ストレスマネジメントとは?求められる理由や具体的な施策・ポイントを解説

過度のストレスによるメンタルヘルス上の理由で、休職もしくは退職する社員が増加しています。そのことによって、他の社員への負担となり、生産性の低下を招きかねません。本記事では、ストレスマネジメントの概要や企業に求められる理由、社員に対するストレスマネジメント施策とそのポイントについて解説します。
01ストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、ストレスとの上手な付き合い方を考え、適切に管理することです。ストレスは誰もが感じるものですが、過度なストレスは様々な心身の不調を引き起こします。 企業においては、社員のストレスの原因を探り、ストレスがかかりすぎないことへの対策に加えて、上手くコントロールできるような支援が求められるといえます。また、心身が健康でいられる労働環境の整備も、企業におけるストレスマネジメントの重要な目的の1つです。
02ストレスが生じる原因と反応
ストレスマネジメントを行う際には、ストレスが生じる原因を知っておくことが重要です。ストレスの原因となる刺激をストレッサーと呼び、いくつかの種類があります。ここでは、主に以下のストレッサーについて解説します。
- ・物理的ストレッサー
- ・化学的ストレッサー
- ・心理・社会的ストレッサー
物理的ストレッサー
物理的ストレッサーとは、物理的な環境による刺激で、温度・湿度、光、騒音、振動などが代表的です。具体的には、オフィスでの物理的環境には、話し声がうるさいなどの雑音、室内のエアコンの効きすぎ、パソコンによるディスプレイの明るい光などが挙げられます。
化学的ストレッサー
化学的ストレッサーとは、化学物質による刺激で、大気汚染や薬物、酸素の欠乏や過剰が代表的です。オフィスでは、分煙が進んでいる状況にあっても、喫煙所付近のタバコの匂いがストレスになる人は多いでしょう。また、狭い空間での香水の強い匂いがストレスになる場合もあります。
心理・社会的ストレッサー
心理・社会的ストレッサーは、仕事や家庭などの社会生活によってもたらされる刺激のことです。職場では、業務上の評価、異動や転勤、昇進、それらに伴う人間関係によって、不安、緊張、焦り、苛立ちといった感情が生じます。また、職場内の秩序の乱れもストレスに感じる人は多いようです。
ストレス反応
ストレス反応とは、ストレッサーによって引き起こされる変化のことです。大きく分けて、心理面、身体面、行動面に分類され、時間の経過とともに変化します。
ストレス反応には、以下のような反応があります。
- ・心理的反応:活気の低下、イライラ、不安、抑うつなど
- ・身体的反応:疲労、倦怠感、動悸・息切れ、食欲不振、不眠など
- ・行動的反応:遅刻・欠勤、作業能力の低下、生活の乱れなど
これらのストレス反応は適応的な現象ですが、慢性化することで、様々な身体疾患による精神障害を引き起こすことが知られています。
03企業にストレスマネジメントが求められる理由
企業による社員へのストレスマネジメントが求められるようになったのは、ストレスが原因のメンタルヘルス不調を訴える社員が増加していることが挙げられます。昨今は、精神障害の労災補償事案が増加しており、大きな社会問題となっています。
精神障害の労災請求・決定および支給件数が過去最高
厚生労働省によると、過労死などの労災請求件数が前年比264件増加の3099件、このうち精神障害が原因となった事案が2346件(前年比295件増加)となりました。未遂を含む自殺の件数は、前年度比16件増の171件です。精神障害における請求件数は、令和元年に初めて2000件を超えて以来、大幅に増加しています。また、支給決定件数も629件となり、請求件数ともに過去最高となる高い水準となりました。
2014年に過労死等防止対策促進法が制定されましたが、過労死や精神障害者数は減少するどころか、むしろ増加している状況です。ストレスマネジメントでは、社員一人ひとりのセルフモニタリングはもちろん、全社としてメンタルヘルス不調者を出さないという、安心安全で健康な環境づくりとの両面から考えていくことが重要になると考えられます。
04社員に対するストレスマネジメント施策
メンタルヘルスの不調者を増やさないためにも、疾患レベルに至っていない段階でのケアが重要です。ここでは、社員に対するストレスマネジメント施策について解説します。
- 1.セルフモニタリングを取り入れる
- 2.メンター制度の導入
