公開日:2023/10/25
更新日:2023/10/27

モチベーション3.0とは|従業員のやる気を引き出す方法を解説

モチベーション3.0とは|従業員のやる気を引き出す方法を解説 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

企業の生産性にかなりの割合で影響を及ぼすのが、従業員のモチベーションです。適切なモチベーション管理をおこなっている組織は活気にあふれ、従業員はやる気に満ち、常に高い業績をキープできるでしょう。 この記事では、比較的新しい概念であるモチベーション3.0の概要とメリット、モチベーション3.0を活用し従業員のやる気を引き出す方法を解説します。

 

01モチベーション3.0とは

モチベーション3.0とは、内発的動機付けにフォーカスした新しいモチベーションの概念です。アメリカの作家である、ダニエル・ピンク氏の著書の日本語訳である『モチベーション3.0 持続するやる気をいかに引き出すか!』という書籍に由来しています。 著書のなかでピンク氏は、外発的動機付けを中心に考えられた従来のモチベーション管理に疑問を呈しています。そして、内発的動機付けこそが、従業員のやる気に直結し長期的にモチベーションを持続させると説きました。 内発的動機付けこそが、本当の意味でのモチベーションであり、人材や組織の成長に欠かせないといっても過言ではありません。

モチベーション1.0とモチベーション2.0

モチベーション3.0の前段階である、モチベーション1.0と2.0について解説します。 モチベーション1.0とは、人間が生きていくうえで必要な、もっとも原始的な欲求に基づく、やる気のことです。「生理的動機付け」とも呼ばれ「食事をする」「外敵から身を守る」「子孫を残す」といったものが挙げられます。 モチベーション2.0は、報酬と罰による動機付けのことで「外発的動機付け」とも呼ばれます。「給与を得る(生活する)ために仕事をする」「叱責をされないように作業を急ぐ」といったことが例に挙げられるでしょう。

マズローの5段階欲求説との関連

モチベーション3.0の理論と関連深いとされるものに、マズローの5段階欲求説があります。モチベーション3.0は、このマズローの5段階欲求説を発展させたものともいえるでしょう。 マズローは人間の欲求を、以下のように5段階に分類しました。モチベーション1.0、2.0、3.0との関連は、以下の表のようになります。

マズローの5段階欲求説 モチベーション理論 欲求・動機の性質
自己実現欲求 モチベーション3.0 内的 外的
承認欲求
社会的欲求 モチベーション2.0 外的 欠乏
安全の欲求 モチベーション1.0
生理的欲求

モチベーション1.0は、生理的・安全の欲求が源となる動機で、モチベーション2.0は社会的欲求(所属することで報酬を得たい)による動機です。これらは、外的な刺激によりもたらされ、足りなければ補いたいという欲求・動機につながります。 これに対しモチベーション3.0は、承認欲求・自己実現欲求によりもたらされる動機です。自身の内側からもたらされる内的な欲求・動機であり、成長につながるものといえます。

 

02モチベーション3.0が注目される背景

モチベーション3.0が注目される背景には、モチベーション1.0や2.0の限界が認識されはじめたことがあります。やるべきことと方法・手順が定められたルーティンワークでは、インセンティブにより、生産性の向上を図ることは容易でした。 しかし、変化の激しい現代のビジネス環境においては、定型的な作業を多く・早くこなすことより、新たな発想やアイデアにより新しい価値を生み出すことが求められます。そのためには、自身の内側から湧き出る欲求に基づく、内発的な動機が不可欠です。 社会の成熟とともに労働に対する価値観も大きく変化しているなか、外発的動機付けだけでは従業員のモチベーションを持続させることに限界が生じています。そのため、モチベーション3.0が注目されているのです。

 

03モチベーション3.0の3つの構成要素

モチベーション3.0には、3つの構成要素があります。この3つは、モチベーション3.0を活用し従業員のやる気を引き出すうえで、重要なポイントとなります。

  • ・自主性(自律性)
  • ・成長(熟達)
  • ・目的

自主性(自律性)

課題に対する取り組みを自身の頭で考え、主体的に行動に移すこと

成長(熟達)

自身の立てた目標達成のために鍛錬・努力を重ねること 掲げた目標が相当の努力をすることでのみ達成できること、また達成できると信じることが重要なポイント

目的

個人的な目的ではなく、社会・チームへの貢献、組織の成長など利他的なものであること

これら、3つの要素が満たされて、はじめてモチベーション3.0が機能するのです。

 

04モチベーション3.0のメリット

モチベーション3.0が浸透することで、個々の人材がその能力をより発揮できるようになります。新たな価値を生み出し発展していくためには、欠かせない要素といえるでしょう。 以下に挙げる3つが具体的なメリットです。

  • ・目標・目的の本質が明確になる
  • ・モチベーションを持続できる
  • ・高い創造性を発揮できる

目標・目的の本質が明確になる

モチベーション2.0による外発的動機付けは「インセンティブをもらいたい」という、自身の欲を満たすための動機付けです。これが度を過ぎると、過度な競争状態を作り出してしまい、 目的のために手段を選ばず、モラルに反する行動をとってしまうリスクにつながります。 モチベーション3.0では、目標や目的を達成することにより、組織と個人が成長することが動機となります。目標・目的の本質が明確になり、組織をよい方向に導くためのモチベーションとなるのです。

