ゴールデンサークルとは?効果と組織運営での活用を徹底解説

ゴールデンサークルは、リーダーシップ論で知られるサイモン・シネック(Simon Sinek)氏が提唱した、人の心を動かし、行動を促すための思考・伝達フレームです。話の内容を組み立てる際、「なぜ」から語り始めることで聞き手に共感を生み、行動を促しやすいとされます。本記事では、ゴールデンサークルの意味や効果、活用方法についてご紹介します。
01ゴールデンサークルとは
ゴールデンサークルとは、人の共感を呼び、行動を促すための思考・伝達フレームワークのことです。人や組織が「なぜそれをするのか(Why)」を起点に、続いて「どう実現するのか(How)」「何を提供するのか(What)」へと整理して伝える点に特徴があります。提唱者のサイモン・シネック氏はTED登壇の中で、人は「何をするか」そのものよりも、その背景にある「なぜ」に動かされる、という趣旨を述べています。
またSchoo for Businessの授業『弱みをさらけ出して味方にする「共感トーク」のつくり方』に登壇する三輪開人先生は、ゴールデンサークルの主旨を「何をするかよりも、なぜするのかを丁寧に説明していこう。できることならそこに熱い思いを込めて話そう」と解説しています。
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NPO法人e-Education代表
1986年生まれ。早稲田大学在学中に税所篤快と共にe-Educationの前身を設立。映像教育を用いて、バングラデシュの貧しい高校生の大学受験を支援。2013年10月にJICAを退職、14年7月にe-Educationの代表理事へ就任。これまでに途上国14カ国3万人の中高生に支援を届けてきた。2016年、「Forbes 30 under 30 in Asia」選出。著書『100%共感プレゼン』(2020年、ダイヤモンド社)
▶︎参考:Simon Sinek: How great leaders inspire action | TED Talk
従来の伝え方との違いは?
従来の伝え方との違いは、思考や伝達の順序にあります。多くの企業や組織では、まず製品やサービスの内容・機能である「何を(WHAT)」から説明し、次に「どのように(HOW)」へ進み、最後に「なぜ(WHY)」に触れる構成になりがちです。これに対し、ゴールデンサークルでは、企業や組織の信念や目的である「なぜ(WHY)」から語り始め、続いてHow、Whatへと展開します。
この違いによって、受け手の受け止め方も変わります。What中心の説明は、内容や機能を論理的に伝えるのに適していますが、Whyが十分に語られないと、相手の共感や納得につながりにくい場合があります。一方、ゴールデンサークルは「なぜ」から伝えることで、企業や組織の目的への共感を促しやすくなります。
ゴールデンサークル理論を活用した伝え方の例
シネック氏はTEDトーク(2009年)の中で、Appleを代表的な事例として取り上げています。同氏の説明によれば、Appleの伝え方は次のような順序で構成されています。
- ・Why:自分たちは現状に挑戦し、異なる考え方に価値があると信じています。
- ・How:私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、シンプルに操作することができ、ユーザーフレンドリーな製品を作ることです。
- ・What:こうして、素晴らしいコンピューターが出来上がりました。
このような順序でストーリーを展開することで、ユーザーはAppleの製品に込められた思想を理解しやすくなります。また、こうした価値観への共感は、競合他社との差別化につながるだけでなく、Appleというブランドへの継続的な支持を生みやすくすると考えられます。
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02なぜゴールデンサークルは効果的なのか
ゴールデンサークルが効果的とされている理由には、主に以下の3つがあります。
- ・脳の構造と一致している
- ・「キャズム」を超える推進力になる
- ・「目的の共通化」ができる
脳の構造と一致している
シネック氏は、ゴールデンサークルが効果的である理由の一つとして、「脳の構造と一致していること」を挙げています。同氏の説明によれば、ゴールデンサークルの外側である「WHAT(何を)」「HOW(どうやって)」は、理性や論理を司る大脳新皮質に対応し、機能やスペックを処理する領域と関連します。一方、中心の「WHY(なぜ)」は、感情や直感、意思決定を司る大脳辺縁系に働きかけるとされます。
一方近年の神経科学においては、脳の意思決定プロセスは複雑であり、感情と理性が一つの領域に完全に分離されるわけではないと考えられています。そのため、ゴールデンサークルの実践的な有用性は認めつつも、その生物学的根拠については慎重に捉えておくのが適切でしょう。
「キャズム」を超える推進力になる