- 3.ストレスコーピングを活用する
- 4.社内研修を実施する
1.セルフモニタリングを取り入れる
ストレスマネジメントの施策として、セルフモニタリングの導入が有効です。社員自らが心や体調の変化に気づきやすく、身体疾患による精神障害の早期発見と早期のケアにつながります。
方法としては、セルフモニタリングの質問票に記入する方法がありますが、ストレスの内容をノートなどに書き留めておくのも良いでしょう。定期的にチェックすることで、必要な対策を講じることができます。また、セルフモニタリング自体にも、ストレスを緩和する効果に期待できます。
2.メンター制度の導入
メンター制度の導入も、ストレスマネジメント施策として有効な方法です。メンター制度とは、定期的な面談でサポートを行う制度です。職場でのストレスの多くは、人間関係や業務内容に関連しているため、その実態を把握とサポートを行うことができます。
しかし、上司をはじめとした同じ部署の社員には、相談しにくいというケースも少なくありません。そういった場合を考慮して、人事担当もしくは外部の専門家が対応するという体制の整備が必要になるでしょう。
3.ストレスコーピングを活用する
ストレスマネジメントには、ストレスコーピングの活用が役立ちます。ストレスコーピングは、ストレスを管理・対処する方法のことです。ストレスコーピングは大きく分けて、以下の2つに分けられます。
- ・問題焦点型コーピング
- ・情動焦点型コーピング
状況に応じたコーピングで、ストレスにアプローチすることが大切です。
問題焦点型コーピング
問題焦点型は、ストレスを生じる原因そのものを取り除いて、ストレスが起きないよう対処する方法です。例えば、担当業務の量を減らす、業務を分担する、目標を達成可能なレベルに細分化するなどが挙げられます。
情動焦点型コーピング
情動焦点型は、ストレスを生じる原因そのものに焦点を当てるのではなく、ストレスに対する感情や考え方を変化させることでストレスをコントロールする方法です。専門家やカウンセラーへの相談、先述したメンターへの相談もこの方法に含まれます。相手が受け止めてくれる行為によって、感情の整理や発散させることができます。
4.社内研修を実施する
社内研修によって、社員のストレスマネジメントに対する知識やスキルの向上を図ることも重要な施策です。外部の専門家が講師であれば、全社員の集合研修をはじめ、管理職向けに社員からの相談対応、職場環境の把握と改善、職場復帰支援などを学ぶことができます。ストレスマネジメントの意識を高めていくには、継続的な社内研修の実施が求められます。
05社員のストレスマネジメント施策のポイント
自社でストレスマネジメントを行う際には、以下の3つのポイントを特に意識すると効果的です。
- 1.ストレスチェックを活用してストレス状態を把握する
- 2.福利厚生制度を整備する
- 3.ストレスマネジメント研修を実施する
1.ストレスチェックを活用してストレス状態を把握する
ストレスマネジメントを行うには、まず社員のストレス状態を把握しておく必要があります。そのためには、ストレスチェックを活用しましょう。ストレスチェックとは、社員によるアンケート方式で、ストレス状態を調べる検査のことです。
労働安全衛生法により、50人以上の社員がいる企業において、年に1回の実施が義務づけられています。集団分析の結果を労働環境の改善に役立てることも可能です。社員が抱えているストレスをデータとして把握することで、より効果的な対策が立てられるでしょう。 厚生労働省は、厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムを無料で公開しています。ストレスチェックの結果出力や集団分析にも使えるため、活用してみましょう。
2.福利厚生制度を整備する
社員へのストレスマネジメントには、福利厚生の整備も必要になります。相談窓口を設置したり、外部からカウンセラーなど専門家を招いたりして、相談しやすい環境を整備することも有用です。また、休職中における金銭面の補償制度を設けると、きちんと休養することができ、スムーズな復職につながります。
ストレスマネジメント研修を実施する
ストレスマネジメントを行う際には、社員一人ひとりのストレスマネジメントスキルを向上させることが重要です。そのためには、ストレスマネジメントに関する教育の機会を提供しましょう。ストレスマネジメントをしやすい環境を整えることにもつながります。さらに、社員の安心安全への取り組みは、採用活動を進める上でも自社の魅力になるでしょう。
