OJTに有効なメンター制度とは?OJTを成功させるためのポイントや制度について解説
OJTに有効とされているメンター制度を導入している企業は多くあります。しかし、これからメンター制度を利用したいと考えている場合には、どんなことに気をつければいいかなどが不明な場合の場合も多くあります。そこで本記事は、OJTを成功させるためのメンター制度についてご紹介します。
- 01.メンター制度を解説
- 02.OJTとメンターとの違い
- 03.メンターの役割
- 04.メンター制度のメリットとデメリット
- 05.メンターがOJTにおいて必要な理由
- 06.OJTでメンター制度を導入する注意点
- 07.メンター制度導入のステップ
- 08.メンターに求められるスキルセット
- 09.Schoo for Businessの特徴
- 10.まとめ
01メンター制度を解説
メンター制度とは、職場における人材育成手法の1つで、経験や知識がある先輩がメンターとなり新入社員や後輩(メンティ)のキャリア形成や課題についてサポートしていく制度です。原則として、メンターとメンティは1対1の関係を築きサポートすることで、メンティは安心してメンターへの相談ができる環境を構築していきます。
厚生労働省の「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によると、職場の上司が職務・業務の指示・命令を行うのに対して、メンター制度では経験豊かな先輩社員が双方向の対話を通じて、後輩社員(メンティ)のキャリア形成上の課題解決や悩みの解消を援助して個人の成長をサポートする役割を果たします。
▶︎参考:メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル|厚生労働省
メンター制度の目的とは
メンター制度の目的は、メンティとなる人材がOJTが進む中で感じている課題や不安を解決することにあります。ここで相談される課題には会社に関することやOJTで教わる業務のことだけではなく、メンタル面の側面もあります。メンティにとってメンターは、ある意味ではメンタル面での支えとなる部分が大きいため、その後の成長に大きく関与する重要な任務を担っています。
エルダー制度との相違点
メンター制度と類似している制度にエルダー制度があります。エルダー制度は別名ブラザー・シスター制度と呼ばれる制度です。エルダー制度は、先輩社員が兄(Brother)や姉(Sister)のように後輩をサポートします。メンター制度でメンティとなる対象は新入社員だけではなく社長や役員になる場合もありますが、エルダー制度の場合には新入社員のみが対象となる点が2つの大きな違いとなります。
02OJTとメンターとの違い
メンター制度と同様に、先輩が指導する育成手法としてOJT制度があります。Schooの 新人の力を引き出すOJTとメンタリングの方法では、OJT制度とメンター制度の違いとして以下を定義しています
OJTは業務成果向上を目的に、部署の上司や先輩が技術やノウハウを業務を通じて指導します。一方で、メンターはキャリア開発支援を目的に、他部署の先輩社員が業務内外の相談を受けます。
業務を通じた指導を行うOJT制度では、同部署の先輩や上司が担当者として適しているのに対して、業務内外の相談に乗るメンター制度では、部署内の話しづらいことも話しやすい他部署の先輩が有効的です。それぞれに適切な人員を配置することを心がけた方がよいでしょう。
03メンターの役割
では実際にメンターに求められる役割にはどのようなものがあるのでしょうか。 新人の力を引き出すOJTとメンタリングの方法では、「多岐にわたる問題、課題、ニーズを把握し対処する」ことがメンターの役割と述べています。
具体的にはどのような役割が必要なのか、以下でご紹介します。
目標設定・キャリアの明確化
メンターは経験と知識を活かして指導し、目標を達成するための戦略を共有します。明確な目標とキャリアパスを持つことで、メンティーはモチベーションを高め、成果を上げることができます。
進捗の確認と行動の改善
メンターは学習者の進捗状況を定期的に確認し、必要な場合には行動の改善を促す役割を果たします。進捗状況の確認は学習者の成長を把握するために重要であり、問題や課題を早期に発見して対策を講じることができます。メンターはフィードバックやアドバイスを通じてメンティーの能力向上を促し、効果的な行動計画を立てる手助けをします。
問題解決のサポート
メンターはメンティーが直面する問題や課題に対してサポートを提供します。経験豊富なメンターは、自身の知識や経験を活用してメンティーを指導し、解決策やアイデアを提供します。問題解決のサポートは学習者の自信を高め、困難な状況に対処する能力を育成します。
業務・私生活の悩みやメンタルサポート
メンティーは時にストレスや不安を抱えることがありますが、メンターは信頼関係を築きながら心のケアやアドバイスを行います。メンタルサポートは学習者のワークライフバランスを促進し、パフォーマンスと幸福感を向上させる役割を果たします。
04メンター制度のメリットとデメリット
どんな制度についてもメリットとデメリットが存在します。メンター制度も同じです。ここでは、メンター制度を利用する上で知っておきたいメリットとデメリットについて整理していくことにしましょう。両方の側面を知ることで制度活用のポイントを理解することにつながります。
