Youメッセージの特徴とは?|Iメッセージとの違いや使える場面を解説
ビジネスにおいてのコミュニケーションでは、YouメッセージやIメッセージと呼ばれるものがあります。これらはどのような特徴があるのでしょうか。それぞれについて使える場面についても解説していきます。
01Youメッセージとは「あなた」を主語にしたメッセージのこと
Youメッセージは、「あなた(You)」を主語として発せられるメッセージのことを示しています。発話しているのは、あくまでも「わたし」です。その「わたし」が、「あなた(You)」に対して、「あなたは〇〇ですね」といった、観察の結果や断定などで思っていることを発する際に、それはYouメッセージである、といわれます。Youメッセージには多くの特徴があります。この記事では、その特徴や適切に使える場面について解説していきます。
Iメッセージとは「わたし」を主語にしたメッセージのこと
Youメッセージを語る際に避けては通れないのが、Iメッセージについて知ることです。Youメッセージが「あなた(You)」を主語にしたメッセージであったことに対して、Iメッセージは「わたし(I)」を主語にしたメッセージのことです。こちらの場合も、発話しているのはあくまでも「わたし(I)」です。その「わたし(I)」が、「わたし(I)は〇〇だと思っています」といったように、自分の考えや想いなどを「わたし(I)」を主語にして語るものがIメッセージです。Youメッセージと合わせて、こちらの概念についても覚えておきましょう。
Weメッセージが使われることもある
「わたしたち(We)」や「みんな」などを主語にしたWeメッセージと呼ばれるものが使われる場合もあります。これは、YouメッセージやIメッセージに比べるとあまり見る機会はありませんが、例えば企業でビジョンやミッションについて語るときや、自分たちの目標などについて語るときなどに使われます。「わたしたち(We)は〇〇という目標を掲げています」というような使い方です。
02Youメッセージは決めつけに感じられることもある
Youメッセージの大きな特徴として、相手が決めつけられたと感じる可能性がある、というものがあります。「あなたは〇〇ですね」という言い方は、確かに聴き手によっては、「あなたにわたしの何が分かるのか」「わたしのことを勝手に決めつけないでほしい」という感情を呼び起こしてしまいかねません。
それがパーソナルな情報であったり、感情や性質であればなおさらでしょう。特にネガティブなものやそう捉えられそうなことに関しては、強い反発を招いてしまう可能性があります。
- ・「あなたは怠け者ですね」
- ・「あなたは考えが足りません」
- ・「あなたはチームの足を引っ張っています」
このように言われてしまうと、たとえそれが正しい指摘であったとしても、頭ごなしに否定されたと反発してしまうものではないでしょうか。
Iメッセージが良いとされる場面が多い
近年では、基本的にビジネス上で伝えるのならばIメッセージで伝えるのが良い、とされています。「あなた(You)は〇〇である」というのは、伝えたいことをあくまで発信者の考えとして伝える方法です。そのためそう言われた側は、「それはあなたの勝手な勘違いです」と否定することができます。しかし、「わたし(I)はこう思います」という感想であるなら、それを言われた相手は否定しにくいでしょう。
- ・「わたしの考えでは、あなたは努力が足りないように思います」
- ・「わたしには、あなたが十分考えているようには感じられません」
- ・「わたしは、あなたがチームのボトルネックであるように思えます」
たしかに辛辣な物言いかもしれませんが、Youメッセージの決めつけたような言い方と比較すると、多少は柔らかい言い方になっているでしょう。もちろん、これだけで終わらずにフォローしたり、なぜそう感じるのかなどを付け足す必要はあるでしょう。しかし、最初の一言で完全に反発されてしまうYouメッセージよりは、対話の余地が残されるのです。
Weメッセージは押しつけに感じることがある
「わたしたち(We)」を主語にする場合も、Youメッセージと同様に気をつけなければなりません。
- ・「私達は、あなたを怠け者だと思っています」
- ・「みんな、あなたの考えが足りないと感じています」
- ・「みんなの足をあなたが引っ張っています」
このような言い方では、言われた側はYouメッセージよりもさらに委縮してしまうでしょうし、より強く反発するでしょう。言われた側からすると、相手が他者と連帯して自分を責めているように感じるからです。
ただし、会社のビジョンやミッションを浸透できれば、Weメッセージの使いどころによっては、強く事業を推進できる共通言語にもなりえます。 いずれにせよそれぞれのメッセージは使い方しだいですし、その場面は大いに吟味する必要があるのです。
03Youメッセージが向いていない場面
Youメッセージを効果的に活用するには、どのようなシーンに向いていないのかを把握しておく必要があります。どのような場面が向いていないのか、具体的に確認していきましょう。
- 1.ネガティブなフィードバック
- 2.指導に関連した指示や命令
- 3.信頼関係が十分ではない場合
- 4.目上の人に対する発言
1.ネガティブなフィードバック
前述した通り、Youメッセージでネガティブなフィードバックを伝えてしまうと、強い否定や押しつけ、こちらの言い分を無視した決めつけであるかのように受け取られてしまう可能性があります。本来、ネガティブなフィードバックは誰しもが聞きたくないものです。そして恐らく、指摘する側も積極的に指摘したいものではないでしょう。しかしビジネス上必要であるため、行わなければならないから行うのです。
