低下を招きやすいです。
離職率が高い
昨今は特に国内において、少子高齢化の進行による人手不足への課題感が高まりつつあります。そのような背景から、入社した人材が組織に定着せず短期間で退職してしまうといった、「離職率の高さ」も代表的な悩みの一つとなります。慢性的な人手不足は事業推進の停滞、既存社員への負担増を招き、それがさらに他の社員の退職につながる可能性があります。特に優秀な人材の離職は組織にとって大きな損失です。
社員が疲弊している・休職が多い
従業員が心身の健康を損ねると、職場の疲弊や休職の増加が発生します。これらの要因の一つが職場でのストレスであり、仕事の責任や人間関係、過重な長時間労働などさまざまなケースがあります。従業員が休職すると、その業務に穴があくことになり、サービス品質の提供やカバーする他の職員の負荷の増大を招きます。また休職に至らずとも、無理をして高ストレス状態で働き続けることは、意思決定やコミュニケーションの質の低下につながり得ます。職場環境の改善やメンタルヘルス対策の推進、適切な勤怠管理を通じて、ストレスを軽減し、安心して働ける環境整備が重要です。
生産性が低い
生産性が低い組織の状況とは、業務プロセスが非効率であるために必要以上に時間がかかり、時間あたりの価値創出が伴わない状態を指します。生産性が低くなる要因はさまざまですが、例えば「会議のための会議」「形骸化した報告業務」など、客観的に意義が見出しにくい業務プロセスが多いことなどが挙げられます。また、部門間で情報の非対称性が大きく全体最適な意思決定ができないことや、ミスを許容しない文化で常に前例踏襲が求められることも、生産性を引き下げる可能性があります。
人手不足・採用できない
令和7年度の有効求人倍率は1.22倍となり、前年に比べて0.03ポイント下がったものの、引き続き「需要が供給を上回る」状態が続いています。またリクルートワークス研究所の「2026年3月卒業予定の大学・大学院生」を対象とした求人倍率の調査では、300人未満の中小企業で8.98倍と高い水準となっており、特に中小企業における人手不足感が強まっていると考えられます。
人手不足・採用できないという課題は、事業推進に必要なスキルや経験を持つ人材を確保できないことや、組織を支える次の世代を育成できないという状況につながります。継続的な事業の維持・成長には、それを推進する人材が不可欠であり、人手不足は経営にとっての大きな問題になり得ます。
参考:一般職業紹介状況(令和7年12月分及び令和7年分)|厚生労働省
第42回 ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)|リクルートワークス研究所
人材が育たない
企業において、期待通りに人材育成が進まないということも、顕在化しやすい問題の一つです。ここにはさまざまなパターンがありますが、例えば「新人の立ち上がりが遅く、期待する成果が出せない」ことや、「マネジメントを担う次世代リーダーの層が薄く、候補者が少ない」こと、「DX推進やAI活用といった組織変革を担うためのスキル獲得が遅れること」などが挙げられます。人材育成の課題は組織構造や仕組みの問題で発生することも多く、経営視点や組織観点での対策が求められます。
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02主な組織課題例
組織課題には、人事戦略や評価制度の見直し、採用・育成強化、エンゲージメント向上、メンタルヘルス対策などがあり、これらに取り組むことで従業員の定着や生産性向上、組織力強化が期待できます。
人事戦略の策定・見直し
事業を実際に推進するのは人である以上、経営戦略の実現には、それに連動する人事戦略の策定・実行が重要です。人事戦略には、採用・配置・育成・評価報酬・離職/定着といったさまざまな領域が含まれます。人事戦略を策定することで、一貫性がある組織施策を展開することが可能になります。また、人事戦略がすでにある場合でも、それが現状に合わず問題を引き起こしていると考えられる場合には、見直しも必要です。
組織力・エンゲージメント強化
組織力や従業員エンゲージメントの強化は、従業員と企業の結びつきや、従業員同士の連携を高めるうえで有効な打ち手です。特に、中堅社員の離職が目立つとき、自発的貢献の低下など「静かな退職」が疑われる兆候が見られるとき、部門間連携がうまく機能していないとき、経営方針を大きく変更するときなどに、優先度が高まります。