メンター制度のメリット
まず先にメンター制度のメリットについて整理していきましょう。メンター制度のメリットとはメンティとなる後輩や新入社員が「自主的に行動」することで、企業に貢献できるようになることになります。メンター制度では、実務の課題だけではなくメンタル面のサポートも行うことでモチベーションの維持が可能となり早期退職の回避にもつながります。また、メンターを通してのコミュニケーションにより、社内での人間関係の早期構築も期待できます。メンター制度によりメンタル面だけの課題を早期発見するのではなく、OJTを通して業務に関する課題や疑問も解決できる側面もあるため、メンティの早期成長を期待できるなど複数のメリットに期待できます。
メンター制度のデメリット
メンター制度にはメリットだけでなく、デメリットもあります。それは、メンターの負担が大きいという点です。メンターになると日常の業務に加えて、メンティのサポートを行う業務が増えます。メンターになることで、日常の業務が減るということは少なく、メンティのサポート分が追加されると考えて頂くとよいでしょう。また、メンティのサポートとしてメンタル面でのサポートはウェイトが大きく、時には負荷の高い相談となる場合もあります。こうした側面を考えるとメンターがメンター制度の意義を理解し、やりがいをもって対応するかが成功の分かれ道になります。また、メンターとメンティの相性についても気を配る必要があります。メンターとメンティの相性が悪い場合には、メンティは相談したいことも相談できなくなりメンター制度の意味が無くなります。この相性については、メンターがヒヤリングすることではなく人事担当者によるフォロー面談の場を通して確認をしていく必要があります。
05メンターがOJTにおいて必要な理由
メンター制度をOJTで活用する利点はどこにあるのでしょうか。OJT企画の中にメンター制度を加えておく意味の理解や事例を把握することで、メンター制度をOJTに組み込む必要性を理解してくことができます。特に、OJTでメンター制度が必要な理由をしっかりと理解しておくことは、実際にOJTに組み込む際に失敗を防ぐことにつながります。
メンタル面のサポートができる
OJT計画にメンター制度を加えることは、「メンタル面のサポート力強化」が最大の目的となります。 OJTは実務を通して、業務を理解していきます。実際の業務を行う場所も勤務場所と同等となる場合もあります。 こうした場では、緊張をしてしまい上手く業務を行えない場合や質問をできない場合もあります。また、OJT担当者の説明が理解できないことで悩んでしまう場合もあります。 こうした悩みを解決するメンター制度をOJT計画に盛り込む必要があります。定期的なメンターとの面談を行う計画をしておくことで、メンティが相談できる機会や環境を準備しておくことが、メンティの抱えている課題解決を早期に行うことが可能になります。
離職防止に繋がる
メンタル面のサポートにも繋がりますが、離職防止もOJTにメンター制度を組み込む理由の1つとなります。特に他部署からメンターを抜擢する「ナナメンター」であれば、メンターと直接関係を持っていない可能性もあり、仕事に関する悩みを話しやすい状態を作ることも可能です。社内に相談できる人がいることは離職防止に貢献しますが、一方でメンターの抜擢には注意が必要です。メンターが転職する前提で入社をしている場合は、メンティーにも影響を及ぼしてしまう可能性があります。転職するメリットを感じさせないくらい、その会社の待遇であったり、ビジョン・ミッションに満足しているのであれば問題ありませんが、そもそも離職率が高い企業は注意が必要でしょう。
多角的な視点を得ることができる
OJTによる教育は効率が良い一方で、OJT担当者の属人的な知識・ノウハウの共有になってしまう可能性もあります。何を持って一般的かを論じるかは難しいですが、指導を受けた社員が疑問に思ったことを、他の人に気軽に相談し、それが一般的な考え方や仕事の進め方なのかは確認が取れる状態を作っておくと良いでしょう。また、別部署のメンターであれば専門領域が異なるので、何気ない雑談の中から学びを得ることもできます。
06OJTでメンター制度を導入する注意点
次にOJTにメンター制度を導入する際の注意点を整理してご紹介していきます。ここでご紹介する内容は、OJT、メンター制度の相乗効果を図る上で大切なポイントです。注意点を理解してOJTにメンター制度を導入しましょう。
スケジュールに余裕を持たせる
OJTプログラムに盛り込む際に押さえておきたいポイントは、メンターとの面談時間には余裕を持たせることです。メンターとの面談において、次の予定が詰まってしまっており相談が途中になってしまっては効果を半減させてしまいます。できれば、予定時間を延長しても差し支えない様な時間として、昼前(昼休み時間に延長できる)、退社前の最後のプログラムにするなどの考慮をしておきましょう。次の予定が組み込まれている場合でも、その時間を過ぎても問題ないOJT内容にしておくなどの対応を予め行うことも有効です。こうすることで、メンティは相談時間を気にせずに話をすることができます。それ以外にも、メンターとメンティの懇親の場を設けるなどの予定も予めOJT計画に盛り込んでおきましょう。こうすることで、メンターとメンティの両者のスケジュール確保が可能になり、あらかじめ頭の整理などを行うこともできます。
