企業研修のプログラム作成手順を解説|各階層の具体例つき

グローバル化やテクノロジーの発展など、様々な外部要因により人々の働き方は変化しています。そういった中で、変化に対応していくために社員の能力開発は必要不可欠なものとなっています。 より効果の高い方法で人材育成を行うことで、企業全体の業績にプラスの影響を与えることができます。 そこでこの記事では、企業の研修において適切な研修プログラムの作成方法を解説するので、プログラムをこれから作成する、または見直しをしたという方はぜひ参考にしてみてください。
01企業研修のプログラム作成手順
研修を企画する際は、以下の手順を上から順に進めていきましょう。
Step | 実施項目 |
1 | 人材育成方針・等級ごとの役割を確認する |
2 | 経営陣・管理職・一般社員へのヒアリング |
3 | パフォーマンスゴールを決める |
4 | 研修内容を決める |
5 | 研修方法を決める |
6 | トレーニングゴールを決める |
7 | 効果測定の方法を決める |
この手順に沿って研修を企画することで、「研修がやりっぱなし」という状態や、「研修は意味がない」という社員の声を払拭できます。
▶︎参考:研修を企画する手順を解説|企画のポイントやフレームワークも併せて紹介
1.人材育成方針・等級ごとの役割を確認する
具体的な研修内容や方法を決める前に、人材育成方針や等級ごとの役割を確認して、理想の状態を明確にします。
人材育成方針について、会社によっては理想の人材像やフィロソフィーなどと表現されることがあります。いずれにしても企業として、どのような人材像を求めているのかを確認できれば問題ありません。
仮に人材育成方針や等級ごとの役割が設定されていない場合は、これらを人事部と経営陣で策定することから始めましょう。
2.経営陣・管理職・一般社員へのヒアリング
次に、経営陣や管理職、一般社員にヒアリングをして、現状を把握します。具体的には、「どのような課題があるか」・「強化したい項目は何か」などを聞くと良いでしょう。
また、ヒアリングの工数はかかりますが、出来るだけ多角的な意見を拾えるように多くの社員の声を拾うようにしましょう。出来るだけ多くの社員にヒアリングを実施することで、研修でどのような課題を解決すれば良いかを適切に決めることができるようになるのです。
3.パフォーマンスゴールを決める
パフォーマンスゴールとは、「どのような行動を社員が取れるようになるのか」という目標のことです。例えば、「コーチングを用いて、メンバーの育成ができるようになる」であったり、「PDCAを主体的に回すことができるようになる」などが、パフォーマンスゴールと言えます。
研修を実施する上で、このパフォーマンスゴールの策定が最も重要と言っても過言ではありません。研修がやりっぱなしの状態になったり、研修が意味ないと社員に思われてしまうのは、研修が実務での行動変容に結びついておらず、社員に成長実感を与えられていないことが要因だからです。
4.研修内容を決める
パフォーマンスゴールを決めたら、具体的な研修内容の策定に進みます。例えば、「PDCAを主体的に回すことができるようになる」をパフォーマンスゴールに設定した場合、研修内容はPDCAの重要性を理解してもらい、具体的な振り返りの方法を知ってもらうことなどとなるでしょう。
この際に、ヒアリングした内容が効果を発揮します。管理職から「振り返りが弱い」という一次情報を得られていたら、特にその点を重視した研修内容を組むことができます。このように、ヒアリングを徹底的に行っておくことで、行動変容に結びつく効果的な研修内容を設定できるようになるのです。
5.研修方法を決める
具体的な研修内容を決めたら、研修方法を決めます。
研修方法を決める際は、インプットとアウトプットで分けて考えましょう。社内のリソースも加味しながらインプットを決め、アウトプットとしてはどのような手法が適しているのかを考えると効率的です。