組織力やエンゲージメントを高めるには、パーパス/ミッション/ビジョンなど共通目的を明確にし、日々の業務へ落とし込んで浸透させることが重要です。加えて、コミュニケーションを促進する仕組み(情報共有のルール、意思決定の透明性、会議設計、対話の機会づくりなど)を整えることで、協力体制と一体感が育まれ、組織成果の向上につながります。
リテンション施策の推進
リテンション施策とは、従業員の定着を促し、とりわけ企業が想定しない早期離職(望まない離職)を抑制する取り組みです。早期離職は採用・育成コストの増大や現場の生産性低下につながり得るため、採用段階でのミスマッチ低減(採用要件・選考・オンボーディングの見直し等)と併せて取り組むことが有効です。具体的には、働きやすい職場環境の整備(多様な働き方の推進など)や、キャリア開発支援(定期面談での希望確認、研修等を通じた自己実現支援)などに取り組みます。また、公正な評価制度の見直しや、会社の理念・価値観を共有するインナーブランディングも、従業員の帰属意識やモチベーションを高め、長期的な定着を促進します。
メンタルヘルス対策
従業員の休職が増えている、疲弊している従業員が多い、現場から環境改善の訴えが増えている――こうした兆候が見られる場合、職場のメンタルヘルス対策の優先度は高まります。メンタルヘルス対策は安全配慮の観点からも重要であり、未然防止から復職支援までを含む体系的な取組が求められます。
具体策としては、(常時50人以上の事業場では義務となる)ストレスチェックの実施や、産業医の選任・活用による専門的サポートが挙げられます。さらに、長時間労働の是正と適切な勤怠管理は疲弊やストレスの軽減につながるため、不必要な残業を前提にしない運用が重要です。あわせて、風通しの良い職場文化を醸成することで、問題の早期把握や対話が促され、メンタル不調の未然防止にもつながります。
人事・評価制度見直し
人事・評価制度は、従業員の評価と処遇を左右するため、従業員満足度と定着率向上に影響しやすい領域です。まず重要なのは、公正な評価を行うための、客観的で具体的な基準の策定です。ここでは経営戦略を踏まえ、企業としてどんな人材を評価したいのかを具体的に言語化します。また、従業員の行動の質を高めたいときには、高い業績に結びつく行動特性を示す「コンピテンシーモデル」を策定し、行動評価を重視します。さらに、目標管理制度を通じて、経営戦略と現場目標を接続させることで、経営戦略の現場浸透が図られます。
人材採用の強化
人材採用の強化は、人手不足を解消し、経営戦略を実現する上で重要です。採用の強化とは、ただ求人票を出すだけではなく、採用者が自社を見つけ、入社を決意するまでの一連の候補者体験を戦略的に作り出すことです。そのためには、どんな人材を採用したいのかを、職種だけではなく、スタンスやマインドも含めて具体的に言語化することが必要です。また、優秀な人材であるほど他社との競合が激しくなるため、「その人材がなぜ自社を選ぶのか」といった差別化要素も検討する必要があります。これらの設計を土台に、候補者との接点を増やし、一貫したメッセージを伝えることで、自社にフィットする人材の確保を目指します。
人材育成の強化
人材育成は、中長期的な組織の成長を支える観点で重要な取り組みです。足元では上手く経営ができていたとしても、将来的に人手不足が見込まれる領域はないか、スキル獲得は環境変化に合わせてできているかなどを点検し、戦略的に設計する必要があります。
人材育成を強化するための最初のステップは、課題の明確化です。足りないのは専門技術を持った人材なのか、将来的に管理職を担うリーダーなのかによっても、アプローチは異なります。課題と目標を明確にしたうえで、それを属人的ではなく、組織の仕組みとして実現できるように制度を検討します。また、それを組織に浸透させ、活きた仕組みにするための「運用定着」も重要です。
03組織課題を見つける方法
組織課題を見つけるには、従業員アンケートや面談、組織診断ツール、離職者インタビュー、ピープルアナリティクスなどを活用し、定量・定性両面から課題を可視化することが重要です。ここでは、組織課題を見つける方法について、具体的に解説していきます。
従業員サーベイ・アンケート
定期的にサーベイやアンケートを実施して「組織の健康診断」をすることは、各従業員が認識する課題や現場の声を定量的に把握する有効な方法です。サーベイにもさまざまな種類がありますが、組織への貢献意欲を測る「エンゲージメントサーベイ」、メンタルヘルスやモチベーションの状況を、短い設問と高頻度の調査で可視化する「パルスサーベイ」、福利厚生や職場環境などへの満足度を測る「従業員満足度調査」などが代表的です。匿名性を確保し、自由記載欄を設けることで、上層部には見えにくい潜在的な課題や不満も引き出せます。
