ストレスマネジメントとは|具体的なやり方や企業がすべき施策を解説
過度のストレスによるメンタルヘルス上の理由で、休職もしくは退職する社員が増加しています。そのことによって、他の社員への負担となり、生産性の低下を招きかねません。本記事では、ストレスマネジメントの概要や企業に求められる理由、社員に対するストレスマネジメント施策とそのポイントについて解説します。
- 01.ストレスマネジメントとは
- 02.ストレスが生じる原因と反応
- 03.ストレスマネジメントの効果
- 04.ストレスマネジメントのやり方
- 05.組織としてのストレスマネジメント施策
- 06.ストレスマネジメント研修|Schoo for Business
- 07.まとめ
01ストレスマネジメントとは
ストレスマネジメントとは、ストレスとの上手な付き合い方を考え、適切に管理することです。
ストレスは誰もが感じるものですが、過度なストレスは様々な心身の不調を引き起こします。このような、心身に悪影響を起こすストレスに対しての対処をストレスマネジメントと呼びます。
個人がストレスにどのように向き合っていくかという観点も重要でありながら、企業としての対応も昨今では求められてきています。社員にストレスマネジメントのやり方を研修で教育したり、過度なストレスを与えないような労働環境の整備を整える企業も増えてきているのです。
▶︎参考:厚生労働省|e-ヘルスネット
ストレスマネジメントが注目されている背景
厚生労働省によると、過労死などの労災請求件数が前年比264件増加の3099件、このうち精神障害が原因となった事案が2346件(前年比295件増加)となりました。未遂を含む自殺の件数は、前年度比16件増の171件です。精神障害における請求件数は、令和元年に初めて2000件を超えて以来、大幅に増加しています。また、支給決定件数も629件となり、請求件数ともに過去最高となる高い水準となりました。
2014年に過労死等防止対策促進法が制定されましたが、過労死や精神障害者数は減少するどころか、むしろ増加している状況です。ストレスマネジメントでは、社員一人ひとりのセルフモニタリングはもちろん、全社としてメンタルヘルス不調者を出さないという、安心安全で健康な環境づくりとの両面から考えていくことが重要になると考えられます。
02ストレスが生じる原因と反応
ストレスマネジメントを行う際には、ストレスが生じる原因を知っておくことが重要です。ストレスは、ストレッサー(ストレス反応を引き起こす原因)を認知・評価した結果、ストレス反応(ストレッサーによって引き起こされた結果)として現れます。
タバコを例にすると、ストレッサーになるのはタバコの煙や匂いです。それがストレスとして認知・評価されるかは、人によって異なります。タバコの煙に耐性がある人もいれば、不快な気持ちになる人もいるでしょう。タバコの煙や匂いをストレスとして認知した際に、ストレス反応としてイライラしたり頭痛がしたりするのです。
▶︎参考:厚生労働省|ストレスとは
ストレッサーの種類
ストレッサーには主に以下の3種類があります。
- ・物理的ストレッサー
- ・化学的ストレッサー
- ・心理・社会的ストレッサー
それぞれ詳しく紹介します。
物理的ストレッサー
物理的ストレッサーとは、物理的な環境による刺激で、温度・湿度、光、騒音、振動などが代表的です。具体的には、オフィスでの物理的環境には、話し声がうるさいなどの雑音、室内のエアコンの効きすぎ、パソコンによるディスプレイの明るい光などが挙げられます。
化学的ストレッサー
化学的ストレッサーとは、化学物質による刺激で、大気汚染や薬物、酸素の欠乏や過剰が代表的です。オフィスでは、分煙が進んでいる状況にあっても、喫煙所付近のタバコの匂いがストレスになる人は多いでしょう。また、狭い空間での香水の強い匂いがストレスになる場合もあります。
心理・社会的ストレッサー
心理・社会的ストレッサーは、仕事や家庭などの社会生活によってもたらされる刺激のことです。職場では、業務上の評価、異動や転勤、昇進、それらに伴う人間関係によって、不安、緊張、焦り、苛立ちといった感情が生じます。また、職場内の秩序の乱れもストレスに感じる人は多いようです。
ストレス反応
ストレス反応とは、ストレッサーによって引き起こされる変化のことです。大きく分けて、心理面、身体面、行動面に分類され、時間の経過とともに変化します。
ストレス反応には、以下のような反応があります。
- ・心理的反応:活気の低下、イライラ、不安、抑うつなど
- ・身体的反応:疲労、倦怠感、動悸・息切れ、食欲不振、不眠など
- ・行動的反応:遅刻・欠勤、作業能力の低下、生活の乱れなど
これらのストレス反応は適応的な現象ですが、慢性化することで、様々な身体疾患による精神障害を引き起こすことが知られています。
03ストレスマネジメントの効果
ストレスマネジメントによって得られる最大の効果は、自身のストレスに対して正しく付き合うことができるようになるという一言に尽きます。その結果、組織としては以下のような効果が期待できます。
- ・休職や離職を予防できる
- ・仕事の成果が安定する
- ・職場環境の改善につながる
過度なストレスによるメンタルヘルス不全は、時として休職や離職につながります。ストレスマネジメントにより、これらが防止されることによって、仕事の成果も安定します。また、ストレスマネジメントを社員の多くが意識・習得することによって、職場全体の環境改善にもつながります。
休職や離職を予防できる