まず、インプットの手法を費用や工数で整理すると以下のようになります。
インプットの手法 | 費用 | 自社の工数 |
集合研修(外部) | 高い |
|
eラーニング(外部) | 安い |
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自社 | なし(人件費のみ) |
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このように、自社で実施すれば費用負担は人件費のみで済みますが、研修資料の作成や講師の打診など作業が大幅に増えます。一方で、集合研修を外部に依頼すれば、費用は高いという反面、アウトプットも含めて実施してくれる可能性もあり、自社の工数負担は軽減されるでしょう。eラーニングは自社と集合研修の中間で、費用は安いですがアウトプットは自社で行う必要があるという側面もあります。
それぞれの手法にメリット・デメリットがある上に、各研修内容でも自社で実施すべきものと外部に任せた方がスムーズなものがあります。それぞれの研修手法の特性を活かして、どの手法を選択するとパフォーマンスゴールを達成できるのかを考えなければなりません。
6.トレーニングゴールを決める
トレーニングゴールとは、「研修を受け終わった時に何を理解しているか」を定めた目標のことを言います。
先述したPDCAの例で言えば、「振り返りの具体的な方法や振り返りを習慣化するためのコツ」を理解していれば、トレーニングゴールを達成したことになるでしょう。
ただし、あくまでも研修で達成すべきものは、パフォーマンスゴールである行動変容であることを忘れてはいけません。知識やスキルを理解することと、実践できることの間には大きな壁があり、知っていても使いこなせなければ意味がありません。
研修が経営に資する投資と認識されるためには、トレーニングゴールを中間指標とおき、最終的に達成したい指標はパフォーマンスゴールという認識を持つ必要があります。
7.効果測定の方法を決める
最後に、研修の効果測定の方法を決めます。パフォーマンスゴールとトレーニングゴールでそれぞれ測定方法が異なるので、以下の表を参考にしてみてください。
パフォーマンスゴール |
|
トレーニングゴール |
|
パフォーマンスゴールの測定方法
最も正確にパフォーマンスゴールが達成されているかを確認できるのは、「社員へのヒアリング」です。例えば、マネジメント研修であれば実際にマネジメントされる現場の一般社員にヒアリングをして、マネジメント研修で学んだ内容が実践できているかを確認しましょう。
しかし、現場へのヒアリングが簡単ではないこともわかっています。多くの企業でパフォーマンスゴールを設定しないのは、現場へのヒアリングにかかる工数が大きいためです。そのため、研修を受けた当事者に数ヶ月後にアンケートを取るという測定方法も紹介します。
例えば、研修の3ヶ月後に以下のような項目を聞くと効果的です。
- ・研修で学んだことを実践できていますか?
- ・実践できている場合、具体的に実践できた場面を含めて教えてください
- ・実践できていない場合、何が要因ですか?
このアンケートで重要なポイントは、実践できていないことも率直に記載してもらうことにあります。「実務で使う機会がなかった」という理由で実践できていないのであれば、研修に課題があるのではなく、職場での実践機会を作れていないことに課題があると分かり、対策を打つことができます。
トレーニングゴールの測定方法
トレーニングゴールの測定方法としては、アンケートやテスト、レポート提出があります。
この中で、パフォーマンスゴールを意識するのであれば、レポート提出が最もおすすめの方法です。テストで測定してしまうと、知識を知っているかどうかしか測定することができず、行動変容に結びつけにくいためです。
レポートで最低限聞くべき項目は以下の2つです。
- ・研修で何を学びましたか?
- ・研修で学んだことを、どのように実務で活用しますか?
