ラーニングピラミッドとは?学習定着率との関係性や活用例・ポイントを解説

ラーニングピラミッドとは、学習方法によって学びの深さや理解のしやすさが異なるという考え方を、ピラミッド型で表したものとして広く知られています。これは、講義や読書といった受動的なインプット学習よりも、グループ討論や他人に教えるといった能動的なアウトプット学習(アクティブラーニング)が効果的であることを示唆しています。本稿では、ラーニングピラミッドの内容や要素、活用のポイントまで解説します。
01ラーニングピラミッドとは何か?
ラーニングピラミッドとは、学習方法による学習定着率の違いを、ピラミッド型の図で表したモデルです。ピラミッドは下層になるほど定着率が高いことを示しており、「グループ討論」「自ら体験する」「他人に教える」といった能動的なアウトプット型の学習(※いわゆるアクティブラーニング)が、受動的なインプット型の学習(講義、読書など)よりも効果的であることを示唆しています。
座学だけでなく、実際に体験したり、人に説明したりする学びの有効性は直感的にも理解しやすく、ラーニングピラミッドは広く知られています。一方で、そこで示される「学習定着率」の数値には複数のバリエーションがあり、数値や区分について明確な根拠が確認できないとの指摘もあります。
▶︎参考:Letrud, K. (2012). A rebuttal of NTL Institute's learning pyramid. Education, 133(1), 117–124.
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7つの段階と学習定着率
ラーニングピラミッドでは、一般に7つの段階とそれぞれの学習定着率が示されます。学習定着率についてはさまざまなバリエーションがありますが、その一例は以下のとおりです。ただし前述のとおり、これらの数値や区分は科学的に検証された実験データに基づくものではなく、学習活動の違いを直感的に示した図式として参照されることが多い点には留意が必要です。
- ・講義を受ける【5%】
- ・読書する【10%】
- ・視聴覚学習(ビデオ・音声)【20%】
- ・実演(デモンストレーション)【30%】
- ・グループ討論【50%】
- ・自ら体験する【75%】
- ・他の人に教える【90%】
ここでは、その内訳について詳しく紹介します。
講義を受ける【5%】
「講義を受ける」は、1人の講師が多人数に向けて一方的に知識を伝える座学型の学習方法です。ラーニングピラミッドでは最も定着率が低いとされています。学習者は情報を受け取るだけの受動的な状態になりやすいことがその理由として挙げられます。ただし、講義は新しい概念や全体像を効率的に伝えるには有効な手段であり、後述するアウトプット型学習と組み合わせることで、その価値を高められる可能性があります。
読書する【10%】
読書は、書籍やテキストを通じて知識を学ぶインプット型の学習方法です。自分の意志でテキストを読むという能動的な要素が加わる分、ピラミッド上、講義よりも高い定着率があると説明されています。一方、基本的には情報を受け取ることが中心の学習であるため、学んだ内容を自分の言葉で要約するなど、アウトプットと組み合わせることで定着を促しやすくなると考えられます。
視聴覚学習(ビデオ・音声)【20%】
視聴覚学習とは、動画や音声を用いて知識を学ぶインプット型の学習方法です。文字情報だけの読書と比べると、映像と音声による複合的な情報が記憶の手がかりを増やす傾向があります。eラーニングやオンライン研修はこの段階に該当しますが、視聴するだけで完結せず、視聴後のディスカッションや実践と組み合わせることが効果を高める鍵となり得ます。
実演(デモンストレーション)【30%】
実演は、熟練者が実際にスキルを行う姿を見学したり、実験や実技を間近で体感したりする学習方法です。映像とは異なり、実物を五感で体感できるため、情報のリアリティが増すことが特徴です。また、その場で質問ができるなど、双方向のやり取りが生まれやすい点も、インプット一辺倒の学習との違いと言えるでしょう。
グループ討論【50%】
グループ討論は、設定されたテーマに基づいて複数の参加者が議論しながら学びを深める方法です。ラーニングピラミッドでは、グループ討論以降が能動的な学習として紹介されることが多いです。この学習方法は、他者の意見に触れることで自分の理解を相対化できること、また、自分の考えを言語化するプロセスで知識が整理されることが、定着率の向上に寄与する要因として考えられます。ただし、グループ討論がその効果を発揮するには、参加者の間の知識レベル差を広げすぎない点や、明確なテーマ設定といった条件がある点に留意が必要です。