ストレスマネジメントの効果の1つとして、休職や離職の予防があります。
ストレスへの正しい向き合い方を知らなければ、ストレスを溜め込んでしまい、心身の不調を来しても不思議ではありません。特に、働き方改革によってリモートワークを導入する企業が増えている昨今では、周囲の人がメンタル不調に気づいて支援することが難しくなっています。その結果、誰にも相談できない中でストレスを溜め込んでいってしまう人が増えているのです。
また、人材の流動性も高まっている中で、社内に相談をできる人がいないということも今後さらに増えてくるでしょう。ストレスマネジメントを組織として取り組むことで、休職や離職を防ぐことができるようになります。
仕事の成果が安定する
ストレスマネジメントができるようになると、仕事の成果が安定するという効果も期待できます。まず、休職や離職が減ることで組織全体の生産性が安定します。
また、日常の業務においてもストレスによってパフォーマンスは上下します。イライラしていて、仕事に集中できない。このような事態をストレスマネジメントを習得することによって解消し、日々の業務の成果も安定するのです。
職場環境の改善につながる
ストレスマネジメントは、職場環境の改善にもつながります。
ストレスは他人に波及すると言われており、ストレスを感じている人を見ただけでもストレスホルモンの数値が上がるとされています。そのため、社員それぞれがストレスマネジメントを習得し、少しずつ改善していくだけでも職場環境が改善する可能性があるのです。
04ストレスマネジメントのやり方
ストレスマネジメントのやり方は、自身のストレスについて把握するセルフモニタリングと、具体的なストレスへの対処としてのストレスコーピングがあります。この章では、これらをそれぞれ詳しく紹介します。
セルフモニタリング
セルフモニタリングとは、自身の状態を継続的に観察・記録することで、ストレスの原因やストレス反応などを明確にしていく手法です。
具体的なやり方としては、セルフモニタリングの質問票に記入する方法が一般的です。しかし、ストレスの内容をノートなどに書き留めておくのも良いでしょう。定期的にチェックすることで、必要な対策を講じることができます。また、セルフモニタリング自体にも、ストレスを緩和する効果に期待できます。
ストレスコーピング
ストレスコーピングは、ストレスを管理・対処する方法のことです。ストレスコーピングは大きく分けて、以下の2つに分けられます。
- ・問題焦点型コーピング
- ・情動焦点型コーピング
状況に応じたコーピングで、ストレスにアプローチすることが大切です。
問題焦点型コーピング
問題焦点型は、ストレスを生じる原因そのものを取り除いて、ストレスが起きないよう対処する方法です。例えば、担当業務の量を減らす、業務を分担する、目標を達成可能なレベルに細分化するなどが挙げられます。
情動焦点型コーピング
情動焦点型は、ストレスを生じる原因そのものに焦点を当てるのではなく、ストレスに対する感情や考え方を変化させることでストレスをコントロールする方法です。専門家やカウンセラーへの相談、先述したメンターへの相談もこの方法に含まれます。相手が受け止めてくれる行為によって、感情の整理や発散させることができます。
05組織としてのストレスマネジメント施策
ストレスへの対応は個人の問題ではなく、組織として取り組むべき問題です。組織として実践すべきストレスマネジメント施策は主に以下のようなものがあります。
- 1.1on1
- 2.横のつながりを作る
- 3.産業医など専門家によるサポート体制の整備
- 4.ストレスマネジメント研修
ストレスマネジメントの具体的なやり方は、個人で実践するものですが、そもそも社員がそのやり方を知らなければ意味がありません。そのため研修でやり方や必要性の周知をすることが、最低限求められます。また、社員のストレス状態を把握するために、1on1や産業医などの支援も同時に行う必要があるでしょう。
1.1on1
上司とメンバーで定期的にコミュニケーションの場を設ける1on1は、組織としてストレスマネジメントに対応する際に非常に重要な施策となります。まず上司がメンバーのストレス状態を把握する場としての活用でき、さらにはメンバーが上司にストレスに対しての具体的な対処を相談する場としての活用も可能です。
ただし、1on1を活用する際にも注意が必要です。まず、1on1をそのような場としても活用するという意識を管理職・メンバーの双方が持つ必要があります。1on1の目的や適切な実施方法を理解しないまま、1on1という制度だけが導入されている企業も少なくありません。そのため、まずは研修や説明会で1on1の目的や適切な実施方法を社員に教育する必要があります。
2.横のつながりを作る
ストレスの原因(ストレッサー)が上司にある場合、1on1はストレスマネジメントに寄与せず、むしろ1on1がさらにストレスを増長させる危険性すらあります。そのため、上司以外に相談できるような横のつながりを作る必要性もあります。
横のつながりを作る施策としては、ランチ代を支給したり、他部署と交流する機会を作ったりといったものが一般的です。また、ななメンターとして、他部署の人がメンターとなるような制度を導入する企業も増えています。
3.産業医など専門家によるサポート体制の整備
ストレスへの対応は医学的な知見も欠かせません。そのため、産業医など専門家によるサポート体制を整えておくことも必要です。
