公開日:2022/09/30
更新日:2023/02/19

人的資源管理とは|3つのモデルと問題点を紹介

人的資源管理とは|3つのモデルと問題点を紹介 | オンライン研修・人材育成 - Schoo(スクー)法人・企業向けサービス

多くの企業は、多種多様な人材を抱えています。しかし、それぞれの人材が持つポテンシャルを、十分に発揮させることができていないと考える人事担当者は少なくありません。一方で、人材のポテンシャルを最大化するためには何が必要なのか、検討がつかないという方も多いのではないでしょうか。 そんな時に役立つのが、人材を適切に管理する人的資源管理という考え方です。今回は人的資源制度の定義やモデルなどを解説します。

 

01人的資源管理の定義

人的資源管理とは、「Human Resource Management」の訳であり「HRM」とも呼ばれます。直訳すると人的資源マネジメントとなるように、企業に属する人材をマネジメントする際の一つの考え方です。経営目標達成に向けて、従業員の知識やスキルを最大限に活用できるようにするため、制度設計や運営を行います。 人的資源管理を最適化することができれば、その状態は従業員が自身のスキルや経験を最大限に発揮できていると言えます。企業が継続的に発展していくにあたり、人的資源管理を適切に実行することは非常に重要なのです。

人的資源とは?

では、改めて人的資源とは何かということも確認しておきましょう。人的資源とは、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」のうち、「ヒト」を指します。「ヒト」が他の経営資源を管理しているという点から、最も重要視される形成資源として知られています。

 

02人的資源管理が発達した背景

人的資源の重要性は、今も昔も変わらず認識されています。ではなぜ、人的資源を管理するという考え方が発展してきたのでしょうか。背景を見ていきましょう。

基本的かつ重要な要素

経営者にとって企業を存続する上で最も重要な要素は、人的資源が持つスキルや経験、ポテンシャルを最大化することです。経営資源の重要な要素である「ヒト」が持つ力を最大化できれば、企業は必然的に高い成果を挙げることが可能となります。 全ての従業員が既存の企業の枠組みの中で活躍できることが望ましいですが、それは現実的ではありません。そのため、従業員が最大限活躍できるようにするために、人的資源管理を行う重要性が理解されてきたのです。

自律性・行動の自由

経営資源の中で、自らの意思を持って行動するのは「ヒト」だけです。意思を持ち、主体的に行動することができるため、時には企業のコントロール下で機能しない可能性があります。 しかし、「ヒト」として大切な自律性や行動の自由は必ず保証されるべきです。保証は最低限の条件とした上で、さらに「ヒト」が活躍できる土壌をつくるために、人的資源管理は発展を遂げてきたのです。 また、経営資源の中で変化できるのも「ヒト」だけです。変化の激しいVUCA時代と呼ばれる今、企業として存続するためには「変化」は必要不可欠です。その変化に対応できるのはヒトだけなのです。

絶対的な管理方法は存在しない

長い歴史を持つ人的資源管理ですが、現在も絶対的な管理方法は存在しません。なぜなら「ヒト」は意思を持ち、行動するためです。「ヒト」に感情が存在する限り、他の経営資源のように画一的に管理されることはほぼないと言えるでしょう。

 

03人的資源管理の3つのモデル

では、人的資源管理にはどのようなモデルがあるのでしょうか。代表的な例を3つご紹介します。

ミシガンモデル

ミシガンモデルにおいて最も重要視されているのは、企業の目標や経営戦略の達成です。あくまでも「ヒト」は企業のあらゆる達成のために存在しているという考え方が根底にあります。 中でも「採用と選抜」「人材評価」「人材開発」「報酬」といった4つの機能が戦略に落としこまれます。経営戦略に落とし込むことで、個人としてのパフォーマンスを高めることはもちろん、結果として組織のパフォーマンスも高まっていくことを狙いとしています。

ハーバードモデル

ハーバードモデルの場合、従業員の帰属意識が最も重要視されます。帰属意識、すなわち企業に対する愛社精神を基本として、社員の能力開発を行っていくというモデル概念です。 ミシガンモデルと異なり、「従業員の影響」「人的資源のフロー」「報酬システム」「職務システム」といった4つの要素によって構成されています。従業員の企業へのエンゲージメントを高めることで、人的資源管理を行います。 ミシガンモデルと異なり、社員の内面に重点を当て、人的資源管理を行うという特徴があります。従業員の帰属意識を重視する以上、内面にある感情に目を向けることは必須という考え方です。