自ら体験する【75%】
「自ら体験する」は、OJTやロールプレイング、フィールドワーク、経営シミュレーションなど、実際の課題に取り組みながらスキルを身につけていく学習方法です。インプットで得た知識を実際に使い、その結果を体感するプロセスを経ることで、知識が実務で使えるスキルへと転換される傾向があります。
一方、学習定着に関する著名なモデルである「コルブの経験学習モデル」では、経験後の内省と、それを通じて得た教訓を次の行動に活かすことが重要だとされています。ここから、ただ体験するだけでなく、経験を自分なりに解釈し、意図的に試行錯誤を繰り返すことが大切と言えるでしょう。
▶︎関連記事:経験学習モデルとは?学習における重要性と構成要素を解説
他の人に教える【90%】
「他の人に教える」は、OJTでの指導役や社内講師として、学んだ知識を他者に伝える能動的な学習方法です。ラーニングピラミッドの中では、最も定着率が高い手法に位置づけられています。実際に「教えること」の学習効果はさまざまな研究でも示されており、例えばFiorellaとMayer(2013)の研究では、「教える」行為の有無が学習効果の持続期間に影響したことを示唆しています。教えるためには、知識の振り返りと言語化が必要であり、準備の課程で再学習も進むことが影響していると考えられます。
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02企業で活用できるラーニングピラミッドの要素
ラーニングピラミッドは数値的な根拠が乏しく、学習方法の優劣を一律に示すものとして、そのまま受け取ることには注意が必要です。たとえば、「必ず読書よりもグループ討論が優れている」といったように単純化して捉えるのではなく、学習内容や目的に応じて適した方法を考えることが重要です。
一方で、学習者が主体的に参加する学習(アクティブラーニング)の効果や、アウトプットを通じて学習が深まるといった内容は、研究でも支持されています。こうした要素は、企業における研修設計やOJT、知識定着の仕組みづくりに活かせる余地が大きいといえるでしょう。
アクティブラーニング
アクティブラーニングとは、学習者が思考、議論、実践、創造を通じて能動的に情報を処理し、知識を構築するアウトプット型の学習形態です。情報をただインプットするだけでは自覚しづらい理解の濃淡を測り、主体的に考えることで応用力が高まります。ラーニングピラミッドでは、グループ討論、自ら体験する、他人に教えるの下層3層がこれに該当するとされることが多いです。
企業においては、例えば研修講義のあとにグループディスカッションを行ったり、研修の参加者同士でグループを作り「教え合い」をするピアラーニングの取り組みなどが実践例として挙げられます。
想起練習
想起練習とは、学習内容を積極的に思い出すことを通じて、学びを定着させる手法です。このように、学習内容を思い出す行為そのものが後の定着を高める現象は、「テスト効果」と呼ばれます。
研究でも効果が実証されており、例えばRoedigerとKarpicke(2006)が実施した検証では、同じ教材に対して「繰り返し学習する」グループと、「学習後のテスト実施」グループを比較したところ、テストを行ったグループの方が後日の記憶保持率が高いことが示されました。
このメカニズムを企業の人材育成に活かす場合、研修後のミニテストなどは効果的な手法になり得ます。学んだ内容を、早いタイミングでテストすることで、「思い出し」が促進されて定着しやすくなるためです。また、研修後に講師が「このセクションではどんな話をしたか覚えていますか?」といった質問を投げかけ、回答してもらうことなども有効でしょう。
03ラーニングピラミッドを活用した人材育成例
学習内容や企業ごとの環境によって、最適な学習方法は変わります。一方で、最終的に実務で活かせるスキルを身につけることを目指す場合、基本的にはインプットとアウトプットを組み合わせる設計が効果的になるでしょう。ここでは、ラーニングピラミッドで示される学習手法を踏まえ、人材育成で活用しやすい学びの組み合わせについて考えます。
▶︎関連記事:ブレンド型学習とは?活用する5つのメリットと有効性を高める方法を解説
オンライン講座×OJT
OJTは、実際の業務を通じて上司や先輩から直接学ぶ育成手法であり、ラーニングピラミッドにおける「自ら体験する」に該当する能動的な学習です。しかし実際の現場では、指導者の力量やスキルにばらつきがある、業務繁忙のなかで指導の時間が確保できない、教える内容が属人化して体系的でないといった課題が生じやすい傾向があります。
