チーム型組織とは?組織構造の特徴や他組織との違い、採用ポイントを解説
社内の組織構造の種類は多く存在し、企業の事業内容やプロジェクトに応じて適した体制を取り業務を進めることで、目標の達成に近づけます。この記事では、組織構造の種類の一つである「チーム型組織」について、他の構造と比較しながら詳しく解説します。これから社内のチーム体制について検討している方は参考になれば幸いです。
- 01.チーム型組織とは
- 02.チーム型組織とその他の組織構造
- 03.チーム型組織のメリット
- 04.経営におけるチーム型組織のデメリット
- 05.チーム型組織を採用する企業事例
- 06.これからチーム型組織へ構造転換する際のポイント
- 07.組織開発に関するSchooの授業を紹介
- 08.まとめ
01チーム型組織とは
チーム型組織は、社内の部署の垣根を越えて様々なスキルを持った人材でプロジェクトを進める組織形態です。組織に参画している人材は経験してきた業務も異なるので、それぞれの視点で物事を見れます。マネジメントの発明者であるドラッガーが提唱した組織構造としても知られています。
02チーム型組織とその他の組織構造
チーム型組織について少しだけ触れましたが、組織構造の種類は多種多様です。 プロジェクトによって最適な体制を取るためにも、チーム型組織以外の組織構造についても確認しておきましょう。
チーム型組織
チーム型組織は、一般的な組織のように一度チームを組むと長期的に同じメンバーでプロジェクトを行う形態ではなく、一時的なプロジェクトの遂行のために組まれる組織構造です。各部署・チームから任意のメンバーを集め、組織してプロジェクトの遂行が完了すれば解散となるケースが多いでしょう。例外として、マネジメントチームのように解散を前提としないながらも、チーム型組織の形態を採用しているチームもあります。
職能別組織
職能別組織は、人事部や経理部など仕事を種類分けして、業務ごとに組織を組む構造です。チーム型組織とは違い、異なる部署の人員が集まって業務を行うのではなく、組織に属する人は同じ内容の業務を行います。そこには当然上下関係も存在するため、個々人の役割や立場がはっきりとしているのが特徴です。そのため、フレキシブルな対応がしにくいというデメリットも存在します。機能別組織は企業自体がシンプルな経営している企業に向いている組織体制だと言えます。
連邦分権組織
連邦分権組織は、会社を事業部ごとに分けた上でかつ部門ごとに分ける組織体制です。事業部の中に専門的なスキルを持った人員が集まるチームがあるイメージのため、チーム型組織と類似するところもありますね。ただ職能別組織と同じように縦の関係は存在するため、柔軟な対応がやや困難な組織体制でもあります。 その中でも職能別組織と異なるのは、この組織体制は達成すべき目標から逆算して組まれているため、迅速な対応がしやすいというメリットがあります。
類似分権組織
疑似分権組織は、これまで紹介してきた組織体制とは異なり、事業部ごとに分けるのが困難な企業に適用されるケースの多い組織体制です。明確には事業部を作らず、事業部のような形態で組織を組み、そこに責任と目標を付随させます。チーム型組織と異なる点は、連邦分権組織と同様に上下関係が存在する点です。類似分権組織とデメリットとしては、企業内で団結感が生まれにくいという点です。そのため採用する企業は少ないのが現状です。
システム型組織
システム型組織は、複数のチームが集まり大きな組織としてプロジェクトを推進する体制を指します。チーム型組織の規模を大きくした組織構造というイメージを持っていただければ分かりやすいと思います。ただ、規模感が大きく専門的な人材が集まっているとはいえ、各人における責任の所在は明確でないのがデメリットと言えます。
責任型組織
責任型組織は、組織内の人員それぞれに目標を持たせ、責任感を強く持って業務に取り組む専門性の高い組織です。言葉の通り責任に重きを置いており、チーム型組織とは責任の重さが違います。ただ一時的に組織される体制のため、チーム型組織のような安定性には欠けます。最初にチーム型組織の説明でドラッカーについて触れましたが、ドラッカーは責任型組織がもっとも理想的な企業の組織構造だとしています。
03チーム型組織のメリット
チーム型組織の特徴について解説してきましたが、具体的に自社に組織形態を取り入れるイメージはまだ湧いていないと思います。経営においてチーム型組織がもたらすメリットを知った上で、適切な組織形態を取りましょう。
知識・スキルを補い合える
チーム型組織は専門家集団のため、メンバーができない分野をカバーし合えます。部署が異なる人員が集まっているため、それぞれが経験してきたことも知識も違います。そのため、チーム型組織の人員は高い専門性を持ち、互いに支えながら業務を遂行することが求められるため、人員の選定はこの点を念頭に置いて選定するのをおすすめします。 他の組織構造の場合、専門知識の共有が困難なため、専門外の分野で不明点が出てきた時は各人が自分で解決しなければいけない場合があります。これでは効率が悪くなり、目標達成のスピードが遅くなります。質にも影響が出ると予想できますね。チーム型組織を取れば、苦手分野のカバー及び得意分野の特化が可能です。
各従業員の役割が明確になる
