スムーズなプロジェクト進行に必要なステークホルダーマネジメントとは?
ステークホルダーマネジメントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。円滑にプロジェクトを進める際のマネジメント手法として注目されているステークホルダーマネジメントですが、実際のところどのような手法なのか詳しく知らない方がたくさんいます。そこで今回はステークホルダーマネジメントの概念や、具体的なプロセスについてご紹介します。
01ステークホルダーマネジメントの概念
ステークホルダーマネジメントとは、企業やプロジェクトの利害関係者を管理するマネジメント方法を指します。 ステークホルダーの中には、企業やプロジェクトの進行に否定的な意見を持つ人も少なくありません。そのため、ステークホルダーマネジメントはステークホルダーと関わりを持ちながら、プロジェクトをスムーズに進め、成功させることを目的としています。
そもそもステークホルダーとは
そもそもステークホルダーとは、企業やプロジェクトの利害関係者を指します。 一般的にステークホルダーという言葉から、株主をイメージするかもしれません。狭義には株主を指しますが、ステークホルダーマネジメントにおいては広く利害関係者を指しています。 「企業やプロジェクトの関係者」と言い換えるとわかりやすいかもしれません。経営者や従業員を始め、株主、取引先、業務提携先、外注先の企業やフリーランスなど、様々な関係者をステークホルダーと呼びます。
02ステークホルダーマネジメントが注目される背景
では、今ステークホルダーマネジメントが注目されている理由は何でしょうか。代表的な理由を2点ほどご紹介します。
PMBOKで独立したエリアとして新設
1点目は、PMBOKで独立したエリアとして認められたことです。 PMBOKとは「Project Management Body of Knowledge」の略で、プロジェクトマネジメントについての知識を体系的にまとめた概念です。プロジェクトの品質や原価、そして納期など成功させるために必要な10の領域と、過程が5つほど示されています。 現在は、以下10の領域が設定されています。
- ・統合マネジメント
- ・スコープマネジメント
- ・スケジュールマネジメント
- ・コストマネジメント
- ・品質マネジメント
- ・資源マネジメント
- ・コミュニケーションマネジメント
- ・リスクマネジメント
- ・調達マネジメント
- ・ステークホルダーマネジメント
マネジメント領域は、現代社会の多様性に応じて細分化されています。ステークホルダーマネジメントは1996年以来、25年以上ぶりに新設されました。
取り巻く利害関係の複雑化
PMBOKに新設されたことも含め、現代社会では取り巻く利害関係が年々複雑化していることも大きな理由です。 日々関わるステークホルダーは、株主や経営者、取引先や顧客、さらには従業員など、非常に広範囲に及びます。これらの関係者は複雑に絡み合い、利害関係も一筋縄では判断できません。そのため、新たなマネジメント手法を定着させることで、利害関係を安定的に運用することが求められるのです。 また、リモートワークが普及するなど働き方が多様化したことで、企業やプロジェクト関係者の全体像を把握することが難しくなっています。したがって、意図してステークホルダーを管理しなければ、判断に必要となる人の意見を除いてしまうことにもなりかねないのです。
03ステークホルダーマネジメントのプロセス
ここまでご紹介してきたように、複雑なステークホルダーを管理するためには、ステークホルダーマネジメントが非常に有効であることが分かりました。では、実際にどのようにステークホルダーマネジメントを行うのか、詳しく見ていきましょう。
1.ステークホルダーの特定
まずは立ち上げのプロセスとして、ステークホルダーを特定します。すなわち、企業やプロジェクトに関わる関係者の洗い出しを行います。この時注意すべきは、自社の関係者のみならず、取引先や顧客を含め、可能な限り関係者をバイネームで示すことです。名前だけでなく、それぞれの役割も正しく明文化できると安心です。 バイネームかつ役割を細かく記載することによって、誰が、いつ、どのタイミングで責任を持つ必要があるのかを明確にすることができます。また、陰で決定者として暗躍する人が登場することを防ぐことも可能です。 そのため、可能な限り必要な人員を全て洗い出しましょう。
2.ステークホルダーのマネジメント計画
続いて、計画のプロセスに移行します。計画のプロセスでは、決定したステークホルダーに協力してもらえるようなマネジメント計画を立てていきます。この時に立てる計画は、可能な限り細かく、かつ具体的に設定するのがポイントです。 例えば仕様の確認は、仕様書提出から1週間以内に承認を必ずもらう、といった内容や、承認時には誰から誰の承認をもらうのかなども詳しく明記します。 また、定期的に開催する会議などに、誰がどの頻度で参加するのかといった内容も記載します。このようにして、ステークホルダーに関するマネジメント計画を詳細に記載するのがポイントです。
3.ステークホルダーへの適切なコミュニケーション
実行のプロセスでは、マネジメント計画に伴って適切なコミュニケーションを図ります。 コミュニケーションを図ると端的に言っても、ステークホルダーは感情を持ち合わせているため、コントロールするのは簡単ではありません。また、それぞれの立場や役割によって企業やプロジェクトに与える影響力も異なるため、それぞれの特徴と影響力を考慮したマネジメントが重要になります。相手に応じた様々なコミュニケーションを試みることで、プロジェクトの失敗要因を一つ一つ潰していきます。このようにコミュニケーションを繰り返していくことで、関係者の理解を深めながらステークホルダーマネジメントを実行していきます。