このような課題には、Schoo for Businessなどのオンライン講座を組み合わせるアプローチが有効です。基礎知識やフレームワークといった「型」の部分は動画で標準化し、OJTでは実践の場での「問い」と「伴走」に上司の役割を特化させることで、指導者の負担を抑えつつ、OJT全体の質を底上げできる可能性があります。
オンライン講座×集合研修
アウトプットとインプットを組み合わせるという考え方からは、オンライン講座と集合研修の組み合わせも有効です。このような組み合わせは、一般に「ブレンド型学習」と呼ばれます。例えば事前課題としてオンライン講座で基礎知識をインプットした上で、集合研修ではディスカッションや演習を行うことで、より実践的なスキルを身につけることができます。
Schoo for Businessの授業『ビジネスパーソンの「学習設計マニュアル」』に登壇する、インストラクショナルデザインの専門家である鈴木克明先生は、ブレンド型学習の本質は、同期型と非同期型の使い分けであると解説しています。オンライン学習は、個々人の好きなタイミング・環境で行う場合、非同期型の学習に分類されます。学習者自身にスケジュールやモチベーションを管理する自律性・主体性が求められるため、自律的に学ぶ社員を育てる観点でも有効な取り組みになり得るのです。
学習プラットフォーム×社内勉強会
Schoo for Businessでは、9,000本以上の動画コンテンツに加え、自社ナレッジをアップロードして資産化するナレッジポケット機能、同じ教材を複数人が同時視聴できるオンライン集合学習機能などを提供しています。このような学習プラットフォームを導入し、そこに社員を起点とした勉強会の実施を組み合わせることも、人材育成における有効な手段となり得ます。
まず学習プラットフォームの導入は、社員が自発的な学びを進める環境づくりに役立ちます。また、それだけでは個人に閉じた学習になりますが、従業員が自らテーマを設定し、周りの従業員を巻き込んだピアラーニングを推進することで、組織的な学習効果にもつながりやすくなります。例えば社内勉強会を企画し、参加者が同じテーマの講座を同時受講、その後学びをシェアし合う取り組みなどが考えられます。
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04ラーニングピラミッドを活用する際のポイント
ラーニングピラミッドを活用する際は、「能動的な学びの手法を取り入れること」と「自社の環境や学習の目的に合った方法を設計すること」を意識すると効果的です。一方で、導入時に陥りやすい落とし穴もあります。ここでは、活用のポイントと注意点を合わせて紹介します。
能動的な学びの手法を取り入れる
ラーニングピラミッドを人材育成に活用する場合、どのように学習者の主体性を引き出すか、という観点で見ることがポイントです。ラーニングピラミッド自体は数値的な根拠に乏しいと指摘されますが、学習者が主体的に発信したり、他者と関わったりしながら能動的に進める学びには、定着や学びの深化の観点で効果が期待できると言われています。
ラーニングピラミッド上では、グループ討論や体験型学習、他者に教えるといった手法が表現されています。社内で研修などを企画する際に、実施しやすい座学中心にするのではなく、他に取り入れられる要素はないかを検討するとよいでしょう。
自社の環境や学習の目的にあった方法を設計する
ラーニングピラミッドに示された特定の学習方法が、あらゆる場面で一律に優れているわけではありません。学習の内容、対象者のレベル、利用できるリソース、組織の文化によって、最適な手法は異なります。
たとえば、リモートワーク環境下で深い理解を促したい場合は、知識のインプットをeラーニングで効率化し、集合の場(オンラインまたは対面)ではグループ討論や実践など、アウトプットと対話に特化させるハイブリッド学習(反転学習)が効果的な選択肢となります。
また、新入社員の基礎教育と中堅社員のスキル深化では、ラーニングピラミッドのどの層を重視すべきかも変わります。基礎知識が不足している段階では、まずインプット型の学習で土台を固めることが先決であり、いきなり「他者に教える」ことを求めても効果は限られるでしょう。自社の課題と受講者の現状を棚卸しし、インプットとアウトプットの最適な配分を設計することが、ラーニングピラミッドを実務に活かす鍵となります。
05人材育成を学ぶならSchooのオンライン研修