社内での聞き取り・観察
従業員一人ひとりとの面談は、アンケートよりも詳細で具体的な課題やキャリアの方向性、悩み、要望などを質的に聞き取る点で有効です。また、現場での行動や業務プロセスを直接観察することも、見えにくい課題や業務の属人化を発見する手掛かりとなります。組織課題を見出すための面談は、例えば人事部が従業員に対して行うケース、経営層が直接現場の従業員に対して行うケース、上司が部下に対して行うケースなど色々なパターンがあります。組み合わせによって抽出される課題のタイプは変わるため、背景となる問題意識によって使い分けることが重要です。
組織診断ツール
組織診断ツールとは、組織の状態を数値やグラフで可視化するツールのことです。上でご紹介した、サーベイやアンケートは組織診断ツールを通じて実施されることも多いです。また、個人の特性や業務との相性を測るアセスメント系ツールや、組織内の関係性や従業員間のつながりを測るネットワーク系のツールも存在します。さまざまな種類があるので、解決したい課題や分析したい対象によって、使い分けが求められます。また、データの取得には従業員の協力が必要なものも多いため、一方的な導入ではなく、従業員への説明と理解を求めることも大切です。
離職者インタビュー
離職者インタビューは、退職する従業員からヒアリングを行うことで、組織の課題や不満点を引き出す重要な方法です。高い離職率は人材不足や採用コスト増大に繋がるため、退職理由を深く探ることで、職場環境の不備、人間関係、評価制度への不満など、潜在的な問題を特定できます。これは、今後の従業員定着施策や組織改善に不可欠な貴重な情報源となります。
ピープルアナリティクス
ピープルアナリティクスとは、一言で言えば「データに基づいた人事」のことです。社員に関するデータや従業員サーベイで取得したデータを定量的に分析することで、組織課題を特定します。例えばコンピテンシー診断(特性診断)などのツールを活用し、人材の資質を数値で客観的に把握することで、個々の従業員の能力と組織が必要とする能力とのスキルギャップを明確にするといった取り組みがあります。これにより、データに基づいた客観的な課題検討と最適な人材戦略策定が可能になります。
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04組織課題を解決する流れ
組織課題を解決するには、現状把握から課題抽出、優先順位付け、施策立案・実行、効果検証までの流れを踏むことが重要です。段階的に進めることで、課題の本質を捉えつつ持続的な改善と成果向上が実現できます。
組織の現状把握(事実の洗い出し)
組織課題解決の第一歩は、自社の「現状」を的確に把握することです。前提として、組織に課題感を感じる背景には何らかの理由があるはずです。例えば「売上の未達が続いている」「サービスの利用が増えない」など、目標数値とのギャップや停滞が起点になることが多いでしょう。そこでまずは、既存の数字(例:売上の構成比、解約率など)からどこに異常がありそうかを確認します。そのうえで、その要素に関連する現場の状況や業務のオペレーションを、観察やアンケート、面談などの手段を用いて把握します。
課題の洗い出し
現状を把握したら、次は表面的な原因だけでなく、多面的な論点を洗い出します。例えば「離職率が高い」という問題一つをとっても、マネジメントのスキル、キャリア展望の有無、職場の人間関係、採用時のミスマッチなど、さまざまな要因が複合的に影響している可能性があります。これらを紐解き、最も本質的だと考えられる箇所にアプローチしなければ、問題が繰り返されてしまう可能性もあります。
課題の洗い出しには、定量的なデータ(例:部門別の2年以内離職率、エンゲージメントサーベイの結果など)に加え、社員に対するヒアリング等の定性的な情報も用いて、傾向をつかみます。そして、それぞれの問題同士の関係性を整理し、根本の要因を突き止め、課題を定義します。
優先度を付ける
洗い出した課題は全て同時に解決できないため、優先順位を整理しながら取り組む必要があります。Schoo for Businessの授業『ホンネから始める 人事の課題整理』では、この優先度を決める際に「影響度」と「難易度」の2軸で整理する手法を紹介しています。難易度は、必要な予算の大きい課題、一人では完結せず多くの人を巻き込む必要がある課題で高くなります。影響度は問題の影響範囲であり、法令違反や全社員に関わるものは大きく、個人の問題であれば小さくなります。