その際にYouメッセージを使ってしまうと、相手がすぐに心の壁を作ってしまい、それ以降の話を聞いてもらえなくなる可能性が高くなります。そうすると、本題は「そのネガティブな面をどうやって直すか」という話であるにも関わらず、それを一切聞いてもらえない、という状況に陥るのです。ネガティブなフィードバックの場合は、なるべくIメッセージでやんわりと伝えるところから初めてみましょう。
2.指導に関連した指示や命令
前述のネガティブなフィードバックに付随して、必ずついて回るのが指導に関連する指示や命令です。このような弱みがあるから、それを直してほしい、そのためにこうしてほしい、と伝えるシーンなどが該当します。ここでもYouメッセージは避けたほうが良いでしょう。
- ・「あなたは〇〇であるから、△△をしてください」
- ・「あなたは××をすべきだ」
上記のように言われると、やはり言われた側は決めつけられた、こちらの言い分を聞いてくれない、押しつけだと感じてしまいます。ネガティブなフィードバックだけでなく、それに付随する指導もYouメッセージではなくIメッセージを使うようにするのが無難でしょう。
3.信頼関係が十分ではない場合
お互いが出会って間もない場合の関係性においても、Youメッセージは使用を控えたほうが良いでしょう。Youメッセージに「決めつけに感じられる」という特徴が、より強く、悪い形で作用してしまうためです。出会って間もない人から、自分に関することを決めつけられたらどうでしょうか。少なくとも良い気持ちはしないのではないでしょうか。たとえそれがポジティブな内容であっても、「あなたにわたしの何が分かるのか」と否定的に感じてしまうのは仕方がないでしょう。そうなると、それ以降の良好な関係を築くのが難しくなってしまいます。信頼関係が十分に築かれないうちは、Youメッセージを伝えるのは避けましょう。
4.目上の人に対する発言
目上の人に対する発言も、基本的にYouメッセージは避けたほうが良いでしょう。この場合は、ポジティブな発言であっても避けるのが無難です。Youメッセージは決めつけに感じられる、というのはこれまでもお伝えしているとおりです。決めつけはときとして、「上から目線」に感じられます。たとえポジティブな内容であっても、目下の者から上から目線の発言をされたら、不快に感じてしまう人もいるのではないでしょうか。非常に親しい関係でないのならば、なるべく目上の人にはYouメッセージは使用しないようにしておきましょう。
04Youメッセージが効果的な場面
多くのビジネスコミュニケーションの解説では、Iメッセージを基本にしたほうが良いともいわれています。しかし、一部にYouメッセージが効果的となる場面があります。どのような場面であるのか、以下で解説します。
- 1.親しい間柄での感謝や賞賛
- 2.機械的な情報の伝達
- 3.やむを得ない叱責
1.親しい間柄での感謝や賞賛
しばらく一緒に仕事をしている同僚や部下、何年来の上司など、極めて親しい間柄であり、なおかつ感謝や賞賛の言葉であれば、Youメッセージは効果的に伝わることもあります。
- ・「あなたは責任感がある」
- ・「あなたの思慮深さのおかげだ」
- ・「あなたがチームを引っ張っている」
こういった言葉は、深い間柄であれば違和感を持たれることなく相手に伝わります。「あなたがどう感じようと、事実として、あなたはすごいのだ」という強い賞賛は、場合によっては、Iメッセージよりも強い感謝の意志を伝えることができるのです。
2.機械的な情報の伝達
発話者の意志や意見が関係ない、機械的な情報伝達の場合には、よりストレートに伝わるYouメッセージは効果的です。例えば、会社からの辞令や命令、なんらかの措置などです。これは主語が「あなた(You)」でありながら、実際は、「あなたには〇〇という部署が向いています。と、組織は判断しました。」「あなたは〇〇という研修を受けねばなりません。と、組織が決定しました。」というような文意であるためです。機械的な情報伝達はより強くストレートにより直感的に伝わるべきであるため、発話者の意志が介在するIメッセージは、むしろ向いていないのです。また発話者の人格が介在しないため、受け取った側が反発するとしてもそれは組織に対してとなります。
3.やむを得ない叱責
何年も部下たちと接していると、やむを得ず、強いメッセージで伝え、指摘しなければならないタイミングがあるのも事実です。何かしらの不正や報告の嘘を指摘する場合などがそれにあたります。あまりにも度が過ぎる場合は、即刻懲戒処分となるかもしれません。しかし、訓戒や指導などで済まされる場合もあり、そのようなタイミングで強いメッセージを発することが必要となります。その際には、Youメッセージがもつ決めつけや上から目線であるという点を活用し、強いメッセージを発しているのだ、と相手に理解してもらうようにしましょう。当然ながら、その際にもハラスメントにならないよう言葉を選ぶ必要があります。強いメッセージであると理解してもらえたら、その後にはしっかりとフォローを入れ、立ち直れる支援を行うようにしましょう。
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06まとめ
近年ではYouメッセージは避け、Iメッセージを使うほうが良い、とされています。多くの場面ではその通りですし、Youメッセージがいらぬ軋轢を生むこともあるでしょう。 しかし、実際に有用な場面があるのも確かなことです。これまでお伝えしてきたとおり、もっとも重要なのはどのメッセージがどの場面で有効かを知り、場面に合わせて使い分けることです。これを機に、自分や自社内でどのようなメッセージが使われているか、その使い方は適切であるか、ぜひ考えてみてください。