定期的な面談の仕組み作り
メンター制度の実施は主に面談の形式で行われます。しかし、面談はメンター制度でのみ実施される訳ではありません。人事部主体での面談、OJTを行っている先輩や上司との面談もあり、面談の予定ばかりをOJT期間中に盛り込むことになってしまいます。面談を受ける側も同じ話を何度もすることになる場合もあり、面談だけで疲れてしまうことにもなりかねません。面談を有効に実施するためには、面談の回数やサイクルを配慮し同じ日に面談を複数入れない、一週間の中で面談の回数は1〜2回程度にするなどの工夫や配慮を行う必要があります。
07メンター制度導入のステップ
メンター制度を導入する際には以下の6つのステップが必要です。
制度目的の明確化
メンター制度のステップの最初は、制度の目的を明確にすることです。組織は、メンター制度を導入する目的や期待する成果を明確に定義する必要があります。目的を明確化することで、メンター制度の方向性が明確になり、関与する人々に対して具体的なゴールや意義が伝わります。
推進体制の構築
メンター制度を成功させるためには、制度の推進体制を構築する必要があります。組織は、メンター制度を管理・運営する責任者やチームを設置し、適切なリソースやサポートを提供します。推進体制の構築により、メンター制度が組織の重要なイニシアチブとして適切に実施され、メンターとメンティーが必要な支援を受けることができます。
制度・運用ルールの策定
メンター制度のスムーズな運用を確保するためには、制度や運用ルールの策定が重要です。組織は、メンターとメンティーの役割や責任、コミュニケーション方法、評価基準などを明確に定めます。制度や運用ルールの策定により、メンター制度の透明性や一貫性が確保され、参加者が共通の基準に基づいて活動できる環境が整います。
メンターとメンティーのマッチング
メンター制度では、メンターとメンティーの適切なマッチングが重要です。組織は、メンティーのニーズや目標、スキルセットに合った経験豊富なメンターを選定します。マッチングの過程では、相性やコミュニケーションスタイルの調整も行われます。適切なマッチングにより、メンティーは最適なサポートを受け、メンターも充実感を持って指導できる環境が生まれます。
事前研修・オリエンテーションの実施
メンター制度を効果的に運営するためには、事前研修やオリエンテーションの実施が重要です。事前研修では、メンターに対して指導スキルやコミュニケーション方法、メンティーのサポート方法などのトレーニングが行われます。また、オリエンテーションでは、メンターとメンティーに対して制度の目的やルール、期待される役割などが詳細に説明されます。事前研修とオリエンテーションにより、メンターとメンティーが制度について理解し、成功するための準備が整います。
効果測定・運用改善
メンター制度の効果を測定し、運用を改善することは持続的な成果を得るために重要です。組織は、メンター制度の目標達成度や参加者の満足度を定期的に評価します。さらに、フィードバックやアンケート調査を通じてメンターとメンティーの意見を収集し、改善点を特定します。効果測定と運用改善のプロセスにより、メンター制度は組織のニーズに合わせて最適化され、学習者の成長や組織のパフォーマンス向上に貢献します。
08メンターに求められるスキルセット
メンターには、「傾聴」「承認」と「助言」のスキルが必要とされていますが、簡単に傾聴をするという訳にはいきません。傾聴というスキル1つをとっても、何をどうすればいいかを理解し実践するためには、メンター制度が開始する前にメンターとしてのスキルを育成していくことも必要です。
信頼関係構築力
メンターはメンティーのメンタル面でのサポートも役割に入ります。そのため、メンティーが相談しやすいような信頼関係を構築する能力は必要不可欠と言えるでしょう。まずはメンティーの意見や悩みを傾聴することが求められるので、会話を遮ってしまう人や決めつけてしまいがちな人は向いてないかもしれません。また、傾聴した後はどのようなことであっても否定せず、承認する部分と改善すべき点を明確に分け、対話によってメンティー自らに気づきを与える必要があります。
社内コミュニケーション能力
メンターは、OJT担当者との橋渡し役も担います。そのため、社内コミュニケーションが円滑に取れる人材を抜擢すべきでしょう。時にはOJT担当者にとって耳の痛い話をしなければならない瞬間もあり、そのような場合に人ではなく仕事に対して厳しい指摘ができないといけません。
基本的なビジネススキル
メンターは仕事の悩みを聞くことも多い役割です。そのため、基本的なビジネススキルは必須といえるでしょう。専門スキルはOJT担当者から教わるため、そこに関しての知見を深める必要はありません。あくまでも一般的にどの部署でも求められるビジネス基礎力を指導できるくらいの人材を選出しましょう。
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■資料内容抜粋
・大人たちが学び続ける「Schoo for Business」とは?