AMO理論

「ability」「motivation」「opportunity」の頭文字から成るAMO理論は、名称通り能力、モチベーション、機会提供が最も重要視される考え方です。 この3つの要素を向上させることができれば、企業としての競争優位性を高めることができるため、従業員に選ばれる企業になるというモデル概念になっています。

 

04人的資源管理の領域

人的資源管理には、人材を適切に管理するために領域ごとに分けられる場合があります。これらの領域を意識することで、人的資源管理がより適応しやすくなるという考え方の元、領域が設定されています。こちらでは、多くの企業が取り組みやすい代表的な3領域をご紹介します。

初期キャリア管理

最も代表的な人的資源管理の領域は、初期のキャリア管理です。人的資源管理を行う上で、初期のキャリアをどのように管理するかということは非常に大きな課題です。したがって人的資源管理の重点領域として、初期キャリア管理はよく語られる領域と言えるでしょう。 ここでは、募集・選考・内定といった就職活動の内容から、初期配属までの期間を初期キャリア管理として設定しています。人的資源を最適化、そしてスキルや能力を最大化するためには、従業員を募集する段階から制度などを設計する必要があります。 入社以前にある程度能力が見える仕組み作りはもちろんのこと、入社後も過去のデータや他の従業員の傾向などを見ながら、最適な配属を決定する制度作りなどが求められます。

異動・昇進管理

続いての領域は、異動や昇進管理です。従業員にとっては、最も身近な人的資源管理領域と言うことができます。 中でも異動や昇進には、従業員個人の様々なライフイベントが絡む可能性があります。結婚や妊娠・出産など、人的資源管理がうまく機能しなければ、優秀な人材を逃すきっかけになる可能性は少なくありません。また、他の企業と比較しやすいポイントでもあるため、自社の優位性を高めるためにも積極的に検討するべき領域とも言えます。 加えて、あらゆる職種や年次の従業員と特に密接に関わるため、広い視点を持った人的資源管理の設計や運用が必要になります。

定年制と雇用調整

また、定年制や様々な雇用調整も人的資源管理と密接に関わる領域です。定年まで働いてもらうことに優先度を置くのか、そうではなく退職前提で制度設計をするのかによって、重要となる人的資源管理のポイントは大きく異なります。 また、一言に雇用調整といっても賃金や労働時間、評価などの複数の要素が密接に絡み合うため、最も要素の整理が難しい人的資源管理の領域と言い換えることもできるでしょう。 特に昨今、労働環境改善は重要な問題として提起されることが多くなっています。そのため、最も企業側が配慮すべき人的資源管理の領域として認知されるようにもなっています。

 

05人的資源管理の問題点

ここまでご紹介してきた人的資源管理は、一見すると企業、そして従業員にとってもメリットが大きいと感じるかもしれません。しかし、実行する以上はもちろん課題も生じます。 ここからは人的資源管理における課題を、先にご紹介したモデル別にご紹介します。

ミシガンモデルの課題

ミシガンモデルにおいて重要視されるのは、企業の経営戦略達成です。そのため、従業員の存在が他のモデルよりも軽視される傾向があります。 経営戦略達成を軸として考えた場合、人的資源管理が成功している状態はあくまでも経営戦略の達成です。そのため、達成できるなら従業員の雇用状態や労働環境などが保証されていない場合があります。 この場合、従業員のポテンシャルをつぶしてしまっている可能性も高く、企業にとって実は損失がある状態になる可能性があります。

ハーバードモデルの課題

ハーバードモデルは、従業員の愛社精神を重要視する特性上、経営戦略と人的資源管理の間に一貫性と調和が非常に重要となります。 しかし、従業員は企業への信頼感が厚いという前提となるため、実際は従業員が様々な面で抑制されてしまうケースが少なくありません。例えば、従業員に対する雇用調整は比較的容易に実行できるモデルとされており、結果として労働組合の組織力低下ももたらしかねません。上手くいけば従業員のポテンシャルを最大化させやすいモデルですが、上手くいかなければ従業員の密かな不満が溜まりやすいモデルと言えます。

 

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    大阪大学人間科学部卒業。 アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。2002年、株式会社シェイク入社。企業研修事業の立ち上げ、商品開発責任者としてプログラム開発に従事。新人~経営層までファシリテーターを実施。2015年、代表取締役に就任。2017年9月、これからの働き方をリードすることを目的に、エンゲージメント向上を支援する株式会社NEWONEを設立。米国CCE.Inc.認定 キャリアカウンセラー。