このように、レポートでどのように実務で活用するかを、研修受講者が自らイメージして記載することで、パフォーマンスゴールの達成確率を上げることができます。
一方で、アンケートは研修自体の評価を得るために活用すると良いでしょう。「研修の満足度」・「講師の評価」・「研修へのフィードバック」などをもらうことで、研修自体のPDCAを人事が回せるようにするためです。
02企業研修のプログラムを作成する際のポイント
研修プログラムを作成するまでのフローを解説しましたがいかがでしょうか。 より良い研修プログラムを作成するうえで、押さえておきたいポイントがあるのでここで解説します。
企業の経営戦略に沿って考える
どんなに効果的なプログラムを考えても、企業の経営戦略に対応したものでなければ意味がありません。なぜなら、研修を通して最終的には企業の業績向上に貢献することが求められるためです。 そのため、企業として求める人物像を経営戦略などから明確化して、どのような人材を育成すればいいのかを把握してからプログラムを作成する必要があります。
研修のゴールは具体的なものにする
研修のゴールは、具体的な社員の行動を促すようなものが望ましいです。ゴールが不明瞭だと、研修後に何をすればいいのかわからず、研修の効果が弱くなってしまいがちです。 ゴールに具体性を持たせる方法として、期限設定や数値での定量的な指標を用いることが挙げられます。数値化が難しい場合は、「〇〇ができるようになる」といった内容でも構いません。 行動を促すようなゴールを設定することで、研修の効果をより高めることが可能となります。
自分ごととして臨むことができる仕組みを作る
研修内容が受講者にとって、業務と関連性があると感じられるようにすることで、学習意欲や理解度を向上させることができます。具体的な方法として、受講者の日常業務に直接関連する具体例を用いて解説すると理解を深められるでしょう。また、各受講者が直面している課題や目標に基づいた学習内容を提供しましょう。これにより、受講者は自分ごととして学び、実践での活用に繋げることができます。
優先順位をつける
研修内容には多くの情報が含まれることが多いため、重要なポイントを明確にし、効率的に学習できるようにすることが重要です。研修の最初に明確な学習目標を設定し、それに基づいて内容を整理していきましょう。また、重要な概念やスキルを繰り返し強調し、理解を深めることができます。加えて、基礎から応用へと段階的に学習内容を進めることで、受講者は、研修内容をスムーズに理解できるようになるのです。
実践で活用する機会を設ける
学んだ知識やスキルを実際に使うことで、理解が深まり、記憶にも定着しやすくなります。シュミレーション形式で実際の業務に近い状況を想像し、実践的なスキルを養うことが可能です。また、実践練習の後にフィードバックを提供し、改善点や成功事例を共有するようにしましょう。加えて、研修後すぐに業務で活用できるようなタスクを設定することで、研修後も実践で活かすことができるようになるのです。
03企業研修プログラムの具体例
本章では、Schooを活用した研修プログラムの具体例を紹介します。新入社員や若手社員、管理職といった階層別の研修プログラム例や、DX研修やコンプライアンス研修といったテーマ別研修のプログラム例をご紹介します。研修の企画を進める際の参考として、ぜひご活用ください。
新入社員研修のプログラム例
第1回 | 自ら考え、動くための「心構え」 |
時間 | 60分×1コマ |
研修項目 | マインドセット |
研修内容 |
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第2回 | 仕事がデキると思われるビジネスマナーの基本 |
時間 | 60分×5コマ |
研修項目 | ビジネスマナー |
研修内容 |
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第3回 | Excel入門 |
時間 | 30分×2コマ,40分×1コマ |
研修項目 | Excel |
研修内容 |
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第4回 | ロジカルシンキング入門 |
時間 | 60分×1コマ,55分×1コマ |
研修項目 | ロジカルシンキング |
研修内容 |
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新入社員研修の目的は、社会人としての基本スキルを習得することです。具体的には、社会人としての心構えや価値観を確立するためのマインドセットの醸成、業務の効率化に欠かせないPCスキルの習得、円滑な職場コミュニケーションを支えるビジネスマナーの学習、そして課題解決力や論理的思考力を高めるロジカルシンキングの習得が挙げられます。
これらの研修を通じて、新入社員が業務に必要な基本スキルや知識を身につけ、早期に職場での即戦力となることを目指します。
若手社員研修のプログラム例
第1回 | デキる若手の報連相 |
時間 | 60分×2コマ |
研修項目 | コミュニケーション |
研修内容 |
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第2回 | クリティカルシンキング入門 |
時間 | 60分×7コマ |
研修項目 | 課題解決力 |
研修内容 |
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第3回 | デキる若手のPDCA |
時間 | 60分×5コマ |
研修項目 | 仕事の進め方 |
研修内容 |
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第4回 | 仕事のミスを減らす頭の使い方 |
時間 | 60分×5コマ |
研修内容 |
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若手社員には業務効率改善に向けた研修がおすすめです。入社して仕事に慣れてきた若手社員に向けて、より効率よく仕事をするためにはどうすれば良いのかを教えるような内容が望ましいでしょう。具体的にはマインドセット向上、思考法、コミュニケーションなど実践的なものがおすすめです。