・研修への活用方法
・自己啓発への活用方法 など
09Schoo for Businessの特徴
Schoo for Businessでは約8000本の授業をご用意しており、様々な種類の研修に対応しています。その上、自己啓発にも効果的な内容の講座を毎日配信しているため、研修と自己啓発の両方に対応することができるシステムになっています。研修と自己啓発を掛け合わせることにより、誰かに要求されて学ぶのではなく、自発的に学び、成長していく人材を育成することが可能になります。ここでは、Schoo for Businessの具体的な活用方法と、特徴、さらにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
1.研修と自己啓発を両方行うことができる
Schoo for Business は社員研修にも自己啓発にも利用できるオンライン学習サービスです。通常の研修動画は、研修に特化したものが多く、社員の自己啓発には向かないものも少なくありません。しかし、Schooの約8,500本にも上る授業では、研修系の内容から自己啓発に役立つ内容まで幅広く網羅しているため、研修と自己啓発の双方の効果を得ることができるのです。
2.OJT研修におすすめのSchooの研修パッケージ
様々な研修に対応できるSchoo for Businessの研修パッケージですが、もちろんOJT研修にも対応しています。OJT研修を初めて担当する方や、OJTがなかなかうまくいかない、と言う方に向けて、OJTに関する講座を組み合わせて体系的に学べるようにした研修パッケージをご用意しています。基礎的なOJTの知識やノウハウから、部下のマネジメント・コーチングの方法、さらには、オンラインでOJTを行うことを想定した講座も組み込んであり、このパッケージを受講することでOJTに関する知識を一通り身につけることが可能な内容になっています。
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中堅社員を対象とした、OJT研修に関するカリキュラムです。中堅社員がOJTを通じてどのように部下を育成していけばいいかを学べる内容になっています。
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若手社員など、始めてOJT研修を担当する方向けのパッケージです。後輩の力を引き出すメンタリングや、指導方法について学ぶことができます。
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コーチングの基礎については習得しているけれど、さらにスキルアップしたいという方向けの研修パッケージです。コーチング時に必要となる質問力や課題解決力を磨くことができます。
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マネジメントのスキルをレベルアップさせたいという方向けの研修パッケージです。チームや部下をマネジメントする際に必要な「即断力」について学び、「部下が自主的に動いてくれない」、「ルールを決めても守らない」といったお悩みを解消する「壁マネジメント術」について学ぶことができます。
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働き方改革が進み、リモートワークやオンラインでの会議が増える中、必要性が急速に増しているのがオンラインコミュニケーション力です。こちらの研修パッケージではオンラインでの伝え方のポイントやこれからの時代の働き方について学ぶことができます。
3.管理画面で受講者の学習状況を可視化できる
Schoo for Businessには学習管理機能が備わっているため、研修スケジュールの作成を容易に行うことができます。さらに、社員の学習進捗度を常に可視化することができる上に、レポート機能を使って学んだことを振り返る機会を作ることも可能です。ここでは学習管理機能の使い方を簡単に解説します。
まず、Schooビジネスプランの管理画面を開き、「研修を作成するという」ページで作成した研修の研修期間を設定します。ここで期間を設定するだけで自動的に受講者の研修アカウントにも研修期間が設定されるため、簡単にスケジュールを組むことができます。
この、管理者側の管理ツールでは受講者がスケジュール通りに研修を受けているかを確認することができます。もし決められた研修をスケジュール通りに行っていない受講者がいれば注意したり、話を聞くことができるなど、受講者がしっかりスケジュールを守っているかを確認することができます。
10まとめ
本記事ではOJTの中にメンター制度を導入するためにメンター制度の理解や導入ポイントについてご紹介してきました。人材を育成する方法として実施するOJTの中にメンター制度を導入することで、より育成が促進できる可能性をもっています。ぜひ、今後のOJT計画の中にメンター制度を組み込み、より充実した人材育成プログラムの構築と実践を行ってください。