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AI活用が進む現代において、人間ならではの力を伸ばしたいというニーズは非常に高まっています。文脈を読み取る力、読解力などはまさにそうした「人間ならではの能力」の一つですが、とくに大人になってしまうと、読解力を鍛える機会がなく、また、鍛え方も分からなくなりがちです。本授業では吉田裕子先生が読解力の鍛え方をご指南くださいます。

 
  • 株式会社壺中天 代表取締役

    1999年、立命館大学理工学部を卒業後、エンジニアとしてIT企業(SIer)に就職。2001年、疲弊した現場をどうにかするため人事部門へ異動、人事担当者、人事マネジャーを経験する。2008年、リクルート社で人事コンサルタントとなり50社以上の人事制度を構築、組織開発を支援する。2016年、急成長中のアカツキ社で人事企画室を立ち上げる。2020年、「人事の意志を形にする」ことを目的として壺中天を設立。 20年間、人事領域を専門分野としてきた実践経験を活かし、人事制度設計、組織開発支援、人事顧問、人材マネジメント講座などによって、企業の人材マネジメントを支援している。 主な著作『人材マネジメントの壺』(2018)、『図解 人材マネジメント入門』(2020)など。

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採用と育成における人事データの活用方法

本授業は、DXを推進されている企業の立役者にDXを進める上で大切だった点を事例として振り返っていただくインタビュー形式授業です。

 
  • 株式会社人的資産研究所 代表取締役

    株式会社人的資産研究所 (株式会社セプテーニ・ホールディングスのグループ会社) 代表取締役。 2011年に早稲田大学創造理工学部を卒業後、株式会社セプテーニ・ホールディングスに新卒入社。採用・育成・配置の分野にアナリティクスの技術支援を行う。 グループ内研究機関である人的資産研究所の所長を経て、2021年よりHRテクノロジー事業を開始。セプテーニグループの研究成果の社会提供をミッションとして活動。 一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員 / 個人情報保護士。

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07人的資源管理で従業員が活躍できる組織へ

人的資源管理は、それぞれのモデルにおいてメリット・デメリットをきちんと把握し、運用することができれば、組織の力を最大化できる可能性があります。通常であれば見えにくい従業員のポテンシャル把握なども行いやすいため、隠れた能力を秘めた従業員の発見も容易に行うことができます。 一方で、運用にはなぜ人的資源管理が必要なのかという人事的視点が重要です。常に目的を見失わずに運用しなければ、ただただ従業員の士気を下げるという結果にも繋がりかねません。企業の現状と課題、目指す未来をきちんと整理した上で、ぜひ人的資源管理に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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人材を資源から資本として捉え、人的資本経営への移行を目指す企業が増えています。 一方で、「人的資本経営は広い概念で理解しきれない」「全体像がまだ把握できない」「具体的に何から進めればいいかわからない」といった悩みも多く、人的資本経営への切り替えを模索しながら進めている経営者や人事責任者も多いようです。
そこで、人的資本報告の国際規格 ISO 30414のリードコンサルタント/アセッサー認証取得者であり、山形大学 産学連携教授の岩本 隆氏をお招きして、人的資本経営の概要から人材育成の具体的戦略まで幅広くお伺いします。

  • 登壇者:岩本 隆先生
    山形大学 産学連携教授

    東京大学工学部金属工学科卒業、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ(株)、日本ルーセント・テクノロジー(株)、ノキア・ジャパン(株)、(株)ドリームインキュベータを経て、2012年6月より2022年3月まで慶應義塾大学大学院経営管理研究科特任教授。2018年9月より山形大学学術研究院産学連携教授。(一社)ICT CONNECT 21理事、(一社)日本CHRO協会理事、(一社)日本パブリックアフェアーズ協会理事、(一社)デジタル田園都市国家構想応援団理事、「HRテクノロジー大賞」審査委員長などを兼任。

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この記事を書いた人
Schoo編集部
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Schooの「世の中から卒業をなくす」というミッションのもと活動。人事担当や人材育成担当の方にとって必要な情報を、わかりやすくご提供することを心がけ記事執筆・編集を行っている。研修ノウハウだけでなく、人的資本経営やDXなど幅広いテーマを取り扱う。
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