4.マネジメント実施状況の監視
続いて、マネジメント計画の実行状況を監視するプロセスに移ります。 ステークホルダーマネジメントの計画は、感情を含んだコントロールが必要である以上、何もせずとも正しく実行されることはほとんどありません。いつの間にか計画が形骸化してしまうケースも生じえます。 そうならないように、状況把握を積極的に行います。最初に立てた計画通りに物事が進んでいない場合には、実行責任者に状況改善を求めます。これを繰り返すことで、少しずつスムーズなステークホルダーマネジメントとなることを目指していくのです。
04ステークホルダーマネジメントのポイント
ステークホルダーマネジメントを円滑に進めるためには、どのようなポイントが重要になるのでしょうか。代表的な例を3つご紹介します。
円滑なコミュニケーション
最も大切なのは、コミュニケーションスキルを高めることです。対人関係の構築能力はもちろん、プロジェクトを円滑に進めるための交渉能力などもこれに該当するでしょう。 もちろんコミュニケーションにおいても戦略を立てて、都度相手に合わせたコミュニケーションを展開することが大切です。しかし、実際はすべて想定通りに行くことは少なく、どれだけ臨機応変に対応できるかということが鍵となります。 また、どうしても上手くいかない場合には、上司を含め周りの人の力を借りることも一つの手段です。自分だけの力で完結しようとせずに、周囲の力を上手く活用することも実力の一つです。
PMBOKのステップの有効活用
先ほどご紹介したPMBOKの中では、プロセスごとに「インプット」「ツールと実践方法」「アウトプット」という3つが定義されています。この定義を有効活用することで、スムーズにステークホルダーマネジメントを実践できるのです。 実際に有効活用するためには、コミュニケーションツールの活用がおすすめです。いわゆるチャットツールのようなものではなく、チーム内で計画進行を一目で管理できるようなシートなどを指します。また、コンサルティング会社などが整理用のシートを無償提供している場合も多く、一度ダウンロードを検討してみても良いでしょう。
05ステークホルダーマネジメントを向上させるSchooのオンライン研修
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株式会社エンタミナ 代表取締役
株式会社エンタミナ(https://webdirection.jp)ウェブディレクター協会 主宰。1999年、フリーのウェブディレクターとして独立後、ウェブディレクション・カンパニー『株式会社エンタミナ(旧:デスクトップワークス)』を設立。動画制作や動画配信にも意欲的に取り組んでおり、2014年~2020年までの6年間で1,300本以上のライブ配信を実施。「通称:田口ブラック」をはじめ、オンラインプレゼン表現の可能性を日夜追求している。田口真行のFacebook https://www.facebook.com/TaguchiMasayuki
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本授業では、プロジェクトマネジメントの基本的な進め方に則り、「①ゴール設定」「②計画の立て方・段取り」「③プロジェクト実行・リスクマネジメント」の全3回に渡って学んでいきます。
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ビジネスファイターズ合同会社 代表
愛知県生まれ。南オレゴン大学卒。インサイトテクノロジー入社。インド企業とのソフトウェア共同開発プロジェクトに従事。その傍ら、プロジェクトマネジメント協会の標準本の出版翻訳に携わる。マーケティングに特化後は、データベース監査市場にて2年連続シェア1位獲得に貢献 (ミック経済研究所)。 外資系製造企業FAROでは、アジア太平洋地域でのマーケティングやプロジェクトに責任者として取り組む。人材育成や多様性のあるチーム作りにも力を入れ、1on1ミーティングは1,000回を超える。現在は、マーケティング支援や人材育成(研修・講習・執筆)など多方面で活動中。著書に『童話でわかるプロジェクトマネジメント』(秀和システム)、『仕事は「段取りとスケジュール」で9割決まる!』(明日香出版社)、『令和上司のすすめ』(日刊工業新聞社)、『まわるリモートチームのマネジメント術』(明日香出版社)などがある。
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06適切なステークホルダーマネジメントでスムーズなプロジェクト進行を
ステークホルダーマネジメントは、企業規模やプロジェクト規模、そして関わる事業領域や職種などを問わず、広く組織で活かすことができるスキルです。企業に属して働いている以上、あらゆる利害関係を考慮する必要があり、ステークホルダーに対するコミュニケーションは非常に難易度が高くなっています。したがって、ステークホルダーをコントロールするスキルが大切なのです。 とはいえ、特段難しく考える必要はなく、日々の業務の中で関係者や体制を意識をし、周囲とコミュニケーションをよりスムーズに取る工夫をすることで、十分にステークホルダーマネジメントのスタートラインに立てていると言えます。まずはできる範囲からステークホルダーマネジメントに挑戦してみてはいかがでしょうか。