ゴールデンサークルは、新しい商品やサービスが社会に広がる過程を説明するイノベーター理論やキャズム理論と、補完的に捉えることができます。イノベーター理論とは、新しい製品やサービスが市場に浸透する段階を解説した理論で、消費者を「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」の5つに分類します。また、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には深い溝(キャズム)があるとするのが、キャズム理論です。
SNSなどが発達した現代において、熱心なファンによる拡散がきっかけで製品やサービスが広く知れ渡ることは珍しくありません。ゴールデンサークルで「Why(信念)」を語ることは、製品やサービスの背景にある価値観に共感する層、とりわけイノベーターやアーリーアダプターに響く可能性があります。その共感が、初期の支持や情報発信を促し、普及のきっかけになることも考えられるでしょう。
「目的の共通化」ができる
取り組みの背景にある信念や目的をまず掲げることには、共感を通じて周囲の人を巻き込み、推進力を高める要因になり得ます。例えば分かりやすいのが、企業のミッションやパーパスです。なぜ企業が存在するのかを明示し、従業員がそれを内面化することで、従業員は自分の仕事にどんな意味や意義があるのかを解釈できるようになります。またこれは、従業員同士の連帯感や、主体性の向上にもつながる可能性があります。
共通の目的は、組織運営だけでなく、マーケティングにおいても効果を発揮します。製品の背景にある「Why」を顧客と共有することは、顧客がその製品を選ぶ強力な動機になり得るのです。
03ゴールデンサークルを使った価値定義のフロー
ゴールデンサークルを土台とした、組織の「Why」を定義するフローをご紹介します。これは、豪州の研究者であるKarla Straker氏とErez Nusem氏が提案した、「Value Definition Tool」と名付けられたフレームワークです。このツールは、組織の視点と顧客の視点それぞれで6つの質問に順に答えることで「組織のWhy」を言語化できるように設計されています。
質問は、まず「アウトサイド・イン」(What → How → Why)の順で現状を把握し(質問1~3)、次に「インサイド・アウト」(Why → How → What)の順で理想や提供価値を問います(質問4~6)。このフローにより、組織の意図と顧客認識のずれや、目的と提供価値の整合性を可視化し、戦略やイノベーションを検討する出発点とすることができます。
アウトサイド・インのフロー
「アウトサイド・イン」(Outside-in)とは、「何を(WHAT)」「どのように(HOW)」「なぜ(WHY)」という外側から内側への順番で、組織の価値提案の現状を分析するアプローチです。「組織が何をしているか」、それを「どのように行っているか」、そして「なぜこれらの活動を行っているか」を整理します。同時に、顧客の視点からも同じ問いを立て、顧客が組織の活動や目的をどのように認識しているかを把握します。
What:組織は何をしているか
アウトサイド・インのフローにおける「WHAT」は、組織が提供する中核的なサービスや製品を問う質問です。顧客視点では、「顧客は組織が何をしていると認識しているか」を問います。もしここで顧客視点の回答と組織視点の回答に不一致がある場合は、サービス内容や提供価値、組織の意図が顧客に十分伝わっていない可能性があります。
How:組織は主活動をどう行っているか?
アウトサイド・インのフローにおける「HOW」は、「WHAT」で定義された中核的な活動を、組織がどのように実行しているかを詳述するものです。顧客視点では、「顧客は組織がどのように主要な活動を行っていると考えているか」を問います。
Why:なぜ組織はこれらの活動を行うのか
アウトサイド・インのフローにおける「WHY」は、組織の目的や活動の背景にある考え方を整理するものです。顧客視点では、「顧客は、なぜこれらの活動が行われていると考えているか」を捉えます。
インサイド・アウトのフロー
「インサイド・アウト」(Inside-out)とは、「なぜ(WHY)」「どのように(HOW)」「何を(WHAT)」という、内側から外側への順序で組織の理想的な価値提案を定義するアプローチです。先に実施するアウトサイド・インで把握した現状と比較することで、組織の意図と顧客の認識のズレ(ギャップ)を明らかにし、将来の戦略策定やイノベーションの出発点とすることを目指します。
Why:なぜ組織は価値を提供するのか
「インサイド・アウト」のフローにおける「WHY」は、組織の存在意義や目的を明確にする質問です。これに対応する顧客視点の問いでは、「なぜ顧客は競合他社よりも組織に価値を見出すのか」を問います。アウトサイド・インのアプローチで見出された「WHY」から一歩深まった内容を定義することで、組織の理想と顧客の視点のズレを明確にします。
How:組織はどのように価値を提供しているか?
インサイド・アウトのフローにおける「HOW」は、前のステップで設定した組織の目的を実現するための方法や行動原則を定義する質問です。顧客視点では、「組織はどのように顧客に価値を伝えているか」を問います。このインサイド・アウトのHOWは、アウトサイド・インのHOWで示された現状のやり方から、より価値観を反映した表現に転換することを目指します。
What:組織はどのような価値を提供しているか?