授業に登壇する深田 浩嗣先生(HRプランニング研究所代表)によると、最も解決が優先されるのは、「影響度」が大きい課題です。その中でも特に「難易度」が低いものは、部署内で打ち合わせのうえ、すぐに着手して数か月以内の解決を目指します。また「影響度が大きく、難易度が高い」課題も、上司など必要な関係者を巻き込み、すぐに着手判断します。特に労務問題などのコンプライアンス関連の課題は、緊急度高く対応します。
「影響度が小さく難易度が低い課題」は、例えば個別の社員相談などが該当します。自分で解決するか、専門家へつなぐなどで解決を図ります。そして「影響度が小さく難易度が高い課題」は一朝一夕では変えられないものが当てはまるため、長期的なテーマとして少しずつ取り組みます。
施策の立案・実行
優先度の高い課題が決まったら、具体的な解決策を立案し実行します。この際、「いつ、だれが、何を、どうするのか」といった行動計画を明確にし、関係者全員が目的を理解し、協力し合えるような体制を構築することが重要です。複数の施策を一度に実行すると因果関係が分かりづらく、効果測定が困難になりがちです。従業員の負担も増えるため、取り組む課題は数を絞って集中して取り組むことが賢明です。
効果検証と改善
組織課題は施策を実行してすぐに解決するものではなく、運用と定着を経て時間とともに解決される性質のものが多いです。そのため対策を実施したら、その効果を定期的に評価・検証し、改善を繰り返すことが重要です。これは「仮説・実行・検証」のPDCAサイクルと重なります。一度の実行で完璧な解決は難しく、組織も常に変化するため、成功や失敗の要因を振り返り、新たな仮説を立てて実践力を高めることが、持続的な組織成長につながります。
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05組織課題を解決する際のポイント
組織課題を効果的に解決するには、スモールステップで取り組む、マネジメント層を巻き込む、検証可能な粒度で課題を設定する、経営層が主体的にコミットするなど、計画的かつ段階的なアプローチが重要です。
スモールステップではじめる
人事領域の課題は複雑であり、いきなり大規模な変更に取り組むと予期せぬ悪影響を生む可能性があります。そのため、まずは実行が比較的容易で効果が得やすい課題から着手し、成功実績を積み重ねることが有効です。これにより、従業員の意識も前向きに変わり、組織全体で変革の機運を高められる可能性があります。
マネジメント層を巻き込む
組織課題の解決は、人事部門単独では困難です。現場と経営層の結節点であるマネジメント層を巻き込むことが極めて重要です。経営トップの戦略や方針が現場に浸透するには、管理職の十分な理解と実践力が必要であり、その意識改革と育成支援が不可欠です。マネジメント層は部下の意見を引き出し、上層部の意思を共有するカギとなり、組織課題解決の成功を左右します。
課題は検証が可能な粒度で設定する
課題に取り組んだ後には、継続的なモニタリングと改善行動を行う必要があります。それを踏まえて、課題は検証が可能な形で設定することが重要です。例えば、課題を「マネージャーのスキルアップ」などと設定すると、範囲が広すぎて何がどうなれば解決に至ったのかを判断しづらくなります。これを検証可能なレベルに分解するには、現状と理想の状態を言語化する必要があります。
例えば、マネージャーと部下の信頼関係構築をテーマにするのであれば、エンゲージメントサーベイの「上司を信頼している」関連の設問スコアで基準を作ることや、1on1での部下の発言割合を50%以上にする、といったことが考えられます。
経営層がコミットする
組織課題の解決においては、人事や現場だけで進めるのではなく、経営トップが強いコミットメントを示すことが重要です。組織課題は経営戦略の実現を阻む要因になり得ます。経営トップが課題を適切に把握し、解決に向けた方針と優先順位を全社に明確に発信することで、従業員も当事者意識をもって課題に向き合いやすくなります。その結果、協力体制が整い、組織全体のモチベーションや一体感の向上にもつながります。経営層のリーダーシップは、変革を定着させ、持続的な組織成長を実現するうえで極めて重要な役割を果たします。
06組織課題の特定に役立つフレームワーク