ただし、体制を整えるだけでは意味がありません。産業医に相談できるということを周知し、さらには相談へのハードルも下げる必要があります。例えば、「匿名で相談でき、秘密も守られるため、ストレスの原因である上司には知られない」といったように、誰でも安心して利用できることを社員が認識している状態を作る必要があり、継続的に発信していく必要があります。
4.ストレスマネジメント研修
社内研修によって、社員のストレスマネジメントに対する知識やスキルの向上を図ることも重要な施策です。外部の専門家が講師であれば、全社員の集合研修をはじめ、管理職向けに社員からの相談対応、職場環境の把握と改善、職場復帰支援などを学ぶことができます。ストレスマネジメントの意識を高めていくには、継続的な社内研修の実施が求められます。
06ストレスマネジメント研修|Schoo for Business
Schoo for Businessは、国内最大級8,500本以上の講座を保有しており、ストレスマネジメントを学ぶことのできるコンテンツも揃っております。
導入企業数は4,000社以上、ストレスマネジメント研修はもちろん新入社員研修からDX研修まで幅広く活用いただけ、自律学習の支援ツールとしてもご利用いただいております。
受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
アーカイブ本数 | 8,500本 ※2023年5月時点 |
研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
ストレスマネジメント研修のカリキュラム例
Schooは汎用的なビジネススキルからDXやAIのような最先端のスキルまで、8,500本以上の講座を取り揃えております。この章では、ストレスマネジメント研修のカリキュラム例を紹介いたします。
新しい時代に適応するためのセルフマネジメント
第1回 | ストレスのセルフマネジメント |
時間 | 60分 |
研修内容 |
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本コースは、リモートワークなど働く環境が大きく変化しているこの時期にこそ知っておきたい、セルフマネジメントについて学ぶ授業です。
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(社)日本リーダーズ学会代表理事 リーダーズアカデミー代表
株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。メンタルコーチ。脳科学とアドラー心理学を組み合わせた、独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。現在は法人向けにチームマネジメント・セルフマネジメントに関する研修、講演、エグゼクティブコーチングを提供。主な著書に、「本気で変わりたい人の行動イノベーション」(秀和システム・だいわ文庫)『指示待ち部下が自ら考え動き出す! 』(かんき出版)、『先延ばしは1冊のノートでなくなる』(大和書房)などがある。
不安とストレスに悩まない7つの習慣
第1回 | ストレスに悩まない3つの習慣 |
時間 | 60分 |
研修内容 |
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第2回 | 不安に悩まない3つの習慣 |
時間 | 60分 |
研修内容 |
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この授業のテーマは、私たちの生活の質にも大きく関わる「ストレス」。 「ストレスをなくすことは可能なのか?」 「ストレスに強い人と弱い人の差は何なのか?」 「ストレスによって引き起こされる症状のうち、注意すべきものは何か?」 など、生活を送る中で出て来るさまざまな疑問を解消し、ストレスとの向き合い方を学ぶことができます。
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医師、医学博士、日本医師会認定産業医
産業医、一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。20以上のグローバル企業等で年間1000件、通算1万件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を行い、働く人のココロとカラダの健康管理をサポートしている。著書に『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書―上司のための「みる・きく・はなす」技術 』(きずな出版)、『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣 』(産学社)、共著に『産業医・労働安全衛生担当者のためのストレスチェック制度対策まるわかり』(中外医学社)などがある。
07まとめ
本記事では、ストレスマネジメントの概要や企業に求められる理由、社員に対するストレスマネジメント施策とそのポイントについて解説しました。昨今は、精神障害により長期の休職や離職する社員が増え、それに伴い労災補償事案が増加しており、大きな社会問題となっています。
深刻な事態を避けるためにも、これからの企業経営にストレスマネジメントが不可欠です。セルフモニタリングやメンター制度の導入、ストレスコーピングの活用、社内研修を実施し、ストレスマネジメントを効果的に行える環境の整備が求められています。