モチベーションを持続できる

外発的動機付けの欠点は、長期間持続しないことにあります。インセンティブを与え続けることには限界があり、報酬を手に入れることでやる気を失うことがあるためです。 その点、内発的なモチベーションは個人の内面から無限に湧いてくるものであり、外的な要因に左右されません。長い期間持続できるモチベーションであるため、長期的な目標・目的達成のために欠かせないものです。

高い創造性を発揮できる

モチベーション2.0までの、報酬や罰によるモチベーションコントロールは、創意工夫を阻害するリスクがあります。利己的な欲求を満たすことが第一になり、自身の頭で考え組織をよくしようとする創造性を発揮できなくなってしまいます。 一方、内発的な動機による仕事は「もっとよくするためにどうするか?」と自身の頭で考えるため、創意工夫が生まれやすい点がメリットです。新たな価値を生み出す創造性が発揮されるのです。

 

05モチベーション3.0の活用方法

モチベーション3.0を活用し、従業員の内発的動機付けを高めていくための基本姿勢は、従業員を信じて任せていくことにあります。当然ですが、安全な労務環境や適正な報酬など、モチベーション1.0・2.0が満たされていることが前提です。 以下に挙げる5点が具体的な活用方法です。

  • ・自発的な目標設定を促す
  • ・仕事に裁量を与える
  • ・働き方の選択肢を与える
  • ・人事評価制度を見直す
  • ・管理職研修を実施する

自発的な目標設定を促す

ノルマのように本人の意思に関わらず、一方的に与えられた目標はモチベーションを低下させます。押し付けられた目標からは、当事者意識が生まれにくいためです。 目標は可能なかぎり、従業員自身に立ててもらうことが大切です。なりたい姿や目指すものをイメージし、自身で設定した目標であれば、意欲を持って取り組めます。達成するための創意工夫が生まれ、自律的な成長につながるでしょう。

仕事に裁量を与える

細かく管理され、何をするにも「お伺い」を立てなければならない状態であれば、自律性が発揮されることはありません。「やらされ仕事」から脱却できないかぎり、モチベーションは向上しないでしょう。 仕事に裁量を与えることも必要です。最終的に目指す結果だけをすり合わせ、そこに向かうプロセスについては口出しせずに見守るとよいでしょう。しかし、「丸投げ」と「裁量を与える」は違います。行き詰まったときは、適度にタイミングよくフォローを入れることも大切です。

働き方の選択肢を与える

組織として、さまざまな労働環境を提供することも必要です。具体的にはリモートワークやフレックスタイムなど、働き方に柔軟性を持たせる取り組みです。 従業員はそれぞれに、個人の事情を抱えています。そうした事情に寄り添い、環境を整えることが働きやすさにつながります。働き方の選択肢を与えることで、従業員一人ひとりが、存分に力を発揮できるようになるでしょう。

人事評価制度を見直す

評価制度をはじめ、組織の枠組みを見直すことも必要です。モチベーション3.0が機能しやすくなるように組織の仕組みやルールを変化させるのです。 評価制度においては、自主的な目標設定を促進するために、目標管理を盛り込むとよいでしょう。また、自発的な行動をしている人材を評価するなど、評価基準を見直すことも必要です。

管理職研修を実施する

過度な管理からは、従業員の自律性は生まれません。仕事に裁量を持たせ、モチベーションを向上させるためには、管理する側の意識を変えることも必要です。 多くの管理職は自身の成功体験に基づいた、マネジメントスタイルがあるかもしれません。しかし、モチベーション3.0を機能させるには、個人の技量に委ねるだけでは不十分です。管理職研修を実施し、組織として「自主性を引き出すマネジメント」を、しっかりと教育することが大切です。


 

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06モチベーション3.0を活用した企業事例

ここでは、モチベーション3.0を活用し、組織活性化に成功している企業事例を紹介します。いずれも「人材の力をいかに引き出すか」にフォーカスした施策であるといえます。

  • ・Google社の「20 Percent Time」
  • ・H&M社の「NEXT ME」

詳しく見ていきましょう。

Google社の「20 Percent Time」

Google社が実施している、従業員の自主性を高める取り組みが「20 Percent Time」です。業務時間の20%を、自分の興味が向く新規事業の開発に使ってもよいとしています。マネジメントの目を離れ、自身の取り組みとしてサイドプロジェクトを持つことで、さまざまな経験と気付きを得て飛躍的に成長することが特徴です。 実際に「Gmail」や「Google Map」は、「20 Percent Time」から生まれました。この制度では報酬が発生しません。「自身のやりたいこと」という、内発的な動機から行動するため、高い成果を得ているのでしょう。

H&M社の「NEXT ME」

H&M社では「NEXT ME」と題した、従業員の成長を促す取り組みに注力しています。これは、H&Mに所属するすべての管理職は、自身の業務を完全に任せられる人材を、意識して育てなければならないとするものです。 部下を持つ管理職は、人材育成がミッションの一つであるため、部下の成長のための情報や機会を積極的に与えるようになります。部下の側も自律的な行動をとるようになり、成長スピードが加速します。人を育てられる人材が高く評価される仕組みが生んだ、好循環といえるでしょう。

 

07まとめ

新たな価値を生み出すことが求められる現代のビジネス環境においては、内発的動機付けにより仕事に邁進する人材が欠かせません。モチベーション3.0を意識したマネジメントにより、自律性の高い人材を育成することが求められるのです。 そのためには、組織の枠組みを根底から見直すことが大切です。管理職の意識変革をはじめ、人材育成からのアプローチにも、積極的に取り組む必要があるでしょう。

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この記事を書いた人
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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