06ストレスマネジメント力を向上させるSchooのオンライン研修
Schoo for Businessは、国内最大級8,000本以上の講座から、自由に研修カリキュラムを組むことができるオンライン研修サービスです。導入企業数は2,700社以上、新入社員研修や管理職研修はもちろん、DX研修から自律学習促進まで幅広くご支援させていただいております。
Schoo for Businessの特長
Schoo for Businessには主に3つの特長があります。
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ストレスマネジメント力に関するSchooの講座を紹介
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,000本以上の講座を取り揃えております。この章では、ストレスマネジメントに関する授業を紹介いたします。
新しい時代に適応するためのセルフマネジメント
本コースは、リモートワークなど働く環境が大きく変化しているこの時期にこそ知っておきたい、セルフマネジメントについて学ぶ授業です。
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目標実現の専門家 メンタルコーチ
株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。メンタルコーチ。目標実現の専門家。中央大学卒業。長野県出身。 脳科学とアドラー心理学を組み合わせた、独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。その卓越したアプローチによって、これまで1万5000人以上の課題を解決してきた他、オリンピック出場選手、トップモデル、ベストセラー作家、経営者など各界で活躍する人々の目標実現・行動革新サポートを実施。その功績が話題となり、各種メディアからの依頼が続出。現在は法人向けにチームマネジメント・セルフマネジメントに関する研修、講演、エグゼクティブコーチングを提供。これまでサポートしてきた企業は、IT、通信教育、商社、医療、美容、小売りなど40以上の業種にわたる。 また、個人向けに「行動イノベーション年間プログラム」とオンラインサロンを主宰。「2030年までに次世代リーダーをサポートするプロコーチを1000人輩出し、日本を元気に! 」を目標に掲げ、プロコーチ養成スクール「NEXT」を開講。10冊の著作の累計発行部数は25万部を超え、中国、台湾、韓国など海外でも広く翻訳されている。おもな著書に、「本気で変わりたい人の行動イノベーション」(秀和システム・だいわ文庫)『指示待ち部下が自ら考え動き出す! 』(かんき出版)、『先延ばしは1冊のノートでなくなる』(大和書房)などがある。 公式メルマガ「行動イノベーション365・ネクストステージを目指す! 行動のヒント」を配信中!
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不安とストレスに悩まない7つの習慣
この授業のテーマは、私たちの生活の質にも大きく関わる「ストレス」。 「ストレスをなくすことは可能なのか?」 「ストレスに強い人と弱い人の差は何なのか?」 「ストレスによって引き起こされる症状のうち、注意すべきものは何か?」 など、生活を送る中で出て来るさまざまな疑問を解消し、ストレスとの向き合い方を学んでいきましょう。
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医師、医学博士、日本医師会認定産業医
産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある。
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07まとめ
本記事では、ストレスマネジメントの概要や企業に求められる理由、社員に対するストレスマネジメント施策とそのポイントについて解説しました。昨今は、精神障害により長期の休職や離職する社員が増え、それに伴い労災補償事案が増加しており、大きな社会問題となっています。
深刻な事態を避けるためにも、これからの企業経営にストレスマネジメントが不可欠です。セルフモニタリングやメンター制度の導入、ストレスコーピングの活用、社内研修を実施し、ストレスマネジメントを効果的に行える環境の整備が求められています。