得意分野に集中ができ、苦手分野をカバーできるということは、各人の役割が明確であるとも言えます。自分がやるべきことが分かっていれば、目標達成に向けた個々人のTODOが自ずとはっきりするため、メンバーは自分の業務に集中できます。確認作業等のコミュニケーションの頻度も少なくなり無駄な時間を省けます。 チーム型組織を取る理由の一つには、チームメンバーを業務に集中させるという点があることからも、いかにこの組織構造が効率と目標達成に重点を置いているかが分かりますね。
新しい考えや成果が生まれる
チーム型組織の特徴は、異なるスキルを持ち合わせたメンバーが自分の役割に集中して業務を遂行し、時にはメンバー同士がカバーし合えるという点です。高い専門性を持つメンバーが協業すれば、そこから新しい考えや成果物が生まれるため、チーム型組織はイノベーションが生まれやすい組織だと言えます。 一つの分野の常識に囚われていてはイノベーションが起こる機会に巡り会わない可能性が高いですが、部署の垣根を超えて集まった優秀なメンバーが一緒に仕事を行えば、従来では考えられない思いもよらなかった成果が生まれることもあります。起こそうと思って起きるものではありませんが、イノベーションを期待して異なる部署の人材を交流させることは、チーム型組織を組む組まないに関わらず検討してみても良いかもしれませんね。
04経営におけるチーム型組織のデメリット
利点の多い組織体制のように感じられますが、メリットを言い換えればデメリットにもなり得ます。組織を結成してから公開する前に、チーム型組織のデメリットを確認し対処法を検討した上で採用する組織体制を決めましょう。
チーム構築に時間がかかる
チーム型組織は長期的な構築を目的としておらず、プロジェクト単位の結成・解散が一般的です。加えて、様々な部門や部署の人員が集まるため、今まで交流のなかった人と協業することになります。そのため、互いに信頼関係を築くのにも時間がかかり、滞りなくチームで仕事を遂行するまでにやや時間がかかります。チーム型組織はメンバー間の関係値の薄さがデメリットと言えるでしょう。
プロジェクト外との関係が薄くなる
関係が希薄になり易いデメリットがありますが、それは組織内に留まらず、組織外の人との関係も希薄になる可能性があります。プロジェクト毎に組織されるため、これまで当たり前のように一緒に業務をしていた同じ部署のメンバーとコミュニケーションを取る機会が少なくなり、長期的に見ると社内の人間関係に影響が出るリスクもあります。
規模に限界がある
チーム型組織の利点として、各メンバーの専門性・責任感があります。これは小規模な組織だからこそ意味のあることで、規模が大きくなりすぎるとその価値のある専門性が薄れ、責任感もなくなる可能性があります。チーム型組織はスケールがしづらく、規模拡大には限界があるため、各人の専門性と責任感を重視したい組織に採用するのは避けた方が良いでしょう。
05チーム型組織を採用する企業事例
実際にチーム型組織を採用している企業の例として、日産がよく挙げられます。日産のカルロス・ゴーン元社長は会社の経営を改善するべく、チーム型組織を取り入れました。以前の日産は責任の所在が曖昧で、誰かの失敗に対する責任をなすりつける状態が続いていました。大きな規模であるからこそ解決は困難であり、社内でも課題として認識されるようになっていたようです。 その解決のために、各人に責任が所在するチーム型組織を採用し、経営改善のアイデアの創出を目標としました。その結果、膨大なアイデアが各チームから提案され、経営改善に成功しました。
06これからチーム型組織へ構造転換する際のポイント
これからチーム型組織へと変えていこうと考えている組織開発担当者もいるでしょう。この章では、このような人のために、チーム型組織へ構造転換する際のポイントを紹介します。
チームリーダーの選定を重要視する
チーム型組織のデメリットとして、メンバー同士のチームワークの欠如が挙げられます。ただし、チームのトップに立つリーダーが上手くまとめられれば、チームワークのある専門性の高い集団になります。チーム型組織のメリットを最大限生かすためにも、統率力のある頼れる人材をリーダーにすることをおすすめします。
コミュニケーションの頻度・質を高める
各分野のスキルを掛け合わせることで、これまでなかったイノベーションが生まれます。そのためにはコミュニケーションが必要不可欠です。メンバーが気兼ねなく話し合える関係の構築から機会を生み出すことがリーダーの役割でもあります。円滑なコミュニケーションは、プロジェクトの達成と働きやすい環境づくりにも繋がるため、交流できる機会を定期的に作るよう心掛けましょう。
目標を決めて周知させる
チーム型組織に限らず、目標の周知はチームメンバーを最大限生かすために欠かせない作業です。特にチーム型組織は、専門性と責任性を持ち合わせたメンバーが集まる集団のため、目標を齟齬なく周知させられれば高いパフォーマンスが期待できます。
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07組織開発に関するSchooの授業を紹介
Schooには8,500本以上の授業があり、その中には組織開発に関するものもあります。この章では、組織開発に関する授業で人気のものを3つ紹介します。
多様性で組織力をアップする これからの上司像