管理職研修のプログラム例
第1回 | 組織を育てるリーダーの コーチング思考と対話法 |
時間 | 60分×3コマ |
研修項目 | コーチング |
研修内容 |
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第2回 | マネージャーの“いままで”とそして“これから”を考える |
時間 | 60分×1コマ |
研修項目 | マインドセット |
研修内容 |
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第3回 | 人事評価 部下の評価を正しく行うポイント |
時間 | 20分×2コマ |
研修項目 | 人事評価 |
研修内容 |
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第4回 | 勤怠管理のポイント |
時間 | 60分×1コマ,55分×1コマ |
研修項目 | 労務管理 |
研修内容 |
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管理職社員は、組織全体の課題解決や人材育成、重要な意思決定など、多岐にわたるマネジメントスキルが求められる立場です。そのため、管理職研修では、まず管理職としての心構えを醸成することが必要です。さらに、部下の成長を促すコーチングスキルや目標設定方法、労務管理の基本知識など、管理職に期待される役割に応じたスキルを習得する内容を盛り込むとよいでしょう。
こうした研修プログラムを設計することで、管理職がその役割を的確に果たし、組織全体のパフォーマンス向上につなげることが可能となります。
DX研修のプログラム例
第1回 | 自社のDXに向けた心構え |
時間 | 70分×1コマ |
研修項目 | DXマインド |
研修内容 |
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第2回 | デジタル時代の価値創造 〜DXのマインドセットとAI活用〜 |
時間 | 15分×4コマ,20分×1コマ |
研修項目 | DXの重要性 |
研修内容 |
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第3回 | ゼロから始めるデータリテラシー入門 |
時間 | 55分×2コマ |
研修項目 | データやデジタル技術に関する知識 |
研修内容 |
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第4回 | それ、情報セキュリティの被害者になるかも |
時間 | 60分×1コマ |
研修項目 | セキュリティ |
研修内容 |
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DX研修ではDXリテラシー標準の4項目である、「マインド・スタンス」、「Why(DXの背景)」、「What(DXで活用されるデータ・技術)」、「How(データ・技術の活用)」に沿って研修プログラムを設計すると良いでしょう。具体的には、DXに向けた心構えや、基礎知識、データ分析手法やセキュリティに関するものがおすすめです。
コンプライアンス研修のプログラム例
第1回 | 意外と知らない「情報セキュリティ」―リモートワークの必須事項 |
時間 | 1時間(60分×1コマ) |
研修項目 | 情報セキュリティ |
研修内容 |
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第2回 | 著作権・肖像権コンプライアンス - 全ビジネスパーソン向け |
時間 | 20分×2コマ、15分×2コマ |
研修項目 | 著作権・肖像権コンプライアンス |
研修内容 |
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第3回 | インサイダー取引の理解と事例 - 投資の注意点 - 全ビジネスパーソン向け |
時間 | 30分×2コマ |
研修項目 | インサイダー取引 |
研修内容 |
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第4回 | ハラスメントを正しく知る- 全ビジネスパーソン向け |
時間 | 30分×2コマ、20分×1コマ |
研修項目 | ハラスメント |
研修内容 |
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コンプライアンス研修では、法令遵守や社内規則の理解を深めることを目的に、内容を設計します。具体的には、企業が直面する可能性のあるリスクとして、個人情報保護、ハラスメント防止、インサイダー制度などの法令として遵守していく事項が挙げられます。これにより、従業員一人ひとりの意識向上と法令順守の文化を浸透させることが期待されます。
04オンライン研修|Schoo for Business

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大企業から中小企業まで幅広く導入

Schoo for Businessは、大企業から中小企業まで幅広く導入いただいております。利用用途も各社さまざまで、階層別研修やDX研修としての利用もあれば、自律学習としての利用もあり、キャリア開発の目的で導入いただくこともあります。
導入事例も掲載しているので、ご興味のあるものがあれば一読いただけますと幸いです。以下から資料請求いただくことで導入事例集もプレゼントしております。そちらも併せて参考にいただけますと幸いです。
05まとめ
研修プログラムの作成は、企業の経営戦略に沿っているか、現場社員のニーズを汲み取れているか、など様々な視点と事前準備が必要です。 研修内容についても内容が目的と合っているか、対象者は適切であるかどうかなども十分に注意しながら検討することが重要です。 そして、研修のゴールとして実際に社員に行動を起こしてもらい、企業の業績向上につなげることを念頭に置きながら設定してみてください。