組織課題の特定には、MECEやロジックツリーといった思考のフレームワークが有効です。ここからは、Schoo講義「課題設定力の磨き方」を参考にそれぞれのフレームワークについて解説していきます。
複雑化する業務環境で成果を出すには、解決策よりもまず課題の本質を正しく見極めることが重要です。本講座は、生産性やアウトプットの質を高めたいビジネスパーソンにおすすめで、正解のない時代に必要な「課題設定力」を体系的に学べます。精度高く課題を設定し、施策の成功確度を上げるための具体的なノウハウを習得できる内容です。
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株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長
大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの変革プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成功しない」との思いから、専門を人材育成分野に移し、人材開発のプロジェクトをリード。 2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティング&SI事業の人材開発部門リーダーとして育成プログラムを設計導入。ベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた。2013年に独立し執筆・講演活動を開始。講師として、大前研一ビジネス・ブレークスルー、日本能率協会、日経BPセミナー、大手銀行系研修会社などに多数のプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。 著書は「一流の学び方」など現在18冊を出版。東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなど連載多数。
MECE
MECE(ミーシー)とは、「漏れなくダブりなく」という意味の言葉であり、ロジカルシンキングをするうえでの基本的な考え方です。そして組織課題を解決するためには、明確な正解がない中で仮説を立て、検証しながら物事を前に進める、「仮説思考」が重要になります。授業に登壇する清水先生によると、仮説思考はロジカルシンキングの基本的なアプローチに位置づけられます。MECEは、課題を漏れなく・重複なく洗い出すことで、本質的な課題の見落としや、同じ課題に対して二重で対策するといった非効率の防止に役立ちます。
▶︎関連記事:MECEとは?ロジカルシンキングの基本となる思考法や代表的なフレームワークについて解説
ロジックツリー
ロジックツリーとは、問題や課題を要素に分解し、ツリー状に整理する手法です。この要素分解には、上で紹介したMECE(漏れなくダブりなく)の考え方を用います。またロジックツリーには大きく分けて、原因を追求する「Whyツリー」、どうすれば課題解決ができるかを分解する「Howツリー」、何で構成されているかを確認する「Whatツリー」があります。
上の画像は、授業において「サービスのリピートを増やすために、どんな施策が考えられるか」をロジックツリー(Howツリー)で整理するという内容の演習のものです。ここで先生は、施策を4P(Price,Promotion,Product,Place)のフレームワークを用いて分解しています。このようにロジックツリーには、構造を視覚的に整理し、相互の関係性や真因を特定することに役立ちます。
空・雨・傘の仮説思考
空・雨・傘の仮説思考は、物事を「事実」「解釈」「結論」をセットにして考える、意思決定や問題解決のフレームワークです。授業では、大手コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーでよく用いられる思考法だと紹介されています。
日常的なシーンとして、外出時に空を見ると雨雲が多い場合、これから雨が降ることを予想して傘を持っていくことはよくあります。このとき、空に雲が多いことは「事実」であり、雨が降りそうだと考えるのは「解釈」、傘を持っていくのは「結論」です。
これをビジネスシーンに置き換えると、例えば「若手の離職率が上がっている」は事実(空)で、「オンボーディングの品質が低い」は解釈(雨)で、「新人受け入れに関する研修を実施する」は結論(傘)になります。この3点を漏れなくセットで考えることは、事実と意見を切り分け、施策の成功確率を高めることに役立ちます。