このコースでは管理職が自身のマネジメントする組織の多様性(=ダイバーシティ)をいかに豊かにし、業績アップへとつなげていくのか、そしてそれを実現する上司とはどんな人物像なのかを学びます。講師は、「イクボス」という概念を提唱し、ご自身も上場会社の社長として圧倒的な実績を残されてきた川島高之氏です。
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NPO法人ファザーリング・ジャパン 理事
1987年に慶応大学卒、三井物産に入社。上場会社の社長時代、「イクボス式」経営により3年間で利益8割増、株価2倍、残業1/4、社員満足度調査も過去最高に。2016年に独立、NPOファザーリング・ジャパン理事、NPOコヂカラ・ニッポン創業、内閣府・男女共同参画委員、文科省・学校業務改善アドバイザー等を歴任。 子育てや家事(Life)、会社社長や商社勤務(Work)、PTA会長やNPO代表(Social)という3つの経験を融合させた講演が年200回以上。「元祖イクボス」としてNHK「クローズアップ現代」で特集され、アエラ「日本を突破する100人」にも選出。著書「いつまでも会社があると思うなよ」、「職場のムダ取り教科書」。
自律的組織を目指した組織開発において必要なこと
本授業では、ティール組織の3つの突破口を切り口に、オズビジョンの試行錯誤を実践的に振り返ります。オズビジョンの事例から、何を学び、どう考え、次につなげたのか、成功と失敗の生々しさを共有します。
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株式会社オズビジョン 取締役COO
1977年生まれ。千葉県船橋市出身。中小企業診断士。MBA in Innovation Management 大学卒業後、システムエンジニアからスタートしたキャリアが、上場準備を契機に管理部門へシフト。その後2社で2度のIPOを経験。社会人大学院の修了に合わせて組織開発の実践の場を求め『ティール組織』に日本企業で唯一紹介された株式会社オズビジョンに参画。取締役COOとして事業と組織の統合を推進。
自律的組織を目指した組織開発において必要なことを無料視聴する
データ活用する人事が行う組織課題がわかる論点整理
本コースでは、データ分析を行う人事担当者やピープルアナリティクスのプロフェッショナルが実践しているデータ分析の方法をご紹介いたします。理論だけではなく人事データを活用している企業実例を紹介しながら、人事データの活用方法や自社で行うイメージをご紹介します。
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株式会社メルカリ HR Operations Manager
大学卒業後、エン・ジャパン株式会社へ入社。複数の転職サイトのPdMを経験後、2018年3月に株式会社メルカリへ入社。HR Operations Managerとして人事プロセスを構築するHR Information System、人事データ活用を推進するHR Data Managementを統括。HR Techの導入、Employee Experienceの改善、人事データ分析基盤の構築等を担当。Women Empowermentを推進するWomen@Mercariに参加。
08まとめ
チーム型組織は、高い専門性を有するメンバーが部署の垣根を超えて組織される体制です。責任感も強く、異なる知識・スキルを共有して業務を行えば、イノベーションの創造も期待できます。ただメンバーシップを築きづらいなどのデメリットもあるため、これをカバーできる人材をリーダーに置き、プロジェクトの遂行に取り組みましょう。
▼【無料】他責型組織からの脱却〜対話と合意形成でつくる自律型組織開発〜|ウェビナー見逃し配信中
組織開発の全体像から実践できる具体的な方法まで、体系的な組織開発の全貌をテーマにしたウェビナーのアーカイブです。テレワークの拡大も進む中、組織に広がる「他責のムード」に悩まされる人事責任者は多いのではないでしょうか。組織開発のフレームワークを活用して、組織の中で必要な「対話と合意形成」を生み出すことで、他責型組織から自律型組織への変革を実現する方法についてお話します。
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登壇者:小金 蔵人 様株式会社ZOZO 技術本部 技術戦略部 組織開発ブロック ブロック長 / 組織開発アドバイザー STANDBY 代表
1998年に大学卒業後、味の素株式会社に入社し、営業マーケティングに従事。2006年にヤフー株式会社へ転職し、新規ビジネス開発・サービス企画のリリースを経験するかたわらで各種組織活性プロジェクトを推進。2016年に希望して人事部門に異動後、全社の人材開発・組織開発を担当。1on1ミーティングをはじめとしたピープルマネジメントツールの推進や管理職のマネジメント支援と並行して、現場の組織課題解決をサポート。2019年に個人での組織開発アドバイザリー事業と組織開発エバンジェリストとしての情報発信を開始。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職し、現在は全社およびクリエイター部門の人事企画・人材開発・組織開発に携わっている。