インサイド・アウトのフローにおける「WHAT」は、「なぜ(WHY)」という目的と「どのように(HOW)」という実現方法に基づき、組織が顧客に提供する具体的な価値を定義します。顧客視点では、「顧客に提供する価値を強化するために何ができるか」を問います。
04組織運営におけるゴールデンサークルの使い所
組織運営におけるゴールデンサークルの使い所には、主に以下の3つがあります。
- ・人材採用
- ・人材育成
- ・エンゲージメント向上
人材採用
ゴールデンサークル理論を人材採用に活用する主なメリットは、企業の根本的な「なぜ(WHY)」、すなわち信念や目的(パーパス/ミッション・ビジョン)を核として訴えかけることで、その信念に共鳴する人材を引きつけやすくなる点です。採用活動において「WHY」から伝えることは、単に業務内容(WHAT)や条件(HOW)だけを重視する人材ではなく、同じ目的や価値観を共有できる人材からの共感を引き出しやすくなると考えられます。
たとえば採用ページや求人票で、「私たちが取り組んでいること」の前に「私たちがなぜこの事業を行っているのか」を明示することや、面接においてミッションへの共感度をチェック項目として共通化することなどが考えられます。
人材育成
ゴールデンサークル理論は、人材育成にも活用できます。例えば、メンバーに仕事をお願いする際にも、「何をすべきか(WHAT)」や「どうすべきか(HOW)」ではなく、「なぜやるのか(WHY)」(目的、意味、信念)から伝えることを意識します。
「なぜ(WHY)」から説明を始めると、目的がはっきりすることで創意工夫の余地が生まれ、結果として研修やOJTの効果が高まる可能性があります。例えば、上司が「今回の提案はお客様にとっても、うちの会社にとっても新しい挑戦となる」(WHY)から説明することで、部下は仕事の目的と意味を理解し、説得力を意識した提案書を作成するようになります。
エンゲージメント向上
ゴールデンサークル理論を組織運営に活用することで、「なぜやるのか(WHY)」という目的や意義が組織に浸透しやすくなり、エンゲージメント向上につながる可能性があります。具体的な施策としては、組織のミッションやビジョン、理念といった大きな目標を組織に浸透させることなどが挙げられます。目の前の業務の先に、組織として共通化された目標が見えることは、従業員のやりがいの向上やチームワークの強化につながる要素になり得ます。
「研修をしてもその場限り」「社員が受け身で学ばない」を解決!
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など

05企業価値の言語化に役立つSchoo for Business
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
企業価値の言語化に役立つ講座
ここでは、Schoo for Businessの講座から、企業価値の言語化に役立つ講座を紹介します。
ビジョンマネジメント
この授業では管理職の方を対象としてビジョンマネジメントについて学びます。ビジョンとは何か?という基本的な内容から具体的なビジョン実現のためのアプローチやそのアプローチを現場に浸透させるための方法など、より実践的な内容までを解説いただいています。
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パーソルキャリア株式会社 戦略人事統括部エグゼクティブマネジャー
2005年株式会社インテリジェンス入社。人材紹介事業、転職メディア事業において法人営業及びマネジメントを務め、一貫してホワイトカラー領域の採用支援、転職支援に従事。2013年にウェイマネジメントをミッションとした新規部署の立ち上げを行い、カルチャー変革の仕組みづくりと推進を担当。現在のテーマは、人の主体性と成長意欲を引き出し、湧き立たせる会社づくり。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
ビジネスに役立つインサイトの見つけ方
この授業は、「インサイトとは?」という基本に立ち返り、インサイトの発見方法から、どのようにプロポジション(顧客提供価値)につなげていくかまで学ぶことができます。人の深層心理を掘り下げるための手法・ツールや、インサイトからアウトプットを導き出すためのフレームワークを活用しながら、具体的な演習テーマに取り組んでいきます。
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株式会社インサイト 代表取締役
大日本印刷を経て、外資系広告代理店 J.ウォルター・トンプソン(現ワンダーマン・トンプソン)戦略プランニング局 執行役員を務める。ハーゲンダッツのブランド育成などに貢献、AME(マーケティング効果賞)ゴールドなど受賞多数。著書「インサイト」(ダイヤモンド社)で日本に初めてインサイトの考え方を体系的に紹介。2010年インサイト社を創設。グロービス経営大学院MBA講師。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
「利他」はビジネスになぜ必要か
気候変動危機や格差社会が社会的課題となり、利己的な利益追求の限界が見えつつあります。本コースは、ソーシャルビジネスや問題解決のための行動に、「利他」の考えはどのように活きるのかを学びます。
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株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役副社長
2007年、株式会社ボーダレス・ジャパンを同社社長の田口一成と共に創業。同社は「社会起業家のプラットフォーム」として、社会起業家が集い、ノウハウ、資金等の関係資産を互いに共有し、社会ソリューションを世界中に拡げ、より大きな社会インパクトを共創している。2022年1月時点で15ヵ国45事業を展開。
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06まとめ
ゴールデンサークルは、「なぜ(WHY)→どうやって(HOW)→何を(WHAT)」の順序で伝える、人々の共感を呼び行動を促すためのフレームワークです。「WHAT」から入る思考・伝達方法と異なり、「WHY」から語り始めることで、共感を生み、支援や購買といった行動につなげられる可能性が高まります。組織運営においては、この「WHY」を明確にすることで、目的の共通化を図り、組織の信念に共鳴する人材の採用・育成や、エンゲージメント向上に活用できます。さらに Value Definition Tool を用いることで、アウトサイド・インによる現状把握と、インサイド・アウトによる理想の定義を通じて、組織の目的と顧客認識のギャップを明確化し、戦略やイノベーションの出発点として活用できます。