オンライン研修/学習サービスのSchoo for Businessでは約9,000本の講座を用意しており、DXほか様々な種類の研修に対応しています。
| 受講形式 | オンライン (アーカイブ型) |
| アーカイブ本数 | 9,000本 (新規講座も随時公開中) |
| 研修管理機能 | あり ※詳細はお問い合わせください |
| 費用 | 1ID/1,650円 ※ID数によりボリュームディスカウントあり |
| 契約形態 | 年間契約のみ ※ご契約は20IDからとなっております |
人材育成を学ぶのにおすすめの講座
この章では、オンライン研修サービスSchooの講座から、人材育成の知識習得におすすめの講座を紹介します。
ビジネスパーソンの『学習設計マニュアル』
この授業では、学校教育の勉強とは異なるおとなの「学び方」について学びます。今の自分に適した学習を設計できるように、インストラクショナルデザイン(ID)の研究者である熊本大学・鈴木克明教授からおとなの「学び方」について学んでいきましょう。
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熊本大学 教授システム学研究センター 教授
1959年生まれ。Ph.D.(フロリダ州立大学教授システム学専攻)。ibstpi®フェロー・元理事(2007-2015)、日本教育工学会監事・第8代会長(2017-2021)、教育システム情報学会顧問、日本教育メディア学会理事・第7期会長(2012-2015)、日本医療教授システム学会副代表理事など。主著に『学習設計マニュアル』(共編著)、『研修設計マニュアル』、『教材設計マニュアル』などがある。
※研修・人材育成担当者限定 10日間の無料デモアカウント配布中。対象は研修・人材育成のご担当者に限ります。
意欲が高まる学習目標デザイン
この授業では、学習することの自分なりの意義を見出すための目標設定の仕方について学びます。自らの目標設定の方法から、行動に移してから継続させるための目標の管理方法まで、この授業では学んでいきます。
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㈱LEBEN CAREER CEO
秋田県は男鹿市の生まれ。大学卒業後、小売流通業界にて店舗運営責任者として従事。帰国後、製薬業界にて人事戦略室、社長秘書室、人事総務業務に従事。2014年に人材開発事業「LEBEN CAREER」を創業し、法人設立後は代表取締役に就任。専門領域は、キャリア変革を目的とした行動変容的アプローチ。
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研修の組み立て方 ‐ 設計・実施・評価
この授業では、研修の設計から実施、評価までの一連の組み立て方について学びます。研修担当者のために研修の設計・実施・評価がデザインできるように、インストラクショナルデザイン(ID)をベースにヒューマンパフォーマンスインプルーブメント(HPI)、プロジェクトマネジメント(PM)の考え方を掛け合わせたビジネスインストラクショナルデザイン(BID)を基に研修の組み立て方について、講師2名のデモンストレーション形式で学んでいきます。
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サンライトヒューマンTDMC株式会社 代表取締役社長
熊本大学大学院 教授システム学専攻 非常勤講師。製薬業界での営業、トレーニング部門を経て、起業。HPIやIDを軸とした企業内教育のコンサルティングやインストラクショナルデザイナー、インストラクターを育成する資格講座の運営を行っている。IDの実践方法を提供してきた会社は100社、4,000名を超える。主な著書:『魔法の人材教育(改訂版)』(幻冬舎、2017年)、『ビジネスインストラクショナルデザイン』(中央経済社、2019年)
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06まとめ
ラーニングピラミッドは、学習者の関わり方によって学びの深まり方が異なるという考え方を示す図式として知られています。このモデル自体に、明確な学術的裏付けがあるわけではありませんが、アクティブラーニングやアウトプットが学習の定着に有効という観点は、企業の人材育成にも活用可能です。企業は、OJT(自ら体験)やグループ討論といったアクティブラーニングを取り入れ、インプット(オンライン講座)と組み合わせたハイブリッド学習を設計することで、自社の環境や目的に合った効果的な人材育成を実現することが重要です。