ペイオフマトリクス
ペイオフマトリクスは、洗い出した課題の優先度を決定する際に有効なフレームワークです。縦軸に「実現難易度」、横軸に「期待される効果」を設定し、施策をプロットします。これにより、「影響・効果の大きさ」と「実行の難易度」を視覚的に把握し、優先順位をつけやすくなります。例えば、効果は大きく難易度が低い「クイックウィン」と呼ばれる施策は、早期に着手して成功実績を積み、その勢いで右上にある「重点施策」へと取り組む流れが推奨されます。
07Schooの講座が組織課題の解決をサポート
Schoo for Businessでは、約9,000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。階層別研修やDX研修なども実施でき、さらにアセスメント機能も標準で備わっています。また、自律学習の支援ツールとしても活用いただいており、「主体的に学び、成長する人材」の育成を目的にしてのご導入事例も多数です。
組織課題の解決におすすめの講座
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HRプランニング研究所 代表
2003年大学院修了後、外資系コンサルティングファームでSEとして勤務。その後、一貫して複数の大手上場企業で人事(HRBP)担当。2015年に「HRプランニング研究所」を立ち上げ、人事コンサルタントとして、企業を対象にメンタルヘルス施策やHRIS選定支援を行う。 Schooの人事担当者のゼミやコミュニティに参加し、講師・メンター等を歴任。 2023年から、厚生労働省(厚生労働科学研究 政策科学推進研究事業)研修効果測定委員(産業保健法学・安全衛生法学担当)として、人事専門家の知見を活かしている。
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修士(教授システム学)/インストラクショナルデザイナー。営業、人事企画、組織開発等、人と組織の成長に関わる仕事を経て現職。ラーニングプロセスコンサルタントととしてビジネスインストラクショナルデザインを軸とした企業内教育のコンサルティングやトレーニングの運営を行っている。皆様が目指す育成像をお伺いした上で、自ら学び、行動を変えていく人と、人を支える組織の育成をご支援します!
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株式会社アンド・クリエイト 代表取締役社長
大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社。企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、多くの変革プロジェクトをリード。「人が変わらなければ変革は成功しない」との思いから、専門を人材育成分野に移し、人材開発のプロジェクトをリード。 2005年に当時の社長から命を受け、コンサルティング&SI事業の人材開発部門リーダーとして育成プログラムを設計導入。ベストプラクティスとして多くのメディアに取り上げられた。2013年に独立し執筆・講演活動を開始。講師として、大前研一ビジネス・ブレークスルー、日本能率協会、日経BPセミナー、大手銀行系研修会社などに多数のプログラムを提供し、高い集客と満足度を得ている。 著書は「一流の学び方」など現在18冊を出版。東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなど連載多数。
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08まとめ
組織課題の特定と解決は、企業の持続的成長に直結する重要な取り組みです。現状把握から課題抽出、優先順位付け、施策実行、効果検証までの一連のプロセスを段階的に進めることで、課題の本質に対応できます。従業員サーベイや面談、組織診断ツール、ピープルアナリティクスなどを活用し、データに基づいた客観的な課題特定を行うことも有効です。また、MECEやロジックツリー、仮説思考、ペイオフマトリクスなどのフレームワークを活用することで、効率的かつ実践的な解決策の立案が可能になります。本記事で解説した「計画的なアプローチ」と「経営層・マネジメント層のコミット」を通じて、組織全体の力を最大化し、持続的な成長につなげましょう。